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第76話 今こそ、異世界の知識をフル活用。

必死に呼びかけたが、レオンの意識はないまま。

騒ぎを聞きつけてコブさんもイオさんもやって来る。


グッタリとしたまま寝かされているレオンを見て、コブさんが叫んだ。


「おい、メイ!!どうなってんだこれは…!」


「…違法に街の下に鉱山を掘ってたようで…それが沈下した。」


私の言葉に言葉が出なくなるコブさん。

イオさんも街が崩れた事にひどくショックを受けていた。


「リル、落ち着いて考えてほしいことがあるんだ。」


オーガストが私の背中にそっと手を添える。

そして反対の手で私の肩をだき、自分の方へ私を向かせた。


「リル、思い出して。

前世でこういう時何か対処ができることがあったかな?

ここには医者がいない。

リルの知識が何か、レオン様にできることないかな…。」


オーガストの手が少し震えていた。

彼も怖いのかもしれない。


その震えを見て少し冷静になった。


まず前世の記憶を辿る。


どこから落ちた時ってどうなる?

骨折する。

下手すると内臓損傷がある。

意識がないところを見ると、もしかして頭を打ってる可能性もある。


そういう時はどうしたらいいんだっけ?

頭を動かしてはいけない。


あとは?

昔見た医療系のドラマをふと思い出す。


あの人たちは何をしていた?


確か家族の誰かが骨折した事があって、あの時どんな反応をしていた?


高校の時に確か心臓マッサージの講習みたいなのも受けた気がする。

でもあれは、今のレオンには関係なさそう…?


ぐるぐる回る記憶。


一気に色々思い出そうとすると、記憶は一層に鮮明になっていった。


「えっと、動かさない。

頭を打っているかもだから。

あとは、確か…体のどこか骨折していると顔色が悪くなって、吐き気があったりするから…意識がない状態だと喉に吐いたものがつまらないようにやや頭だけ横向きの方がいいかも。

あ、でも動かす時は慎重に…。

そして体を出来るだけ硬いところに寝かして…固定するといいのかも。」


私の言葉に騎士たちが動く。


レオンの顔色がみるみる真っ青になったのを見計らって、そっと頭を横向きにした。

どこか痛いのか、顔を歪ませる。


コブさんとイオさんに頼んで、あっちこっち瓦礫からシーツや上着をたくさん持ってきてくれたので、それと長い棒でなんちゃって担架をたくさん作った。

こっちは知識なんかないから見よう見まね。


上着二つを棒に通す。間に隙間がないように、シーツで補強した。


吐き気はなさそうなので、そっと担架にレオンを動かす。


落ちた自警団の人たちも、1人づつ救出され、イオさんや護衛の人に傷の手当てを受けた。

誰一人意識は失ってないようで、レオンが一番重症だった。


「ここに連れて来なければ…」


思わず口から弱音が溢れた。


その言葉にタイラーが私の胸元に掴みかかった。


「…その通り、お前のせいだ。

お前がこんなところにレオンを連れて来なければ…!!」


オーガストが止めようと私とタイラーの間に入ろうとしたが、私が止めた。


タイラーは私を睨みつけながら続ける。


「だが、ここにきたのはレオンの意思。

だからこそ、お前がそんな弱音を吐く立場ではない!!

レオンを思うなら、後ろ向きな発言は2度とするんじゃない!」


タイラーはそういうと、私を払いつけるように手を離す。


「…おいバカ女。

分かったら返事をして他も指示しろ!」


しかめっ面に涙が溢れる。


泣いてる暇なんかないのに。


「返事をしろといっている!!」


「…はい!!」


タイラーの苛立つ声に、大きく返事をした。


「オーガスト、馬車が来たらすぐ教えて。

1便には怪我人優先で。

レオンはなるべく揺らさないように、担架を馬車に固定をして一人だけで乗せて。

付き添いは少なめで。重いと馬車が遅れる。」


「分かった、見て来る。」


「付き添いの護衛さんはレオンに寒くないようにシーツを沢山かけてあげて下さい。

なるべく頭を揺らさないように、吐き気もなさそうなので頭を担架に固定します。」


確か医療系のドラマで、こんなことやってたよね?

