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第72話 ヒーローは遅れて登場する?

上で通った道を下で戻る、不思議な感覚。

結構下の道だと長く感じる。


しかも下の道の方が足もとが砂利や小石で歩きづらく感じで、時間がかかっている。


息を殺し、物音を立てずに3人で移動する。

しばらく暗闇を進むと、仄かな明かりと人の話し声が聞こえてくる…。


「…コイツらも鉱山に連れて行くしかねぇな…」


「そうだな、王族の騎士がうろちょろしてるならここもあぶねぇかもな。」


…ん?

…騎士?


思わずレオンを見上げると、レオンも『あっ』という顔をしている。

オーガストに関しては苦笑い。


あれだな…レオンがいなくなったことにより護衛が必死で探し回っているということなんだろうか。

なんともタイミング悪い…。


どうせレオン王子のことだ、ディゴリーの令嬢もいないところを見ると、鉱山の街に行きやがったな…。

護衛の思考、きっと、こう。

私ならそう思う。


こっそり影からイオさんたちの様子を見る。


イオさん御機嫌斜めそうだけど、元気そうだ…。

すっごい剣幕で睨みあげているけれど。


自警団もさっきのメンバーとは入れ替わり、レイモンド様もまんまるも居なさそう。


「…今いるのは3人だな…。

交代した今が手薄なのかもしれない…」


レオンがぼそりと呟いた。


「…護衛騎士が来るまでには、もう時間がないですしね…。」


オーガストもため息混じりに呟いた。


私が2人のやりとりをキョロキョロとしているうちに、2人は顔を見合わせて頷いた。


「…え?」


思わず疑問を口にしましたが、まるっきり無視です。


「エイプリルは僕らが飛び出したらとにかく、これを持ってまっすぐ大きな通りをイオさん達と走るんだ。」


「…え!?」


どんどん話は進んでいき、携帯ランプを手渡され、あっという間に2人は飛び出していった。


いっせーのぉせ!とか合図はない。

ただ突然に剣を抜き飛び出したのだ。


こ、心の準備とは。


遅れて飛び出し、イオさんの元へ。

そして『急いで!』とだけ女性たちに告げ、私達は必死で走った。


オーガストとレオンが剣を振り回す華麗な姿なんて見ている暇もなく。

ただ穴に落ちたおにぎりの様に、転がりながら外への明かりを目指した。


見覚えある大きな扉をみんなで押し、再びヌメヌメゾーンへと突入する。

今度は登りだが、慎重に登って行く。

ザッと見積もって20人ぐらいの人達と、落ちない様に慎重に。


後ろを振り返ると、オーガストもレオンも無事についてきていた。

逸れなくてホッとする。


後ろから何か追いかけてくる音もしないのを不思議に思いながら、何度も振り向いた。


…おかしいな。

なんでついてこない?

護衛3人だったけど、あれだけ大きな音や悲鳴が上がればきっと応援は来るはずなのに。


必死に時間をかけて登ったヌメヌメゾーンを越えて、やっと屋敷の外へ出ると。


…うんまぁ、ついてこない時点でお察しなんだけどね。

うん、知ってた。


廃屋を出ると、待ち構えるまんまる達。

ニタニタと私たちをしてやったりな顔で見つめる。


さっき下にいた自警団のメンバーも、アイタタポーズを各自でしながら、こっちをにらんでいた。


「早く出れるルートがあるなら先に教えて欲しかった!!」


思わず叫んだ私の口を、オーガストが速攻で手で塞いだ。


止めてくれるな、弟よ。

言わせてくれ!!

心の声を言わせてくれ!!


「頼むから緊張感…!」


「…相変わらずだなぁ…!」


冷や汗のオーガストとは他所に、『アハハ』と笑うレオン。


「…お陰で気が楽になった。」


ふとレオンの顔が真面目になる。


静かに腰にかけている剣を抜く。

それに合わせてオーガストも剣を抜いた。


私も自分の腰を見たが、何もない。


え、私何もない…?

