(1)
1大学認可
・
20:30。六本木のビルが立ち並ぶ中、1台のオープンカーが颯爽と街を走る。
1人は金髪の20代後半の男、そして隣には1人の女性が座っている。
そしてきらびやかなバーの前で停車した。
2人は降りると話すことなく店内に入る。
中に入ると入口に女性の店員が1人笑顔を振りまいている。
「いらっしゃいませー!」
「2.1鷺宮」
男は謎めいた言葉を言った。
店員は一瞬きょとんとしたがすぐに笑顔になり、地下の階段を指さした。
2人はKEEPOUTのテープをくぐると下に降りた。
そしてそこにはノートパソコンをいじっている20代の女、リフティングをしている20代の男、
がいた。
「すみません・・・どなたですかね?」
金髪男は言った。
「え、集まるように言われたのですが」
「?」
金髪男の隣の女も不思議そうな顔をした。
そして時が経ち21時きっかりになった。
上からあの店員が降りてくる。
「白鷺さん・・・!!」
すると奥の扉が開き、白いファーコートに身を包んだ白鷺麻純が登場した。
「じゃ、始めましょうかねぇ・・・はい、皆さん、今日は集まっていただき本当にありがとうございます!これよりシロサギ再結成パーティーを挙行致します!」
場は一瞬静まり返ったがすぐに拍手で包まれた。
「私が今回の責任者、白鷺麻純と言います。それでは軽く皆様に自己紹介の方をお願いします。」
そういうと麻純の隣にいた金髪男にマイクを渡した。
「え~皆様お初お目にかかります。私は横澤正人と申します。普段はプロギャンブラーとして世界を飛び回っております。主にポーカーをやります。シロサギセンセとは8年の仲で今回シロサギに正式加入となりました。よろしくお願いしまぁす!」
そして次に横澤が隣の女にマイクを渡した。
女は丁寧に例をするとマイクをつけた。
「皆様初めまして。財務省財務事務局2課副課長の雷鳥絹子と言います。今回白鷺さんの招待を受けて加入させていただくことになりました。この腐り果てた政権を消す為に尽力する次第です。よろしくお願いします。」
そして次にリフティングの男に渡す。
「えっと、あの佐藤玲香と言います。隣の春沢と親友で今回春沢からの誘いで入ります。よろしくお願いします。趣味はサッカーとダンスです、え、あ、こんな感じでいいですかね?・・・」
麻純はグーサインを出した。
そして次に回す。
「春沢陶乃と言います。隣の玲香とは親友です。ハッキングが趣味で国のホワイトハッカーの試験に落ちたので世界一のブラックハッカーになって国を見返してやりたいです。お願いします。」
そして次に回す。
「霜夜 和と言います。週間流星の記者です!
