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第28話 憧れのあの人と友達になった。

エイプリルは仲間が増えた。

アンバー・キャンベルと、ベイリー・グルーパーが仲間に増えた。


友情レベルが0.0001%増えた。

…少なっ!!


なにせ、この2人。

アナ様の取り巻きだった方だ。


あの時のAとBだ。


突然呼ばれ、私が仲間に増えたことをひどく驚き戸惑っていた。

王道ゲームに出てくる『突然武器持った人間が、めっちゃ油断してた時に突然目の前にエンカウントしやがった事を怯える魔物』ぐらい、驚き戸惑っていた。


そりゃそうでしょうけど。

私はアナ様が婚約破棄された原因のようなものだし。

『こいつを仲間に加えて今更何を話せと?』

きっとそう思ったに違いない。


私ならきっと思う。


なのでこれ見よがしにヘラヘラと笑うしかなかった。

こんなことでへこたれません。

やっとできた友達です。

友達が私に、増えたのです…!


神様、ありがとう。


思わず祈る私。

そんな奇怪な私をAとBは見つめることしかできなかった。


「そういえばアンバー・キャンベル様の婚約者もあそこにいましたよね?」


私は今日もハートテイル様の方を指差した。

私がフルネームで呼ぶので、アンバー様もベイリー様も名前で呼んでもいい許可をいただいた。


「ええ、何度もやめてほしい事を伝えたのですが、彼はハートテイル様が一人ぼっちで可哀想だと。

守ってあげたくなるんだと、いまだやめる気配はなさそうですわ…」


みんながハートテイル様の方へ視線を送る。

みんな同じ事を思っただろう。


『どこが一人ぼっちなのだと。』


少なくともメー様、アンバー様の婚約者を従え、他何名かの何処ぞのご子息をパレードしている。

数えるのがめんどくさいが、最低でも5人はいるだろう。

それぞれが競い合いながら、彼女に取り入ろうと何度も彼女の右側左側を行き来している。

…彼女は歩きにくくないのだろうか?


「…それを考えると、アルド様は案外賢かったのかもしれませんね。」


「…どういう意味?」


私の呟きをアナ様が拾う。

やはり現婚約者として気になるところなのでしょうかね?


「アルド様はあーいう感じの、男子が沢山好みそうな女性には声をかけなかったからです。

なんなら1回食事に行ってくれるだけの後腐れなさそうな女性というか…ゲフン。」


アナ様の顔が怖くなったので、言葉を詰まらせた。


「…ともかく、手玉に取るような、騙されそうな女性には絶対近寄りませんね。

本能で感じるのでしょうか?

危険察知能力が高いのか…?」


思わず余計なことまでブツブツと付け加えましたが、アナ様は少しホッとした顔をされました。


「というか、そもそもアナ様がハートテイル様に詰め寄っていたのだって、王族の嫁として恥じない行為だったのではないでしょうか?

だって皆さんの婚約者の方に間違いを指摘されていましたよねぇ?

ハートテイル様の行動も注意されてましたし。

なかなか勇気のある行動だと思うんですよね。

なんであの王子はわからないのか…。」


私の独り言が加速する。

それを黙って聞いていたアナ様が少し微笑みながら口を開いた。


「それが彼です。

というか、レッドテイルなんです。

でもレオン様も色々と苦労されてきたんですよ…。

あ、レッドメイルで思い出したけれど、長男のタイラー様には気をつけて。

王族でありながら、自分ルールに生きているから常識が通じませんから。」


アナ様はそういうと頬に手を当てる。


あれ?タイラー?

赤毛の長男…。

…どっかで会ったことあるかも?

