6 なにかに見られている
翌朝、ランドは、バスケットにかたいパンが盛られた食堂のテーブルにつき、カンタレルが起きてくるのを待った。召使頭によると、カンタレルは体調を回復していて、みんなと食事をするという。
ランドの隣にゴーラが座り、その隣のテーブルの上にチビットがあぐらをかく。ランドの向かい側のリリアは、そわそわと落ち着かない様子だ。
リリアの体に合った服はすぐには用意できなかったので、カンタレルのだぶだぶのチュニックをまとい、そのすそをひざまでたらしている。午前中のうちに子供服を手配すると召使頭は言っていた。
遅れてあらわれたカンタレルの顔色はよく、きのうの発作の後遺症はなさそうだ。どこかばつの悪そうな表情をしている。
カンタレルがなにも言わず上座についた。
使用人が給仕をはじめる。厨房のワイン樽から木製のコップにつがれた赤ワインが運ばれる。湯気のたつスープがテーブルに並ぶ。
その間、誰も口をきかなかった。
カンタレルがスープに口をつける。なにか気づいたようだ。
「これを調理したのは誰だ? うちの料理人の味じゃないぞ」
召使頭が「実は……」とリリアを手で示す。
「おいしくなかったら、ごめんなさい」
リリアが自信なさそうに首をすくめた。
「そうじゃない。このスープはまごうかたなきリリアの味だ」
カンタレルが驚きに見開いた目でまじまじとリリアの顔を見だした。そのぶしつけな視線に、恥じいるリリアがうつむいてしまう。
いきなりカンタレルが立ち上がって食堂を出ていった。
ランドはその背中を目でおう。
朝早く、厨房にふみいったランドは、リリアの手作りスープがカンタレルの好物だという情報を料理人からえた。リリアに調理させたのはランド入れ知恵だ。
食材を前に最初はとまどっていたリリアだが、下ごしらえを手伝っているうちに、スープのレシピの記憶がよみがえりだしたようだ。料理人の助言を聞きながら、カンタレルの好物の一品を作りあげた。
これでカンタレルのうたがいがはれ、リリアの記憶が戻る助けになればいい――。ランドはそう期待した。
食堂に戻ってきたカンタレルは、額装された肖像画を手にしていた。それはリリアが14歳で町の施療院に働きに出る前に描かれたものだという。
カンタレルが、絵のなかのリリアと、テーブルのリリアとを見くらべる。
ランドも肖像画をのぞきこんだ。
ちょっと間隔の開いた目のあたりに、リリアの面影が色濃くでているようだ。
「リリア、あんたは本当にリリアなんだな」
カンタレルが言い、がっくり椅子に腰かけた。
「娘さんが無事だったのに、そんなにがっかりすることないじゃない」
チビットが、パンの盛られたバスケットの前から抗議する。
「リリアが子供に……なんてあさましい姿になってしまったんだ」
「まだ、あんなことを言ってるんだなあ」
ゴーラも、すすっていたスープ皿を卓上に置いて文句をつける。
「うるさい。幼児のぶんざいで大人に意見するな」
カンタレルの怒りがぶりかえしてきた。それが爆発する前に、
「いまは仲間うちでもめている場合ではありません」
ランドは仲裁にはいる。
食堂に使用人がいないのを確認し、入ってこようとした召使頭を下がらせてから、ランドはリリアにまつわる状況をくりかえし話した。
「つまり、おれの研究所にあの空飛ぶ怪物がリリアを探しにきたのは、やつらにとってわざわいの種をうむ前に、リリアを抹殺するつもりだったわけだ」
――わざわいの種。
――その者に13の年月がながれるとき、ベルマルクさまを打ちたおす力を身につけるでしょう。
〈炎の予言〉では、そうなるはずだった。
しかし、時空のひずみにのまれたリリアは少女に戻った。リリアがまだ妊娠できない年齢に若返ったために、未来が変わってしまったのだ。
