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友達ができた

私はこの世界に生まれてから一度も外に出なかった。

それは生まれてからすぐに風邪をひいたことがあるからだ。

それをきっかけに両親は体が弱いのだと思い外には出さなかった。

というかそれっきり私は風邪というか熱さえ出たことはないけど。

だからお父さんが連れてきた初めての同い年の男の子が妙に新鮮だった。

つい、噛みすぎて笑っちゃったけど。


彼はアレイ・ヴァイアンというらしい。

なんともまぁヴァイアンなどと少しかっこいい名字をしていらっしゃる。

どこか貴族の分家とかだろうか。

まぁどうでもいいけど。


でも、仲良くしたいものだ。

初めての友達…なんだから。

それにお父さんの友達の子供らしいしこれからも会うことになるって言ってたしね。


話しかけてみようか。

「あの、アレイくんは好きな食べ物とかある?」

「好きな食べ物か…お、僕はついさっき食べたヒポグリフという魔物の肉を焼いたものが好きですね。母様が奮発したらしくて」

「ヒポグリフって高級なものじゃない!凄いんだね!アレイくんの家って。

っていうかさっき俺って言おうとしたでしょ?別に気を遣わないでもいいよ。

今、私とアレイくんしかいないし」

「そ、そう?じゃあついでに呼び捨てで呼ぶね」

距離の詰め方えぐない?

何この子。飲み込みも早いんだけど。

「あと、くん付けじゃなくてレイって呼んでいいよ。俺も呼び捨てで呼ぶんだし」

「う、うん。分かった。じゃあ私もリアって呼んで。

家族からはそう呼ばれてるから」

「うぃ」

軽ぅ。なんかこっちのペースが狂わされるな。

蓮くんみたい。ふふっ。

「ん?何かおかしかった?」

「え?」

「いや、今笑ってたでしょ?」

あれ、私ったら声に出して笑っていたらしい。

本当に恥ずかしい。

「な、なんでもないよ」

「そう」

……

そこはもっと深く聞いてくれてもいいのに…

ちょっとムカつく…

って会ったばかりなのにおかしいよね。

なんでだろ、こんな気持ちになったの。

やっぱり蓮くんと少し似ているのかもね。

レイって。


「そういえばロベ、俺の父さんが後から来ると思うぞ。本当は一緒に来る予定だったんだけど母さんに説教されてたから」

ロベ…?

というか説教ってレイのお母さんは面白いね。

私のお母さんはお父さんに説教なんてしようともしてなかったのに。

別に自慢とかじゃなくてね。

説教というより喧嘩になるのに。

「じゃあお父さんに伝えてくるね。待ってて」

「おう」


お父さんは確か外で母さんの畑を手伝っていたよね。

いざ、外へ!…ぇ…。

………

誰この人。

日差しでよく顔が見えないけど何故か知性が感じられない阿保そうな人は…

だけど体はしっかりしているようで世も高いため少し怖い。

私はつい固まったまま立ちすくんでしまう。

「やぁ、君がマリアちゃんか?」

なんで私のこと知ってるの…この人。怖っ。

あっ後ろから父さんが来た。


「おいロベルト、来るなら来ると言っておけ。

来るときに俺が見つけたからいいものの、リアが怖がっているじゃないか」

「怖い?俺がか?良かった…最近、いや昔からレイに尊敬の目で見られてなくてな。

父親の威厳というものが俺にはあったのか…

リアちゃん、ごめんな。」

あ、はい…

てかレイってレイ?

もしかしてレイのお父さんかな?

あの、説教されていたという…

「いや、普通にストーカーに会った時の怖いの方だと思うが…」

父さんの予測は完璧だ。

一瞬ストーカーかと思ったもん。

上から階段を降りる音がする。

誰かが降りてきたのだろう。

まぁ誰かって…

「あっ、父様。やっと来たのですね」

レイしかいないんだけどね。

「あぁ、すまんな。母さんの説教ったら長いもんだから」

「それよりもロベルト、どうしてここに来たんだ?何か用か?」

「あぁ、村長にレイはどこに行ったのか聞いてな。お前の家に行ったというもんだから急いで来たんだよ」

「お前が急いでいたのはそういうことか…

てっきりリアに何かしようとしているのかと思った。可愛いし」

「ちょっと父さんやめて」

全く、急になんなの。

ただの親バカじゃない。あぁ、恥ずかしい。

レイはにやけてる。何が面白いのよ…もう…


「そうだ!」

父さんの声に皆が注目する。

もろん私も。なんなんだろう?

「この後俺の家でリヒター家とヴァイアン家の歓迎会でもしないか?

今まで家族ぐるみの付き合いはしてこなかっただろう?お互いの子供が5歳になった記念にもいいんじゃないか?」

急に何言い出すと思えばうちで歓迎会?

