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05 最初の目標

「おい聞いたか? 昨日、虎狼の巣窟に出現したAランク魔物をたまたま居合わせた学院生が倒したって噂だぞ」

「Aランク!? そんな実力者がこの学院にいるわけないだろ!」

「……そりゃ第二学院(こっち)にはいないけど、第一学院――それも生徒会の人間なら話は別だろ?」

「ああ……確かにそれもそうだな。誰だったのかは分からないのか?」

「それが名乗らずに去っていったらしい。馬鹿だよな、Aランク魔物を倒した栄誉を受け取らないなんて!」



 キマイラを討伐した翌日。

 第二学院の教室では、さっそく昨日のことが噂となって広がっていた。

 俺の名前が出る様子はなく、カイルたちがうまく説明してくれたようだ。


 まあ、昨日のことについてはもういい。

 俺は今後のことについて頭を悩ませていた。


「うーん、実力者たちと戦うには、まず何をすればいいんだ?」


 昨日の戦いで、Aランク魔物には問題なく勝てることが分かった。

 となると次はSランク以上の相手と戦いたいところだが、そんな強力な魔物が都合よく現れてくれるわけもない。


「仮にダンジョンとかに出現したとしても、第二学院生の俺が無許可で行くわけにはいかないからな」


 昨日のことについてはうまく誤魔化せたと思うが、そう何度も使える手ではない。

 こうなった以上、今の俺に取れる方法は一つしかないだろう。


「やっぱり、当面の目標は第一学院に入ることかな」


 そうすれば勝手にダンジョンに潜っても怒られることはない。

 それに第一学院にはSランク級の実力者も何人か存在するため、彼らと戦う機会も増えるはずだ。

 考えれば考えるほど、妙案に思えてくる。


 では、第一学院に入るには何をすればいいのか。

 一つだけ心当たりがあった。



 それはずばり、年に一度ある進級試験だ。

 第二学院の場合、試験はほとんど形だけで、まず間違いなく全員が進級できる。

 いま重要なのは成績上位者に与えられる、第一学院への転入試験資格だ。

 その資格を手に入れ転入試験を突破すれば、無事に第一学院に入ることができ、様々な強者と戦う機会が生まれることだろう。



 ただ、そのためには一つだけ大きな問題があった。



 ◇◆◇



「はあ? お前が成績上位者は無理だろ、実技の点数が0点じゃな」


 職員室で転入試験のことについて告げると、担任のリームが渋い顔でそう言った。

 彼はヌーイとの模擬戦の場にはいなかったため、俺の今の実力を知らない。

 だからこそ出た言葉だと一蹴できれば簡単だが、一概にそうとも言えなかった。


 というのも、進級試験の順位は学科と実技の二つから決まる。

 割合は学科:実技=3:7。

 学科は問題ないが、俺は実技の点数が低い。

 というか0だ。


 実技は定められた魔術の中から自分の得意なものをいくつか使用し、その完成度で点数がつけられる。

 魔術が使えない俺は、そもそも最低基準に達していない。

 にもかかわらず、成績上位者になるためには9割の点数を取らなくてはいけない。


 この問題を解決しないことには先に進めない。

 しかし俺は、そのための手段があることを知っていた。



「いや、一つだけあるはずです。国立ギルドから学院に提供される依頼を達成するという方法が。それを利用します」



 進級試験には加点方式が存在する。

 国立ギルドから提供される依頼を達成すると、その難易度に応じた点数が加算される。

 Dランクは10点、Cランクは40点、Bランクは80点、そしてAランクは200点。

 学科と実技の合計点が100点なため、Bランク以上の依頼を達成すれば、その時点で主席はほぼ確定することになる。

 今の俺の実力ならば、問題なくBランクは達成できるはず。Aランク魔物も苦戦せず倒せたくらいだしな。



 しかし、俺の言葉を聞いたリームが顔をしかめる。


「Dランク下位の実力しかないお前じゃ、どう考えても無理だろ」

「やってみないことには分かりませんよ」

「ああそうか。なら勝手にしてくれ」

「そうします」


 会話を終え、職員室を後にする。

 リームだけではなく、他の教師たちからの視線も背中に突き刺さる。

 お前には無理だと、そんな意思が込められているような気がした。


「っ」

「? ……ああ」


 別の視線を感じたため見ると、取り巻きと一緒にいるヌーイが驚いたようにこちらを見ていた。

 あの模擬戦以降、俺を避けているようだったが偶然だろうか。

 隣を通り過ぎようとすると、ヌーイは小さく呟く。


「覚えてやがれ、後悔させてやる」


 今この場でどういうつもりか問いただした方がいいかとも考えたが、こいつの実力ではそう大したことはできないだろう。

 そう考え、俺はその場を後にするのだった。

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