「すべての原因は〈時空の巨大樹〉の体調不良にあります」
ランドはそう続ける。
「〈時の洞窟〉に住みついたベルバレーラの一味を取りのぞければ、巨大樹の体調は回復し、時空のゆがみは解消され、リリアさんはもとの年齢に戻れるそうです」
「わかった。こんどはそれをあんたらに依頼しよう」
カンタレルがそう申しでた。
ランドには望むところだ。もともと〈時空の巨大樹〉からも頼まれていた。ランドは依頼を引きうけたうえで、
「ベルバレーラは、リリアさんが少女に若返った事態を知りません。ですから、いまだにリリアさんの命をねらっているはずです」
「だが、この少女が実はリリアだと、あいつらにはわかるまい」
「それを利用するんです。リリアさんは〈時の洞窟〉で行方不明のままだと周囲にふれこみます。そんなおり、リリアさんを慕っていた親戚の子供が、リリアさんを心配するあまり、カンタレルさんの屋敷にやってきた」
「それが、この少女というわけか」
カンタレルが了解した面持ちで、リリアを見やった。
「そうなると、リリアさんの呼び名を変えたほうがいいでしょう」
ランドは提案した。すると、
「ビビットがいいんだわあ」
「ドゴーラに決まってるんだなあ」
チビットとゴーラが口ぐちに自分の意見を言いだした。
「うるさい。リリアの偽名はジョセスタとする」
カンタレルがそう決めつけた。
その名前の由来をカンタレルは教えようとしなかった。
ランドはあとで召使頭に『ジョセスタ』という名の心当たりをたずねてみた。すると、カンタレルの亡くなった奧さんの名前だとわかった。
カンタレルは意外にも愛妻家だったのかもしれない。
ランドの計画はこうだ。
リリアを親戚の子供といつわって彼女の安全をはかる。そのあいだに〈時の洞窟〉にひそむベルバレーラの一味を退治する。あとは時空のゆがみが解消されて、リリアがもとの姿に戻るのを願うばかりだ。
問題は、ベルバレーラたちの住みかだ。大峡谷の無数の枝道や、いくつもの洞窟をやみくもに探索していてはきりがない。
ランドは食事がおわると席を立った。
風車小屋に閉じこめたグレムリンから、やつらのアジトを聞きだすつもりだ。
ランドは、チビットとゴーラをともない風車小屋に向かった。カンタレルからあずかった鍵で小屋のドアを開ける。
なかに踏みいったランドは、あっと目を見はった。
風車の軸木につながる石うすに、捕らえたグレムリンが上半身をもたせかけている。そのうすい胸には短剣が突きささり、すでにこと切れていた。
――先手をうたれたか。
ランドは小屋の内部を見まわす。天井に大きな穴が開いていた。風車小屋の屋根に飛来したグレムリンが、そこからなかに侵入したのだろう。
捕まった仲間を助けるより、その口をふさぐほうをえらんだ。やつらの残酷さに、ランドはいきどおりをおぼえた。
これで敵のアジトを知る手段は完全にうしなわれたのだ。
正午になり、畑仕事の休憩時間に、カンタレルの屋敷の玄関前でリリアの紹介がはじまった。そこに集まったのは30人ほどの小作人だ。ランドは彼女の兄でつきそいというふれこみだ。
リリアが、ジョセスタの名で自己紹介する。
「わたしは、カンタレルさんの奥さんの弟の娘です。ジョセスタという名前は、亡くなった伯母さんからいただきました」
ジョセスタは、町の施療院で働いていた従姉のリリアに、とてもかわいがられた。施療院ではリリアの薬草師の仕事を手伝った経験もある。
ランドの作り話を、リリアがしずんだ口調で語る。
「そんなリリアさんは、3日たったいまも行方がわからないままです」
ジョセスタがここで言葉をきった。聞きいっていた小作人のあいだから、リリアの安否を心配するため息がもれる。
