同い年の女の子
俺は5歳になった。
なので新しく村に行ってみようと思う。
俺は魔物を少し倒そうと森に行ったことがあるくらいなので村にはちゃんと行ったことはない。
5歳、となると村で仕事ができるかもだし、友達だってできるかも。
そういやロベルトが同僚の娘が俺と同い年とか言ってたな。
娘…女の子…かわいい…つまり彼女…!?
やばい、彼女いない歴=年齢の俺には同い年&同じ村&女の子で彼女と連想してしまう。
ツンデレだとなお良し!
これはすぐ妄想する俺の悪い癖だ。
このこのっ!俺のばかぁ~!
まぁなんだ。
とりあえずご飯でも食べて出掛けるとするか。
もちろん帰ったらクレアの手伝いをするがな!
てか…
「…うま」
なにこれ、めちゃうまい。
って言っても日本の料理よりは美味しくないっていうかなんていうか。
日本の料理はすごいんだなと思わされる。
この5年間でこの世界の生活に慣れすぎてこの料理がすごく美味しく感じる。
なんなのこれ。
「母様。この料理はなんですか?」
「あら、これのこと?
これはねヒポグリフという魔物の肉を焼いたものよ。この前父さんが大きい魔物を倒してね。
それを町で売ったら結構お金入っちゃって。
久しぶりに奮発しちゃったの」
「へぇ~。それにしても本当に美味しいですね。
毎日食べたいくらいです」
「ふふ、そうでしょ?凄いのよこのお肉。
焼くだけで美味しくなるんだから。
栄養も高いから人気で高級なのよね」
「じゃあ父様に感謝しないとですね!」
「ふふふ、そうね。レイは偉いわね」
「そんなことないですよ」
ーーー
よし、飯も食ったことだし出掛けるか。
なんか久しぶりに家族以外の人に会うって少しドキドキするな。
「レイ、待ってくれ。父さんもついていく」
「父様、別に心配なさらなくてもすぐそこの村なんですから誰かに襲われることもないだろうし大丈夫ですよ?」
「ちがうちがう。毎日俺のもとで剣術を鍛えてるんだからそういうことを心配している訳じゃない」
「じゃあなんなのです?」
「初めて村に降りる息子をを見守るくらいいいじゃないか。初めて村の人に会うんだろ?
勝手が分からないんじゃないか?」
うっ…確かに言われてみればその通りだ。
ここはしょうがなくロベルトの提案を承諾しよう。
「分かりました。じゃあ早くご飯を食べてください」
「おいおい、久しぶりの高い肉を少しは味あわせろ」
「そんなの僕が大人になったらいくらでも食べさせてあげますよ。なんてったって父様と母様の息子なんですから将来は有望なんです」
「ほほぅ、言うじゃないか。
そこまで言われると将来が楽しみになってくるな。」
「期待してて損はありませんよ~」
「それは違いない。あははははは」
あっはははー…っと俺もロベルトも高らかに笑う。
「「あ…」」
ロベルトの箸からヒポグリフの肉が滑り落ちるとともに、
…後ろから魔王が迫ってくる。
「あなた…?これはどういうことかしら?
それにご飯もぼろぼろこぼれているわよ。
はぁ…折角の高級肉を……銀貨が…1、2、3…
あぁ、勿体ない!」
「母さんすまない、そんなつもりじゃ…」
「いいから早く食べちゃいなさい。
その下に落ちたものと一緒にね。うふふ。」
クレアは笑ってはいるが目が笑っていない。
怖い。早くここから脱出しないと…
「レイ~早くいってらっしゃ~い。
母さん、少し父さんと話さないといけないようだから~
気をつけてね~!」
「おお、おっお、仰せのままに…!
では、いってきまー…す」
良かった…あそこから抜け出せた。
あー…怖かった…
ドアを閉めると同時にクレアが笑ってこちらを見ていたがとても怖かった。
なんだろう…覇王色の覇気でもあるんじゃないか?
それくらい怖かったんだが。
…ロベルト…頑張れっ!
さて、やっと村に行こう。
おっと、家の塀を通ると同時に後ろから可愛い気配が…
「お兄ちゃ~ん!いってらっしゃ~い!」
2階の窓から手を振ってくれている。
届かないだろうに必死に窓から顔を出して…
なんて可愛いのだろう、うちの妹は。
「いってきます」
ーーー
ふぅ、村に着いた。
まずはどこに行くか。
定番は村長とかのとこだよな…
おっと、第一村人発見!早速声をかけてみましょう。
「すいません、この村の村長はどこにいますか?」
「あー、村長なら村の真ん中の家だよ。
ほら、少し大きい家があるだろ?」
「なるほど、ありがとうございます」
「それにしても見ない顔だな。
どこに住んでいるんだ?」
「僕は村から少し離れた家に住んでいる
アレイ・ヴァイアンと申します」
「あーヴァイアン家か。
ということは、ロベルトの息子か」
「え?父様を知っているのですか?」
「あぁ、ロベルトとは同僚でな。
よく一緒に魔物を狩っている」
「なるほど、父様と同僚で銀髪…
あっ!僕と同い年の娘さんがいるというリヒターさんですか?」
「あぁ俺はルドルフ・リヒターという。
娘と同い年だったよな?
村長のとこに行った後俺の家にでも来ないか?」
おっ!娘さんと仲良くなるチャーンスッ!
