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幼少期③


あの日の夜、私は異世界転生物語の小説にハマり

「絵付きで見たい!」というふとした好奇心から近くの本屋で目に付いた転生物語の漫画を買っていた。


普通の漫画本となんら変わりないはずなのだが、表紙がやけに煌びやかでどことなく凹凸がある手触りをしている。ほかの漫画よりも一回り大きいのか、B5サイズくらいでやけに厚みがあった。


仕事終わりで疲れていた私は特に何も考えず見た目の艶やかさに惹かれ、

【異世界転生コーナー】という大きいポップの下にあるその本を選んだ。


家に帰るまで読むのを待ちきれなかった私は、バスに乗り込むと同時に本を読み始めた。


そしてその次の瞬間、何かしらの強い衝撃が私に襲い掛かってきた。

と、同時に視界が大きく傾いたのを憶えている。







・・・そこで私の記憶は途絶えた。




つまり、


私はその瞬間に命を落としたのだろう。





そして、その時手にしていた本。


イラストというよりは生写真なのではないかと思うほどに美しく、ひどく目を奪われた最初のページ。



今世の私、ユリスティア・クロレンティーヌの名前を口にし、断罪を公言するイヴラスティード殿下の姿があった。



そう、最初の1ページ。

そう、たったのワンシーン。




「・・・ちょっと待ってほしい。私あの本、そこしか読んでないんだけど!!」



たった最初の1ページでいったいこの世界の何がわかるというのだ。



あのページから読み取れる情報といえば、

・ユリスティア・クロレンティーヌは婚約破棄を告げられ断罪される

・断罪を言い放つのはイヴラスティード殿下

・服装はこの国の学生服を着ているので大体13~15歳

・殿下の隣に誰かいる


ざっとこんなものだろうか。


この国の貴族は13~15歳の間に王立貴族学校に通えることになっている。

但しそれなりに掛かるものは掛かるので、貴族の中でもそれなりに裕福なものに限られていた。



そして一番気になる項目、殿下の隣に誰かいる。



そう、同い年くらいの女の子が眉を八の字にしてこちらを眺めていたのだ。



なんの本だったのか、題名も作者もまっっったく解からないが、

今まで読んできた他の異世界転生悪役令嬢物語たちが語り掛けてくる。



身分が高い侯爵令嬢に転生し、断罪シーンがあるならばそれは、



私、ユリスティア・クロレンティーヌが悪役令嬢だということを。






そう、転生しちゃったら悪役令嬢。


ヒロインではなく悪役令嬢までがもうデフォルトよね!


ヒロインに転生しちゃった☆というのもあるし実際手を伸ばしたこともある。

しかし生憎と私はヒロイン位置に立って蝶よ花よと可愛がられるのは性に合わなく、

すぐに読まなくなってしまった。


捻くれてるからね。



だってあんな純粋無垢で

「悪いことはダメっ絶対!」って前世のどこかの看板みたいな正義感。

読んでて鳥肌が立ってしまった。


捻くれてるからね。




そしてきっと多分、間違いなくほぼ100%の確率で、


殿下の隣にいる女の子がそのヒロイン的な存在なのだろう。




「まさか自分がこんな経験するなんて思いもしなかったなぁ」


ため息しつつも自分の大好きな物語のパターンで、一瞬ニヤけそうになる。



だがしかし、所詮は物語として嗜むのが好きなのだ。


実際に苦労しながら運命を変えていくなんてとてもじゃないがそんな重労働、元アパレル店員にやらせないでほしい。無理だよ。


「しかもヒント少なすぎじゃない??」


いったい誰がどんな意図をもってこんな中途半端な事をしたのか。

神様がいたら文句を言いたい。


せめて物語をすべて知ってる人でお願いします!!と。


もしくは


本の中身を全部教えてください!!!と。





「仕方ない。折角新たな人生をおくれるんだから、せめて死ぬのは回避したいよね」


思考を放棄しかけた頭を再び稼働させ、

何をどうすればいいのか考え始める。



うん、とにかく婚約は阻止しよう。そうしよう。



「あとはもしもの為に生きる術は持っておかないとね。

 騎士の家系だし、できうる限りの剣術と体術も学んで・・・」



最悪この国を出て生きていかなければならない。


そのために必要な護身術、そしてほかの国の知識や言葉、公爵家という立場を利用して得られる情報を

私は片っ端から詰め込むことにした。

物語がやっとうごきはじめます・・・!!

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