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第82話 私が噂の転生者です。

気がつくとベッドに寝かされていた。

…このパターン多いなぁ…。


体力限界まですり減らして動きすぎているのではないだろうか。

ちょっと自分が心配になる。


目を覚まし、今の自分の状況を見つめる様に自分の姿や周りをキョロキョロと見渡す。


ここはサミュエルの家。

この客間見たことがある。


子供の頃お泊まり会した時よく、この部屋を使わせてもらった。

お泊まり会は自分の家ではないので、少しだけ怖かったのでオーガストと一緒に寝ていた思い出。


あの時のままで、ホッとする。


血液で汚れていた手も服も着替えさせられていた。

ベッドの下にある真新しいルームシューズに足を通した。


ゆっくりと歩いてドアを開ける。


外に待機していたガイと目があった。


「…ガイ?」


「…メイ…!!」


ガイは飛びつく様に私を抱きしめた。


「…ごめん、また俺は君を守れなかった…!

攫われてとても悔しかった…。

ごめん、護衛失格だ…。」


捨てられた子犬の様な顔で私を力強く抱きしめる。


「…離れ離れが長かったし、しょうがない、から、ね…って、苦しい!締まりすぎ…!」


ロープを掴みたいプロレスラー並みにバタバタと手を動かした。


『あっ』と言う顔をしてガイが私を離した。


「…怪我はない?」


「私はないよ。エドエドは?」


「…もう手当ても済んで、オーガストと話ししてる。」


「…そう、私も連れてって。」


ガイは頷いて、私の手を引いた。


手を引かれサロンへと案内されると、サミュエル、オーガスト、タイラーまでも勢ぞろいだった。


「…ってタイラー様までいいの!?ここにいて…」


「レオンなら無事だ。今頃ヴィヴィアンと一緒だろ。」


まるで自分は役立たずだとも言いそうな顔で口を尖らせた。

レオンとヴィヴィアンとのことは、色々自分で折り合いがついている様子。


これはレオンさん、今なら距離を縮められるチャンスなのでは…?

一人で『ウヒヒ』なんて気持ち悪い笑いをしていると。


「それより、これの状況を説明しろ!」


口を尖らせたタイラー様が私に指差したのは、机に置かれたコルセットに詰めるだけ詰めた書類の束。


「ああ、それは…」


意気揚々と説明しようとすると。


「…お前はこれの意味を知っているのか?」


逆に質問される。


「…契約ですよね?約束事を決めて破らせない様にする、と言う認識ですが…。」


オーガストとエドエドが顔を見合わせた。


それをタイラー様がじっと見つめて、私に破かれた書類を差し出した。


…何が言いたいのだろうと思いつつ、書類を受け取る。


「これは、縛られていた書類の残骸です。

オーガストと、エドエドが子供の頃、スタインバークと結んだ契約の紙の…」


「なぜ破けた?」


「…手で、こうビリーッと…」


ジェスチャー付きで紙を破く真似をする。


それをみんなが見つめると言う不思議な状況。


???

なんなんだろう。


はてなが沢山頭の上に浮かび上がる。


なんだこの空気は。


なんでみんな変な顔をしているんだ?


もう一度首をかしげる。


その様子にタイラー様が深ーく息を吐き出された。


「おい、お前。この書類の束をちょっと触ってみろ」


タイラー様が護衛騎士の一人を指差した。

騎士も戸惑った様に自分を指差したまま、ひどく驚いた顔をした。


タイラー様が苛立ちを隠さない様に、睨みつけたまま人差し指だけで手招きをする。

騎士が観念した様に肩を落とし、手にはめていたガントレットを外した。

そして。


ゆっくりと震える指で、青白く光る書類に触れると。


『バチン』


鈍い音がなった。

静電気よりちょっと重めな、感電?の様な。


痛みのせいか、騎士が顔を歪め後ろに転がった。

痛がる様に手を抑え、指先が黒く焦げた様に見える。


…あれ?


思わずエドエドさんの方を見ると、エドエドさんが笑顔で自分の軽く焦げた爪先を私に向ける。


…うん、これは現場で見たけども…。


…で?

で、なんなんだ…?


ますますわからないので、首を傾げながらタイラー様を見る。

私の様子にタイラー様がお手上げの様に、頭を抱えた。


「やっぱりお前の脳みそは足らない様だな…。」


「…すいません!わからないので説明してください!」


タイラー様がまたそれはもう、深ーいため息をついて口を開いた。


「この契約の書類は、奴隷さえも縛る昔の方法だ。

今はこんなまどろこしいことしなくてももっと簡単な契約の方法もあるが、これは最も手が掛かって重いものだ。

簡単に言えば魔法契約に似た様なもので、この方法を使っているのは、あー…さっきも言った奴隷契約ぐらいしか使われていないぐらい、古い方法だ。」


タイラー様がそっとサロンの椅子に座りなおす。


「しかもここに書かれた名前が、ほぼレッドメイル派の貴族たちだ。

なぜ、お前が持っている?」


「…スタインバークの執務室から適当に、知ってる感じの名前を持ってこれるだけ持ってきましたけど…。

まっままま、まさか泥棒とか罪になったりするんですか!?まさか…」


なんでまさかを3回言ったのか。

それはもう動揺しまくったからですけど…。


ええーどうしよう!

良かれと思って持ってきたものがまさか、罪になるなって思っても見なかった!!


恩着せがましくだとか、恩を売っておこうだとか思った私の罰なのかしら…。


口を押さえガクガクと震える私に、タイラー様が冷たく言った。


「…バカ女のせいで話が進まないんだが?」


「…すいません王子、よかったら気にせず進めてくださると…」


オーガストが苦笑いをして私のそばに歩いてきた。

そして『よーしよし、大丈夫だからねー』なんて言いながら、私をあやし始める。


…幼児じゃないから!!

何この幼児扱い!


私を撫でるオーガストの手を威嚇と共に振り払うと、何故かクスクスと微笑まれているという。


「結果この書類はレッドメイルにとって救われた。これがないと多分満場一致で王位を奪われていたはず…。

エイプリル、王に代わり礼を言う…。」


そう言うとタイラー様は私に深々と頭を下げた。


「えええ!?…あのタイラー様が…!」


「…お前その口の緩みをなんとかしほうがいいぞ?あ?縫ってやろうか?」


「…失言でした!!

…お役に立てたなら幸いです!!」


慌てて口を押さえ後ずさる。

怖い怖い。

何も考えてなかった…!


「…で、だ。」


で…?


タイラー様が人差し指を積まれた書類に向ける。


「なぜお前はこれに触れた?」


「へ?」


「さっきも言った通り、奴隷契約で使われるものだ。

軽はずみにかけた本人以外が触ると、あいつみたいに指が焦げる結果となるはずなんだが。」


「…え?」


「試しにお前これ触ってみせろ!」


人差し指を何度も書類に向けて私に触れと促す。

私はなんの躊躇もせず、その書類に手のひらを置いた。


ぼんやりとした青い光は、私が触ると細く緩やかに揺れ、薄くなった。


まるでホコリでも払うように何度もペタペタと触る。


それを見てまたタイラー様が呆れたように息を吐いた。


「…お前は一体、何者だ。」


少し低めの声で、私に問う。


書類から手を離し、ゆっくりとタイラー様を見上げる。


「…前にお話した通り、転生者と言うものです。」


私はゴクリと唾液を飲み込むと、硬い表情で微笑んだ。





いつもありがとうございます。

駆け足!駆け足!で頑張っているつもりなのに、おかしい進まない…!

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