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グループ分けってヤバいよね?


 わんこは可愛い。

 僕を裏切らない。

 世界で一番信頼できる仲間だ。


 僕は台風でも起こらない限り、わんこと一緒に散歩をする。

 テスト週間でも受験でも関係ない。

 それが僕のわんこ道だ。



「ハッハッハッハッハ!」


 今日もうちのわんこの『ポメ子』は大興奮だ。

 とっても可愛い茶色いポメラニアン。

 舌を出しているバカ面が愛らしい……


「ほら、そろそろ帰るよ」


「わん!」


 僕はポメ子と夜の散歩をしていたら、前からパグ犬を散歩をしている女の子が歩いてきた。


 ……なんだろう。認識しづらい。


 僕は目を凝らして見る。


 あれは……うちのクラスの地味な女の子。名前は……なんだ?


 僕らは目が合った。


 お互い相手を認識した。


 でも立ち止まることは無い。


 ……あれ、この空気……気が楽なのか? 固有結界?


 向こうから話しかけてくる心配も無い。

 僕から話しかけていくことも無い。

 向こうが安心しているのがわかる。


 僕たちはなんの関わり合いもなく、通り過ぎる予定であった。


 ポメ子が吠えた。


「わふん! わふん!」


 地味な女の子のパグも吠えた。


「ばうばう! ばばうばう!」


 2匹は僕たちの周りを駆け回った。


 僕らは目を合わせて立ち尽くす。


 会話は無い。


 でも二人で嬉しそうに遊ぶわんこ達を温かい目で見守る。


 ひとしきり遊んだわんこ達は疲れたのか、飼い主に抱っこを要望する。


 ……仕方ない。馬鹿な子ほど可愛い。


 僕と地味子はわんこを抱き上げて、目で軽く挨拶をして別れようとした。


 その時、地味子が呟いた。


「……名前何?」


 僕は一瞬で勘付いた。

 これは犬の名前を聞いている。


「ポメ子」


「……パグ太」


 地味子の顔に変化は無い。……いや、一瞬だけ眉毛が上がったのが見えた。


 僕も口角を上げて返事をする。


 僕たちは無言で別れた。









 朝だ。

 今日も学園が始まる。

 僕は目覚ましが鳴る前に止める。


 素早くカーテンを開けて日の光を浴びる。

 二度寝は身体に良くない。


 ゲームをやめてから僕の趣味は変わってしまった。

 本が好きだ。ラノベを中心で読むことが多いけど、何でも読む。

 いつか小説を書いてみたいと思っている。


 ……いつかじゃないな。書き始めればそれは現実になる。


 僕は素早く制服に着替えた。


 扉を叩く音がする。


「お兄ちゃん! 朝だよ! またゲームばっかやってたんでしょ?!」


 妹は僕がゲームをやめた事を知らない。

 扉が開いた。


「キモイ趣味は卒業すればいいのに……あ、お、おはよう」


「おはよう」


 僕は鞄を手に持って部屋を出ようとする。


「あ、待って! ちょっと、私の言うこと聞きなさいよ」


 僕は適当に返事をして、朝の妹の襲来をやり過ごす。


 リビングを見るとガランとした空間が広がっている。

 いや、家具はある。

 人がいなくて空虚な空間になっている。


 ……今日も帰ってこれなかったんだ。


 両親は仕事が忙しい。中々家に帰れない。

 でも仕方ないことだ。

 彼らは僕らを養わなければいけない。

 子供を育てるのにはお金を湯水の様に消費しなければいけない。

 学園は特別だから学費が恐ろしく安い。だから僕はランク学園に入った。


 だって迷惑をかけたくなかった。


 妹が僕を追い越して冷蔵庫を開けて麦茶を飲む。


「ぷはー、ていうかまた帰ってこなかったね。……キモいお兄ちゃんと一緒だなんて……マジ勘弁」


 思春期だろう。

 こいつがキツイ事を言って、気を引きたいという気持ちがあるのはわかっている。

 ……そんなのは親の仕事だろ?


 僕は妹の言動を意図的に理解しないようにしている。

 僕の事が嫌いでも好きでも関係ない。

 だって関わると面倒な事が絶対起きる。


 僕は妹を置いてさっさと学校へ向かった。


「あ、コラ!!」







「せんぱーい!! ミチルで……」


 僕は持ち前のステルススキルを用いて、生徒達の間をくぐり抜ける。

 わざと早歩きをすることによって、誰かから話しかけられることはない。


 僕の完成された技だ!





 教室に着くと、地味子と目が合った。

 目で挨拶を交わす。


 その後、僕は適当にクラスメイトと生産性の無い会話をしていった。


 神埼さんの視線を感じたが、僕は気づかないふりをしてやり過ごす。


 業を煮やした神埼さんは僕に近づこうとした。


 その時、三枝先生が教室へ入ってきた。


 オッケ。グッジョブ。




 三枝先生のHRが始まった。


「お前らも入学して一年が過ぎた。学園生活はどうだ? いい学園だろ?」


 クラスメイトがわいわい騒ぎながら答える。


「先生! 超楽しいよ!」

「部活の備品も充実してるし、最高!」


 先生はその反応に笑って答えてくれた。


「ふふ、それは良かった。……だがな、お前らも知っての通り、この学園は全てランク付けされている。今までは個人だけだったが、これからはグループ単位で動いてもらうぞ」


 クラスメイト達から戸惑いの声が起こる。


「え、そんなの聞いたことないです?」

「先輩から聞いた?」

「いや……」


 先生は机を叩いた。


「ほら、静かにしろ。……これは今年から初めて行うランク試験だ。説明するから待ってろ」


 先生はチョークを持って黒板になにやら書き始めた。


「いいか? お前らはこれから2人〜5人までのグループを組んでもらう。人数が少なければ少ないほどランク試験で得られるポイントが高くなる」


 先生はプリントを生徒達に渡した。


 うちの学校は全てにおいてランク付けがされている。

 1学年90人。1クラス30人の3クラス編成だ。


 この学校に入れただけで相当優秀な部類に入るだろう。

 だけど、学業だけじゃなくて、他の分野で秀でた成果を上げて入学した生徒も多数いる。




 僕の手元にもプリントが来る。


「そのプリントを今日中に私に提出しろ! 一人になってしまったやつは私の偏見と独断で適当なグループに入れる! なお、変更は受け付けない! よろしく!」


 先生のHRが終わった。


 次の授業の先生が来るまで、生徒達は騒ぎながらグループをどうしようか話し合っていた。


 ……さて、どうする? 僕はランクは正直どうでもいい。当たり障りない程度の順位になれればいい。

 それよりも、ずっと変わらないグループってことは、これからずっと関わらなきゃいけない……

 非常に面倒だ。


 適当にモブグループに入ってやり過ごせばいいのかも知れないけど、それはそれでストレスがマッハで溜まりそうだ。


 神埼の周りに人が集まる。


 ……視線を感じる。もしあんなリア充女子と一緒のグループになったら最悪だ。絶対回避しよう。


 そんな事を考えていたら、地味子の方から視線を感じた。


 僕がちらりと振り向くと、地味子と目が合った。


 一瞬だ。


 一瞬で僕らは最適解にたどり着いた。


 僕は、素早く手で僕と地味子を指す。

 地味子は動くか動かないか程度に頷く。


 僕は目を瞬きするようにして返事をした。


 ここまでわずか2秒。




 こうして僕と地味子の関係が始まった。



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