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第54話 私、悪巧みをします!

芋の皮を大量にむきながら無心である計画を練っていた。

これからの私の行動について。

誰しもが平和を勝ち取るために…。


しかしそれをいつ、彼に伝えるべきか。


芋の皮むきが終わった頃、食堂が賑わい始める。

ふと配膳のお手伝いをしていると、入り口近くに人目を偲ぶ様にフードを被ったレオン様の姿を見つけた。


チャーンス☆

飛んで火にいるナントカさん。


私を見て手招きをしているので、イオさんに許可を取って裏口から外へ。

最小限で連れてきた護衛も距離をとって待ってくれていた。

あと、ドアの後ろにガイも隠れて様子を伺っている。

姿は見えないが、気配は感じる。


「…エイプリル、大丈夫か?」


周囲を気にして危うく話を聞いてなかった自分がいた。


「ああ、私ならもう大丈夫です。」


ハッとしたように答える。


「とても大丈夫には見えない…」


レオン様の視線は私の瞼に集中している。

ええ、ブサイクでしょうとも、とても。

だからってそんなに物珍しそうに凝視するもんではないぞ!!


女子!!

これでも女子!!


思わずコホンコホンと咳払い。

ハッと気がついた様に目をパチクリとした。


「ハートテイル嬢はオーガストに魅了を使っている様だ…。」


「…でしょうねぇ…。」


レオン様のため息と私のため息が重なる。


「ハートテイル嬢もなぜ、魅了を?

あの時夜会で何を言っていたのだろう、彼女は。

そして何とかしてその魅了が解けないものか…」


レオン様はこんな死角の裏口にまで人の目を気にしながら話している。

自分の赤毛がすごく人目につくのを知っているのだろう。

私に気を使っているんだろうなぁと、有り難かった。


ようし、私も勝負に出る。

ふんすっと鼻息荒げにキッと眉を上げた。


「レオン様、単刀直入に聞かせてください、友達として。」


友達という言葉にピクリと嬉しそうな反応が見えたが、すぐにいつものスーンとしか表情になる。


「…何だ?友として聞こう。」


「こんな事本人に聞くのもあれ何ですが、私の勘が正しかったらいいなと思いまして。」


「…何だ?回りくどいな…いいから言ってくれ。」


「…えーっと、レオン様って私の事恋愛対象ではないですよね?」


私の質問にキョトンとした顔になったが、またスーンとした顔に…。


「…えっと、俺は何か勘違いをさせる様な行動をしてしまったのか…?」


スーンの色が濃くなる。

おっとダメだこのまま進まなきゃ。


「…えっと、ハッキリさせときたかっただけですので、お気になさらないでください。

私たちは友人。友達、オッケ?」


「…ああ、うん。オッケーだ。」


自分で言い出したんだが、レオン様はなんかオッケーとか言うの似合わないな…。

本人には言えないけど。

ゲフゲフ。


ていうか、よく考えたら私もオーガスト以外の人とチューしてるわ…。

恋を気付かなかった前とはいえ、ウッカリラルフ様とも、ウッカリ魅了しちゃってレオン様とも。

…ビッチは私の方だよ!!チクショウ!


よし、これで相殺。

記憶を相殺!!

忘れるのは得意だ、うん。


1人で苦悩しながら相殺していると、レオン様が心配そうに私を覗き込んだ。


「あ、大丈夫です。

それでですね、ちょっと私考えたんですが…。

私たち婚約しませんか?」


「…ん!?」


今しがた友情を確認しあった私の、突然の婚約しませんか?に喉に何かを詰まらせる。

ゴホゴホと咳き込むレオン様の背中をトントンしながら、弁解する。


「仮です仮!!

聞いて、落ち着いて聞いて!!」


私の話に喉を押さえながら、止まらぬ咳を我慢しながら頷いた。


「私さっき手帳を見て確認したんですけど、アルド様と婚約破棄して半年以上が過ぎました。

それで破棄してすぐ1ヶ月も経たない内にラルフ様との婚約を発表したんですが、アルド様の婚約破棄から半年経たないと認められなくて、でも婚約発表から半年以内に正式な婚約をしなければ、ラルフ様との婚約が受理されないと。