趣味はバドミントンです!あとディズニーめっちゃ好きです!よろしくお願いします!」
そしてマイクを白鷺に戻した。
「はい、なんかめっちゃテンションの差あるけど・・・はい、私の簡単な自己紹介をします。
白鷺麻純と言います。表では国語教師をしています。私の父がこのシロサギという少数派の政治スキャンダル摘発グループに所属していました。
しかし、15年前、シロサギは烏谷証券との癒着に包まれた当時の政府に闇摘発され、結果癒着の証拠を出す前に消されました。
それからの政権は全てこの烏谷証券が握っているのです。私たち新生シロサギの最大の目標、それは、この政権を叩き潰して、烏谷証券の長年の癒着を摘発し、彼らを葬り去ることです。
時間、経費、当然かかると思います。私たちが一丸となって政権を変えていきましょう。
よろしくお願いします。」
会場は拍手に包まれた。
そして店員の霜夜がたくさんの料理を持ってきた。
「今日はパーティーなので大いに盛り上がりましょう!!」
そこからはレクリエーションで盛り上がった。
6人は横澤と佐藤が持ってきたニンテンドースイッチを使ってスマブラのトーナメントをした。
笑い声に包まれて夜は更けていった。
・
9月1日。エアコンがガンガンの職員室に陸上競技部員がやってきた。
「白鷺先生、新井先生が体育教官室にいなかったので顧問印を貰いに来ました。」
社 瞑は職員室の麻純の机のところに来て言った。
「はいよ~!」
麻純は引き出しから印鑑を取り出すと顧問印のところに印を押した。
「白鷺先生、この前倒れたの大丈夫でしたか?」
「え?」
「フィールドでぶっ倒れた・・・」
「ああ、あれね、大丈夫、軽い熱中症だから」
「良かったです・・・救急車来てましたし、あ、失礼しました。」
「あ、ごめん、えっと、・・・佐藤さんだっけ。」
「社です。」
「ああ、ごめん。社さん、土曜日の活動の分もとる?」
「あ、ありがとうございます。」
そして土曜日の活動許可に顧問印を押した。
無事に受け取ると社は職員室からいなくなった。
そして麻純は伸びをすると椅子から立ち上がると、端っこの部屋にある、職員休憩室に入った。
この部屋は新宿の街並みが何とか見えて、docomoタワーがギリギリ見える。
何人かの先生が既に昼ごはんを食べている。
「白鷺先生、お疲れ様です」
同じ国語科の筏先生が話しかけてきた。
「お疲れ様です!」
「見てくださいよこれ、今日の朝刊、烏谷証券の社長さん昨日亡くなったんですよ」
「へぇ、そうなんですか」
筏は見せんとばかりに朝刊を見せた。
「今ニュースでやってるかもしれない。」
そう筏は言うとリモコンでテレビをつけた。
昼のニュースではやはりこれを取上げていた。
1年前。烏谷証券の社長、烏谷治男はアメリカの子会社を買収した時に開いたパーティー中何者かに狙撃された。銃弾は肩を貫通し、治男は一時期、意識不明になった。その後復活したと思われていたが、つい先日その傷が元で亡くなった。
麻純はもうこの情報を夏合宿の時には知っていた。なぜなら狙撃したのがスナイパーの訓練を4年受けた世界のヨコサワなのだから。白鷺の命を受けて狙撃し、その結果今回の結果になったのだ。
これは麻純の計画通りである。
最もこれは白鷺麻純にとって本当の仕返しではない。ここからが本番だ。麻純は心の中で思った。
「新しい社長には烏谷会長の遺言通り烏谷綾華前会長が就任する予定です。」
アナウンサーが言った。
「へえ、新しい社長は女性の方なんですね。」
「女性・・・へぇ。」
筏はあんまり新社長には興味無いようだ。
麻純は興味深い目でテレビを見ていた。
・
烏谷邸の大広間。
給仕係が烏谷綾華の元に松阪牛ステーキを持ってきた。
そして隣に朝採れたての野菜を使ったサラダ、
そしてその隣に三ツ星のパン職人が焼き上げた
