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魔術学院の最強剣士 〜初級魔術すら使えない無能と蔑まれましたが、剣を使えば世界最強なので問題ありません。というか既に世界を一つ救っています〜  作者: 八又ナガト
第二章 迫りくる脅威編

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36/63

36 到着

「さすがはお兄様です」


 私――ティナ・アートアルドは瞬時に30人近くの魔術騎士を倒したお兄様に称賛の言葉を零す。

 私にとっては至極当然の光景だったが、他の者にとっては違ったらしい。

 ミアレルト領の魔術騎士たちは、各々に驚愕と歓喜を口にする。


「す、すげぇ、いま何が起きたのか全く見えなかった」

「ああ。でも敵の半数以上がやられてる。ユナ様の友人が倒してくれたんだろう」

「守り切れるぞ、俺たちの町を!」


 おおぉ! と、彼らの士気が上がる。

 この人数相手の魔術なら防ぎきれると考えているのだろう。

 けど、そうする必要はない。

 せっかくお兄様が整えてくれた舞台だ。私も尽力しなくてはならない。


「いいえ、貴方たちは休んでいてください。残りの敵は私一人で無力化できます」

「えっ? し、しかし敵はいま一ヵ所に集って結界で身を守っていますよ? こちらからの攻撃も通じません」

「問題ありません。いえ、むしろ好都合ですわ!」


 結界に守られていると安心している敵陣の隙をつく。

 敵側との距離はおよそ80メートル。

 つまりは私の魔力操作範囲(コントロールレンジ)だ。


 詠唱と共に練り上げられた魔力の起点を、敵の結界の内側に指定する。

 そして高らかに叫んだ。


「――氷嶽(イスベルグ)!」


 結界の内側から生じた氷の山が、一瞬で20人の体を凍らせる。

 予想外の攻撃に敵は為す術がなかったようだ。


「そんな……こんな簡単に倒すだなんて」

「すごすぎる、さすがはユナ様の友人だ」

「ありがとうございます! おかげで、私たちも救われました!」


 危機を脱したことを察し、感謝を告げる彼らに視線を配る。

 そうしている最中も、私の思考を埋め尽くすのは愛すべきお兄様だった。


(ユナ様のことをよろしくお願いします、お兄様)



 ◇◆◇



 私――ユナ・ミアレルトは眼前に迫る脅威に唇を噛み締めた。

 空に浮かびながらこちらに攻撃を仕掛けてくる、二本の角と黒色の羽が特徴的な女性――魔族。

 私の力では、彼女の攻撃を必死に防ぐのが精いっぱいだった。


「ふふふ、いつまで持つかしら!」


 その魔族の女性は攻撃を仕掛けながら、楽しそうにそう叫ぶ。


 隣国の騎士団を携えて、突如として領地に現れた彼女は真っ先に私とお父様を狙った。

 対応が遅れ、私たちはこうして人気のない荒野に連れてこられた。

 その最中にできたのは、なんとかティナに伝達魔術を送ることだけ。

 後はずっと敵の攻撃を防ぐばかりだった。


 途中、攻撃の間が空いたタイミングで私は問う。


「ねえ、貴女はどうして私たちを狙うの!?」

「あら、まだそうして叫べるだけの元気はあるのね。いいわ、それでこそ襲いがいがあるもの!」

「くっ……!」


 一際威力の大きい魔術を、魔心(ましん)で防ぐ。

 お父様は連れ去られる際に攻撃を受け気絶しているため、二人を守れるだけの大きさの魔心を張らなければならなかった。

 魔力消費が激しい。魔心が使えなくなるのも時間の問題だ。



「今のをよく耐えられたわね。いいわ、少しだけ答えてあげる。私が貴女を狙う理由はただ一つ、貴女の力を欲しているからよ」

「私の力……?」

「ええ、そうよ。貴女自身はまだその真価(・・・・)に気付いていないようだけれど――」



 それ以上答えてくれる気はないらしい。

 話しながらも溜め込んだ大量の魔力が、巨大な雷の猛獣を生み出す。

 炎黙の顎が発動していた最上級魔術に似ているが、そこに込められた魔力量が何倍も違う。

 これはさすがに耐えられないかもしれない。


「さあ、耐えられるものなら耐えてみなさい! ――天雷獣(てんらいじゅう)


 そうして放たれた魔術を前に、私は全ての魔力を魔心に注いで衝撃に備える。

 ――だが、衝撃が訪れることはなかった。


 私と魔術の間に、一人の男性が舞い降りたからだ。


「――ルーク!」


 思わず私はその者の名を全力で呼ぶ。

 するとルークはこくりと頷き、


「後は任せろ」


 そう呟き、体を半身にして剣を構えた後、突きを放った。


「グラディウス・アーツ流、三の型――神威」


 彼の剣から放たれた渦巻く暴風と、天雷獣が衝突する。

 轟音と激震を生み出したのち、パアンッとその二つが消滅する。

 互角の威力だった。


「……ありえないわ」


 まさか自分の魔術が防がれると思っていなかったらしい魔族は、これまでの笑みを消し真剣な眼差しでルークを見る。

 そんな彼女に対して、ルークは一言。


「お前が敵だな」


 そう告げた。

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― 新着の感想 ―
魔族は能力を奪う能力でもあるのか?それとも洗脳しようとしてるのか?
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