第69話 いざ☆廃屋へ!
日が落ちるまでガイから預かった石を、出来るだけ太陽の日に当てて充電をした。
多分これでだいぶ紫外線は貯められたと思うけど。
現代で考えると仕組みはわかっても性質がわからない石だなぁ。
とても便利だけど。
秘密裏に別の転生者がこういうの作っているんだろうか?
こんなんできたらそりゃ救世主だな…。
静かにブラックライト石(勝手に命名)を手でポンと叩くと、足元がぼんやりと薄緑に光った。
それを辿りながら、進んでいく。
「よく考えたらさ、なんでまんまるは自分の屋敷に戻らなかったのだろ?」
足元に石を当てながら、かろうじて光る鉱石の微粒子を探していく。
誤算だったのが、鉱石を削った微粒子なので、時間が経ったら風で飛ばされたのか、わずかに残った痕跡しかなくて必死だ。
レオンとオーガストは左右を警戒しながら離れずついて来た。
「…鍵とかも替えてるし、入れないよ。
しかも誰かの手助け込みで潜伏するなら、あの家はもう必要ないはず。」
「なるほど…。」
まぁあの家はディゴリーの持ち物ですし…。
まぁ勝手に入られたら困るよね。
うっかり鉢合わせしなくて本当に良かった。
テクテクと夜の街を歩く。
この街にいた頃は治安の事を考えて、イオさんに暗くなってから外を歩く事を禁止されていた。
だからこそ新鮮で、少しの恐怖。
石畳の道のおかげで、微粒子は石の隙間に混在してくれていたので、迷う事なく古びた屋敷へと続いていた。
「…ここは?」
レオンがフードの端を少しだけ上げながら、私に聞いた。
「ここは、空き家だったと思う。
子供たちがお化けが出るからって、誰も近寄らなかったとこだね。
街の隅っこだったし、私も殆どここには来た事なかったし。
誰の持ち物かまではわからないなぁ。」
オーガストが携帯用のランプを目元高さまで上げた。
「街の住人全てを隠すには小さいな…。」
「…一見ただの廃屋のように見える。」
レオンとオーガストが上を見上げる中、私はブラックライト石で下を見ていた。
「…でもこっちに繋がってるねようだね。」
下を向いたまま中腰で先に進むと、廃屋の裏手へとつながっていた。
「ここから鉱山までどれくらい?」
「鉱山へはこのままあっち方へ歩くとすぐ。
この廃屋からだと歩いて5分ぐらいの距離はあるかな。」
そう言うと、私は反対に続く道を指差した。
「ここの下は鉱山へ繋がったりは?」
レオンが辺りを気にしながら私の指差した方角を見た。
「うーん、方向的に考えにくいかな。
ここは少し北西の隅っこだし、土地の形的に西から東の方に広がっているはず。
決められた方向にしか掘ってはいけないってルールがあるから、それは間違いないと思う。
コブさんのお店が東の端だから、入り口は西側と東側にいくつかあるかもしれない。
そもそも人が住んでいる下は掘らないと思う。
地盤沈下が起きてしまうから。」
「地盤沈下…。」
レオンが呟く。
ああ、こっちはそんな単語はないのかな?
「そう、ええっと。
例えば私たちが今立っている下を誰かが少し下で穴を掘るとするじゃない。
そしたら私たちの下は地面で見えないけど、空洞になっている。
今の状態だと何でもないけど、地震だとかで地層がズレてしまったり、この場所に1000人ぐらいの人が押し寄せたりしたら、重さに耐えきれず地面が崩れて大きな穴に落ちてしまう事を、地盤沈下と言います。」
「…空洞に負荷がかかると落とし穴みたいに落ちると言う事だな…!」
「…すごい丁寧に説明した私の立場は…!」
説明した意味!!
思わず賢い王子をジト目で睨む。
レオンは意味が分からず少し困った顔をした。
それをオーガストが吹き出す。
流石にアジトの前なので大声で笑うことはないが、久々にオーガストが笑っている顔を見れてホッとする。
緊張が緩んだとこで、改めて廃屋を見つめる。
その横に小さな勝手口があるのだが、発光した微粒子はそっちへ繋がっていた。
ゆっくりとすり足で近寄る。
扉に耳を押し付け、中の様子を伺う。
中からは音がしない。
ドアノブを軽く触ると、鍵はかかってなさそうだった。
レオンとオーガストを見ると、私を見て頷いた。
そっとドアノブを回す。
静かに扉が軋む音を響かせてゆっくりと開いた。
心の中で『しーっ!!』なんて思いながら。
ひとまずオーガストが中に入り、最後にレオンが後ろを守る。
私は真ん中。
戦えないので…。
こんな事ならせめて棍棒くらいはうまく振り回せるように練習すればよかった。
廃屋は一見2DKぐらいの広さで、あっという間に見渡せる。
映画でいうとこの『クリア!』な状態。
拳銃を持ってアジトに潜入したFBIになった気分。
壁にべったり張り付きながら、床の微粒子を探す。
ブラックライト石の寿命は短いようで、段々と微粒子を探すのもキツくなってきた。
…早くしなきゃ。
鉱山に閉じ込められた人たちも心配…。
わずかな微粒子を探し、荒れた床を目を凝らし、くまなく探す。
かすかに光るつぶつぶは、食器棚の下の絨毯の端で切れていた。
静かに指を指す。
オーガストが食器棚を押し、ズラすと。
「…地下に続く階段。」
「…ん?」
まんまるの家にしてもここにしても、地下に降りる何かが多すぎやしないかな?
しかも鉱山地域で地下を掘るって。
コブさんとこのシェルターでも、地下じゃないのに。
違和感がまた湧いてくる。
この街の家を探索した時の違和感と同じもの。
「この街、もしかしないでも地下ってダメなんじゃないっけ?」
小声でオーガストに耳打ちすると、オーガストが静かに頷いた。
「罰則はないけど、地下掘るにはウチや上に許可がいるはず…」
「…許可は?」
「ないと思う。」
「ということは、この下が見えない階段の下は…」
「無許可の空洞になるね。」
3人で階段の下を覗き込んだ。
空洞音がフアンと耳につく。
もう一度みんなで顔を見合わせる。
そして。
…行くっきゃないよね、これ。
何処までも下に伸びるように見える。
湿度でぬめりとした足元。
ただ岩をくりぬいただけのような螺旋階段を、今から降りる恐怖。
…いくっきゃないんだよね?
…これ。
いつもありがとうございます。
そういえば、せっかく学校に戻れたのにね(´・ω・`)