フランスパンが並ぶ。
綾華は慣れた手つきでナイフを使い、ステーキを口に入れた。そしてグラスの白ワインを飲む。
「・・・はぁ。やっと今日の仕事が終わった。森君お疲れ様。」
「烏谷綾華様新社長就任おめでとうございます。」
森元高は言った。
「ああ、いえいえ、まあ、そういう森くんも会長就任おめでとうございます。」
「いえいえ。それにしてもあのおっさん、死んで良かったですね。あいつがいると綾華さんが動けませんでしたから。」
「そうね、正直見かけ上は悲しまないとね。社長の娘という銘柄だけだったし。それに実際国を動かしてみたかったし。」
「それに、彼らも俺たちの所へ呼べて良かった。」
そういうと森と綾華は視線をずらした。
同じテーブルには3人の男がいてそれぞれ好きな物を食べている。
若鷺が言った。
「そういえばちょうど1ヶ月後は秘密の会合ですよね。」
綾華が言う。
「そう。その日は烏谷新体制の1歩目、国指定の大学の理化学系特区をゲットしに行くよ。」
高野がスマホを見ながら言った。
「その日の主な参加者は政府から峰島総理大臣の首席秘書官竹中祐一。そしてそのサブ。大学からは理事長の櫛本幸太郎。そしてそのサブ。そして我らが新カラスダニのメンバー5名。以上。」
若鷺が言う。「会場は?」
「会場は特別予約で港区の高層ホテルの最上階。特別会議室で行われる。」
高野が返す。
「で、金は用意できてんの?」
「もちろん。」
藤井が言うと下からブリーフケースを出した。
4文字のパスワードでロックを解除すると中を開けた。
「これが資本金5000万円。これをまず櫛本理事長に渡す。これで指定の際に必要な金が国に振り込める。いわば、櫛本と峰島の仲介役って所かな。最も手助けって言った方がいい。」
「それでどうするの?」若鷺が言う。
「これで櫛本に恩を売る。そしてスムーズに三者がウィンウィンになる。櫛本のところは国からの特別な指定を受けられるし、櫛本の大親友の峰島は指定をしてあげて恩を売れる。これを動かせた俺らにもプラスだ。もし三者でまたなにかする時に俺たちの立場が有利になる。最も、政府と俺たちはもうグルだけどな。」
「ほぉ・・・藤井さん天才っすね!」
「いや、これは俺じゃなくて全て新会長様と新社長様が考えたんだ。」
「かっけぇ・・・」
若鷺は2人をみて目をきらきらとさせた。
綾華は立ち上がった。
「よし、それでは午後に準備始めるわよ。」
・
「採れたての記事出ましたー!」
入社1年目の新人坂野は満面の笑顔でトップの霜夜に渡した。霜夜はこの週刊流星の若き編集長だ。
「お、ありがとう!どれどれ・・・」
「春山少子化対策大臣があるキャバクラに通ってたって言うのを聞いて、それを張ってたらビンゴでした!」
「へえ、内閣改造して1ヶ月でこれだとねぇ・・・まあでも他の党が出てこないし、野党もあんまりなんだよね。すごいじゃん、ナイスファイト!じゃ、あとは私がやっとくから。」
「はい!」
坂野は笑顔で自分のデスクに戻っていく。
「・・・」
記事の内容は少子化対策委員会にが終わった直後に国会を出て、その後すぐにキャバクラに行っていたということだ。
「全く何やってんだか・・・」
霜夜は心の中で言った。
こんな腐り果てた馬鹿どもよりもこの前あった雷鳥さんのような真面目でフレッシュな人を選ぶべきなのに・・・
きっと雷鳥さんのような人は政界だと出る杭として打たれるのだろう。そして調子に乗った馬鹿どもが政界を漁り、甘い汁を吸っているのである。この現状にどうしても霜夜は納得できなかった。
そしてパソコンのデータから大臣ターゲットのファイルを取り出した。
霜夜は改造された大臣にそれぞれ10段階のターゲット度をつけている。
例えば、今回の春山はこれまでの情報とホヤホヤの新情報で3から10になった。
