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第17話 またまた友人ができました。

「ディゴリー男爵令嬢。一体今朝の事はどういうことなのですか?」


あーいーつー!

大丈夫じゃなかったじゃーん!!


私は口をへの字に曲げ、空を見上げます。

レーオーンーめぇぇえ!


泣きそうです。

アナスタシア様に嫌われたら、私泣くと思います!


「これには訳が…。」


しどろもどろで円陣の中心にいます。

でもこれは嬉しくない。

嬉しくない方の円陣。

たとえこれでアナスタシア様に壁ドンされても嬉しくなーい!!


今日は速攻でオーガストが救出に来ました。


「お嬢さん方、失礼。」


オーガストは華麗に私を抱え、円陣から外に出しました。


「…弟が出る幕ではありませんよ?」


アナスタシア様おかんむりです。

激昂ですぅぅ。


半べその私を見て、オーガストが皆さんに微笑みました。


「これは全て王様の命令ですので、うちの権力では断ることもできませんでした。

ご理解いただけませんか?」


アナスタシア様は王様の命令という言葉に一瞬ひるみますが。

すぐに扇子をパチンと広げ、口元を隠されました。


「果たしてそれも本当かどうか…。」


不快感を露わにしておられます。


…終わった。

私とアナスタシア様の友情の種は芽を出すこともなく枯れてしまった。


だから言ったのに。

あれほど言ったのに…!


もうアイツ知らないんだから!!


私は涙目で怒っています。


他のご友人達はうちのイケメンが飛び出てきたことにより、何も言えなくなりモゴモゴと口ごもってます。

そりゃ姉に変なことを言って、イケメンに嫌われたくない心情にはなりますよね。

わかります。


オーガストが困った様に私を見ましたが、深くまた溜息をつきました。


「あの、さ。こんなこと言いたくないけど…。

ビアス侯爵令嬢。この話って殿下から聞いてるんじゃないの?本当は。

それを聞いた上で、うちの姉を呼び出したよね?」


ご友人達が驚いてアナスタシア様を見ました。

アナスタシア様の顔色は変わりません。


「だったらなんなの?

そんな話聞いて、『ハイそうですか。どうぞどうぞ』なんていう婚約者がいらっしゃるのかしら?

これ以上身分も弁えず、レオン様の周りをうろちょろするのをやめていただきたいの。

私の願いはそれだけよ。」


その言葉を聞いてオーガストが『フッ』と笑い、口元を押さえました。


「…何がおかしいの?」


アナスタシア様はオーガストに眉を寄せます。


「話を聞いたのにも関わらず、姉を呼び出しこんなことしているのですか?

これを殿下が知ったらどうするつもりですか?

流石に僕なら信用を裏切られたと怒ると思いますけど。」


オーガストは口元を手の甲で隠し、微笑む。

だが目の奥は笑っていない。

そんな目でアナスタシア様を見つめます。


風で前髪が揺れ、オーガストの目を隠しました。

変な色気が妖艶な感じに仕上がり、私も一緒にアナスタシア様のご友人達と見とれてしまいましたよ!


だが鉄壁のアナスタシア様はそんなオーガストにも怯みません。


オホホホと笑ったと思うと、扇子でオーガストの頬を叩きました。


「うちの弟に何を…!」


私は思わずオーガストをかばう様に、前に出ます。


ご友人達もオロオロとするばかりです。


オーガストは打たれた頬を手の甲に擦りつけました。

そして、また笑ったのです。


頬を打たれてなにかに目覚めたのか、我が弟よ…!

何故そんな笑いをしているんだ。


叩かれた頬が赤く腫れています。


「アナスタシア様、何故オーガストを?」


憧れてはいましたが、流石に無意味に弟を叩くなんて、私も怒りますよ。

オーガストは私を庇っただけなのに。


「オーガストを叩く権利は、あなたには無い…!」


私はキッとアナスタシア様を睨みました。

ですが、涙目です。


だって憧れていたんだものー!!


憧れていた人がレオンの所為で、敵対関係になってしまった。

ショックです。

恨みます、レオンめー!


「私に権利がないと?」


アナスタシア様は私を睨みつけました。

そして扇子を振り上げ、私に向けたのです。


その時私の前に影がさしました。

何かが私を覆うような。


「…!!」


扇子が当たると思い目を閉じていたのですが、目を開けて確認します。


「レ、レオン様…!」


「やはりな…。ディゴリー嬢と君の姿が見当たらなかったから、もしやと思って探していたんだ。」


「あの、これは…。」


私をかばうように抱きしめているのは急いで来たのか、呼吸が乱れているレオン様だった。


おい!お前のせいでこうなってんだぞ!

私に触るんじゃない!


思わずレオン様を突き飛ばし、オーガストに飛びつきました。


自分がかばったはずの私に突き飛ばされ、腕の中に何もいなくなったので驚いておられますが。

そんなの知ったこっちゃないんですよ!


だから言ったんです!

だから言ったんですよー!!