無理無理、まずお金ないでしょ。

それに場所も…


「それはいいけど…お前、それだけの物を用意できるのか?」

「うっ…ロベルトに言われてしまった…悔しい。だが、これを機に家族間との交流を深めたいんだ!それに…孫の顔が見たいだろ?」

なにかボソボソ聞こえるな…

子供の目の前でする話かね?

「おいおい、流石に気が早いぜルドルフ…

もちろん見たいが…」

おい!

「ちょっと父様とルドルフさん。

小声で話しても丸聞こえですよ?」

ナイス!レイ!

「と、とりあえず!だ!

歓迎会はうちで行う。

ルドルフ達は準備が終わったらレイを向かわせるから家族皆で来てくれ。分かったか?」

と、レイのお父さんが仕切る。

さっきのを誤魔化したいのか異様に早口だったけどなんとなくは分かった。

要するに…

…パーティーということだ。


「楽しみだねっ!リア!」

子供の様な満面の笑みで私に語りかけてくる。

いや、子供なんだけどね。かわいいな。

「うん」

嬉しすぎて逆に素っ気ない返事をしてしまった。

だけど、ものすごく楽しみだ。


レイとももっと仲良くなってみたい。

前世、好きだった蓮くんのように…



ーーー



やばいやばい、どうしよう。

ついうちで歓迎会をやるとは言ったけど母さんには急すぎ、と怒られるだろうし。

そもそもヒポグリフのせいでたくさんあったお金がほぼ無い。

どうしたものか。


勢いでつい口走るのが俺の悪い癖だ。全く…

ってそんなことよりもルドルフ達も楽しみにしてるしレイもマリアちゃんといいかんじになりつつあるし…

やるしか、ないんだよな。


まずは母さんに報告しないと。


ーーー



恐る恐るドアを開ける。

母さんは…いた、台所だ。

これは早く言わないとだな。


「か、かか、母さん?あの…話が…」

「あら、どうしたのあなた。

下にヒポグリフでも落ちてた?」

まだお怒りモードだ。怖い。

でも、言うしか…

「さ、ささっきルドルフと話してな…っ

それでうちで歓迎会をしようと言うことになって…」

「まっ…!あなたはまた急に言う!!」

や、やばい。ペースを持ってかれる。早く言わないと。

「と、とと、とりあえず!俺がなんとかする!

だから…!楽しみにしているんだ!!な!」

急ぎぎみに捨て台詞のようなものを言ってしまった。

俺は急いで家を出ようと玄関扉の前までいく。

すると、ひとりでにドアが動いた…

と思ったらレイだった。

ルドルフの娘と何か話していたしな。

遅れて帰って来たのだ。

「父様、そんなに慌ててどうかしたんですか?」

レイならどうにかしてくれるかもしれない、っとつい思ってしまう。

小さいながらに何故か頼りがいのある。

俺の自慢の息子。

「って外からも聞こえていたんですけどね。

僕が何か手伝いましょうか?」

あれを聞いていたのか…

見苦しいところを見られた。恥ずかしい。

ん?…手伝うって言った?

「ほ、本当か!?ぜひ手伝ってくれ!」

あ、つい…母さんの目の前で言ってしまった。

それに父としての尊厳が…はぁ…今更か。

…レイがにやけている。何か癇に障るな。

「手伝いますとも。折角の歓迎会ですからね。

それで、何をすればいいのですか?」

あ…しまった。考えていなかった。どうしよう。

とりあえず食料調達だよな。

「レイは森の入り口で食べ物をとってきてくれ。危ないから身を守るために一応木刀も持っていくように」

「了解です。ではいってきまーす」

そして…

「お父さーん。ジュリも手伝いたーい!」

「ランも…」

あらあら、可愛いこった。

見かけだけは可愛いレイと違って。

あいつはあいつで逆に頼りがいがありすぎて怖いんだよな…いい意味で。


そうだよ、子供とはこうなんだよ。

レイがおかしいだけなんだよ。

でもジュリやランにもできる手伝いか…

「じゃあジュリとランは2人で協力しこのリビングを掃除してくれないか?」

「はーい」


あとは、森にあるものじゃ限界があるからな。

うちの畑の野菜と少し狩ってくるか。

って、1人でできるか?どうしよ。

ちらっちらっ。この上目遣いが目に入らぬか!

「はぁ…しょうがないわね。今回だけよ。

それで、私はどうすればいいのかしら」

待ってましたぁー

「じゃ、じゃあ。母さんは畑の野菜をとってきてくれないか?」

「あなたはどうするの?」

「俺は…少し魔物を狩ってくる」

「わかったわ」


今のところ、順調だな。


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