1話 彼女を助けた。
初投稿失礼します。
良い点、悪い点。共に感想お願いします。
「あのっ、先輩!好きですっ付き合ってください!」
と、この場面を全校生徒が見えるような中庭で告白された……のは俺ではない。
あの、マンガとかによく出てくるようないわゆるイケメンというやつである。
まったく羨ましい。
という俺はその現場がよく見える廊下で告白を観察していた。
そんなことを考えているといつの間にか隣には美少女が立っていた。
「───くん。聞いてる。ねぇってば!」
「え?」
「え、じゃない。何度も話しかけたのだけれど?」
話しかけてきたのは幼馴染みでクラスメイトでもある望月みのりだ。
彼女は成績優秀、運動神経抜群、顔も整っていてその上人望もあつい。
いわゆる絵に描いた美少女のような存在だ。
あ、ちなみに学級委員もしているぞ。
そんな彼女とは家が近く、親も仲が良かったので昔はよく遊んでいた。
中学くらいから疎遠になったというわけでもなく、あちらから普通に話しかけてくれるのでなにかとありがたい。
「悪い、ちょっと集中してた」
「集中してたって……もしかしてあれ?」
あれとはなんだ、あれとは。
みのりもさぞ告白されているだろうに。
「みのりもよくされるだろ?」
「私、そういうのには興味ないから……」
「ふぅん……」
よくわからない返事をしてしまった。
それよりも意外だ、なんだったらもう付き合ったりしてあちらの世界に行っているのだと思っていた。
なんてったってモテそうだし。
少し偏見が過ぎたのかもしれない。
今も俺、というよりその隣のみのりのほうを見ている視線がちらほらとあるではないか。
彼女はそんなことも気にしないで話しかけてくる。
「あなたもないの?告白したりされたりとか」
「あるように見えるのか?」
「聞かなかったことにしてあげる」
「そうしてくれ」
「そういえば、みのりって好きな人とかいるのか?」
すると彼女は固まって少し驚いたような目をした。
やばい……直球に聞きすぎたか?
それとも不自然だったり……?
俺の言葉にくすっと笑いながら彼女は静かに答えた。
窓からすぅーと風が入り、その綺麗な黒髪から爽やかな匂いを漂わせながら───
「──いるよ」
俺は驚いた。
それと同時に、そんな彼女に見惚れていた。
ーーーーーーーーーー
その会話を機に、俺は目を覚ました。
めずらしく目覚まし時計が鳴る前に起きてしまった。
後から鳴るのも嫌なのでとりあえず設定していたアラームを止めておく。
それにしてもなんなんだろうか。
あの頃は楽しかった、とかそういうやつだろうか。
たしかに、あの瞬間は俺の中でも一番青春を感じた瞬間だった。
といっても彼女とは特になにもなく卒業して、今はどこかの企業に就職したとか。
そうか。
好きな人がいたんだっけか。
その時の俺は少し複雑な気持ちになり。
そこからちょっとずつ話さなくなっていった。
頭も良かったし今頃は給料とかたくさん貰っていて。
もう彼氏とかできてたりして。
そうなのかなぁ。
………
……とりあえず仕事に行く。
何も変わらない毎日。
朝起きたら仕事。
それが終わったら帰って晩飯。
そして寝る。
社会人になって何も変わらない生活。
そんな毎日が続くなか、俺はいつものように仕事に向かっていた。
信号を待って少し進んだとこ。
そこには並木道がある。
春には桜が満開になり。
夏には暑い日々の丁度いい日陰になる。
秋にはなんか、なんだろう、どんぐりとか落ちてるんじゃないか?
とまぁ、置いといて。
冬には……枯れ葉がたくさん落ちてるだろう。
なんせ春から引っ越したばかりで今は夏だ。
まだこの辺の地理には詳しくはない。
話は変わるが、そこの並木道をいつものように通っていると……
目の前に綺麗な黒髪の女性が歩いていた。
雰囲気的に少しみのりに似ているよな……
少し角を曲がったところ。
バックミラーごしに少し目が合った気がする。
話しかけるか?
いや、そんな勇気はない。
そういえば、高校の時も話しかけてくれたのはあちらからだ。
俺からはほとんど話しかけたことがない。
社会人になったんだからこれくらいできるだろう。
とか言われても無理だ。
俺はもしかしたら違うかもと思い躊躇してしまうタイプである。
それに、うん。
迷惑かもだし。
とりあえずこのまま行こう。
話しかけてきたらその時はその時だ。
すると──────
彼女が通ろうとしているとこにトラックが突っ込んでいるではないか。
彼女は俯いていて気づいていない。
どうする。
助けるか。
どうやって。
名前を呼ぶ?
違ったらどうする。
でも今はつべこべ言っている場合ではない。
もうどうにでもなれだ。
俺はその場から走っていた。
咄嗟に足が動いてしまった。
くそ……間に合えっ……!
俺は彼女の背中を押した。
彼女は振り返った。
驚いた顔で。
案の定彼女は「みのり」だった。
よく見たら面影がある。
あぁ。
かわいいな。
くそ……。
あの時告白しておけば良かった。
なんて今思っても仕方ないか。
「み……の…り……っ……」
俺はそのままトラックに轢かれた。
ーーーーーーーーーー
なにか声がする。
みのりだろうか。
あ、そうか。
俺は轢かれたのか。
じゃあ病院とかか?
死んだ、という可能性もあるな。
よくアニメで見るやつだ。
交通事故やらなんやらで死に、異世界に転生するやつ。
異世界に転生すると大体チートな能力とかがあるんだが。
もし俺が転生するならそうがいいな。
そういえば、俺は働き始めてから、仕事漬けで全く好きなように生きられなかった。
俺の就職した会社は残業こそ少ないが、休みがほとんど無かったからな。
まぁそんなことはこの際どうでもいい。
大事なのは俺は死んだのか。
生きているならここはどこなのか。
なんせ今は五感が働いていない。
なにもわからないのだ。
死んだのか?
まぁトラックに轢かれた訳だし。
ありえるが。
死んだ……
そうか。
でも、そうだな……。
死んだってんなら異世界にでも転生したいものだ。
もちろんチート能力も忘れずにな。
欲張りすぎか?
いや、人を助けて死んだんだ。
これくらいいいだろう。
いい……だろう。
うん……。
それにしてもなんなんだ。
この時間は。
何もないし分からない。
そろそろ起きてもいい頃じゃ……
なんだあれは。
白い……光?
なんだろう……なにかの入り口だろうか。
俺はその光に向かって必死に動こうとする。
だけど手も足もない。
だけど、なんだ。
吸い寄せられている気がする。
その時俺は、異世界に転生していた。