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第55話 悪巧みにレオンが巻き込まれる。

「…レオン様は『異世界転生』ってご存知ですか?」


私の質問にしばらくの間があった。


レオン様はジッと私の顔を見つめたまま眉を寄せた。


「…異世界人、とは。

他の世界からやって来た人物のこと。

そしてそれはこの国を変える『救世主』となる。」


私は小さく頷いた。


「…そうです。その異世界人、転生のことです。」


「それが、まさか…?」


私はポリポリと眉間をかきながら視線を外した。


「まさか、エイプリル君もなのか?」


「…私だけではなく、ハートテイル様もそうらしいですし、確定してもう1人…。」


「…それは、まさか…、兄?

と言うことは、異世界人は全員魅了が使える…?」


「…ほぼ正解です。

ですが、異世界人はタイラー様ではありません。」


「では、誰が…?」


ゴクリとレオン様の喉が鳴った。

私は視線を外したまま、言いにくそうに口角を上げた。


「今のところ予想ですが…王妃様です。」


一瞬レオン様の身体が大きく後ろに揺らめいた。

だが流石王子。

踏ん張り、自分で立て直す。


「王妃が、『救世主』…?」


「…いえ、そこは多分違うかと…。

そもそも『救世主』とは?どういう認識なんですかねぇ。

私は王族や元王族ではないのでその辺の詳しいことを知らないのですが。

この国そんなに困ってるかなぁ…。


救世主っていうことは何か貧困だったり、戦争だったりで困っている上で、物語的にはそーいう縋るものができると思うんですけど、全くそんな要図はないわけで。

今どこかにいたとしても、平和に暮らしている国民にとっては別に…へぇーって感じだろうし…。


私とハートテイル様はパウエル様の儀式のせいで転生したようなんだけど、ハートテイル様は前世の記憶があるようには思えない…?少なくとも覚えているなら先ずそこを推すはずなんですよね。


…となると王妃様は自然発生の転生者かな?

