第二話:王都
「ところで、シーカーさん。そろそろ僕の質問に答えてくれませんか」
―おそらく中学生くらいであろう彼女に敬語を使うというのは何とも不思議な気分だ。だが、ここがラノベでおなじみの異世界なら、年齢不詳のヒロインというものが存在する。彼女が果たしてヒロイン枠なのかは全くの謎だが、敬語を使っておくに越したことはないだろう。
そんなことを考えていたので、最初の質問は、
「あなたはいったい何歳なんですか?」
「最初の質問がそれですか」
―何だろう心底あきれられているような気がする。
「もっと他に聞くべきことはなかったんですか?」
―うっ、それを言われると...
「それに、女性に年齢を聞くんですか?」
―かはっ(吐血)。
「常識がないんですね」
―ぐふっ、これは致命的な一撃だった。
女子中学生に常識がないとなじられる教師。かなりシュールな絵面だ。
―この世界でも女性に年齢を聞くのはダブーであるようだ。
「すいません。では、まずここがどこか聞くことにします」
「ここは、”ケミュリアの森”と呼ばれる場所です。ケミュリアは、日本語にすると”繋がり”となります。実は、今日この時にあなたのような方が現れることは王国の空間学者たちによって予言されていたんです」
―だから彼女はこの場所にいたのか。
「シーカーさん。その空間学者なら、僕が転移してきた理由や変える方法を知っているかもしれませんね」
「ええ。ですからあなたを見つけたらすぐに王都へ連れて行くように言われているんです」
―ちょっと待て、僕が目を覚ましてから軽く2,3時間は過ぎているような気がするが...。
すると、彼女も僕と同じ考えに至ったのか急に顔を青ざめさせた。そして、震える声で
「ええっと、神門さん。すいません。質問の続きは王都についてからということでお願いします」
すると彼女は、いきなり何か呪文(?)のようなものをつぶやき始めた。彼女が一言一言を紡ぎだすたびに、周囲の空気が意思を持ったかのように吹き荒れ始めた。
「………ハイ・エンド・マニュアライズ!」
彼女がそう叫んだその時、周囲で荒れ狂っていた空気が一瞬動きを止め、僕たちの体を枯れ葉を吹き飛ばすがごとく吹き飛ばした...。
―ん?ここはどこだ?
一瞬にして吹き飛ばされた僕は、気づけば広場のような場所にいた。呆然としていた僕は、こちらの様子をうかがっているであろう民衆のざわめきによって、一瞬にして現実へと引き戻された。
「神門さん、大丈夫ですか?」
すると、背後からシーカーさんの声が聞こえてきた。
「ええ。何とか大丈夫です」
振り返った僕はシーカーさんにそう答えた。そして、
「神門さん!ここが王都・ロスカルダです」
そう言われ僕は初めて、自分がいつの間にか王都に到着していたことを知った。