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第33話 嵐の前のなんとやら。

「…なんの御用でしょうか?ラルフ様」


ラルフ様は私の顔を真顔でじっと見つめ、頷いた。

…いや、頷かれても一切わからん!

私はエスパーではないんだ!


「えーっと…」


オーガスト、メー様、私、ラルフ様、ハートテイル様に、ついでにエドエドさん。

この組み合わせでしばらく無言が続く。


知ってますか?

無言が耐えられない病気を。


コメディアン病というんですよ!!


え?誰が発見したのかって?

…私です。えへん。


だって、ほら。

ずっと無言だと、この場を何かしなくちゃって思うじゃないですか?


そういう病気です。


ダラダラと変な汗をかきながらラルフ様とハートテイル様の顔を交互に見比べていた。

そこで口を開いたのは、ハートテイル様。


大きく息を吐くと、私に指を指す。


「…あなた、ラルフ様とどうやって婚約することになったの?」


「どうやってとは…?」


「男爵のくせにどうやって取り合ったの?って聞いてるの!」


「…あなたも同じような身分では…?」


「うちは子爵よ!!一緒にしないで!!」


キィッと拳を震わせながら、私を可愛く睨みつけるハートテイル様。

こうやって見ると、可愛らしいのに。

何がこんなに残念なんだろうか。


思わずマジマジと彼女を見つめてしまい、余計に怒らせてしまう。

顔を真っ赤にして、頬を膨らませ、私に向かって足を一歩前に出した。


「ラルフ様があなたが公爵の身分に値するとか、嘘ばかりおっしゃって!」


「あー…。」


パウエル様の事か。

確かにそう言われたらそうなるなぁ。

でもこんな身内の事情、いちいち話すのもアレなのでここはひとつ。


「ノーコメントです!」


「は?」


「だから、ノーコメント。私から言えることはないのです!」


「…はぁ!?」


ますます顔が赤くなります。

眉尻をつりあげ、私を涙目で睨みつけました。


「…こんな侮辱初めてよ…!覚えておいて!!」


ワナワナと震え、壮大に『ツーン』とそっぽを向いて。

足をふみ鳴らしながら去っていかれました。


「…ラルフ様、何がしたかったんです?

私が彼女に何も伝えられない事を知ってて連れてきましたよね…?」


「ああ、余りに毎日毎日付きまとわれて困ってたんだ。

だからここで見せつけたら諦めるかと思ってね。」


「見せつける?」


『はて?』と首をかしげる私の手を、突然自分の方へ引きました。


もちろんバランスを崩した私は、ラルフ様に倒れかかります。

あーら不思議☆気がつくと腕の中。

しかも顎に手。

顎をクイッとされて、ラルフ様を見上げる形に。


「そんなに俺に抱きしめられたかったのか?」


私の目を見つめ、そう言いました。

背景にバラの花が満開に、散りゆく花びらとともに。

ええ、見えます、幻覚が…。


…は!?

ていうか、自分で引っ張ったんじゃん!


思わず目を見開いて固まっていると。


「キィーー!!何よ、これみよがしにベタベタ見せつけて!やな女ね!!

私、諦めないから!!」


去っていったはずの扉から、ハートテイル様の声がリンリンとうるさく鳴りました。


「「まだ居たのかよ!!」」


思わず口から出るツッコミ。

もちろん気があったのはメー様とオーガストです。


2人が顔を見合わせて『ハッ』とした顔をしました。


ウワーンと泣きながら去っていかれるハートテイル様(今度は本当に)