また、以前パワハラ容疑が浮上した厚生労働省の田中大臣は8、以前に失言を連発した五輪担当の飯塚大臣は5。
このように週刊誌のネタになるようなものを数値化するのである。
「あとは親分ね・・・峰島は10。」
そう霜夜がつぶやいた時、机のスマホからズートピアのトライ・エブリシングが鳴り始めた。
下はスマホをとった。
「はい、霜夜です。」
「もしもし、雷鳥です。」
「雷鳥さん・・・!!!」
「どうかされましたか!?」
「あっ、いや、なんでもない。どうされましたか?」
「あ、あの白鷺さんから明日の夜いつものところで緊急会議だそうです。私が案件を持ってきたので。」
「あ、わかりました。了解です!」
そして通話を終えた。
霜夜は壁に貼られた、半月前週刊流星メンバーで行ったディズニーランドでの集合写真である。
「ああ、ディズニー・・・」
霜夜はうめいた。
・
次の日の夜、バーの地下では円卓を使った緊急会議が行われていた。
雷鳥が言う。
「私の親友からの情報なんですけど、1ヶ月後峰島総理はある人物と秘密裏に会合するそうなんです。ある人物は明確には分からないんですけど、会合するのは事実なんです。」
玲香は質問した。
「親友って?」
「私の高校時代からの友達です。ずっと一緒にいました。彼女は厚生労働省の方に入っているんですけど、内閣府の方にも精通してて、自由国民党の柴田派のトップ柴田直次政調会長の秘書に任命されたんです。柴田派は峰島総理大臣いる派閥でコネで繋がっている総理大臣のスケジュール表を極秘事項で見せてくれました。」
そういうと雷鳥はスマホをプロジェクターに繋げて大きくした。
「この1ヶ月の予定表です。ここの12日は会食となっています。でも秘密裏ですし、内閣サイドの人間が政府内には沢山いるのでこれも伏せて黙認という形で動くんです。」
「そうなんだ・・・」
と玲香がつぶやいた。
「その親友は優秀なので他の人からも政府サイドの人間だと思われててスパイ役には好都合です。シロサギに属してることは絶対に言いませんけど。」
麻純がオレンジジュースを飲んで言った。
「ほぉ。なるほど、で、その会食相手は不明と・・・」
「そうなんです、情報薄くてごめんなさい。」
「いや、全然。、ほんとに動いてくれてありがとう。感謝するよ。こういうのがすぐに入ると動くのも早くなるから。まあ、その会うお方はおそらくだけど、これかな」
すると麻純は毎朝新聞のある面を見せた。
陶乃が指さして言った。
「大学理化学系特区選定のお知らせと評価項目・・・理事長とかですか?」
「ご名答。さすがIQ150ね。」
陶乃はきょとんとしたがニヤニヤした。
「ありがとうございます。」
「で、理事長さんとグルになって指定を受けようって魂胆ね。まあこういうのも大学の教育関係だから、文科省の大豚大臣も参加するんじゃない?」
「白鷺さん、豚じゃなくて大牟田大臣ですよ。」
霜夜は苦笑しながら訂正した。
ヨコサワが麻純に言った。
「で、予測だけど、その会議に俺たちが潜入する必要があるってことだ。」
「その通り。で、表向きは霜夜さんがお得意のボイスレコーダーと超小型のミニカメラで流星砲をぶっぱなしてもらって、あいつらの計画を世間にバラして頓挫させる。で、裏向きは私たちが政府とグルになってる今回の第3グループいわば、黒幕の正体を見つけることね。烏谷財閥のトップの烏谷綾華とあとその部下たちが絡んでる証拠を世間にさらけ出せないとそのグループは捕まえられないよ。」
「だから、今回はふたつの目標があるってことだ・・・」
「まあ、ひとつはめっちゃムズいけど、烏谷の殲滅にはやるしかない。」
すると玲香が質問した。
「わかりました!でも、どうやって潜入するんですか?きっと警備はホテルなら厳重でしょうし・・・」
麻純はニヤリとした。
