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第31話 とうとう『父親』と会う。

スタインバーク家に着くと、何やら豪華な部屋に通される。


…こないだと全く違う雰囲気なんですけど?

あと、人。

侍女の数!!


こないだは指パッチンで飛んでくる執事ぐらいしかみてなかったので、ここは女人禁制なのかとちょっと思ってたぐらいだ。


あっという間に円陣の中心になり、服をひん剥かれた。

ヒィィ、服を脱がすいじめとか超高難度!


ではなく。


婚約式のドレスを無理やり着させられ、顔に色々塗られているのです。


「やはりパウエル様のお嬢様ですわ!とてもお綺麗ですぅ!」

「ホントだわぁー!エイプリル様ほんとに綺麗ぃー!」

「白が本当によくお似合いね☆」


このお世辞の嵐!!

お尻がむず痒いとはこの事ですよ!!


…あれ?お尻は要らなかったっけ?


時間をかけて色々、本当色々時間をかけて磨かれまして。

お昼過ぎにやっとオーガストの姿を見ることが出来ました。


お父様も正装です。

もちろんオーガストも。


長めの前髪を斜めに流す様にセットしてあり、今日は視界を邪魔しない仕様ですね。

思わずセットした前髪を触れようとして、手を止められる。


「リル、ここは触らないで…。これすぐ崩れちゃうから。」


「これ何で固めたの?」


「…わかんない、そこの人が勝手にやったから。」


オーガストが指差すところに、ニッコニコの侍女さん達がいました。

うちのオーガストをいっぱいさわれて満足なのでしょうか、オーガストを見つめてニッコニコです。


「…よく触らせたね?」


「僕呪われてるから、そこのあの人の命令に絶対でしょう?」


そういうと私の人差し指を、階段から降りてくる白いタキシードの人へ向けた。


「エイプリル!」


ラルフ様は笑顔で私の方へ歩み寄ってきた。


ていうかさ、白いドレスに白いタキシードって。

もうまんま結婚式じゃねーかっていうツッコミは置いといて。


笑顔のラルフ様は私を抱き上げた。


おい!!!

突然抱き上げるとかあぶねーだろ!


なんだイケメンという部類の人間は!

顔がよかったら何やってもいいのか!

私が重すぎたり、ラルフ様の腕の筋力がなかったら、2人とも倒れて終わるだろこれ!


そしたら大怪我だわ!!


抱き上げられた私は少し驚いた顔をしてラルフ様を見る。


「どうした?ビックリしたか?」


ラルフ様がそういうと、ますますの笑顔で微笑んだ。


くぅぅ、眩しい…!

至近距離でこの笑顔は、目が死ぬ…!


思わず目をパチパチとすると、ラルフ様は満足そうに言った。


「照れてるのか?なんだエイプリルも大人しくしてると可愛いじゃないか。」


そして私を抱きかかえたまま、クルリと一回転した。


やめろおおお!!

こええええ!!


落ちるって!!

怖いよー、うええええん。


ガッシリとラルフ様の首元に手を回します。

もちろん振り落とされないためです。

うっすら涙目の私の瞼に、ラルフ様が唇を付けた。


「…本当に仲がよろしい様で。」


私たちの様子を見て、ひとりの銀髪の男性が近づいてきます。


「よくきてくれました、パウエル叔父上!」


「ああ、やっと娘に会うことが出来た。」


そういうと、笑顔で私を見ました。

静かに手が近づいて来ます。


その手に恐怖を感じ、ラルフ様の首元に顔を伏せました。


「叔父上。

その前に私の婚約者です。

エイプリルもそちらのディゴリー男爵の事を父と慕っています。」


「そうだが、私が望んで娘と離れたわけではないからな。」


「…叔父上?」


ラルフ様の笑顔が少し変わりました。

パウエル様も身をたじろがせて、後ろに下がりました。


「叔父上は『父親』として主張をしない事で『禁じ手の罪』を軽減されたのではなかったですか?」


「…お前に何がわかるのだ?この娘は紛れもなくわたしの『娘』だ。

私のおかげでこの世に誕生した私とザラの子だ。

お前が妻に迎えようと、それは変わらぬ事だ。」


パウエル様は私の腕を掴もうと手を伸ばしました。

ラルフ様はとっさに背を向けて私をかばおうと動きます。

後ろでオーガストとエドエドさんの動く音も聞こえました。


あああ、ヤベェ、これは大惨事になりそうな予感…!