行方不明の張本人が目の前にいるとは知るよしもなかった。
リリアの演技力に、ランドは内心、舌をまく思いだ。
「ジョセスタはまだ子供だが、薬草師としての才能はおれが保証しよう」
カンタレルが口をはさんだ。
昨夜、心臓発作に倒れたカンタレルが、ジョセスタの介抱で命拾いをした。その話をひろうすると、小作人のあいだから賞賛の声があがった。
人びとの注目をあび、リリアは照れくさそうだ。
「それほどの腕前なら、村の医者の見習いになってもらいたい」
小作人のなかから、そんな意見が出た。
「村医者のミラーじいさんはぎっくり腰でベッドから離れられない。ジョセスタ嬢ちゃんに病院を手伝ってもらえたら大助かりだ」
それがいい、と小作人のあいだに賛成の声が広がっていく。人びとの要望をことわりにくい雰囲気になってきた。
ランドは、リリアを村の病院に通わせるのに不安をおぼえた。
しかし、屋敷にかくまっているより、ふつうの日常生活をおくっていたほうが、ベルバレーラにあやしまれないだろう。そう考えを変えた。
それでも、リリアからは目を離さないようにしようと心に決める。
リリアの紹介が終わると、集まった小作人にカンタレルが簡単な昼食をふるまった。給仕してまわるリリアは、すぐみんなと打ちとけた様子だ。
昼の休憩時間のあと、リリアは村医者のもとに向かった。ランドは、リリアの兄というふれこみのまま彼女につきそった。
「〈時の洞窟〉から持ちかえった、あの透明な玉はどうしているの?」
ランドは、病院に行く道すがらリリアにきいた
「大切なもののような気がして、こうしてしまってあるの」
リリアがふところから小さな木箱を取りだした。ふたを開けると、わらをしいたなかに、その『大切なもの』がおさまっている。
ランドは、その玉に見られているような気がして、落ち着かない気分になった。
村の病院は、わらぶき屋根の木造の平屋だった。入り口をはいってすぐの土間が待合室で、そこにわらをしいて来院者が座れるようになっている。診察を待つ人の姿はまだなかった。
ランドとリリアは土間を横ぎって診察室に入った。
患者用のベッドには、医者のミラーじいさんが不機嫌そうな顔つきで横たわっていた。リリアが見習いとして来る話は聞いているという。
「おまえはなんだ?」とミラー医師にきかれ、
ランドは、ジョセスタの兄で彼女のつきそいだと話した。
「では、おまえには病室の掃除をしてもらおう」
ベッドから指示が出され、ランドはいろんな雑用を言いつけられた。
しばらくして、腹痛をうったえる中年の男が来院した。
身動きのままならないミラー医師にかわって、リリアが診察にあたった。病状を聞き、患部をあらため、ベッドの上の医者に伝える。するとそれに対する指示がとんできて、リリアが対応する。
棚にならんだビンから処理された薬草をえらぶ。それを病状にあわせて調合し、患者にあたえる。リリアが指示を間違えたり、理解できなかったりすると、ようしゃなくしかられた。
治療をうけた男が帰ると、その評判を聞いたらしい患者がつぎつぎと来院しだした。重い症状の人は少なく、ほとんどはリリアを冷やかしに来たようだ。
病院はにわかに忙しくなった。他に看護師はいないらしく、リリアが1人で診察し、医師の指示をあおぎ、患者の手当てや調薬にあたった。
最初はとまどっていたリリアの動きに、しだいに慣れが見られるようになった。病院で働いた経験のある人の身ごなしをランドは感じた。
屋根の修理や、病院の補修を言いつけられたランドは、リリアを見張っている余裕がなくなってきた。待合室には多くの人がいる。これだけ人目のあるなかで、リリアに危害がくわえられる心配はなさそうだ。
日暮れ前に、その日の仕事は終わった。
「今日は助かった。明日も、よろしくたのむよ」
