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第7話 再びやって来た婚約破棄⁉︎

「学校は楽しいか?」


「はい!お父様。今日お友達がお家に遊びにきてくれたんですよ!」


「ほう!なんてうちの令嬢かな?」


「スタインバーク家のラルフ様です!」


「…スタイン?ら、ルフ?」


「…お父様、その件については僕から後で説明を…!」


「う、うむ。一瞬目の前が暗くなったぞ…。」


「あら、お父様。お疲れじゃないですか?」


「ああ、一瞬で疲れた気がする…。それで、新商品の方はどうだ?」


「タイガーアイはやはり、サファイアほどの価値はありませんが、『パワーストーン』としての価値は急上昇中ですねぇ。

やはり廃棄しなくてよかったと思います。

タイガーアイの効果をもっと実証をとって、金運が上がる石でもっと価値が出るはずです。」


「エイプリルは目の付け所がやはり違うな。

オーガスト、今回のダイヤの量はどうだった?」


「ダイヤはやはり少ないです。オパールが今回は多めでした。

ダイヤを狙うなら、もっと奥に行くのが良いと思いますが、新しい穴を掘るべきという声も…」


「そうか…、予算は沢山あるのだが、どうするべきか…」


「新しい穴を掘るにはまた予算がかかりますよねぇ?

もう少し今取れた鉱石を捌いてから、考えるべきかなって。

今回も大量に鉱石は取れて、分析中ですしねぇ。

もしかすると、まだダイヤも増えるかも?

それから奥に進むほうが無難な気がします。」


「僕もそう思います。

新たに予算を組むには、ちょっと冒険し過ぎる気も。」


「そうか。ならそうしよう。」


これがうちの夕飯時の親子の会話です。

毎日売り上げや、取れた鉱石の話をお父様とオーガストとする事が、何よりも楽しい…!


私が注目していたタイガーアイの加工品も、順調に人気が出ていますしね。

時代はパワーストーンです!!

ダイヤとは違う、お手軽な魅力をふんだんに出していきましょう!


まぁお金はあっても我が家は、ややケチかもしれませんねぇ。

いや、堅実といったほうが正しい。


浪費!絶対ダメ☆


「あ、エイプリル。」


「何ですか?お父様」


「寝る前に利益のお金を積み上げて喜ぶのは控えなさい…。メイド達から苦情が来ている。

『お嬢様が怖い』と。」


「んあ!?」


失礼なー!!

怖いとは何ですかああ!!

お金大事ですよ!?

ちゃんと数を数えないと、夜中に小人が来て1枚増やしてくれてたらお礼も言えませんよ?


「まぁ『いちまーい、にまーい、さんまーい…』なんて夜中に数えたら、ちょっと井戸から何か出てきそうで不気味で怖いと思うよ?」


「…次からコッソリ無言でやることにしますわ…。」


オーガストは『それも怖いけども…』なんて呟きながら、苦笑いをした。


お父様が私を愛おしそうに頭を撫でる。


「そう言えば、バカアルドはどうなった?」


「は?バカアル…?」


お父様は今なんとおっしゃいました?

バカアルドとはアルド様のことなのでしょうか?

それともバカアルドという方なのでしょうか?