そんな時。


「やめろ。」


その声にビクッとパウエル様の動きが止まりました。

もちろんオーガストとエドエドさんも。


パウエル様がゆっくりと振り向くと。


「父上。」


ローウィン様と一緒に同じく銀髪の背の高い男性が立っておられました。


ふぉぉ…!イケおじ!!

思わず目を見張るほど。


右側だけ少し長めの前髪で、アシメントリーになってます。

左を耳にかけながら、こちらに歩いてくる姿に、そこらへんの侍女さん達も『ほぅ』とため息をつくほど。


静かにパウエル様の肩を叩きました。


「また投獄されたいか、スタインバークの恥が。

私の息子がお前の『禁じ手の罪』の責任を取って婚約するのだ。

むしろありがたいと思え!!」


イケおじの手が力強く引かれると、パウエル様はそのまま後ろに倒れてしまいました。


「兄上…!エイプリルを私に返してください!

私はやり遂げられます!!

スタインバークの返り咲く姿を、兄上に見せることができる…!」


イケおじにパウエル様がすがる様にしがみ付きます。


それを冷ややかな視線で見ていたイケおじ。

しがみついたパウエル様を足で払いのけました。


「…こんな事をしでかした時点でお前に何も期待はしておらん。

スタインバークがこんな『禁じ手』を使わないと返り咲けないと思っているお前は、だからダメなのだ。

お前の望みはラルフがやってくれる。

…気にせず、下がれ。」


イケおじはそういうと、パウエル様を冷ややかな目で見つめ、指をパチンと鳴らした。


あああ…、それ私にもできるやつ…。

そんな事を思っていると、あっという間に執事軍団にパウエル様は連れて行かれるのであった。


あああ、指パチン、やりたい。


やりた過ぎて、思わずギリッと歯が鳴る。


それに気が付いてラルフ様が私を抱きしめる。


「…エイプリル、もう大丈夫だ。怖かっただろ?」


そういうと、私の頬を指で撫でた。


あまーーーい!!

甘すぎるぅぅ!!


何だこれ、私は…え?何だこれ!?


目を白黒とさせながラルフ様を見つめます。


そして目で合図をします。


『もういい加減にしとけよ』と。


私の目線を感じ取り、ニッコリと微笑むラルフ様。


「…そんなに照れなくてもいいだろう?」


そしてまた頬を指でなぞるのでした。


ぎゃーーー!!

もう辞めてくれー!!


私のhpはもうすでに幾らも残っていない。

疲労困憊である。


ダラダラと流れる冷や汗に目が泳ぐ。


口から砂糖がガバガバ流れそう…。


「…そんなに見せつけなくても、もう良い。

お前が望んだ婚約式だ。…早くすませろ。」


そういうとイケおじは額を押さえ、一番奥の椅子に腰掛けた。




「ねぇ、パウエル様どうなったの?」


「…ああ、親父に監禁された。

しばらく何もできないだろうな。」


『よかったな』と言わんばかりに私に微笑んだ。


「…てか喋るなっていうから喋らなかったのにさ!!