「まあ、慌てないで玲香君。ちゃんと方法はあるんやから。」
「出た、白鷺麻純のキメ顔関西弁・・・!」
霜夜は茶化した。
・
陶乃と玲香のコンビは、渋谷の賃貸マンションでノートパソコンをいじっていた。
時計の針は午前9時を指そうとしている。
「まずはどこから会議の場所を探し出すかだな。」
「そうね、まずは首相官邸様のおツイッターの
ところから手がかりを見つけてみましょうか。」
「よし、じゃ、ハッキング用のツイートパソコン開けて・・・」
それから2人は峰島総理夫人の所のツイッターアカウントからダイレクトメッセージで引き出すことにした。
陶乃が事前に用意していた偽URL、そして偽ホームページを入れ込んだ。
「なにこれ、福引キャンペーン実施中、今なら先着100名様に10万円分のSOGOMOポイントが当たる?」
峰島総理夫人はダイレクトメッセージに全く疑問を持つことなくそれをクリックした。
「よし、来たな。」
玲香はハッキング用のパソコンをちゃかちゃかいじるとそこから一気にウイルスをばらまいた。簡単に言うと峰島総理夫人のアカウントへ一斉攻撃と言ったところである。
そこからよく警察のハッキング班が使うURLのところから誰がどのようなものをアップしているのか、どのような文章を打っているのかがわかるようにそこから一気に追いかけて行った。
「わかった。」
調査開始から1時間。
玲香はある写真にたどり着いた。
それはある一定の人のみ公開されていて、友達に限定公開の写真で、男たちが写っている。
更には下の方にこんな文章が載っていた。
「今日は櫛本氏行きつけの飲み屋に長年のお友達の櫛本さんと会食しに行きました!ちなみにここの飲み屋さん、櫛本さん好きすぎて週に3回訪れるそうです!ちょっと早い忘年会だけど、最高!男ばかりのむさくるしい雰囲気なく、紅一点ではっちゃけちゃった~!」
陶乃はそれを見て笑った。
「おっさんばっかりじゃない!」
「そして中央に・・・理事長さんって訳か・・・」
2人は顔を見合わせるとほくそ笑んだ。
「あとはこの行きつけの居酒屋を割出せばいいってこと。」
「あ、でもここにのってるよ」
「え、」
陶乃は指さした。
「お酒処 しのぶや」
「足がつきやすいなぁこの女は。こっからは撒き餌だな。」
「あの方法でだね。」
・
「ああ美味かった・・・うぷ」
櫛本は夜のしのぶやをでて駐車場に待機している運転手の元へ向かった。
「ああ、1ヶ月後の認定が待ちきれない・・・」
独り言を言いながら、車に向かう。
するとその背後から誰かが近づいたと思うと体がいきなり動かなくなった。
「・・・・う!!!!」
体に電流が走ったようだ。痺れて体が動かない。そして覆面男はポケットから財布を抜き取る。
「・・・あ・・・あ・・・」
「声を出すな!一声でも発したら・・・」
覆面男はナイフを取り出した。
「・・・・・!!」
その時隣から女が飛び込み、覆面男を吹っ飛ばした。
「誰だ!!」
覆面男は顔を上げたが、飛び込んできた女に回し蹴りを食らった。覆面男は吹っ飛んだ。そして財布が飛んで行った。
「くそ・・・!」
覆面男は退散した。
女は櫛本に言った。
「大丈夫ですか!?」
「ああ・・・ありがと・・・う。」
「体動かせますか・・・?」
「もう、大丈夫・・・です。助けていただき感謝します。あと少しで財布が盗まれそうになりました。助かりました。ありがとうございます。」
「良かったです。」
「すみません、ありがとうございました。あなたは恩人です。名刺を・・・あなたは」
「あ、木村と言います。名刺です。」
「ああ・・・・ほんとにありがとうございます・・・」
「体・・・大丈夫ですか?」
「ああすみませんね・・・ありがとうございます。後日お礼をします。失礼致します。」
櫛本は何度もお礼をしながら車に乗ると去っていった。
