幼少期②
「おい、ユリスティア!お前木から落ちたんだって?
王家に仕える騎士団長の娘なのにざまぁねえな!!!」
「全くだ。女とはいえ筆頭騎士団を統べる公爵家の娘なら、
寝る間を惜しんで己を磨き上げるくらいしたらどうだ。」
・・・・いったいいきなり何事だろうか。
無礼にも侍女の案内も無視し、
勝手に部屋までやってきて笑いながら大声で話しかけてきたのはユリスティアの幼馴染、フェリシアン。
赤い髪と、とても綺麗なピジョンブラッドのような瞳。
彼もこの国の数少ない公爵家の子息である。
「へっ、まぁ元々騎士としての才能なさそうだからな!お前。
なんなら幼馴染のよしみで俺が優しく鍛えてやってもいいぜ!ついて来れるならな~!」
ケラケラと笑いながらすごく馬鹿にしてくる。
なるほど、物凄く自信家の坊ちゃんであるらしい、、
そしてその後ろでフェリシアンとは対照の空気を纏い、
落ち着きを払った少年、
この国の第二王子、イヴラスティード殿下。
窓から差し込む日光に反射してキラキラ光る、シルバーブロンドの髪
そしてこの国の王族の証である金色の目。
精神年齢アラサーの私ですら息を呑んでしまうほどに
未目麗しい少年がそこに立っていた。わーお。凄い美形。
そしてどこかで見たことがある。
「・・・おい、どうした?」
気付けばイヴラスティード殿下は私のすぐ目の前まで来ていたらしい。
「いえ、、、
お二人とも、ご心配おかけして申し訳ありませんでしたわ」
私は冷静に対応をする。
正直言いたいことは沢山あるがそれどころではない。
「ふむ・・・目が覚めたとは聞いていたが、まだ本調子じゃないみたいだな。
また頃合いを見て来るとしよう、行くぞフェリシアン」
「はぁーい殿下!!
おいユリスティア!!俺の助けが必要な時はいつでも呼んでいいからな!
特別に俺が守ってやってもいいぜ!!」
ジッとしていられないタイプの子供なのか、言いたいことを言い終わると
殿下を置いて走って先に行ってしまった。
「はぁ、もう少し落ち着けないのか。。
ユリスティア、木に登れずとも、剣を使えずとも、それでも侯爵令嬢として出来ることはあるだろう。
日々研鑽することだ」
イヴラスティード殿下は何を考えてるのか分からない表情で私に一言言い放ち、
フェリシアンの後を追い駆けていった。
・・・嵐かな?と言いたくなるくらいに二人は突然来て、そして早々に帰っていった。
元々二人とも剣の稽古をしに行くところで、ついでに私の様子を見に寄ってくれたらしい。
優しいのか、意地悪なのか。
この国の首都には騎士団が3つある。
一つ目は左翼の騎士団[アクアウィング]
二つ目は右翼の騎士団[レッドウィング]
そして三つ目は王宮近衛騎士団[アイアンウォール]
この国のエンブレム、『グリフォン』が象徴だ。
我が公爵家の現当主、もとい私のお父様は左翼の騎士団[アクアウィング]を束ねるもの。
そして幼馴染のフェリシアンは右翼の騎士団[レッドウィング]を束ねる家の子息。
私たちは二人とも、王家に仕える騎士の家系に生まれてきている。
第二王子含めて3人とも同い年な事もあり、いずれはユリスティアもフェリシアンも殿下に仕える身として
「幼いうちから信頼関係を築ける様に」と
稽古をはじめ、それなりに仲良くしていた。
が、
ユリスティアが稽古に乗り気ではなく、徐々に参加が減っていってしまった為
こんな風に、少し関係が気まずいのかもしれない。
うん、よろしくない。大変よろしくない。
さっきは冷静に対処できたが脳内は大分炎上していた。
先ほどお見舞い?に来てくれたイヴラスティード殿下、
まだ幼くあどけないお顔だが、あの光り輝くシルバーブロンドの髪と金色の目。
それを見た瞬間、私は誰が前世でユリスティアの名前を呼んでいたのかを思い出した。
旅行先でも何でもない。
あれは、前世からしたら仮想の物語でしかない。
誰が描いたものかも分からない。
どんな題名だったかも思い出せない。
あれは前世での記憶が終わる直前、読んでいた一冊のイラスト集のような本。
その最初の一ページ。
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