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第12話 狼とライオンの対面。

「なぁ、なんだよこれ?」


「…」


私はお昼休みにお手洗いから出たところを、狼の方に捕獲されて、今どこかに連れてこられました。

アナスタシア様の教えに従い、頭を下げたまま微動だにしてません。


「ふむ、これは誰かにこうしなさいと言われたんだと思いますねぇ、王子」


「もう王子じゃねーって。エドワードいい加減やめろ、それ。」


「『発言を許す』とか『オモテをあげーい』とか言わないと、ずっとこのままだと思いますけどぉー?」


「…めんどくさいこと教えやがって…!ほら、エイプリル、なんか喋れよ」


「発言をお許しいただきありがとうございます。スタインバーク様」


「ラルフって呼べって。」


「スタインバーク様!」


「今日は折れないな、チッ」


私は頭を静かにあげて、微笑みました。


「と言うか、なんのご用でしょうか?」


スタインバーク様は私をチラリと見て、私の髪の毛を数本指ですくい取りました。


「昨日城に呼ばれたんだって?」


金色の目が私から逸らす事なく、じっと捉える。


「呼ばれました。

なんで知ってるんです?」


「エドが何でも教えてくれるんだ」


「エドワード・エドワーズさんは私のストーカーかなんかですか?」


私の髪の毛を指に絡ませ遊んでいたスタインバーク様が『フハっ』と眉尻を下げて笑い出した。


「あの!フルネームやめてくれますかね!?その冗談みたいな本名、好きじゃないんで!!」


エドエドさんが頬を膨らませて私に何か紙を突き出した。


「オーガスト君に2番と5番の証明取れたよって伝言付きで、これ渡しておいてください。

あ、あと6番目は拒否されましたので。

でもまあ1人抜けても、こんだけあればいい証拠にはなるでしょうねぇ。」


「エドエドさんはオーガストに何を頼まれているんですか…」


エドエドさんはにっこりと微笑みます。


「まぁ恩を売る為ですよ。うちの王子様のために、ね。」


「恩…。」


何の為に…。

ウチみたいな男爵家に何の恩が欲しいのでしょう?


全く変わってますね、エドエドさんは。


「まぁ気にしないで?」


そう言うとエドエドさんはウインクをした。


「あ、でもこれもういらないかもです。」


「え!?」


私の答えに驚きを隠せないエドエドさん。

でも何かを期待する目で私に寄ってきた。


「え、いや、昨日お城で、持ってた証明は全部証拠として出しちゃったので…。」


「4枚で受理されましたか?」


「あ、はい。4枚で大丈夫みたいでしたね。」


「成る程、フフフ。」


エドエドさんは唇に手を当てて、黒く笑った。


スタインバーク様は私の横で、ずっと私の髪の毛に夢中で遊ぶ猫のような状態。

おかしいな…、狼ってどっちかと言うと犬な気がするんだが…。


ふと目が合うと。

ニヤリと私を見つめて笑うのでした。


ちょっと心が動いてしまいますねぇ、さすが上位イケメンです。


見つめられると流石の私でもドキドキします。


「エイプリルさん、それでどうしました?」


「あへ!?」


「…その後ですよー。その後の話は?」


「あ、ああ。ええっと…。」


突然話しかけられて動揺します。

狼の瞳に魅了されかかってました!危ない…。


気を取り直して、思い出します。


「確か、受理しますって言われて。

私が婚約破棄されて汚名な噂を立てられないように、レッドメイル殿下達に頼れと。」


「…ほう!それでそれで?」


エドエドさん、目がキラキラと輝いてます。

噂話大好き男子なのですかね?

私は友達もいないので、対して提供はできなさそうですが。


「それだけですね、危うくキーオ様の安売りされましたけど、愛妾にはなりたくないので早々に退散しましたし…。」


「え?何で愛妾!?そう打診されたってこと?」


「いえいえ、具体的には婚約者にって推され方でしたが、王族に男爵家から差し出されて正妻はありえないだろうと勝手に…。」


「ふは!面白いなぁ、エイプリルさん。

自己分析が面白すぎる!

そっかー、レッドメイルもディゴリーに注目中かぁ。」


「エド、お前顔がやばいぞ…。」


青ざめる様にスタインバーク様がエドエドさんに指をさします。


その指摘を受け、エドエドさんは自分の顔をむにゅっと両手で軽く挟みました。


「え?そうですか?

