邂逅編 1-8
俺と堀内が校門を出たときには、時刻は5時半を過ぎていた。
「じゃあ、コンビニでも行こっか。」
「任せる」
先程の失態がトラウマとしてちらつきながら俺はなんとか答える。
「うん!じゃあ、出発だあ!」
堀内が歩き始めたので、おれは彼女の後ろをついていくことにした。
俺たちは今、学校から⒑分くらいの青いコンビニにいた。道中はスマホが食堂にあると考えた経緯を聞かれたため、その説明をしたり、春学期明けのテストの成績について話したりしていた。さすが陽キャ、会話の話題のレベルが高いぜ。まあ、俺のレベル低すぎるだけかもしれないですけど。俺のコミュニケーションがおかしいって…弱すぎって意味だよな?
コンビニ内は帰宅時のためか、少し混雑していた。
お礼くらいさせてと彼女は欲しいものを聞いてきたので俺はココアをお願いした。正直なんか食べたかったが、人の金である。贅沢和言わないでおこう。いた仕方なしおかし。
しばらくすると、支払いを終えた堀内が帰ってきた。ゴチになります。
「なんか、ありがとうな。」
「いいっていいって、これはお礼の気持ちだから。」
手をブンブンしながら彼女は言った。そして、「はい。これ。」とカップを俺に渡した。
俺は、ドリップマシンに貰ったカップをセットしココアのボタンを押し、マシンの様子を眺めていた。この機械が自動で動いている様子を見るとテンション上がるのは俺だけではないはず。
こうして出来上がったココアを取った時、堀内は隣でドリップマシンからドリンクの入ったカップを取り出した。
「堀内はなに頼んだんだ?」
「あたしはね、キャラメルマキアートにした。」
まじかよ。此奴、この歳でコーヒ飲めるのか・・・。おそらく大量のキャラメルと砂糖で甘くして飲んであるのだろう。それでもコーヒー飲めるって凄いな。いや、むしろあんな苦い汁を飲むやつの方がおかしい。そうに違いない。決して俺は弱いわけない。うん、きっとそうだ。そんな感じで俺は衝撃を受けていた。
「カロリー過ごそうっすね。」
動揺のあまり、わざわざ言わなくてもいいことをつい口にしてしまった。
「ちょっと! 買った後に、カロリーの話しないでよっ! そんなんだからクラスでもボッチなんだよ⁉」
どうやら地雷を踏みぬいたらしい、堀内は顔を真っ赤にしている。彼女は怒涛の勢いで反撃してきた。
「いや、俺がボッチであることは関係ないだろ。」
俺は冷静に反論すると、頭が冷えたのか
「ゴメン。確かにちょっと言い過ぎた。」
と堀内はすぐに謝罪をした。どうやら素直に謝れる子らしい、いい子じゃないか。
「いや、俺もデリカシーなかったわ。スマン。」
俺も謝ると、少しの間沈黙の時間が流れた
しばらくの間、二人してコンビニの外壁にもたれながら出来上がったドリンクを飲んでいた。
沈黙に耐えかねたのか堀内は新しい話題を出した。
「えっと、そういえば、榎本くんって頭よくてすごいよね。国語と英語なんて九十点超えてるんでしょ⁉やっぱり、頭がいいから私のスマホを見つけることができたのかな?」
「いや、そんなことないぞ。多分、冷静になったら誰でも気づけたことだと思う。」
実際そうだと思う。正直、今回は堀内が焦るあまりに気づかなかっただけで。答えとしては単純なものだった。少なくても、俺じゃなくてもだれか第三者に相談すればいずれは気づいて解決はできたに違いない。
「ううん、そんなことない。榎本君はすごい!すごいよ!」
「あ、ありがとう。」
いざ、面と向かって感謝の思いを伝えられると照れ臭いものである。俺は彼女の視線から逃れるようにコップの中のココアの水面を見ていた。そしてちびちびと飲んでいた。
俺たちは他愛ない会話をして過ごし、しばらくして二人ともそれぞれのドリンクを飲み終えた。カップをごみ箱に捨てた後、特にこれ以上用がないため「じゃあ帰ろっか。」といった流れになった。そして俺たちは一緒に駅のある大通りの方へと向かった。その時の会話の内容としてはやれ小テストがどうの、英語の課題がどうのといった差し障りのない無難なものである。まあ、それ以外のことを聞かれても困ってたし、よかったよかった。