帰りぎわに、リリアに文句ばかりだった医師が彼女の働きをねぎらった。
ランドは1日の仕事の感想をリリアにきいた。
「はじめての仕事ではなかったような気がします。頭では忘れている医療の知識も、体が覚えていることはあるようです」
「それはよかった。病院で働いているうちに、きっと記憶も取りもどせるよ」
ランドはそう言ってリリアを力づけた。
カンタレルの屋敷に戻ったランドは、その主人と夕食の席をともにした。カンタレルの顔色はよく、きのうの発作の影響は見られない。
チビットとゴーラは1日じゅう屋敷でくつろいでいて元気いっぱいだ。リリアの表情には疲労の色が濃くあらわれていた。
食事が進み、ワインがほどよく入ると、カンタレルの舌の動きはなめらかになっていった。リリアに対するわだかまりはうすれていくようだ。病院での仕事はどうだったかなど、あれこれ聞いている。
カンタレルは興にのってくると、自分でジョセスタと偽名を決めたにもかかわらず、「リリア、リリア」と呼びかける。そのたびにランドは注意した。
夜はふけていき、ランドたちは寝室にさがった。
就寝につく前に、ランドは念のためリリアの部屋をあらためた。向かい側のベッド、窓のある壁のすみに置かれた机、薬ビンの並んだ棚、と室内を見まわす。とくに注意をひくものは見当たらなかった。
リリアがふところから取りだした小箱を開け、なかにしまってあった玉をあらためている。リリアはそれに心をうばわれている様子だ。
ぱたん、とふたを閉じ、小箱を机の上に置く。リリアが就寝の準備をはじめたのをしおに、ランドは、さかいのドアから隣室に戻った。
リリアの寝室につながるドアは開けはなしたままにしておいた。自分のベッドを、ドアのある壁ぎわに移動させる。ランドは耳ざとい。隣室から不審な物音がしないかと警戒するつもりだ。
ランドはランプの明かりを消してベッドについた。リリアの部屋の照明はすでに消されていた。あたりは、しんと静まりかえる。
窓からさしこむ月光が、床ですでに大いびきのゴーラを照らしている。ゴーラはベッドを使いたがったが、壊れてしまうからとランドはことわった。
テーブルの上では、バスケットが濃い影になっている。チビットは、そのなかに布をしいて、やすらかに翼を休めていた。
ランドはベッドで耳をそばだてている。
きょう1日、リリアになんらかの脅威がせまる気配はなかった。リリアを親戚の子供とふれまわった効果があったのだろう。どうやら、敵の目をリリアからそらさせるのに成功したのかもしれない。
いつしかランドは眠りについていた。
――かたり。
小さな物音にランドは目を開いた。耳に神経を集中させる。
隣室の板戸の窓が開けられたようだ。なにものかが侵入しようとしている。
ランドは静かに起き上がると、開けはなしたドア口によって隣室をのぞいた。
向かい側のベッドに眠るリリアに異常はない。
薄暗い寝室の窓ぎわに、いっそう黒い人影が立っている。それは身長50センチほどの翼のあるシルエットだ。
曲者はリリアには目もくれず、まっすぐ机に向かう。目的のものがそこにあるとわかっている、ためらいのない動きだ。
侵入者が机の上の小箱をあらためはじめた。
箱から取りだした玉が赤く輝いて、グレムリンの邪悪な笑みを照らしだす。そのとき、グレムリンの手から玉がこぼれ落ちた。
ことり――と床をうち、赤い光の尾をひいて転がっていく。グレムリンが慌てて追いかける。玉がベッドのすそに当たって止まったところをつかまえた。
ベッドから人影が起きあがっていた。グレムリンとリリアのふたつの影がはちあわせる。リリアの悲鳴が小さくあがった。
――いけない。ランドはリリアの寝室に飛び込んだ。