口元を押さえ、笑いをこらえるラルフ様。


「…ハメましたねぇ?」


ラルフ様をきっと睨みつけます。


「ああ、ハメた。ちょっと俺じゃなく、君に矛先を向けようと思ってね。

アレの付きまといのおかげで、最近動けなくて困ってたんだ。」


「困ったからってなんで私に!」


「夜会が面白くなりそうだな。」


「話を聞けー!」


ハートテイル様顔負けに顔を赤くして怒鳴った。


「なんだ、そうやって感情を出すこともできるんじゃないか。」


「…姉も人間なので、こうやって怒ったり悲しんだりしますよ?」


オーガストが首を傾けて、ラルフ様を見上げる。

表情は少し、硬い。


そんなオーガストをニヤリと笑い、肩をすくめる。


「邪魔者は去ることにしよう。エド、行くぞ!」


「はぁ…。なんでこんなめんどくさいことばっかりやりますかねぇ…全く。」


ボソリと呟き、エドエドさんもラルフ様を追って教室から出ていった。


残された私は、まだ怒りが解けず。

口をへの字にして、肩で激しく息をしていた。


「あんた、大丈夫なの?」


メー様が心配して私も背中をさするように手を添える。


眉を寄せ、口をへの字に曲げた私はメー様の方へ振り向く。


「夜会で絶対足踏んでやる…。」


というと、メー様が派手に笑った。



「何があったなんて聞かないけど、何か企んでそうね。」


腕を組んだまま、メー様が視線を合わせずにそういった。


「…んー、企んでいるんだろうね。」


オーガストが唇に手を当てて、指でなぞる。


「守ってやってよ。絶対。」


「エイプリルのためになんとかしてあげたくて…サミュエルに頼んで協力してもらってるんだけど、中々思った情報は得られなくてね。

僕も八方塞がりだよ。」


「…あのチャラチャラ男にいい情報なんて持ってこれないと思うけど…。」


オーガストがその言葉に、ちょっと微笑んだ。


「サミュエルは信用できるよ。あの人もエイプリルを守りたい人だから。」


「ならいいけど。

あの子抜けてるけど、時々強い目をして何かと戦っている顔をしているから…。

と、友達として、心配しただけだから!」


「…そういうの、エイプリル語でいうとなんていうか知ってる?」


「は?」


「『ツンデレ』っていうらしいよ?」


「…な、何よツンデレって!!」


『さぁ、本人に聞いたらいいよ』とオーガストは持っていた書類を持って席を立った。


「ちょっとこれを生徒会室まで届けに行くから、それまで相手しといて。」


「…わかった、伝えとくわよ。」


オーガストが教室から出るのを見送った後、反対の扉から私が戻ってくる。


「2階のトイレ、超混んでましたよ。お色直し中の女子で。」


「…なんかあるの?」


「…さぁ?」


私は手を拭いたハンカチをポケットにグリグリと押し込みながら、首を傾げた。


「あんたの弟が書類届けてくるって。」


頬杖をついて、私を見上げるメー様がため息混じりに言った。


「ほへぇ、なるほど。

ならば来るまで夜会のドレス詳しく教えてください。」


「…なんで?」


「親友のドレスを詳しく知りたいだけです。夜会まで想像して楽しみます。」


「…怖いから。」


「ええええ?」


すごい悲しそうな顔をしたら、『仕方ないわね』と少しだけ情報を教えてくれた。

だからメー様大好き。


オーガストが私を引き取りに来るまで、たっぷりとメー様の情報を頂いたのだった。

むふふ。



あっという間に夜会の日。

私はオーガストとお父様とメイヤーさんの会議によって決められた、淡い紫のドレスを着させられた。


おかしい。

昨日は紺色で模様なしの地味ドレスを出しておいたはずなのに、気がつくと却下されていた。

なぜだ、おかしい。


納得できないままお城の控え室へと通される。


さっき遠目でアルド様とアナ様を見かけた。

アナ様の濃緑のドレス、すごい素敵だったなぁ。

アルド様も顔が緊張してたけど、アナ様の手を取って自分の腕に絡ませてた時は、ちょっと見直した。


なぜ濃緑は良くて、紺色はダメなんだ。

すっごいシンプルでいいのに!


「色とかいう問題じゃないからね、そのシンプルすぎるのが良くないっていう結果でしょ?

メイヤーさんに文句言ってた事伝えるよ?」


「何も問題ございません、このドレスでよかった!」


「…まぁ、そのドレス。ラルフ様見立てだけどね…」


そういうと、そっと視線をそらすオーガスト。


「あれ!?会議で決まったって言ってたじゃん!」


「ラルフ様からだって言ったら、着ないと思って。」


「もちろん着ませんよ、怒ってますからね!私!!」


思い出し怒りです。

フンフンと鼻息荒げに足をバタバタさせた。


すぐ忘れる私が、覚えているぐらいの怒りです。

あれから数日。


毎日ハートテイル様に監視されております。

ジッと恨みがましく睨まれるのです。


そんな事では怒りませんよ、私。


足を引っ掛けさせられたり、ものを隠されたり。

そんな事も怒りません。


なら何を怒っているか。


「メイヤーさんが私にお友達ができたことをお祝いして、おやつに持たせてくれたプリンをひっくり返されていた事じゃああ!!」


思わずソファーにあったクッションをぶん投げた。


「誰がやったか問題じゃない。それの原因を作ったラルフ様を、私は許せないんじゃああ!!」


投げたクッションが勢いよく飛んでいく。


「あー、もうわかった。ダンスの時いくらでも足を踏んでいいから。」


それを拾いにオーガストが席を立った時、扉が開いた。


「エイプリルさ」


投げたクッションがバフンと扉から入ってきた人の顔面に直撃した。


私とオーガストが固まる。


クッションがずるりと落ちると、エドエドさんが立っていた。


「いってぇ!!」


「わぁぁあ、ごめっ!でもおかげでちょっとスッキリした。ありがとうエドエドさん。」


「ブッ…!まさかお前が受けてくれるとは!」


「はー?ちょっとなんで誰も心配しないんですか!?ねえちょっと!!」


鼻が曲がってないかとしつこいぐらいにオーガストに涙目で詰め寄る。


オーガストが『ちょっと曲がっているかも』なんて意地悪いこと言うもんだから、エドエドさんはますます涙目になった。


「…ラルフ様が入場にお待ちですよ!!フンっ」


ご機嫌を損ねたエドエドさん、ちょっとかわいいなって微笑んでいると、睨まれました!

こわっ!


深く息を吐きます。

ドレスの裾を持ち上げて見つめます。


プリンの恨みはまだ忘れてないけど、足を踏んで解消するために。

気が進みませんけどね。

いざ、ラルフ様の元へ。



しばらくゆるゆると進んでいきますが、私の特徴である…突然波乱の展開!になりそうなので、今のうち、ゆるゆるをお楽しみください。

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