あと1週間くらいで、ラルフ様との婚約不成立します。

そうなると、私は誰とでもすぐ婚約できるはずですよね?」


「…理論で言えば、その通りだが…。」


レオン様は考えに処理が追いついてないのか、段々挙動不審になってきた。


「レオン様も同じ時期にアナ様を婚約を破棄しています。

だから同じ時期にフリーになりますよね?」


「…そうだな。」


押せ押せモードなので、レオン様に詰め寄る私。


「そこで、偽物の婚約者として私を選んで欲しいのです。

そこで私がレオン様と婚約すると、ラルフ様が私に手を出せないのと同時に、パウエル様も私に手が出せなくなります。

もちろん婚約なんて本気じゃないし、最終的には円満で破棄する様に動くのですが…、とりあえずあなたの思い人とオーガストを取り戻したいんです。」


「…俺の、思い…え?」


目に見えて激しい動揺をなさる…。

目が白黒しながら、顔が茹でダコのように真っ赤になった。


「レオン様ヴィヴィアン様が好きでしょ?」


そして容赦ない私の追撃。


「な…!?違うぞ。ヴィヴィアンは兄の婚約者で、その幼少の頃から、幼馴染で…。」


少し意識を回復して防衛するレオン様。

そんな防衛なんて今の私には、屁でもないのだよ。


「もういいですよ隠さなくて。

私一度レオン様を魅了したことがありますよね?

あの時何となく気になってたんですけど、さっき友達か?って聞いた時の反応で確証に至りました、はい。」


レオン様は耳まで赤くして立ち尽くした。

防衛壁に打ち込んだ私の言葉によって、壁にビリビリとヒビが入る。

あと少し!!


「私この街に来る前にタイラー様に頼んだんです。

ヴィヴィアン様の魅了を解いてくれって。

その代わり私が知ってる情報を教えたのですが、どうですか?その後。

多分約束は守られてなさそうですよね?」


レオン様はビクッと体を震わせ、黙った。


「…魅了は気付いてたから、あの時私に協力させて解かそうとしてましたよね?」


タイラー様に対しての表情に、キーオ様まで魅了が使えると知った時の顔。

忘れないように手帳に全てを記していたので考えがまとまったのだ。

さすが過去の私、手帳様々です。

これからも頑張ってつけてください、未来の私。


「ヴィヴィアンの魅了を解くことができるのか…?」


「私が出来るか出来ないかは、ちょっとやってみないとわからないけど、タイラー様を脅すことはできそうです。」


「…兄を、脅す。」


私はコクンと頷いた。


「ちょっと考えがあって、タイラー様をねじ伏せてやろうかと。」


「…全くよくわからないが…ともかくヴィヴィアンが無事なら…。

だが婚約に関しては少し考えさせて欲しい…。」


「まぁ、そうですね。

それは無理強いしません。

ダメなら別の手を考えます。」


「…というか、魅了について何か情報を兄に教えたと言ってたが、それは何なんだ?

…もし俺に言ってもいいなら教えてほしい…。」


「スタインバークの秘密に関わることですが、私はスタインバークの人間ではないので、ホイホイ口を破りますよ!」


「…い、いいのかそれで…。聞いたのは俺だが…。」


壁が崩れかかっているレオン様はボロボロのようで。

今にも足元から崩れ落ちそうです…!

ごめん!!


「…というか、婚約をトンズラしてなかったことにしようとしている時点で、私はスタインバークを裏切ってるんですよねぇ…。

それ考えたらまぁ、どっちでも一緒かなって…?」


「…何とも軽くいうのだな…。」


レオン様が困ったように息を吐いた。

むっ…壁がちょっとだけ修復されそう…?


「…簡単じゃなりませんよ。

私にとっては死活問題です。

信用してないと言えませんし、レオン様も絶対誰にも言わないでくださいね。」


「それは、もちろんだが…。」


レオン様の喉がゴクリとなった。


ここからは私の賭けだ。

レオン様がうんと言わないとうまくいかない。


だってスタインバークと渡り合えるなんてレッドメイルしかない。

そしてレオン様と婚約する意味。


タイラー様に対しての嫌がらせ。

イライラさせて隙を作りたいのだ。

まぁ半分嫌がらせですけどね。

全く約束破りやがって、アイツ。


とりあえずうまく行ったら仕返し決定。


私はもったいぶるように口を開いた。


「…レオン様は『異世界転生』ってご存知ですか?」


私の言葉の後、空気読んだかのように一筋の冷たい風が私たちの間を吹き抜けた。


いつもありがとうございます。

誤字報告もとても助かってます…!

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