グレムリンの背中を取りおさえようとして、その翼が激しく羽ばたかれる。ランドは思わずしりぞいた。そのすきにグレムリンが窓に向かい、窓わくを乗りこえて屋外に逃げだした。
ランドはすぐにあとを追い、窓外に出た。
小麦畑の上の白みだした空に向かって、グレムリンが舞いあがっていく。
ランドの目はすばやく手近な小石を探した。手ごろな石を拾うと、空高く逃げようとするグレムリンねらって投げつけた。
小石はグレムリンの後頭部に命中した。低い悲鳴とともにグレムリンが墜落していく。ランドは墜落場所を目指して走った。
グレムリンが地面から起き上がろうとしている。ランドはその背中に飛びかかり、力まかせに押さえつけた。グレムリンの手から、赤い光のすじが転がる。
そのとき、リリアの助けを求める声があがった。
屋敷の窓の外で、リリアが4匹のグレムリンに両腕をとられている。
盗まれた玉を追って寝室から出てきたんだ。ランドは、屋内にいるようにリリアに念を押さなかったのを悔やんだ。
地面に転がった玉を拾うと、ランドはすぐさま駆けもどる。
リリアをつかまえた4匹のグレムリンが飛びたち、カンタレルの屋敷の屋根を超えていく。暴れるリリアとその重量に手こずり、思うように飛べないようだ。
――まだ矢が2本残っていた。コンポジットボウの有効射程は150メートルだ。いまなら射落とせるかもしれない。
弓矢を取りにもどろうとしたランドの足が止まった。
――だめだ。グレムリンを射れば、リリアまで墜落してしまう。
水平線がオレンジ色にふちどられている。青紫色に白みはじめた空に、リリアをさらった4匹の羽ばたくシルエットが遠ざかっていった。
――やつらがリリアをさらった目的はなにか。
あの少女がリリアだと知っていたなら、すぐにも殺していたはずだ。しかし、グレムリンは、眠るリリアには目もくれず、まっさきにこの玉を奪おうとした。
視線を落とした玉の内部に、炎がやどって赤く輝く。
まるでランドを凝視しているようだ。
この玉の正体はいったい――?
それを盗もうとした張本人を問いつめよう。ランドは、グレムリンの墜落した場所に目をやる。そこに相手の姿はなかった。
外の騒ぎを聞きつけたカンタレルが、屋敷をまわってあらわれた。
ランドからリリアがさらわれたと聞くと、カンタレルが地面にがっくりひざをついた。その顔面は蒼白で、不安と恐怖に唇をわななかせている。
いつしかリリアを、かけがえのない本物の娘と信じはじめたのだろう。
翌朝、ランドとカンタレル、チビット、ゴーラは食堂に集まって、善後策について話しあった。カンタレルは、リリアが抹殺されるとおののくばかりで、ほとんど話しあいの相手にならなかった。
ランドは、やつらの目的は〈時の洞窟〉から持ち帰った玉で、リリアではなかった。やつらはリリアの正体をまだつかんでいないと主張した。
「そんなのはわからんじゃないか」
カンタレルが声をあららげる。完全に思考力をうしなっているようだ。
食堂の窓に、ばさばさと羽ばたく音がした。窓枠に舞いおりたグレムリンが、そこにえらそうな態度で腰かける。
ランドは短剣を抜いて立ち上がった。
「まあ、待て。まずはおれっちの話を聞くんだ。おれっちを殺したら、あんたらのかわいいジョセスタ嬢ちゃんは二度と生きて帰ってこないぜ」
なにかを言おうとしたカンタレルをランドは目つきで制した。
「あんたらはベルバレーラさまの大切な玉を持っている」
グレムリンが続ける。
「そこで、ジョセスタ嬢ちゃんと〈ベルバレーラの玉〉を交換しようというわけだ。時間は本日の正午、場所は〈冥府の霧〉。おかしなまねをしたら、嬢ちゃんの命はないから、そう思え。わかったな」
けけけけ、と邪悪な笑い声をあげて、グレムリンが窓枠から飛びさった。
続