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三. 仕事の流儀

ちょっときついかも?

書類が一枚もなく、ホコリすらない机。そして、椅子に座り机に突っ伏している男。

彼の名はハビエル。この『組織』では一番の腕をもっているらしい。まったくそうは見えない。


コンコン

「失礼します。おや、ハビエルさん。余裕そうですね?」


そこに禿げた男が入ってきた。



「な! いや、寝てないですよ。いやだなぁ、もう」


「そうですか。では、暇そうなハビエルさんに仕事がありますよ」



この男、まず頭に目がいいてしまったが体格が良く、いかにも強そうな感じだ。



「うげっ、めんどくさいなぁ」


「はい。ではごゆっくり」




ハビエルに聞いてみた。

この仕事に不満はないのか、と



「不満?ありまくりですよ。俺はもっとバーン、ドーンがしたいんですけど書類仕事がありますし」



では、なぜこの職場に?



「──やっぱり、『人助け』ですかね。人助け最高!社会貢献最高!」



そのような人にみえませんが



「これから知っていくんでしょう?お互いのことを」







ハビエルの朝は早い。

毎朝、欠かさず銃の点検をする。



「朝っていうのは一日の初めで、その日どういう風に過ごすかが朝の動きで決まっちゃうんですよ。だから、俺は仕事道具ってのを整備することで気持ちを切り替えてるんですよね。仕事するぞって感じで」



銃を携帯していると聞いたことがありますが?



「はい。自分の身を守るための最低限度の戦力ですからね」



他にはどんな武器があるのですか?



「おや、興味ありますか?そうですね。いろいろありますよ。私みたいな凡人は様々な武器が必要です。毒、魔術、アイテムなどなど。何がどこで役立つかわかりませんからね」



ですが、すべての武器を持ち歩いているようには見えませんが。やはり、一貫して役立つものを持ち歩いていると思うんです。



「そう。それが銃ですよ。大抵私が狙われるときに来るのは人間です。血を啜る化け物でも、深海魚みたいな化け物でもありません。照準を合わせて、引き金を引いて、終わり。簡単でしょう?」






何を読んでいるんですか?



「これ?妖怪大全(超上級者向け)〜日本の常識〜ってやつでね。あとで日本っていう極東に行く予定なんだけど読んでおきたくて」



私がその本を覗くとそこには大量の白いページが有るだけだった。



「いや、君にはまだ早いかな。妖怪大全(初心者向け)がいいよ」



ハビエルは立ち上がり一つ本を手に取ると私にくれた。



「それ、あげるよ」





「よし。そろそろ出かけるか」



仕事はいいのですか? さっきも本を読んでましたし



「仕事はやってるって。大丈夫、心配すんな」



彼がやってきたのはビルが立ち並ぶ中にひっそりとあるカフェ。店名は見えなかった



カランカラン


「いらっしゃい。ってなんだお前か。もう切らしたのか?」


「いや、飯。飯を食いに来た。あ、お冷2つくれ」



入ると大人しそうな女性が一人で店番をしていた。ハビエルとは知り合いの様子だ。女性は店の奥へと入っていった。


彼女とは知り合いで?



「ああ、そうさ。“田中”さんとは結構長い付き合いだ。まぁ、愛想は悪いがいいやつだよ。お前にもいただろ、そういうやつ一人くらい」



誰もいませんよ。だからあなたをついて回ってるんです。『組織』に相談したとき、もし仕事ができる人が女性だったら私はついて回ってなかったかもしれない。ですが、あなたなら



「そうか。話は変わるが、お前にあげた本。あれの感想を教えてくれ」



ああ、あれですね。まぁまぁ面白かったですよ。でも、大全と言っておきながら全然妖怪はいませんでしたし、対処法も載ってませんでした。まぁ、でも、読んでて楽しかった。わくわくした。そんな感じです。



「……やっぱり。じゃあ後で他の本もやるよ」





こんな体験はしたことなかった。誰かと出かけ、その人生に触れたことは。私は何をしているのだろう。



「よし。今日はこんなもんだな。帰るぞ」



はい。



「ちょっとそこのお兄さん。あなた、悪い霊が憑いてるわよ」



ん?



「いやー。そういうのいいんで」


「このツボを買いなさいよ。安くするわよ。なんと、すべての苦しみから解き放たれる!」





「もうほんとにいいんで」


あの、私に布教はしないんですか?


「お兄さん。いいからいいから。突然の幸福で疑うのもわかるわ」


あのなんかおかしくないですか?


「お兄さん。


ハビエルさん?


「お兄さん。


ハビエルさん?


「お兄さん。

ハビエルさん?

「お兄さん。

ハビエルさん?

「お兄さん。

ハビエルさん?

「お兄さん。

ハビエルさん?

「お兄さん。

ハビエルさん?

「お兄さん。

ハビエルさん?

「お兄さん。

ハビエルさん?

「お兄さん。

ハビエルさん?

「ハビエルさん?

ハビエルさん?

「ハビエルさん?

ハビエルさん?

「ハビエルさん?

ハビエルさん?

「ハビエルさん?

ハビエルさん?

「ハビエルさん?



「「「「「ハビエルさん?」」」」」



道を往く人すべてがハビエルの方を向き、ハビエルを指差す。その人達に理性の色は見られない。ハビエルはそれらがもう元に戻らないことを知ってハビエルさん?



「くそが!」


計画は失敗。ハビエルさん?もう穏便に済ますことはできない。こんなだからこの仕事ハビエルさん?いや、今はハビエルさん?