あそこまでやる必要ありましたかね!?」


「…そう怒るな。」


『クックッ』と思い出し笑い中のラルフ様に、憤慨中の私。


おもむろにハイヒールを脱ぎ、床に投げた。


「仲良しアピールは必要ですよ。パウエル様にも信憑性を出さなきゃですし、特にレイモンド様には『嘘』は通用しませんからねぇ。」


エドエドさんが私の靴を拾いながら少し笑った。


「嘘が通じないのに、嘘っぽいラブラブする必要があったんですか?」


エドエドさんとラルフ様が顔を見合わせる。


「俺に『嘘』はないぞ?」


「それがすでに『嘘』じゃねーか!…じゃあ私に喋るなというのは!?」


私はドレスの裾をバタバタとさせながら足を激しく動かした。


「それは、エイプリル様がちょっとお変わりになっているのを隠すためです。」


「…は?」


エドエドはニッコリ微笑んでいる。

エイプリルは混乱の魔法をかけられた。


はーーー!?

何じゃそりゃーである。


プリプリと怒っていると、オーガストとお父様が部屋へと入ってきた。


「帰りの馬車の準備ができたそうだ。」


「ディゴリー男爵。本日は忙しい所ありがとうございました。

エイプリルの事、私にお任せください。」


ラルフ様はニッコリとお父様に微笑んだ。

お父様は滝の様に流れる汗を拭きながら、何ともいえない顔で微笑んでいる。


「…娘はまだ、16です。成人まで、あと2年ありますし…」


「ええ、ですが私としては明日にでも式をあげたいほど彼女をそばに置きたいと思っております。」


「…そう、ですか…。」


お父様が可哀想になり、思わず口がへの字になる。


「帰りたいので、みんな出てって言ってください。」


「…ん?どうした?」


ラルフ様が首をかしげる。

口をへの字に曲げた私が、じっとりとラルフ様を睨みつける。


「みんながいたら着替えらんないでしょ!」


早くこのドレスを脱ぎ捨ててしまいたい…。

イライラしながらドレスを引っ張る。


「…着替えればいいだろう?」


ヤツはキョトンとそう言った。

私は驚いて顔を真っ赤に立ち上がる。


「何でみんな見てるとこで着替えるんだよ!こう見えても女子だわ!!」


「隠すところなんて何もなさそうなのに。」


「あるわ!!どこもかしこも隠したいわ!!」


私が沸騰したての顔で壮大に叫ぶと、ラルフ様が『フハッ』と吹き出し笑い転げた。


「私で遊ぶなーー!!」


大きな声で叫び、全員追い出した。

そしてソファーにおいてある高そうなクッションを手に取り、チカラ一杯グーパンしてやりました。


はー、ちょっとスッキリ。



私が怒りながら服を着替えていると、扉の外でエドエドさんがオーガストに耳打ちをした。


「…『契約』は守ってるよ。」


「逆らえないのもわかってるが、ラルフ様が心配しておられるんだ。」


「…これ以上僕に何もできない。お前も契約者だから、わかってるだろ?」


オーガストが固められた前髪を崩しながら、エドエドを見つめた。

エドエドも眉を寄せ、ため息をつく。


「…僕だって、君を応援してやりたいん…グッ」


「…それ以上言うな。契約に逆らうことになる。」


オーガストがソッとエドエドさんの腕を掴んだ。

エドエドが小さくうめき声をあげ、顔を歪めた。


エドエドさんの腕が震えた。

そしてゴポゴポとまるで生きているかのように、血管が暴れまわる。


まるで何かが血管の中を這って移動しているようにうねり、走る。


苦痛を耐えるように、腕を後ろへと隠す。


「…すぐ治るよ。吐いた言葉が空気に溶けて消えるまでだから。

僕はそれ何度も体験したから、慣れたもんだけど。」


オーガストが小さく笑った。


「…こんなの我慢できるかよ…!」


エドエドさんも顔を歪めながら笑った。


「大丈夫、すぐ、治るよ。」


そう言うと、オーガストは悲しそうに笑いながら、エドエドさんの腕を引き寄せ、抱きしめた。


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