思い出せないけど。


思い出そうと首をひねると、メー様がため息混じりに私に言った。


「…廊下であったでしょう…、そして不敬ギリギリの自己紹介をした…」


「ああ!!赤毛の、目の人だ。」


「目?」


「…ああ、いえ…目がすごく怖かったなって…」


これは言わないほうがよさそう。

前回本人に指摘した時に、目で殺されそうになったから。


そう思って口をつぐむ。


「ともかく、気をつけたほうがいいわ…」


アナ様が私を見つめて、悲しそうに笑った。


私は静かに頷く。

確かにあの眼を持つ長男は危険ですね。

できれば2度と会いたくない。


「…そういえば鬱陶しいぐらい張り付いてたあんたの弟はどこ行ったの?」


「ああ、私の婚約に父がショックで寝込んでしまって、父の代わりに事業を代理でやっているのです。」


「…それで見ないわけね…」


メー様が納得するように頷いた。

まぁ、そればっかりではないのですが…。


ん?というか私ラルフ様と婚約式していませんね?

と言うことはまだ正式には受理されていないのでしょうか?

ていうか、婚約式…やるんでしょうか?


思わず背筋に嫌な汗をかく。

ブルリと震え、自分の肩を抱く。


『メンドクサイ』一択です。

あーやだなぁ…。


とりあえず気を取り直しいまはわすれることにします!

ええっと、別に何か気になる事…。


ああ、そうだ。

…ハートテイル様の事だ。


ハートテイル様のアレはちょっとなんとかしないとですね。

婚約者がいる方をパレードしてる場合ではない。

そしてそれを悪びれない事。

アレを不貞とするなら、彼女は色んな貴族から訴えられてしまいます。


…でもまあしばらくは様子見ましょう。

今はアナ様の婚約です…!


そして、私はアルド様にもアナ様についてというインタビューをしなければならないのです!



「ということでやってまいりました。」


「はぁ!?」


アルド様は突然私が現れた事にとても驚かれ、腰を抜かされています。

お陰で難なく確保です。


放課後。

いつもはアルド様が朝一番、校庭で私を待ち伏せする側ですが、今日は私が待ち伏せです。


いつもの手帳を持って、メー様に付き添ってもらいながら。

アルド様を2人で引きずって近くのカフェへと急ぎます。


「お前、いいのかよ?こんなとこ見られたら『復縁』とかいう噂が立って、今の婚約者に怒られるんじゃないか?」


なぜかカッコつけて、ソワソワするアルド様を真顔で見つめます。


「それは誰も思わないと思うので大丈夫です。

増しては2人きりでもありませんし。」


「私もいるんだけど?」


メー様は嫌そうにアルド様を見つめました。


アルド様…今頃メー様に気がついたのか、まさに『ギョッ』とした顔をなさった。

何度の言うが、見事に『ギョッ』としていた。


「…一体何なのだ、これは。」


「簡単な質問をしにきました。」


「質問だと!?」


私は手帳を持ちながら、コクコクと頷く。


アルド様は不穏な顔でこちらを見ていましたが、観念したようにため息をつき私を見ました。


「質問は何だ?」


「真実の愛についてです。」


「真実の愛だと!?」


いちいち驚きますね…。

いい加減アナ様の婚約者になるのであれば、ここらで落ち着いていただきたい。


何ともいえない顔で作り笑顔を浮かべる私に、アルド様は恥ずかしそうに椅子を坐り直す。


「…真実の愛とは何だ?一体何を企んでいる?」


「企むだなんて人聞きの悪い…。」


「大体何で俺に聞くんだ?…もう、婚約破棄したんだから俺のことなんか関係ないだろう…」


アルド様は口を尖らせ眼を泳がせています。


「アナ様を幸せに出来るかのチェックですよ。」


「…何故ここでアナスタシアの名前が…!」


「…は?」


思わず立ち上がるアルド様。

…何故か会話が繋がってない気がするのですが…?