3人もいたらもっといる、G効果の可能性だってあるし。」


結構早口でブツブツと自分の世界に入ってしまい、ハッとする。


慌ててもう一度念を押す。


「王妃じゃないです。」


人差し指を、ビシッと。

レオン様は私の2度の念押しにポカーンとしていた意識を取り戻した。


「だったら何故兄とキーオが魅了を使える?」


私はうーんと唸った。


「考えられるのは『遺伝』です。

現に2人が使えるのにレオン様が使えないという時点で、王様は除外される。

となると彼らの母上となる王妃が怪しい。


タイラー様は第一子なので、ちょっと遺伝的能力が強目に出たと思いますが、私ほどではありませんでした。

あの時忍び込んだ時ちょっと試させて貰ったので、実証済みです。

…どう試したかはまぁ、今は置いといて…。


キーオ様に関しては自分で気がつかないほどの微力。

しかもかかった人も数分で切れていました。

なので『ちょっとしたお願いがあるときにすんなり聞いてもらえる能力で、ちょっとしたお得感』って感じだと思うので問題ないかと。」


まるで人が変わったように分析結果を話す私に、気を押されている様子。

レオン様きっと押しに弱いタイプか。

…まぁ、根は優しい人だからなぁ…。変な女に騙されないか、お母さん心配。


レオン様はヨロヨロと蹌踉めき、頭を抱えます。

私はそれを不憫そうに見つめていた。


「…待ってくれ。

それじゃ王妃は魅了で王を操っているのか…?」


レオン様の顔が険しくなる。


「それはわかりません。私が王妃様に直で会えることは少ないので…。」


「私の婚約者としてだったら…、今よりは頻繁に会えるよな?」


「…それは勿論ですが…もし王妃が魅了を使って王様の側にいるとしたら…レオン様はどうするのですか?」


「私の母は元々城で侍女をしていた男爵の娘だった。

王に見初められ、大恋愛の末側室となったが…俺を出産後、私の物心つく前に亡くなったと聞いている。

その死因もよくわかっていないが、本来なら王は俺の母をとても愛していたと噂で聞いたのだが、今の父の様子、現状だと信じられない。」


「…なるほど。

王妃が魅了でレオン様のお母様から王を奪ったと…?」


びくりと震え、怖い顔で私を見た。


「…す、すいません。口が過ぎました。」


思わずこわばる私。

すぐ様怯える私の顔で、ハッと気がついた様子。

片手で顔を隠し、私から逸らした。


「…すまない、その通りだ。

そう思っている。」


顔を隠したまま、呟くそうにそういった。


「ごめんなさい。私たちは秘密を共有して、共謀して片棒を担ぐパートナーとなろうとしています。

ズケズケ踏み込んでしまわぬ様に、ここからは無理だからってラインを決めましょう!」


「…いや、決めなくていい。

どんどん踏み込んでくれ…。」


…その割には苦しそうなレオン様。

お母様の事はきっとしこりになって思うことがあるんだろうな…。


…次からちょっと気をつけよう。


そこで会話は少し止まってしまう。


同時に喋り出そうとして『あ、どうぞ…お先に!』『いや、君が先に…!』みたいなドギマギ感を出しながら暫く2人で夜空を見ていた。


「…婚約、しようか。」


レオン様がボソリという。


「…今ガチでキュンとしてしまった…。」


不意に婚約しようかなんて気を抜いてたのでダイレクトに心に刺さった。

だって乙女だもん!!


レオン様が不審な顔でこっちを見ていたので何もいってない顔をしてまっすぐ見た。


「じゃあ、よろしくお願いします。

とりあえず、期限は半年で。

半年経っちゃうと周りに婚約者として周知されてしまうとマズイと思います…。」


「わかった。

その間やる事は、王妃の謎を解く。

兄をなんとかして、ヴィヴィアンの魅了を解く。

ハートテイル嬢をなんとかして、オーガストも。

…あとは?」


指をひとつづつ折りながら私を見る。


「スタインバークの勢いを止める。

あと、婚約制度をなんとかする。

…レオン様は王位継承者第1位を目指す、です。」


「…俺は無理だぞ!?」


…そんなに驚く事ないのにってぐらい驚いてる顔をしている。


「…ヴィヴィアン様と婚約するには、次期王位継承者にならなければなりません。」


「何でだ!?」


「じゃないとスタインバークはヴィヴィアン様との婚約をなかったことにするはず。

スタインバークは王位奪還を狙ってます。

それも黙らせるには、せめてヴィヴィアン様が王妃となる立場に置かれなきゃならないので。」


レオン様はまたスーンという顔に戻った。

なんかこの顔ばっかだな今日は。

ちょっと仮面が外れた様で親近感がわく。


「…俺に、できるんだろうか?」


「王位継承権を得て、こんな損しかない婚約制度は無しにしてください…!」


私はニヤリと笑った。


レオン様も覚悟を決めた様に笑った。


「手始めに、様は取ってくれ。」


「なら護衛の前で許可をください。

私たちの婚約はあくまで恋愛的なものが発展しての婚約です。

ラルフ様との婚約が無効になるまで私はガイと隠れます。


無効になったらスタインバークは私の敵となるはず…。

それなりの動きや嫌がらせがあるかもしれません…。

余裕を持って10日後、城で会いましょう。」


私は震えていた。

今からどう転ぶかわからない計画の泥舟に乗るのだ。

これは武者震いだ…!

強がりを見せつける様に、カタカタと震えながら笑った。


レオン様もそんな私を見て覚悟を決めた様に頷いた。


「…オーガストには私が居なくなってからこの街を出たことを伝えてください。

暫く旅をしたら戻ると。

それだけ伝えてください…。」


「…わかった。」


ギュッとお互いで手を握り合った。


同志よ、共に行かん。


覚悟を決めなきゃ。

2回も同じ人にフラれたんだ。

…いや直でフラれたわけではないが。


とりあえず気分は悪い魔法使いから姫を助けに行く王子の気持ち。


我が姫オーガストを奪還するために、この命…花を咲かせん…!

うおおおお。


レオン様とベッタベッタしながら護衛の前に立つ。

明らかに胡散臭いイチャイチャ感を醸し出しながら別れた。


すぐ様旅立つ準備。

イオさんに事情を話し、私たちは暗闇に紛れる様にこの街を出た。



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