どうしよう、取り敢えず拳を二つ握りしめ、2人の後に続こうとする。


続こうとした時点で、オーガストにデコピンされる。


「…ねぇ、頼むから緊張感持とうね…!」


「はい…」


デコを押さえて涙目。

結構痛かった。


こっちの戦闘態勢に、まんまるも下っ端も剣を抜いた。

ビリッとした緊張感が、『やっと』走る。


オーガストが静かに私をイオさん達の方へ押した。


剣を構え、じりじりとしたにらみ合いが続く。


だが突然にその緊張感を解いたのは、私ではなかった。


「…そこまでだ!」


振り向くと、逆光の人物が立っていた。

逆光で何かに片足をかけている。


まるで港の防波堤で一度はやるポーズ。

海の男ポーズ…!


みんな『誰だろう』と必死に目を凝らしているうちに、ドカドカと騎士達がまんまる達を取り押さえて行った。

その間、逆光の人物の笑い声だけが響いていた。


…緊張感は最後まで間抜けな感じで、あっという間に終わったのだった。



レオンがハァとため息をついて、頭を抱える。


「…兄さん。」


その言葉にレオンと逆光の兄さんを交互に見つめる。


「…全く世話の焼ける弟だなあ」


嬉しそうに近づいてきた。


「…タイラー…あ、様。」


と、思ったら急に方向転換をして私の前に立った。


「…お前今呼び捨てしようとしただろう…!」


「…そんな滅相も…」


タイラーは私の肩をグイッと持ち上げる。

身長差…!!

足が浮く…!


「お前が影で呼び捨てしてんのはいまわかったからな。

忘れないからなぁ!!」


「…そんな滅相も…」


なぜかレオンの方に行かず、こっちにやってきて肩を掴まれガクガクされている私。

レオンとオーガストが、こっちのやりとりを見ながら苦笑いを浮かべ、剣をしまった。


タイラー、私のこと好きなのか嫌いなのか…。


「…とりあえず、女性達は全員お前達の屋敷に保護したが…

一体どう言うことだ…、鉱山の爆発で魔物が出たんじゃなかったのか…」


タイラーは街の様子をまじまじと観察した。

レオンが側で小さく息を吐き、微笑む。


「…スタインバーク主導の反乱の様です。

魔物自体は外の木々の方が被害が大きそうでしたね。」


「…すぐに報告に向かわせる。

ある程度の対策はもうしてきた。

…それで、次は何を?」


タイラーがレオンの顔を見つめた。


「…僕らは仲間が捕まっているので、そっちへ行かないとです。」


そう言うと静かにオーガストの方を見る。


「馬鹿を言うな、お前達に行かせるか!いま騎士を向かわせる。」


「…いえ、俺も行きます。」


レオンの一歩も引かない顔に、タイラーもすぐ折れた。


「…チッ。わかった、言い出したら聞かなそうだな…。

とりあえずお前ら、何人か護衛も一緒に連れてけ。

黒幕ひっ捕らえて、連れて来い。」


タイラーが何人かの騎士を指で指名した。

その合図に騎士が数人前に出る。


そして他の数人に城に向かわせる様に手配した。


取り敢えずイオさんの無事にホッとしたら、今度はあっちの鉱山が気になってくる。

お父様とガイ、コブさんは全員シェルターに閉じ込められているならいいけど、本当に鉱山に閉じ込められていたら、魔物とかの心配もあるし。


しかしまんまるさん。

捕獲されて、自分が作った地下牢に閉じ込められると言う滑稽な結果は自分でも思わなかっただろう…。

地下が役に立ってよかったね…。


思わずちょっぴり黒い私がひょっこりと出てきて、『ぐへへ』と笑ってしまう。

私なら絶対ヤダ。

自分の作った地下牢に入れられるなんて…!


そんな事を考えながら、オーガストが騎士の人達に出した鉱山の見取り図を見ている時。


噴水の向こう。

そう、コブさん家の方角から大きな爆発音が聞こえたのだった。


黙々と煙が上がる。

その煙を、呆然と私は見つめていた。



更新止まってすみませんでした。

いつもありがとうございますm(_ _)m


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