「よし、名刺とった・・・」
陶乃は言った。覆面男が近づく。
「上手くいったな。名刺どれどれ・・・」
「ここ、櫛本幸太郎、櫛本事務室、フルノマンション6階。電話番号付き。」
「あとはついてくだけだな。」
・
2週間後。いつものバーの地下で6人は集結していた。
陶乃と玲香がプロジェクターを使った調査発表を行う。
陶乃が先ず言う。
「これからこの2週間での調査結果を発表します。まず私たちは今回の理化学系特区の大学認可は明らかに峰島総理と何者かの癒着があるとみて捜査しました。まずこちら、これは特殊な方法で峰島総理夫人のツイッターアカウントから潜入したものです。この写真は峰島総理夫人の数少ないお友達に送っていたものでしたが、この真ん中の男は櫛本幸太郎という六原学園理事長です。彼らは昔からの友人で明らかにここで彼に理化学系特区をプレゼントすることは間違いないです。櫛本理事長は学校法人六原学園の島根理科大学を認定させてもらえることになるでしょう。」
玲香が言う。
「そこで私たちは確実な証拠を掴む為、櫛本理事長との接触を試みました。私が櫛本理事長への窃盗を図り、陶乃が助け、そして陶乃が櫛本理事長からの恩人となる、というストーリーです。ここで名刺をもらい、彼の事務所の場所がわかりました。なんと、彼は事務所を全く違う名前(松野事務所)にしていたのです。実名を抑える為にしたのでしょう。ちなみに事務所のホームページもありませんでした。後日事務所に私たちは潜入し、これを持ってきました。」
そういうと玲香はある紙を持ってきた。
ヨコサワはあっと声を上げた。
「これ、まさか・・・シロサギセンセの予想通りじゃないですか!?」
「はい、白鷺先生の言う通り、スケジュール表には約1ヶ月後の12日、峰島総理大臣に会います!場所は櫛本理事長のデスクの中にあった手帳に書かれてたんですけど、港区のホテルの最上階の特別会議室です。時間は夜の9時から・・・」
麻純はにっこり笑った。
「やっぱり。で、どうする?私もその時には仕事を終えてるけど?」
雷鳥が立ち上がった。
「私たちはどうすればいいですか?どうやってそのホテルに潜入するんですか?裏で糸を引いてる烏谷証券の人々の顔を知らないと」
陶乃が言う。
「というわけで今回はシロサギ最初のミッションということで白鷺先生に考えてきていただいたから」
麻純がニコニコして言った。
「それじゃ、作戦伝えるから、よく聞いてね。」
・
1ヶ月後。
黒のミニバンで港区のパラダイスインナーホテルの駐車場に乗り止めた。
スタスタと霜夜はチェックインのカウンターに向かった。
そして手には銀色のスーツケース。
中には
2日間の張り込みで必要なもの・・・
いわゆる流星砲セットが詰まっている。
充電バッテリー型盗聴器、超小型サイズのセンサー型盗聴器、デジタルカメラ、一眼レフカメラ、カメラのバッテリー、メモ帳、望遠レンズ付き付きの小型望遠鏡。
そしてボイスレコーダー。
これらがあればとくダネをとるのにバッチリである。
霜夜は最上階と一番下の真ん中、15階に泊まることにした。
1506の部屋をガチャっと開けると綺麗なスイートルームが目に入った。
「うわぁ・・・!!!」
霜夜は初めてのスイートルームに目を輝かせた。
そしてふわふわのベッドに飛び込んだ。
ちなみに今回の宿泊費は全て白鷺先生が出してくれた。
「ベストを尽くしてきなさい。」
ここにくる直前そう霜夜は言われていた。
「頑張んなきゃ・・・」
霜夜は言うと起き上がってそれぞれの機器のチェックを始めた。
この後最上階の特別会議室・・・会議室と言ってもホールのような作りだが、そこでは
この後13:00から知り合いの筋肉トレーナーがオーナーの24エクササイズ開店記念会が行われる。
その会をそこで開くのを仕向けたのは霜夜だ。
