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記憶喪失な僕っ娘

「食べるっものー♪食べるっものー♪

毒キノコはやめてくれー♪できれば野草もやめてくれー♪俺は肉しか食べたくなーい♪」

なんてどうしようもない歌なのだろう。

作詞俺。作曲俺。

俺は自分を卑下して楽しいんか。全くもう。


でも食べ物なんてあったっけ?

とりあえず、適当に食べれそうなもの持っていって後で聞けばいいか。俺天災。

違う、天才。俺は台風かよ。


かごは持ってきてないから持てる分だけにするか。

とりあえず…

「あ!このキノコ食べれそう!」

紫の色に深緑の水玉模様。

いかにもな毒オーラを発している。

いや、やばそうじゃねぇか!

何が食べれそうじゃい。ったくもう。


あれ…?だけど、このキノコの奥に生えているキノコ、めっちゃ美味しそう。じゅるり。

ははは、涎が止まらないぜ。


…はっ!

「ふふ、あくまで毒味。つまみ食いじゃなく毒味。だから先に食べてもセェーーフ!!」

俺は矢の如く素早くキノコを放り込む。

あくまで毒味だ。

………

「……おえ………」


食べ物は見かけによらないな。



ーーー



「ここはどこ…私は誰…

…………って本当に誰!?」

「誰って恩人に向かって失礼だね。僕はたまたま通りかかってたまたま倒れていた君を見つけてたまたま介抱してあげただけだよ」

いや、知らん人に誰って言って何が悪い。


って僕とか言ってるけど口調とか女の子っぽいんだが…

この、爽やかな香り。

整った顔立ち。

長いまつ毛に瑠璃色の大きな目。

見るからにぷにぷにそうな唇。

どっからどう見ても女だよな?

僕っ娘か?俺的にはアリだが。

……アレはどうだろう。

「ってそういや名前名乗ってなかったね。

てっきりもう名乗ったかと思ってた。てへ」

「……」

「あれ?僕の胸元ばかり見てどうしたの?

何で固まってるの?おーいっ!」

ちっ、これはまな板だとよ。けッ。

「ん?何か今失礼な事思われたような気がしたけど、気のせいかな」

「そんなことありませんとも、えぇ。

それより僕はアレイ・ヴァイアンと申します。

あなたは?」

「紹介が遅れたね。僕は、僕……の名前なんだっけ?」

「………は…?」

自分の名前忘れることある?

もしかして記憶喪失とかか?

「実はね僕、森の奥でずっと暮らしてて、それで、あのー、忘れちゃった」

「ちなみに森の奥にどれくらいいたんですか?」

「んー、あんまり覚えてないんだけど。

ざっと数えて数千年かな。

つい魔術の研究に没頭しちゃって」

数千年…?まじかこいつ。

一体何歳なんだよ…てか何者だよ。


「その…魔法の研究で記憶を思い出す魔法とかなかったんですか?」

「魔法…?なんだね、それは。

私が研究してるのは魔術だよ。

て言うか魔法って何?そんなの聞いたことないけど」

え?魔法と魔術って違うのか…?

「すいません。まだ良く魔術のことは分からなくて。できれば誰か教えてくれるような人がいれがいいんですけどね…」

俺はあまりこの世界の常識などはわからない。

だからそれを教えてくれる先生がいる。

もちろんこの人は世間知らずっぽいかんじもするけど…

でも、何千年も生きているんだ。

常識は分からなくてもせめて魔術のことについては知っておきたい。

何故ならこの世界で好きなように生きるための絶対条件だからだ。


もちろん今世では好きなように生きるのが俺の目標だからな。



ーーー



「先生!これはどうですか?」

「ふむふむ、レイ。君はみる目がない!