私はレオン様を睨みつけ、オーガストの胸で泣きだしました。

察したオーガストが私を慰めながら、レオン様に『ご愁傷様』と口パクで伝えていました。


レオン様は責任を感じる様に俯き、息を大量に吐き出しました。

そしてアナスタシア様を強い目で見つめました。


「アナスタシア。私は君に全てを伝えたつもりだが?」


アナスタシア様が目を『クッ』と細め、眉を寄せます。


「ええ、そうですわね。

『王の命令でディゴリー嬢の護衛をするのでしばらく一緒にいると思うが堪忍してくれ』とだけですわ。

それで納得できるとお思いですか?

今朝の事で、学校中が噂をしておりましたのよ。

あなたが『男爵令嬢を抱きしめ、庇った』と。

婚約者がいる身で他の女性を抱きしめるとは?

それについての弁解は聞いておりませんわね。

レオン様では話にならないので、抱きしめられた本人に聞こうと思っただけですわ。」


淡々と話すアナスタシア様。


レオン様は困ったようにまた俯いた。


「全てを話した。

それを信用できなかったのは君だろう?

王族の婚約者たる者がそのように、いちいち噂に反応してどうするんだ。

…アナスタシア、見損なった。」


「…私だけを責めるおつもりですか?」


「例え何か私の言葉が足らなかったとしても、だ。

こうやって誰かしら呼び出し、大勢で寄ってたかって聞き出すのは正しい事なのか?

直接納得出来るまで、私に聞けばよかっただろう?

何故そうせず、ディゴリー嬢を責め立てたんだ…!」


流石に正しくないと認識のあるところを突かれ、アナスタシア様は黙ってしまった。


レオン様はオーガストの頬を見つめた。


「…しかも暴力まで振るうとは…!」


レオン様は悔しそうに拳を握り、アナスタシア様を睨みつけた。

アナスタシア様はレオン様の怒りを感じ、体を強張らせ、震えだす。


「それは、偶然扇子が当たっただけですわ…」


目を泳がせ、扇子を握りしめた。


レオン様は確認のためオーガストを見たが。

オーガストは号泣の私を慰めながら、『お手上げ』のポーズをした。


「アナスタシア。

これは父に報告する。そして今後のあなたとの関係を考えさせていただくことになる。」


「レオン様!?

何をおっしゃるのです?…私はただ貴方のために…!」


「…違うだろ?全て自分のためだよ、アナスタシア…。

もう俺は君についていけない…。」


レオン様はそっとその場を立ち去ろうとしましたが、私の前で立ち止まります。


そして。


オーガストに泣きながらしがみ付く私の腕を取り、私を引き連れてその場を後にしたのです。


おい!ちょっと!!

去るなら1人で行けばいいのに!


力強く手を引かれ、どこかに連れていかれます。


目で合図したのか、オーガストも後ろから追いかけてきました。


後ろでアナスタシア様が膝から落ちておられました。


…さようなら、私の友情の種よ。

うぅ、また涙がこみ上げて来た。

ちくしょー!

友達ー!!


「美人の友達欲しかったよー!!」


「…は?」


「え?」


あ、しまった。

最後の本音が口から漏れてしまったようです。


オーガストがそんな私を見て、呆れるように頭を抱えています。


ずんずんと引きずられ、ここはどこでしょうか。

涙と鼻水をすすりながら、キョロキョロと辺りを見渡します。


「ここは、生徒会室だ。

ここなら安心して話ができるからな…。」


レオン様は頭を押さえながら、生徒会室の机に浅く腰をかけました。


私たちも促されて、そこのあるソファーに座ります。


「…すまない。

ちゃんと説明したつもりだったんだ。

まさかアナスタシアがあんなことをするとは…。」


私は『すんっ』と鼻をすすりました。


「いいえ、知ってらっしゃいましたよね?

今までも何度もこういう事を、『聞いたか見たか』をしてらっしゃると思いますけど。

じゃなきゃ伝えた後心配になったり、様子見で探したりしません。」


私は口をへの字に曲げ俯いてます。

あんまり俯くと、鼻から水が垂れるので手で押さえますが!

うぅ、ティッシュ詰めたい…。


レオン様は痛いところを突かれたのか、黙ってしまいました。


なので調子に乗って文句を言わせていただきますよ。

ええ、だって私は怒っているのです。

不敬なんか知ったこっちゃねー!


「だから言ったんですよ、彼女だってただの女性だって…。こうなったのも殿下のせいです!!

アナスタシア様と仲良くなれると思ってたのに!ううぅ…。」


私の友情がー!

美人の友達がー!!


レオン様は申し訳なさそうに、気まずそうに私を見ていました。

ふと、オーガストの方へ歩きます。


そしてオーガストの顎をクイっとして。

…て言うか事あるごとにうちの弟に『クイッ』とか『ドン』とかしすぎじゃないですかね…?