「うるせぇ!頭がおかしくなるだろ!」



万が一を考えて事前に対策を取っていたがあのクソババアのせいで



「うるさいって言った」

「今、うるさいって言った」

「悲しい。悲しい。悲しい」

「私は知りたいだけなのに。私は知ることだけしかしないのに」

「どうして、どうして」

「しりたいよぉ。しりたいよぉ。おしえてよぉ。あなたのこと。もっと。ずっと。どこまでも」














「永遠に」









ハビエルは生まれたとき金持ちで優しい両親がいた。クリスマスにはいつも旅行に行った。病弱な妹がいて、家族みんなで面倒をみた。元気な妹と一緒にバーベキュー大会をするのが彼の生きがいだった。今では、大学生の頃知り合った田中とカフェで働いてる。『組織』という場所でも働いてるけど副業を認めている。意外とホワイトだとハビエルは思っている。ハビエルは実は結婚していて、子供もいる。いつも子供の安全のために戦い、自らを危険に晒す。それが恵まれた生まれをもつ自分が送る、すべての子供達に平等に与えるプレゼントだと思うからだ。




……ちがう


ハビエルは孤独だった。アメリカのスラムで育った彼はゴミを漁って暮らしていた。彼の言葉遣いや手の器用さはそこで培われた。その能力を買われた彼は『組織』に拾われ、頭角を現していった。ハビエルは戦ううちに自分がスラムにいたときさえ守られていたのだと実感した。人間の住む世界はひどく脆い。そして、ハビエルが『組織』で最も腕が立つようになったとき思ったのだ。私が世界を守るのだと……ちがう


ハビエルは中国で生まれた。中流階級で生まれ、名前のせいでいじめられた。西洋のスパイと罵られた。そして、家族でアメリカに渡った。しかし、そこでもハビエルは白い目で見られた。そんなハビエルがたどり着いたのは『組織』だった。そこでは同じ人間たちが人間のために戦っていた。そこに人種も国もなかった。……ちがう

ハビエルはスイスで生まれた。そこでの訓練を境に自らを危険に晒すのが好きに……ちがう

ハビエルは日本で生まれた。武士……ちがう

ハビエルは両親がいた……ちがう

ハビエルは妹がいた……ちがう

ハビエルは子供だった……ちがう

ハビエルはイケメンだった……ちがう

ハビエルはモテモテだった……ちがう

ハビエルは超ウルトラすーぱー頭が良かった……ちがう

ハビエルは頭が狂って、、、るほど天才だった……ちがう



なに


これ



「だから言っただろ。俺は凡人だから対策をとってんだよ」


たいさく


「そう、お前が知識に寄ってくる化け物っていうのは分かってた。だから、知識を詰め込んでやったのさ。良かっただろ。ほら、笑えよ。ほしかった俺の情報だぜ」



ハビエルは拷問された。それはまず指から始まった爪を剥がし、放置させ、蝿が集るのを待った。

ハビエルは目の前で家族を殺された。優しく、よく働いた父はバットで頭を殴られた。気が利いて、頭の回る母は男に連れて行かれた。病弱で美しい妹は目の前で

ハビエルは化け物のおもちゃとなった。そいつは人の心を知らなかった。ただただ、音の出る大きなおもちゃがほしかったのだ。

ハビエルは祟られた。その地域のすべての動植物はダニエルを殺そうとした。アリは噛みつき、つるは絡み、鳥はつついた。小さな動物たちの力はついに邪悪な生き物を殺すに至ったのだった。

ハビエルは呪われた。

ハビエルは洗脳された。

ハビエルは飼われた。

ハビエルは







おえぇぇ


「お前みたいなやつとはもう経験がある。お前らは俺らに情報を押し付けて来るくせに情報を求める。情報を求めるくせに大量の情報を送られるのが辛い。こんな感じだ。ほら、もっとくれてやるよ」



まず最初は飯を絶った。飯がなく、逃げようとする気力も力もなくなった。次は拷問だ。とにかく水を飲まされた。水を飲まなければ息ができないようにしてあった。他にもゴキブリ、ネズミ、ムカデ、、、とりあえず人間が嫌いそうなものを入れた箱をハビエルに被せた。目にあたるネズミの尻尾、耳で蠢くゴキブリ、鼻に入る糞。自分の感覚の良さを呪った。彼と親しかった者を目の前で辱めた。友達なんていないほうが良かった。



もう、


いや。



「ん?」



ハビエルは展示されていた。頭だけだが生きていた。見ることも感じることもできないが、ずっと生きていた。そしてこれからも生き続けるだろう。それが展示されるということだ。



もう、いらない



ハビエルは明日も明後日も死に続けるだろう。それが敗者ということだ。ハビエルは負けたのだ。だから、明日も明後日も負け続ける。負けて負けて、もう、勝てない。



もう、知識は



もう、その世界には何もなかった。ハビエルはそこに住み続けるのだ。なにもない。ただ、ハビエルという感覚だけがある世界で、永遠に




いらない


やっと終わった。これだからこういう仕事は嫌なんだよ。銃を撃ってバーンで終わりじゃないし。



「もしもし。はい。終わりました。後処理よろしくおねがいします」



あ、そうだ。



「約束守らなくてすまんな。本、返してもらうぜ。こいつ結構高いんだよ」

今回は化け物退治ですね。

妖怪みたいな感じです。本来こういった相手は刺激せず、相手の欲望を解消してあげれば穏便に終わります。この方法は「妖怪大全(中級者向け)〜これで君も妖怪バスター⁉〜」にも載ってるくらい簡単で後腐れない方法ですが、今回は神の導きにあったおばあちゃんのせいで強行突破となりました。ダニエルがカフェで色々質問してたのはこれを狙ってたからですね。かしこい

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