まぁ、まだ最初はよかったんだよ?初めてだし。

だけどさ!何か食べれそうな見た目してたら手当たり次第に僕に聞いてくるけど僕は博士じゃないんだからね?」

「だってどれが食べられてどれが食べられないとか分かんないんですもーん」

「もーん、とか可愛く言っても許さないんだからね。て言うかほとんど僕が採ってるじゃないか」

「おほー!すっごい集まりましたね。

さて、帰りましょうか」

「無視かよこのガキ」

うんうん、この話題にはふれないでおこう。

とりあえず早く帰ってロベルトやらクレアやらにこの記憶喪失僕っ娘マッドサイエンティストを紹介せねばな。

「ん?今なんか失礼なこと思われたような…」

全く…勘の良いガキは嫌いだぜ…

あっ、ババアか。失礼。

「レイ、そろそろ僕キレるよ?」

「な、なんでですか?僕は何もしてない…ですよ?」

「本当かなー…?全く、それよりも早くレイの家に行きたいな」

「そうですね、早めに紹介しておいたほうが良さそうですし。でも何て紹介すればいいんですか?」

「えー、友達とか家庭教師として雇ったとか適当にいいんじゃない?」

「て言うか自分の家には帰らないんですか?」

「あぁ、そういえば言ってなかったね。

僕の家はついさっき魔物に襲われて壊れたのさ」

「ちなみにどんな魔物で?」

「ゴブリン!」

…………弱っ。そんな誇って言うことでも…

でもそうか、俺はこの世界の常識を知らない。

本当はゴブリンでも相当強い個体なのかもしれない。

てか、今まで何で襲われなかったんだろうか。

「ゴブリンってどれくらい強いんですか?

何故今まで魔物に襲われていなかったんですか?

そして気づかなかったけど何で会ってばかりの子供に図々しくも家に入らせてと平気で言えるんですか?」

先生…は困惑した顔をしている。

てかさっさと名前思い出してくんねぇかな…

「そんなに急に質問されてもどれから返せばいいのか分かんないんだけど?」

少々イタズラが過ぎたか。


「じゃあ1つに纏めますね。

先生は何者なんですか?」

「………」

「………」

「僕はただ長生きしているだけの死に損ないさ」

「先生、この際そういう茶化しとか前置きとかはいいんですよ。さっさと答えてくれますか?

ちゃんと答えないと家にも入れられませんよ。

まぁ、当然ですけど」

「はは、それは困るかなぁ…ってまぁ隠してもしょうがないか。僕はエルフなんだ」

「はぁ。それで?」

「えっ?それだけ?もっと反応とかないの?」

何を言ってるのかわからない。

数千年生きているということから大体想像はついていたし。

ただ、耳が人間と同じ丸みがかかったものだったから確信がなかっただけだが。

「反応、とは?」

先生は困った顔で「あれーおかしいな…」と言ってる。何がおかしいんだろうか。


「うぅ…普通はエルフって言ったら驚くものなんだよ?もっとこう、捕まえにくるとかなんだよ?」

え、そなの?そんなの聞いてないけど。

「何でですか?」

「何でって、知らないの?

エルフって何千年も寿命があるから珍しいって変わり者の変態貴族とかが奴隷にしたがるんだ。

そしてエルフは数が少ない。それもあって高値で売られたりするんだよ。

僕はそうやって拐われた仲間達を沢山見た」

「そうなんですね…」

何この気まずい空気。

って言い出したの俺か。何やってんだよ数分前の俺。

「先生の気持ちも分かりました。

なので家には上げられるのですが…」

「どうしたの?」

「そろそろ名前思い出してもらっていいですか?

親の前でいきなり先生と呼びにくいので」

「難しいこと言うねぇ…何千年前だと思っているんだよ」

「そう言われましても呼びにくいものは呼びにくいんですー!」

「んー困ったな…じゃあ君がつけてくれないか?

僕的にはないとこの先困るだろうし、それに前の名前だってそんなに思い入れがないから忘れてると思うんだよね」

意外と薄情なやつなんだな。

まぁ何千年って大した長寿だよな。

しかたないか…にしても名前ねぇ…どうしたもんか。

「そうですね…セルヴィンとかどうですか?」

もちろん俺が10秒とかで考えた適当な名前だが、別におかしくはないだろう。

「いいんじゃないかな。別に僕にとって名前なんてなんでもいいし」

「じゃあ決まりですね、では家に帰りましょうか」






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