「おおっと、口から本音が出てしまったな。あれから何もされてないか?」


「昨日か一昨日に見た気がしますが、話をする暇は与えませんでしたから大丈夫です。」


「そうかそうか。よくやったオーガスト。

ローラント侯爵には通達したし、支援金も差し止めた。

何通も手紙が送られてきているが、どうせ金の無心だろう、一切見ていない。

そろそろ破棄の申請も受理されたと思うから、エイプリルは安心して良いからな。

お父さんがお前に良い相手を探してやる。

もしくはオーガストでも良い。

そしてもしくは行かなくても構わん。」


「お父さん、僕は『もしくは』なのですか…」


「お前かセヴァニー商会のサミュエルかと思っているがなぁ。

お父さん的には、手元から離したくないので、お前有利だ。」


「是非その方向で進めていただきたい。

サミュエルには無理です。

姉は僕じゃないと扱いきれないですよ、お父さん!」


「…そう思うなら、スタインバークには注意しろ。

エイプリルのこのすッとぼけた可愛さを気に入ってしまったら厄介だ。」


「お、お父さん…それはちょっと僕には難題です…。

既にその兆しが…しかも元王族の公爵ですよ…?」


「…何としても止めろ。そしてエイプリルを奴の目に触れさせるな。」


「…御意」


気がつくとお父様とオーガストが、微笑み合っていました。

養子といえど、仲の良い親子です。

私も安心ですねぇ。


私も微笑みに混ぜてもらいましょう。

ニコニコ。


こうして楽しい親子の団欒はあっという間に、過ぎていくのでありました。




「ふはは!!来たな、バカ女。」


おはようございます。

またまた朝一番、この光景ですか…。


今日はいつもと違うところが、片手に女性を抱えていないということです。

踏ん反り返ってますねぇ、両手は腰に添えられています。


「…おはようございます、アルド様。」


「ざまぁみろ、バカ女。破棄は受理できなかったと手紙が来たぞ!!」


「…え?」


「ほら見ろ、ここにレッドメイル王の印鑑付きだ。

だから言ったんだ、お前は俺から離れられないんだよ…!

ていうか、お前の家にも届いてただろう?

なんで見てないんだよ!」


ああ、なんて残念なイケメンでしょうか。

この醜態。

これを目撃されたなら、モテなくなりそうな程のドヤ顔です。


黙ってたらかっこいいのに。

本当に残念すぎる…!


「…はぁ」


「おい!なんでため息ついてんだ!なんとか言え!!」


「…なんとか…。」


「なんとかって言えって言ってないだろう、なんとか言えっていったんだ、バカめ!!」


「はぁ。」


「…ローラント様、そろそろ黙りましょうか。

己の醜態で注目を集めていますよ?」


馬車から降りてきたオーガストが素敵な笑顔でアルド様に詰め寄ります。


「これ以上、姉を、バカ女呼ばわりをしたら、僕が、あなたの頭の中を…綺麗にお掃除して差し上げることになりますがよろしいのでしょうか?」


「ん?ねぇねぇ…あなたの頭の中を、から先が早口すぎて聞き取れなかったのだけど、オーガスト?

なんて言いましたか?もう一度ハッキリと言」


「あばば、うるさいぞオーガスト!俺に逆らう気か、男爵風情で!」


「その男爵風情の金でのうのうと贅沢して生きているのは誰だよ?え?

そろそろ黙らないと、僕の我慢も限界なんだけど?」


オーガストが自分の背中を盾に、誰にも見えない位置で、アルド様の頬をムギュウっと片手で掴みました。

そして直ぐ、投げ捨てる様に頬から手を離し、ハンカチで拭いてます、手を。

ヌルヌルでもしてたのでしょうか?


とても嫌そうに拭いています。


ハンカチをポイっと捨てましたね。

こんなとこにポイ捨てはダメでしょう!

いつからそんな悪い子になってしまったの。

と、思ったら。


捨てたハンカチをキャアキャアいうお嬢さん達が、サッサと拾っていかれました。

なんてエコなお嬢さん達!!

私は感動です。


あれ?でも何か違いますね?

拾ったハンカチを大事そうに袋に入れ、大事そうに胸に抱えています。


ええっと、どっちに対しての需要なのでしょうか…?

アルド様の顔の油の需要?

オーガストの手が触れたハンカチの需要?


オーガストは下を向き、何かを落ち着かせようとしている様子。

お嬢さん達にハンカチ拾われて恥ずかしかったのでしょうか…?


「なんとでもいうがいい。

婚約破棄は受理されなかったのだからな。

エイプリル、お前は俺のものだ!

