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名無しの冒険譚  作者: ラウンド
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神鳴りの祀り 1


 ビアンカは、とある依頼で得た報酬で、大陸東側へと旅行していた。

 久しぶりの休暇とあって、国境警備所に到着するなり、郵政公社東方支部へ宿場予約の伝書配達を依頼するほどだった。

「ふぅ。これで宿の確保も出来る、と…。次は」

 諸々の手続きを終えたビアンカは、警備所近くの駅場から馬車と御者とを借り、足を確保。荷物を整理後、大陸東部と中央部とを隔てる大河に架かる橋「龍跨ぎの大橋」を渡る。

 そこから更に走り、木造建築にカワラと呼ばれる屋根が特徴的な、最初の宿場町に辿り着いた。

「お疲れさま、絵描きのお嬢さん。良い旅を」

「有難うございました。快適な馬車旅でした。またお願いします!」

 町外れにある駅場で馬車と御者とを返却し、事前に話を通していた宿へと向かう。その宿も木造建築とカワラ屋根が特徴で、他の宿と同様に二階建ての構造をしていた。

「ようこそ、お越しくださいました。先ほど伺った、ご予約の方でしょうか?」

「はい。ビアンカと申します。今日から三日ほど、お世話になります」

「こちらこそ、有難う御座います。それではお部屋へ案内致しましょう」

 大陸東方の流儀に倣って靴を脱ぎ、部屋へと向かう。

 木造建築特有の香りと、植物由来と思われる微香性のお香の匂いが疲れを癒してくれる。人が生み出した”自然の香り”は、通路を行くビアンカの体を包み込み、軽やかに奥へと引っ張っていくようだった。

「こちらの部屋をお使いくださいませ。必要なことについてはお部屋に説明書きが御座いますので、ご利用ください」

「有難う御座います」

 鍵を受け取り、ドアを開けて中へと入った。


 内装は大陸東方、特にヤシマ帝国の特徴が色濃く出ており、フスマやショージと呼ばれる間仕切りを始め、ザブトンと呼ばれるクッション。床にはタタミと呼ばれる床材が敷かれている。

 しかし同時に、見慣れた板材もタタミと分けて使ってもり、特に大きな違和感もなく過ごすことが出来そうだった。

「よいしょっと…。まずは…」

 ビアンカは専用の荷台に荷物を置くと、タタミの上に配置されたテーブルに地図と紙束とを広げた。そこには幾つか印が付いており、そのうちの一つには今居る宿場町が入っている。

「雷昇りの祭壇は、ここ」

 印がつけられた箇所の一つを指で指し示す。

「神鳴りの踊り場は、その先、と…」

 最初の印から少し指を滑らせ、峡谷部に付けた印の上で止めた。

「馬車は使うとして。あと、金属製の触媒は持ち込めない、と。」

 地図を確認するのと同時に紙束に書かれている文章も確認し、小物入れを手繰り寄せた。

「ずっと来たかった宿場町と見てみたかった遺跡だからね。準備は入念にしていかないと…。まあ、その前に」

 ビアンカはそう言うと、小物入れから体を洗う石鹸と着替えを取り出し、小物入れ自体は片付けてから立ち上がる。

「ここに来たならやっぱり、名物の温泉、堪能しないとね。何よりも疲れを取るのが先だ。うん、そうしよう」

 部屋に置かれているユカタという部屋着も持ち、そのまま部屋から出ていくのだった。


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