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オタ女の恋は前途多難~だって好きになったのはダメ男なんです~  作者: 長岡更紗


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30.相談したい

ブクマ23件、ありがとうございます!

 出てきたはいいが、どこに行こうかなぁとルリカは途方にくれた。

 ファミレスで夕食を取りながら、テッペイはなにをしているだろうかと考える。

 詩織といい感じになっているのか、それともバレーの練習日だから体育館に行ったのか。

 しばらくそんなことを考えながら、ファミレスで時間を潰していたが、さすがに粘るのが申し訳なくなって外へと出た。

 帰省した時の荷物を家に置いておくべきだったと思いながら、大きめのバッグを抱えて移動する。

 ブラブラと当てもなく歩いていると、ふと噴水が目に入って、ルリカはその縁に腰を下ろした。

 疲れたなぁとボーッと周りを眺める。すると近くにいた女の子が、男に声を掛けられているではないか。どうやら、ナンパをされているらしい。

 ふと後ろを見ると、また別の人がナンパをされているようだった。もしかしたらここは、有名なナンパスポットなのかもしれない。

 気合の入った女の子たちが次々にやってきては、そのたびに誰かに連れ去られていく。

 けれどもルリカはその間、誰にも声を掛けられることはなかった。

 綺麗な女子から売れていくのは、当然だろう。きっと詩織なら、一番に声を掛けられるに違いない。

 声を掛けられたら掛けられたで困るのだが、誰にも相手にされないというのも悲しいものだ。

 逆に考えると、テッペイはよくこんなルリカを相手にしてくれているものである。


「あいつは……女なら、誰でもいいんだもんね……」


 声に出すと、グスッと泣けてきた。

 ルリカはテッペイの大事な金づるだ。だから嫌でも相手をしてくれているだけ。別にテッペイは、ルリカでなくてもいいのだ。ヤらせてくれて、お金をくれる女なら、誰でも。

 思えばルリカは、テッペイに好きと言われたことがない。

 いや、正確にはある。何度も好きと言われている。けれども、それは本当の気持ちがこもった好きではなく、どの女の子にも当てはまる言葉なのだ。


 虚しさを抱えたまま、そこでしばらく座っていると、女の子の姿がルリカ以外いなくなっていた。

 少し遠くでルリカを眺めている男たちが、「お前がいけ」「いや、お前が」と押し付け合っているのが見えて、ルリカは立ち上がる。売れ残り女に声を掛けるのは、嫌なものだろう。

 どこかのホテルに泊まろうかとも思ったが、誰でもいいから今の自分の胸の内を聞いてほしい気持ちの方が(まさ)った。

 どうしようかと考えたあげく、体育館から十分ほど離れたコンビニに入って、ひたすら時間を潰す。

 三十分ほどそこで粘ると、ある二人の姿が目に入ってきた。

 仲睦まじく歩く、ミジュと拓真。

 どうしようか、声を掛けるのは悪いだろうか。

 そう思っていると、二人はコンビニに入ってきて、ルリカはわわっと思わず身を隠した。


「ミジュ、明日はなに食いたい?」

「拓真くん特製の、タコ飯!」

「おー、わかった。明日は俺が買い物して帰るよ」

「うん、ありがとう拓真くん!」


 なんだかラブラブな会話をしながら、飲み物を選んでいるようだ。ミジュはビールを選んでいて、拓真に「飲み過ぎんなよー」と言われている。

 牛乳が並んでいるところにへばりついていると、二人が後ろを通り過ぎた。


「あー、そろそろ婚姻届取りにいかねーとなー」

「じゃあ私が……」

「婚姻届?!」


 思わず後ろを振り返って叫ぶと、バッチリ拓真達と目が合ってしまった。


「ルリカさん?!」

「いえ、私はしがない森の狩人です」

「なに言ってんだ?」


 テッペイと一緒にやっていたゲームのNPCの口真似をする。テッペイにはウケるところだが、拓真には通じなくて少し恥ずかしい。


「実家に行ってたんですよね? 帰ってきてたんですか?」

「うん、今日の夕方くらいに……」

「夕方? バレーに来られる時間だったってのに、こんなとこでなにしてんだ? 鉄平さんの家って逆方向だよな?」


 真理をついた問いに、ルリカはどう切り出そうかと口を噤んでしまう。

 するとミジュが拓真を制し。


「とにかく、うちに上がってください。ついそこなんです」


 優しい声で誘ってくれた。


 ミジュと拓真は隣同士だそうで、アパートの二階に上がると一番奥の部屋へと通される。その手前の部屋が拓真の家だそうだ。汗をかいたからシャワーを浴びてからそっちに行くと言って、彼は自分の家へと入っていった。

 ルリカはミジュの方の家に通され、小さなテーブルの前に座らせてもらう。


「ビール飲みます?」

「あ、いや、お茶で……ミジュちゃんは飲んでも大丈夫だよ」

「じゃ、遠慮なく」


 ミジュはルリカにお茶を渡し、自分はビールを開けてごくごくと飲んでいる。


「拓真くんは待たなくていいの?」

「拓真くんはビール飲まないんですよー。だから大丈夫です」

「そうなんだ……って、さっき結婚届がどうこうって話してたけど?」


 ルリカが問うと、ミジュは嬉しそうにニへへと笑った。


「そうなんですよ、先日プロポーズされちゃって」

「えええ?! それでもう結婚?! 式は?! っていうか、拓真くんは自分のお店を持ちたいから、それまで結婚はしないとか言ってなかった?!」

「そうだったんですけど、気持ちが変わったみたいです。早く一緒に住みたいって」

「え、お隣だよね?」

「お隣ですけど」


 なんだかすごく当てられてしまった気がする。ラブラブなのだろうなと思うと、たまらなく羨ましさが込み上げてきた。


「式は、お金を貯めてからしたいって、拓真くんが。私のお金でしていいよって言ったんですけど、それはちょっと嫌だったみたいで。自分で稼いだらちゃんとするから、先に籍だけ入れておこうって言われたんですよ」


 ミジュはビールをゴキュゴキュ飲みながら、饒舌に話した。

 拓真はこの四月から働き始めたばかりで、まだ貯金などないだろう。

 けどちゃんと将来を見据えて、自分で貯めたお金で結婚式を挙げたいと考えている。テッペイなど、人のお金があれば、自分は一銭も出さないに違いない。


「拓真くん、すごくしっかりしてるね……うらやましい」

「あはは、緑川さんはしっかりしてな……ごほごほ、すごく自由人ですもんね!」


 ミジュが、ルリカに気を遣うように慌てて言い直した。

 テッペイは、本当に自由の度が過ぎていると、ルリカも思う。

 けれど、それがテッペイらしさなのだ。自由人じゃなくなったら、テッペイじゃない気さえする。


「で、ルリカさん、なにかあったん──」

「ミジュ、入るぞ」


 ミジュが言いかけると、シャワーを浴びたらしい拓真が、トレーにケーキをのせて入ってきた。

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