…わかったな!?」


私の目の前に人差し指を突き出します。

ああ、私先端恐怖症なんです。

人に指を向けてはいけないと教わらなかったのでしょうか。


思わず目をギュッと閉じました。


「エイプリルはお前のものなのか?」


「そうだ俺のものだ!だから俺の自由にしていい…」


声がして、目を開けると。

アルド様は私の後ろを強張った顔で見つめています。

はて?


私も後ろを振り返ります。


「あら、おはようございます。スタインバーク様。」


「エイプリル、ラルフと呼べと言っただろう?」


「ラルフ様。」


朝日に輝く揺れる銀髪に、キラキラの笑顔で私を見ます。


うっ…!眩しい…!


思わず右手で眩しさを防御。

そして目を細めます。


「人の顔を見て何をやってるんだ、相変わらず変な奴だな。」


『ははは』と口元を押さえながら、笑っておられます。

なぜだかわかりませんが、楽しそうで何よりです。


「すすすs、すたいんばーくさま…!」


「お前は、エイプリルの元婚約者か。

さっきの話だと受理されなかったとか?」


「ははは、はい。ですから俺は元ではなく…」


「そうか、わかった。

エイプリル、書類は家か?」


「へ?…書類!?

書類…ええ、多分。

昨日のお父様の話だと、手紙は封をまだ開けてないと仰っていたので、家ですね、はい。」


「ならば放課後それをもって、城に行くぞ」


「「「…え!?」」」


ニンマリと笑うラルフ様に、私とオーガスト、なぜかアルド様も声まで揃いました。


「…なぜスタインバーク様が俺たちの問題に首を突っ込まれるのですか!?

これはうちとディゴリーの問題であって…」


「最初はお前が破棄を望んだのだろう?

何故とは何故だ?

お前の望みもエイプリルの望みも婚約破棄ならば、これは不当な書類ということになる。

抗議しに行けばいい、お前も一緒に。」


「ああ、抗議…。」


私が呟くと、アルド様の顔が一気に赤くなった。

足が一歩前に出ます。


それにオーガストが反応しますが、ラルフ様の方がちょっと早かったようです。

私をかばう様に後ろに隠しました。


それを泣きそうな顔でアルド様が見つめます。

オーガストは、やはりここからは顔がよく見えず。

ですが拳を握りしめたままです。


「エイプリルと俺はレッドメイル王に勧められて婚約したのですよ!

なので、王は俺たちの結婚を望まれていて…」


「だからこそ、横暴だと抗議に行くのだ。

そろそろ鐘がなってるが、教室へ行かなくていいのか?」


「あら?」


オーガストが私の手を引きました。

見事くるりんと、オーガストの後ろにやられましたよ。


「スタインバーク様、抗議に関しては父と協議し、こちらだけで行きますのでお構いなく。

さぁ、行こうかリル。」


「ええ、そうね。御機嫌よう、ラルフ様」


「エイプリル、『スタインバーク様』ね。」


「スタインバーク様。」


「あ、おい…!」


あっという間に手を引かれ、教室です。

私なんてうっかり靴のまま来てしまったので、オーガストが上履きを取りに戻ってくれました。


なるほど、いいことを聞きました。

『婚約破棄、ダメ☆』と言われたからって、諦めなくていいのですね!

お城に『それ、なんでなん?』って抗議に行けばいいのか!!


スタインバーク様はやはり元王族ということで、その辺の事情をよくご存知なのですねぇ。

勉強になりました。


帰ったらお父様に相談して…流石に放課後は無理ですが、お休みの日でも一緒にお城に行ってみましょう!

そういえばお城って行った事ないですねぇ。


どんなとこなんでしょう?

ちょっと楽しみです。


そういえば、オーガストがずっと様子がおかしいですね?

ずっと下を向いて、表情がわかりません。


ハンカチをポイ捨てした事を悔いているのなら、さっきのお嬢さん達にお礼を言えばいいのに。

ちゃんと拾ってくれたので、安心してもいいのに。


あとで教えてあげようっと。


そして私は午前中の授業をもう1人の私に受けてもらうのだった。

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