夏祭り ― 初恋 ―
夏祭りにて逢いましょう
浴衣に下駄でカランコロン
愉快に伽藍で騒ぎましょう
祭り囃子で囃し立て
狐と獅子が舞い跳ねる
篝火揺らめく 夏の宵
駆け寄り振り向く名を呼んで
すれ違いざま転んだら
袖すり合うも多生の縁
山車を曳いては練り歩き
裸足でついてまわりましょう
おかめやひょっとこ
寄ってらっしゃい
みてらっしゃい
洒脱な口上 豊穣祈願
今宵の良い子は余韻に酔って
笛や太鼓で踊りましょう
提灯ともした熱に浮かれて
手からこぼれた紙風船
野望に湿った手で握った手
やけに高鳴る胸の鼓動
鼓動が誤作動 起こさぬうちに
屋台の明かりに引き寄せられた
飛んで火に入る夏の虫
薄紅の唇に 密かに差し出す林檎飴
差し出した娘は誰だっけ?
天然記念の添加物
あの娘の選んだ甘い密
恋が羽化され浮かされた
馨りにむせんだ蜜の味
天下分け目の野望は胸で
今宵今夜のこの後に成就
騒ぎの蔭で夜陰にまぎれ
巻かれた帯の 夏蜜柑
祭りにまかせた 夏の秘め事
七夕の花束 その手に束ね
あなたの瞳に彼方の光
映る夜空の銀の河
宵に酔わせて
夜が更けるなら
わたしの瞳に此方のあなた
閉じた瞼で察した唇
夏より熱い胸の篝火