フフフ…どうします?王子。」


スタインバーク様を見つめ、黒くニヤリと笑うエドエドさん。


「だから、王子じゃねーって!」


スタインバーク様は呆れた様に、頬杖をついて溜息を吐きました。


「エイプリル。」


「何ですか、スタインバーク様」


「ラルフ!」


「スタインバーク様って呼べって言われたの!」


「友達なのに、ラルフって呼んでくんねーのかよ?」


「ハッ!!!

友達だったらいいです?名前で呼んでも。」


「俺がいいと言ってるんだ、エイプリル。」


そう言うとスタインバーク様は私の頬を人差し指で撫でた。


「ラルフ!」


「せめて様をつけようね!?」


「オーガスト!」


息を切らしてオーガストが背後に立っておりました。


「うちの姉を誘拐しないでいただきたい…!」


「誘拐なんて人聞き悪いな。友達なんだから普通に話すだろ?なぁ、エイプリル」


「え?ああ、はい。」


そっか友達だったわ。

すっかり忘れてた。

周りに登場人物が増えすぎて、名前も覚えられないけど。


オーガストは口角だけで笑った笑顔でラルフ様を見た。


それにラルフ様も笑顔で応戦。


「まぁまぁ、僕に免じて、ね?オーガスト君も。」


そう言うとエドエドさんは私から紙を取り上げ、オーガストに渡し直す。


「もういらなくなったかもだけど、これ。

とりあえずアルド・ローラントがまた接触してきたときのために、持っといたほうがいいね。」


「ああ、助かったよエドワード君。この2人がどうしても見つからなかったから。」


「いいんだ、協力できて嬉しいよ。」


「この恩は別のことで返すからね?」


「うん?僕が望む形で返してもらうけど?」


2人とも、ものすごい笑顔なんだけどね。

でもこの笑顔がとても、怖い。


思わず後ろに下がると、ラルフ様にぶつかってしまう。

ソッと言い合いしてる2人を他所に、ラルフ様の腕が私に伸びてきました。

私を膝の上に引き寄せます。


そして。


「エドとオーガストは、同じ施設にいたって知ってた?」


そう小声で言われました。


「へぇ、知りませんでした。

オーガストは6歳からずっと一緒でしたが、施設にいた事は聞いてません。」


お父様は親戚から迎え入れたとしか聞いてなかった。

同じ髪の色だけど、瞳の色が違う。

私はサファイヤ色で、オーガストはエメラルド色だ。


それでも似たとこも沢山ある。

同い年で、まつ毛の長さや、肌の色、足の小指の形も似ている。


私はオーガストと自分に似たところを見付けるたび、嬉しかった。

本当の姉弟の様な気がして。


「エドも6歳でうちに来た。

俺が拾ったんだ。」


「ならラルフ様も兄弟みたいな存在ですね?」


私の答えに一瞬目を丸くしたが。

すぐに嬉しそうに笑った。


「そうだな、兄弟みたいなもんだ。

でもあいつら2人も、兄弟みたいだな。」


そう言うと、また私に笑いかけた。


『そうですね』と返事をして、私はこれでもかと言うほどラルフ様を見ていた。


だいぶこのイケメンにも慣れてきたぞ。

顔を凝視できる程度に。


この人もまつ毛長いな。


何の気なしに私は彼の顔に触れた。


ラルフ様は驚いていたが、すぐに私の好きにさせてじっと私を見つめている。


肌も綺麗だなぁ。

私は指を頬から顎に這わせる。


くすぐったかったのか、ラルフ様はピクリとしたが、私を見つめる瞳は外さない。

ゆっくりとラルフ様の顔が私の顔に近寄ってきた。


触れていた私の手が、ラルフ様に掴まれる。


そして。


「はい、離れてー」


ピッピーと笛の音がなると同時に、私とラルフ様の間に、手のひらが挟まれた。


「…お前は誰だ。」


不機嫌そうにラルフ様が手の主の方へ目を動かす。


「僕?」


光に輝く赤毛。


すぐに私が答えた。


「キーオ様と、レオン様?」


キーオ様の後ろに、アナスタシア様の婚約者が立っていた。



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