首をかしげる私に、アルド様は顔を真っ赤にして立ち尽くしてます。

それを見兼ねたメー様がコソコソとアルド様に耳打ちをしました。


メー様が耳から離れた後、アルド様は耳を押さえメー様を見開いた目で見ました。


そしてまた、ため息を一つ。


「…お前が俺に質問しているのは、今回の婚約のことで、アナスタシアの幸せのためなのか?」


「はい、そうですが?」


他に何があるのだ。

この文字が油性マジックで書かれたように顔に浮かび上がっていたのだろうか、アルド様は俯き黙りました。


「…ローラントはディゴリーの資金援助とアドバイスのおかげで、少し持ち直した。

贅沢しなければ、普通に豊かには暮らしていけるぐらいに。

…それには本当に感謝している。

アナスタシアも俺も次はないことぐらいわかっているし。

アナスタシアには誠意をもって接するつもりでいる。」


「アルド様はアナ様のことがお好きですか?」


「…どういう意味だ?」


「いずれ夫婦になるのですから。

お二人には愛の溢れる…幸せになってもらいたいのです。」


「…お前本当に俺のことどうでもよかったんだな…」


「え?」


アルド様が悲しそうに私から目をそらしました。


「それなりに好きでしたよ、メンドクサイとは思っていましたが。」


「メンドクサイだと!?」


「ほらそうやって素直に一喜一憂できるところが、羨ましかったです。

私にはないものですからね。

だからこそ、私には勿体無い方だと思います。

…浮気はいけませんけどね?」


私はいたずらっ子のようにアルド様に舌を出した。

アルド様は私の様子に眼を丸くしておられましたが、すぐスッキリした顔で微笑まれました。


「なるほど、叶わなかったわけだ。

エイプリル、今まで悪かった。

俺は心を入れ替える。」


「そうですか。

それは、よかった…。」


私も照れ臭そうに俯いた。


今のアルド様ならもしかするとうまくいっていたかもしれないなあと。

でもその分アナ様の幸せが少し見えた気がした。


アルド様ならアナ様を任せていいのかもしれない。

案外いい夫婦になりそうな。


私はアルド様を見て嬉しそうに笑った。


「アルド様ありがとうございました。」


「…どうせお前のことだから、今日来てくれてとか、質問に答えてくれて。とか言うんだろ?

はたまたこないだ落としたプリントを拾ってくれて。とかか?」


そういってアルド様が嫌そうに目を細める。


「…いえ、私と向き合って話してくれて、ですけど。

そういえばプリント拾ってくれたお礼言ってませんでしたね?」


そう言うと私はアルド様に頭を下げようとする。


「…意外なところでまともに返事されると、俺も困るんだけど…。」


そう言うとアルド様は頭をかきながら笑った。




「…いつまで続くのかしら。」


「何がですか?」


メー様がカフェからの帰り道で腕を組みながら唸った。


「アルド・ローラントよ。『心を入れ替える!』っていってたじゃない」


「…メー様それはアルド様のモノマネですか?すっごく似てないのでやめた方が良いと思いますが…」


「…突っ込むとこそこじゃないわよ!!」


壮大に突っ込まれてしまいました!

メー様は『まったくっ』なんて言いながら頬を膨らませました。


「多分、本気で思っていると思いますよ。吹っ切れたような顔してましたし。」


「…それは失恋が決定出したから吹っ切れたのよ。」


「…誰が失恋?」


メー様は首をかしげる私をジッと何も言わずに睨みつけました。


「そういえば、アルド様に何を言ったのですか?」


「いつ?」


「さっき、内緒話してたじゃないですか?」


メー様は『あぁ』と小さく呟き、顎に手を当てた。


「『男なら自分の過ちを反省して、このボケた女に期待しないで未来を見据えろ』と言ったのよ。」


「…ボケた女…!」


メー様はニッコリと微笑む。

ボケた女。

一体誰だ。


謎の女の登場に深く考え込んだ私を、今度はメー様が引きずっていきます。


「アルド様はそのボケた女に失恋したのですね…!」


「あながち間違ってないからビックリだわ!」


私は引きずられながら、器用にさっきの事を手帳に書き込む。


「アナ様、きっと幸せにしてもらえますよね。」


「…私はまだ疑ってるわよ、あの男…!」


そして私は、『いい加減自分で歩け』と捨てられたので、半泣きでメー様の後を追うのでした。



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