これも白鷺先生からのお金だ。
霜夜は白鷺先生の言葉を思い出した。
「これから私がだすお金、これは全部私の父の生命保険でかけていたお金だから。全部で3000万円ある。これが今回の資金になる。父が成し遂げられなかったことに挑戦するんだから、きっと父は怒らないと思う。どんな結果でもいいからベストを尽くしてきなさい。」
「頑張んなきゃ・・・」
そういうと念入りに機器のチェックを続けた。
そして全てに異常なしと判断した。
「よし、休も。」
霜夜はチェックを終えるとテレビを使ってズートピアを見始めた。
19:30。
麻純の姿はホテル近くのリッチモンドホテルにあった。
1泊だけの為に麻純は7000円を使う。
「よし、これで大丈夫。」
パソコンを3台起動させ、スタンバイする。
そして電話がかかってきた。
「和?どうした?」
「今ちょうど下にリムジンが入ってきました!」
「え、どうやって見てるの!?」
「望遠レンズです!今下のところに入ってて入口で止まりました!下から3人ぐらいかな、あと数人入ってきます。」
「了解!じゃ、あとは待つだけね。」
「陶乃、玲香ペアは?」
「あっちも準備大丈夫だって。」
「了解です!手配している車は?」
「もう雷鳥さんとヨコサワがスタンバイしてるよ。」
「わかりました!とくダネ取れるように頑張ります!」
麻純は電話を切った。
「よし、始めるか・・・」
・
「ようこそおいでくださいました。」
特別会議室のロックの音がして、藤井は言った。
カラスダニは若鷺、藤井、高野の3人が今回は来た。
整えられたテーブルにひとつの部分にそれぞれ櫛本理事長と秘書、そして峰島総理大臣と秘書、そしてカラスダニが座った。
藤井が言う。
「それでは早速、私たちの方から櫛本理事長へ資金をプレゼント致します。」
「おお、ありがとう」
若鷺はアタッシュケースを持つと櫛本理事長の所へ置いた。
「それでは契約書にサインしてください。ここの下の部分です。今回、理化学系特区の選定のために5000万を借りることのサインです。もちろん利子、利息はつきません、きっちり後日返していただければそれで大丈夫です。」
櫛本は悦に入った顔でサインをした。そして秘書の印と共に印鑑を押す。
「では、失礼します。」
そのまま、5000万円は峰島の秘書の前に行った。
「櫛本理事長、これで念願が叶いますね。」
と秘書の竹中が言った。
「いえいえ、総理大臣の力添えがあってこそ私、櫛本はこの理化学系特区の指定を受けられるのですから・・・益々の力添えお願い致しますよ。」
それからしばらく談笑が続いた。
櫛本が言った。
「他の大学に対してはどのような審査結果を出せば良いですかな。私のところだけでなく、もっと色んな大学が候補に名乗りをあげるでしょうけど・・・」
すると高野が言った。
「ご安心ください。今回の指定枠は2枠。おそらく今回は櫛本様の大学含めて八大学が応募してくるでしょう。あなたの枠は既に決まってますよ。あなたのところはもう既に総理大臣からの研究増進賞を貰っている実績がありますので、大丈夫ですよ。」
「そうかそうか。ああ良かった。まあ、その賞も金で買ったものだけどな。返済は終えていますよね。」
「はい、もう終えてます。」
「よしよし、これで枕を高くして眠れるよ。」
やがて、夜も更けて、一同は会場を後にした。
「出てきました!」
霜夜が麻純に言った。
「どう?」
「やっぱりです。間違いありません!今写真撮って送ります!」
するとすぐに写真が送られてきた。
そこには竹中首席秘書官、そして櫛本理事長の姿があった。
「よし、ここからね」
そういうと麻純は電話をヨコサワに切りかえた。
「シロサギセンセ?」
「出た、ヨコサワの車は陶乃と玲香がつけた小型:GPSを元に総理のお抱え秘書官の車を追って」
「カラスダニは?」