見よう見まねの知識で、これが正しいなんてわからないけど…。


今は信じるしかない。

自分自身を…。


「怪我人で自分で歩ける人は自分で歩いて街の入り口に。

歩けない人は痛い部位を固定してもらって、誰かに肩を借りて!」


すっかり大人しくなった自警団の人たちも、素直に頷いた。


シーツを割いて、包帯がわりに。


足や手や痛いところに添え木をして固定した。


じんわり汗が滲み、巻いてる包帯の上にポタリと落ちた。


静かに自警団の人が、私の汗を持っていた布で拭いてくれる。


そして。


小さく『悪かった…』と言った。


私は何も答えなかったけど、少し心が軽くなった。



全ての怪我人の手当てを終えるぐらいに、街の入り口が騒がしくなった。


馬車が来たのかと私も向かう。


「メイー!!」


見慣れた黒いノッポが私に手を振っていた。


「コラ!!ガイどこに行ってたんだ!!」


思わずイオさん口調でノッポに怒りをぶつけた。


「心配したでしょ!!勝手にどっかに行ったら!

助けに行ったんだよ、みんなで!!」


「…ごめんね?

なんか近くの町にみんなを移動させたって聞いちゃったから、ここはオーガストさんやレオンさんも居たから…いいかなって思って。」


『いいかな』じゃねーわ!!


なら一言ぐらい行ってから行けっていうんだ!

ホウレンソウ!

今度みっちり教えないと…。


間抜けな理由で居なくなってたガイも合流して。

ふと辺りを見渡すと…。


「お父様!!!」


「…エイプリル…!!」


会いたかったお父様の姿に、涙が溢れた。


ギュッとお父様に抱きしめられる。


こっちに帰って一度もあってない。

だから半年ぶりのお父様…。


お父様も涙があふれていた。


「ごめんなさい、お父様…。」


「いいんだ…無事で会えただけで、もうそれでいいんだ…!」


少し痩せて小さく見えるお父様の髪の毛に、白い髪の毛が沢山増えているのがわかる。

頬もこけ、これが全部私のせいなのかと、私は沢山泣いた。


「…彼が、助けてくれたんだ…。」


優しく私の髪を撫でるお父様が、ガイに手のひらを向ける。


「…彼は私の護衛をずっとしてくれていた人です。」


「…そうか、リルも助けられていたんだな…。

後でちゃんとお礼をしないとだな…。」


再び二人でガイの方を見ると、相変わらずマイペースなので、キョトンとした顔でこっちを見ていた。


「オーガストには会いましたか?」


「ああ、入り口で既に会って、抱きしめてきた。」


「そうでしたか!」


思わずお父様の行動に微笑んだ。

オーガストもホッとしただろう、本当に無事でよかった。


…あれ、でも。


誰かが言ってたことが気にかかった。


お父様は私をいう事きかせる道具だったのでは?


なのにお父様が連れていかれてないと行くことは…。


腑に落ちない感覚に頭を捻った。


私につられてガイも頭をひねる。


いや、あんたはいいから!

軽く睨み付けると、にっこりと微笑んだ。


「ガイ、イオさんとコブさんにちゃんと無事を報告してきて。

私は馬車が来たか入り口の方を見てくる。」


お父様も少し怪我をしていたので、イオさんにお願いして、私は入り口の方へ向かった。


レオンは無事だろうか。

意識は戻ってないだろうか…。


テクテク入り口の方へ行くと…おかしいな、誰もいない。


馬車が来て全員乗ったとしても、オーガストや護衛騎士の人までいないのはおかしい。


首を傾げながら、入り口の門から、外に向かって覗き込んだ。


門の外に人影が見える。


そろそろ日がくれてくるので、早く馬車が来ないと夜道を走るのは危険だ。


そんなことを思いながら、人影に手を振った。


「…こんばんは、エイプリル。」


低く上品な声が私を呼んだ。


「…こんばんは…?」


挨拶をしながらその人影に近寄っていくと。


あっという間だった。


人影はみるみる長髪の紳士の姿を目に焼き付けせる。

そして静かに手を引かれると、何かに押し込められて連れ去られてしまったようだ。



いつもありがとうございます。

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