これは行くしかない。
「助かります!では、村長さんに挨拶した後にでもまたここに来ますね。」
「助かる…?あぁ、分かった。待っておく」
「ではまた!」
軽く手を振って村長の家らしきところに向かう。
それにしてもこの村のはにぎやかだ。
あちこちで子供たちが遊んだり手伝いをしたり、大人は子供たちを見守ったり農業をしたり。
いかにも村っていうかんじの村だ。
うぅんいい村だ。
「えぇーと村長の家は…ここか?」
なんともまぁ他の家と比べると豪華なようにも見えるが見た目に反して中は狭そうだ。
「す、すいませ~ん。村長さんはいますかー?」
あれ、反応がない。
「すいませ~ん。誰かいませんかー?」
えー、留守かよ。こっちは急いでるというのに。
「どうかしたのか?」
「あっ、村長さんを探してて」
「村長ならいつもの見回りじゃないか?
そろそろ帰ってくると思うが…
あっ、いたいた」
あれが村長か…ってさっきのルドルフさんではないか。
まさかルドルフさんが村長?
でもなんで嘘を…?
って隣のごつそうなジジイは誰?
「やぁ、アレイくん。
こちら、この村の村長だ。
さっき別れたときに村長に会って色々説明しておいた」
なるほど、村長はこのごつそうなジジイな訳か…
「話は聞いたよ。ロベルトの息子だそうじゃないか。
初めまして、私はこの村の村長のクリス・マクダウェルというものだ。
私に何か用かな?」
「い、いえ。別にこれと言った用は無いのですが、挨拶をしておこうと思いまして。
改めてアレイ・ヴァイアンと申します。
以後お見知りおきを」
「ルドルフ、ロベルトの息子なのに礼儀正しいものだな。どうやったらあれからこんな子が産まれるんだ?」
「さぁ?俺にも分かりかねますね。」
はははっとルドルフさんと村長の間で笑いが起こる。
クリ…なんたらさんは名前を忘れてしまったので村長と呼ばせてもらおう。てへっ☆
「それでは村長、僕は失礼します。
何か手伝えることがあれば言ってください」
「あぁ。すぐにでもまた会おう」
「村長、俺も帰らせてもらうよ。
この後アレイくんをうちに招こうと思ってね。
うちの娘に会わせたくて」
「そうか、同い年だったな。
アレイ、ロベルトにもよろしくと伝えてくれ。」
「分かりました。では、また」
「行こうか、アレイくん」
「はい」
このおっさん臭い空気から抜け出せる。
やっと女の子に会える。
なんだか嬉しい。可愛いのかなーいい匂いしたりするかなー
「アレイくん、嬉しそうだね」
「い、いい、いいえ、そんなことはべべべ別にありましょんよ、あ、ありませんよ」
「別に焦る必要も無いんだぞ?
それに、焦ったらすぐ噛む癖はロベルト譲りだなぁ」
たしかに、俺の精神は前世の日高蓮のままだと思っていたのに…
転生しても親の遺伝には逆らえないんだな。
でも、なにかと不便になりそうだからこの癖は治さないとだな。
「ご指摘ありがとうございます。
それに焦っているのではなくてちょっと緊張していまして。
同い年の女の子に会うのはひさ、初めてでして」
「そうか、緊張か…俺も小さい時はそうだったな…
特に母さんと会う時なんてガッチガチで挨拶して、そこでロベルトが背中を押してくれて…それで───」
はいはい、始まりましたよ。
ロベルトといい友達って仲が良いと似るのかね。
こういう話、ロベルトに散々聞かされてるから流し方は分かるが…疲れるんだよなぁ。
「…っとすまない。おじさんのこういう話は面白くないだろう。
娘にもよく面白くないと言われてね…はぁ…
反抗期かな…?なんでだと思う、アレイくん?」
「さ、さぁ…僕にはとても面白く感じるので娘さんの気持ちは分からないかなぁ…なんて…はは…」
ミスった。ロベルトとはまた違ってめんどくさいタイプだ。
こういった質問には慣れていない…
とても面白いって嘘をつけば俺に矛先が向くのは当然だ。
会うたびにこんな話をされてはめんどくさすぎる。
やばい、何て返そう…いや、ルドルフの家に着くまでの辛抱だ。我慢しよう。
とりあえず愛想笑いでもしておけば…
「着いたぞ!ここが我が家だ!」
「お、おぉ…ここ…ですか…」
「あぁ。上がってくれ」
「し、失礼しまぁす…」
「お帰り!お父さん…とそちらは?」
「あぁ、こちらはロベルトの息子の────」
はっ…!今世初めての同い年の女の子…!
破壊力がすごい。
綺麗な白髪にルビーのような赤い瞳。
5歳にして美しさと可愛さを兼ね備え、それが見事に混ざり合い、より一層可愛さを引き立たせる。
そして何よりおめめが大きい!
まつげが長い!さらに顔が小さくていらっしゃる!
そして細い足にきめ細かい白い肌!
これは絶世の美女ならぬ絶世の美少女!
…っとこの間0,5秒。早く挨拶をせねば…!
「は、はは、初めまひゅ、初めまして…!
ア、、アア、アレイ・ヴァ、ヴァイアンと、もも、も、申しまふ、も、申しま…す…!」
いや噛みすぎだろ!俺!
これは引くわ。間違いなく引くわ。
「ふふ、よろしくね。私はマリア・リヒターよ」
…笑われた…終わった…引かれた…嫌われた…最悪だ…
これから、俺はこの子と仲良くなれるのだろうか……?