「冬のお空のお話」
❅「冬の童話祭2023」参加作品です。
「ねえねえ、知ってた?」
そらちゃんが楽しそうに、ぬいぐるみに向かってお話をしています。
そらちゃんは最近、自分と同じ名前の“空”に興味津々です。
朝起きては、お空を見上げて「今日の天気は“晴れ”!」と確認しているのです。
将来、テレビに出る気象予報の“お天気お姉さん”になるのがそらちゃんの夢でした。
「熊五郎、あのね。このわたしが暮らす日本には“四季”って季節があるのよ」
熊五郎とは、そらちゃんの大のお気に入りのくまさんのぬいぐるみのことです。
熊五郎とそらちゃんは大親友です。
なんでも言い合える、そんな仲です。
だから、そらちゃんが“お天気お姉さん”に絶対になることを決めたのを初めて話をしたのも、熊五郎でした。
「熊五郎は知らないだろうけれどね、そら、気付いちゃったの!」
最大の秘密を告白するかのように、そらちゃんは声を小さくしました。
「季節によってお空って違うの!」
そらちゃんにはそこで、熊五郎が「?」と首をこてんと傾けた様に見えました。
「春はね、空の色が綺麗な水色でね、何だすっきりするの! 夏はねお空の色がとっても濃くなるの。夏は暑いもんねー。秋はね。お空の色が遠いの。どこか行っちゃいそうなの。それでね」
そらちゃんの話は続きます。
「冬のお空はね」
と、そこでそらちゃんを呼ぶ声がしました。
「空ー、本屋さんに行く約束の時間よー」
お母さんの声です。
そらちゃんは元気にお返事をしてから熊五郎に向かって笑顔で言いました。
「あのね、これから本屋さんに行ってさっそく“お天気”の本を買ってもらうの! 今から一生懸命お勉強するんだから!」
楽しそうにそらちゃんはお母さんと手を繋いで出掛けていきました。
「そらちゃん、偉いね」
熊五郎は思いました。
声にも出しました。
熊五郎はそらちゃんの大親友ですから、もちろん夢を応援します。
熊五郎にも夢がありました。
お天気お姉さんになったそらちゃんの隣に居ることです。
うふふ、と熊五郎は笑いました。
そして、本屋さんから帰ってきたそらちゃんに「冬のお空」のお話の続きを聞こうと待っているのでした。
〖おしまい〗
お読みくださり、本当にありがとうございました!