「…頬、赤く腫れているな…。ディゴリー子息、本当にすまない。

ディゴリー嬢も、本当にすまなかった…」


レオン様は私たちに頭を下げたのです。

流石にオーガストも動揺しました。


「殿下、僕たちに頭を下げるなんて、誰かに見られたら…!」


オーガストがレオンの肩を持ち、レオン様の顔を上げようとします。

ですがレオン様の頭は上がりません。


「困りますから、頭をあげてください…!」


オーガストがレオン様の肩を持ったまま、顔を覗き込みました。


「では、許してくれるか…?」


レオン様はオーガストを見つめます。


「まぁ、ワザと煽って殴られに行ったので、お気になさらず…。」


オーガストは困ったように何度も頷き、レオン様に微笑みました。


「ディゴリー嬢…?」


レオン様とオーガストが私を見ました。


私はソファーにあぐらをかき、頬杖をついてます。

シラーっとした目で彼らを見つめます。


「殿下もこうやって言ってるんだから、許すよね?エイプリル…。」


オーガストが『早く許すと言え』と合図して来ますが。

私は。


「許さないです。」


「「…え?」」


「許さないですって言ったの。

絶対、許せない。

だってこうならないように最初に忠告したのに!

友達ができるとこだったのに!初めての同性の友達が!!

うわあああん!!!」


再び号泣です。

もうこうなったら止まりません。


オーガストがレオン様を見つめ、また『お手上げ』のポーズをしました。

レオン様はどうしていいかわからず、オロオロとしていましたが。


徐ろに胸に着いた勲章を外し始め、私の方へ歩いてきました。

そして、何を思ったのか私を抱きしめました。


アホかー!

イケメンに抱きしめられたら誰しもが『キューン』とかなって許すと思ってんのかー!


私は抵抗します。

だって怒っているから。


「あーあの、王子。姉は嫁入り前なので、そんなに簡単に触ってほしくないというかぁ…」


オーガストが控えめに笑みを作り、レオン様から私を引き取ろうとしますが、レオン様に止められます。


「責任は私が取る…。」


「そういう問題ではないというか、取られても困るというか…」


「…何故困る?」


レオン様の強い瞳に、オーガストも何も言えず、下がりました。


ポカポカとレオン様の胸を叩きます。


離せーこんにゃろー!


それでもびくともしなかったので、早々に諦めましたが。


「本当にすまない、ディゴリー嬢。

どうか機嫌を直して欲しい…。

…あなたの望みを一つ叶えさせて?」


「私の望みは友達を得る事だったの!」


「…なら、私ではダメか?

私があなたの友達になるというのは…?」


「異性の友達はいるんです、スタインバークという狼さんが。」


「…スタイン、バークと…?」


「そうです、ラルフ様です。」


私はスンスンと鼻を鳴らしながら、目にいっぱい涙を溜め、レオン様を見上げます。


これ以上肉食獣はいらねーんだよ!

狼にライオンとか私はサーカスの猛獣使いか!!


レオン様は私の泣き顔の汚さに躊躇して、赤い顔で固まってしまいましたが。

すぐ目を逸らされました。


「…私で、俺で妥協してもらえないかな?

ディ…エイプリルと呼ばせて欲しい。

俺のこともレオン、と…。」


「レオン…」


「レオン様!様つけようね、エイプリル!!」


「レオン様…」


レオン様は私とオーガストのやり取りに少し微笑まれたが、すぐに。


「どうか俺と友達になって?エイプリル。

どうか、お詫びをさせて欲しい。

…頼むよ。」


レオン様はもう一度。

今度は軽めに頭を下げた。


「そこまで言うなら、友達になってもいい…」


私は口をへの字のまま、頬を膨らませ、言った。


「リル、不敬罪って知ってるかなぁ?ねぇ…。 

言葉遣いちょっとおかしくなってるよー?

上から目線発言やめて、お願い〜!」


オーガストが何故か必死で私に懇願している。


レオン様はまた吹き出され、少し笑っていたが。


「オーガスト、大丈夫だ。

エイプリルとは友人なので、不敬罪なんてない。」


「…必然的に僕も呼び捨てになりますよね、…うん。」


オーガストは何故かうなだれていた。


「フフ、俺も友人なんて初めてかもしれない。」


「レオン様も?」


「ああ、『友人』は居ない。

エイプリルが初めてだ。」


「…そうなんですね。

じゃ、一緒ですね。」


「…そうだな、一緒だ。」


なんだ、レオン様も友達いないっ子だったか。

なんだか親近感。


思わずレオン様を見て微笑みました。

レオン様は私が笑うと、恥ずかしそうに俯かれました。


…シャイボーイ。

イケメンポイント高いなーこの人。

これも後で、メモに。


私たちが微笑み合っている間。


オーガストは酷く落ち込むように頭を抱えていました。

『あー、また怒られるなこれは、どっちにも…。』なんてブツブツと呟きながら。


こうして私は2人目の友達ができたのだけど。

うう、女子の友達っていつできるのでしょう?

一緒にランチしたり、お出かけしたり、トイレに一緒に行ったりしたいんです!

トイレに一緒に行くなんて、個室で2人で何するつもりなんでしょう?


どうやったらできるんでしょう?

今度サミュエルに相談してみようと、ふと。ボンヤリうなだれました。


あー、アナスタシア様ー!!


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