「証拠は掴んだ。カラスダニは賄賂を提供してる。小型ボイスレコーダーで霜夜が掴んだ。」
「よし、じゃ、トドメさしですね、計画通り頑張ります!」
それで電話は切れた。
麻純がベッドに入った。
「あとは頼んだよ・・・ふわぁ・・・」
麻純はあくびを噛み殺して次の連絡を待った。
・
ヨコサワと雷鳥の乗った車は秘書官の車を追っていた。
高速道路に入り、すぐしばらくしてインターチェンジに入る。
ヨコサワが雷鳥に言った。
「間違いない。彼は今柴田政調会長のお抱えの議員、小野田のところに向かった。」
「小野田参議院議員・・・?え、あの柴田政調会長とのコネで峰島総理大臣の次にコネの力が強いって言われている人ですよね!」
「おそらくこのあとの打ち合わせだろう。柴田政調会長のいる柴田派は自由国民党の中では1番の派閥になる。最も政調会長というポジションは国務大臣のように仕事が多くないし、金も入るし彼にとってはいいポジションなのかもしれないが。まあ、でも噂だとそろそろ峰島総理大臣のお力になりたいって思ってるだろうよ。資金に仲間が集まったんだからな。峰島総理大臣の政権を続かせるためにも権力は大切なのさ。まあこれから個人的に報告しに行くんだろう。」
「そうですよね・・・」
「あ、あと雷鳥さんは俺にタメ語でいいよ。」
「え、そんなこと、え、」
「俺はあくまでギャンブラーですから。雷鳥さんは国を統率する国家公務員じゃないですか?誰に聞いたって雷鳥さんの方が価値が高いでしょ。だから、タメ語でいいですよ。」
「あ、ありがとう・・・」
「そうそう、そんな感じ」
「ちなみになんですけど、白鷺先生との繋がりって・・・」
「俺?シロサギセンセは大阪人で俺も実はそうなんだよね。俺はね高3までずっと遊んでばっかでね、いや、それなりに勉強はしたけど、遊ぶのが大好きでね。で偏差値50ちょいの高校に入って、遊んでたのよ。だけどね、高三の春にヤバい!ってそこで家はまずまずの金持ちだったし、そして一人っ子だったから、個別指導塾に1年間通ったんだよね。そこで出会ったのがまだ教職をとってなかったシロサギセンセだったってことよ。」
「なるほど・・・運命的な出会いですね!」
「まあね。で、そこでみっちり国語を叩き込まれたよ。何せ受けるのが都会に出たいって理由で挑む立教大学文学部なんだから。国語は当然必須。模試の成績で偏差値48.0だった自分を1年間で62.0にしてくれたんだ。ほんとにわかりやすくていつも授業が楽しみだった。これまで受けてきた国語の先生とは偉く違ったんだ。バイトの大学生とは思えなかった。それから連絡を取り続けてもう8年の仲。本当に彼女はいい先生だよ。そんな彼女がもう28歳か・・・時の流れは早いもんだな。」
「そうだったんですね・・・あ、もうそろそろ着きますよ。」
「了解!じゃ、ここでカメラの準備と行くか!」
そういうとヨコサワは霜夜から借りた一眼レフカメラを用意した。
「あそこの家だな。」
ヨコサワは上手く柴田邸のもんにはいる秘書官の車の様子をカメラで撮った。
そして、柴田邸に車が入るところを雷鳥はビデオカメラでしっかり撮影した。
「よし、運転席に座ってる秘書官バッチリ写ってる!ビデオカメラで押えた?」
「はい!しっかり取れてると思います!」
「よし、あとは出てくるところだな。」この後2人は柴田邸に秘書官が入るところを門の外側から撮影した。
竹中秘書官が車から降り、柴田邸の中に入っていく。
そして姿を消した。
「ここで張り込むか」
「はい!」
その後2人は出てくるのを待ちながら、ヨコサワの持っていたトランプを使ってスピードをした。
40分後、竹中秘書官が出てきた。
「お、出てきたな。」
「報告終えたみたいですね!」
「よし、ここも撮ってと・・・」
そして2人は任務を終えると急いで姿を消した。