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魔術学院の最強剣士 〜初級魔術すら使えない無能と蔑まれましたが、剣を使えば世界最強なので問題ありません。というか既に世界を一つ救っています〜  作者: 八又ナガト
第二章 迫りくる脅威編

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32 魔族の出現

 遺跡攻略は順調に進んでいき、今ゴルドたちは最下層にいた三体のグラウンドリザードと戦闘を行っている。

 前衛が四人、中衛が三人、後衛が三人の構成だ。

 俺とティナは後衛のさらに背後から戦況を見守っていた。



「後衛は結界を張り敵の攻撃を食い止めろ! 中衛は水魔法で敵の行動を制限し、その隙に前衛が魔術を叩き込め! 遺跡の中だ、むろん火属性以外でな!」



 ゴルドの指示は確かなもので、順調にグラウンドリザードの体力を奪い傷を与えていく。

 もう少しで一体目が討伐できると思われた次の瞬間、予想外のことが起きた。


「ギュルッ」

「ッ!? 下からだと!?」

「フィオ!」

「――っ」


 遺跡の下に隠れていたと思われる四体目のグラウンドリザードが、結界の内側に出現したのだ。

 グラウンドリザードは前衛にいたフィオに狙いを定め、鋭い舌を伸ばす。

 同じく前衛のカイルが守ろうするが、あのタイミングではとても間に合わない。

 今すぐ援護するべきだか、ここは俺よりも適した人物がいる。


「ティナ、頼む」

「ええ、お任せくださいお兄様――氷縛(アイスバインド)!」


 ティナが詠唱破棄で氷魔術を唱えた瞬間、四体目のグラウンドリザードの直下から氷が出現し、四足を凍らせ動きを食い止める。

 その光景にゴルドやカイルは驚きの声を漏らす。


「なっ、今のは何だ!? 突然足元から氷が……」

「今のはティナさんの援護……? まさかこの距離で発動したのか!?」


 ゴルドたちが驚くのも無理はない。

 魔力操作の練達度にもよるが、魔術というのは普通、自分の一メートル以内を発信源に放つものだ。

 しかし今、ティナは20メートル近く離れていたグラウンドリザードがいる地点を発信源とし魔術を発動した。


 ティナの実力を語るとき、魔力量、威力、詠唱破棄などが出てくることが多いが、それらを差し置いて魔力操作が最も優れていると俺は確信している。

 ティナの魔力操作範囲(コントロールレンジ)はおよそ100メートル。

 それ以内なら、どこであっても魔術を発動することが可能だ。

 この才能には学院長であるアリアですら敵わないかもしれない。


 何はともあれ、ティナの加勢によって再び戦況はゴルドたち有利に傾く。

 それ以上アクシデントが起きることもなく、彼らはグラウンドリザード四体を討伐するのだった。



 討伐後、ゴルドが笑いながら俺たちのもとにくる。



「いやー助かった。二人がいなかったら合同パーティーが全滅するところだったよ。Bランクになれるのはまだまだ先みたいだ」

「確かに緊急事態への対応はもう少しどうにかできたかもな。けど連携などは十分に機能していたし、改善次第ではすぐにでもBランクに上がれるだけの実力があるように感じたぞ」

「そうか? だったらいいんだけどな、ははは!」



 俺が言っていることは嘘ではない。

 ゴルドたちもカイルたちも本当にBランクに匹敵する力はあると感じた。

 仮に問題があるとすれば、この場に至ってもまだ、一人だけまともに戦闘に参加していなかった人物がいるということだ。


 それはゴルドも気付いていたのか、ローブを羽織っている男に近付いていく。



「おいセマーカ、新入りだからって遠慮しなくていいんだぞ。お前がもっと積極的に戦えるようになったらBランクになるのも夢じゃねぇ」

「…………」

「おいどうした、何とか言えって。別に責めてる訳じゃねぇんだからよ」

「……うるせぇんだよ、お前みたいな雑魚、お呼びじゃねぇんだ」

「……は? がはッ」



 突然、ゴルドの体がその場に崩れ落ちていく。

 残っているのはセマーカの伸ばされた手だけ。

 その手の先は赤黒く染まっていた。

 ――――血だ。


「――!」


 瞬間、俺は反射的に地を蹴った。

 倒れていくゴルドの体を掴むと、瞬時に後退する。

 そして叫ぶ。


「ティナ、俺とアイツだけを残して結界を張れ! そしてゴルドを治療だ!」

「ッ、分かりました!」

「ゴルドさん!? ル、ルークさん、いったい何が起きて……」


 さすがにティナは現状を理解し動き出すのが早かった。

 カイルたちが呆然と立ち尽くす中、俺とセマーカを除いた皆が入る結界を張る。

 ゴルドの腹が貫かれていたが、ティナなら治せるはずだ。


 あちらはティナに任せた以上、こちらは俺の役目。

 正体も目的も不明だが、ひとまずセマーカの無力化を目指す。


 剣を抜き構えると、セマーカは肩を震わせ笑い始める。


「はっ、ははは、ははははは! 相変わらず滑稽だなぁ、クズルークは! そんな! おもちゃで! 俺を倒せるはずねぇだろうがよおっ!」

「クズルーク? それにその声……まさか」


 俺の疑問に答えるように、セマーカはローブを投げ捨てると顔を露にする。

 そこにいたのは間違いなくヌーイその人だった。

 ただ、決定的に違う点がある。

 それは――


「――ヌーイ。なぜ、お前が魔族になっている」


 ――頭から伸びる、一本の黒い角だった。

 すなわち魔族であることの証明だ。


「そんなもん、決まってんだろうがっ!」


 数日前までとは比べ物にならない量の魔力を顕示するかのごとく垂れ流すヌーイは、続けて叫んだ。



「クズルーク! お前をこの手で殺すためだぁ!」



 そうして振るわれたのは、ゴルドの腹を貫いた硬質な腕。

 突如として眼前に迫った脅威を前に俺は、


「魔族なら四肢を切り落とした程度では死なないな」


 情報収集をひとまず後に回し、剣を振るう。

 四つの手足が宙に舞った。

 首も落とせただろうが、さすがに死ぬので止めておいた。


「……は?」


 頭と胴だけになったヌーイが地面に落ちる。

 その哀れな様を見下ろしながら、俺は剣をヌーイの喉に添える。


「じゃあ、色々と話してもらおうか」


 ヌーイは目を丸くして、まだ現実を呑み込めていないようだった。

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― 新着の感想 ―
全員魔術師なのに前衛中衛後衛で分ける必要あるか?魔術師の基本戦法は距離を取ることだから前衛とか必要ないと思うが。 まさに噛ませだったなw
[一言] 「魔族なら四肢がなくなったぐらいでは死なないな」 ただのコスプレだったらどうするつもりだったんだろう まあパーティメンバーのはずのゴルドに攻撃してる時点でアウトだとはおもうけど。
[一言] 名前の通りのカマセっぷりですね
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