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1-4 共同作業

その卓に座っているのはヴァロ、フィア、カリア、ヌーヴァ、ラフェミナ、エレナ、ローファ

そしてドーラのの八名。

王であったり、長であったり、その経験者であったりする。そうそうたる顔ぶれだ。

ヴァロには場違い感が半端ない。

クラントですら外の警備に回っているのだ。

聖剣を持っていなければこの場には絶対呼ばれていない。

聖剣使いという肩書ももうそろそろなくなるが。

「一ついいかナ?」

ヴァロが手を挙げる。

「ドーラ?何?」

ラフェミナはドーラに声をかける。

司会進行役のはずのエレナはドーラに関しては妙にぎこちない。

かなり警戒しているようだ。

「ここにいる人たちは僕のことを知っている人たちと考えていいんだネ」

「ええ。エレナには先日話しました」

ラフェミナの言葉にエレナはドーラを睨み付ける。

普通の人間ならば視線だけで怯みそうなほどだ。

「お前は何を言っている?」

カリアは不審なものをみるような目でドーラを見据える。

一同の注目がカリアに注がれる。

カリアだけ知らないらしい。

横からヌーヴァが何やらカリアに耳打ちした。

「ドーラルイ魔法長だと!あなたが伝説の…」

カリアはそれを聞いて、ドーラへ向ける表情を一変させた。

カリアの目を輝かせるその表情は、幼いころに夢見た英雄とであった少年のよう。

ドーラの存在は異邦で伝説化しているらしい。

ヴァロは身近にいる変な奴を伝説と呼ばれるのは違和感しかないが。

「知らないヒトいたんだネ。っていうか伝説ってなんだヨ。ローファ。どんなことふきこんでるのサ」

ドーラはげんなりとした表情で、ローファを見る。

「わしらは事実を伝えとるだけじゃよ」

「…」

ドーラは心の底から嫌そうな表情をみせた。

「まあいいさ。多分状況を把握しているのは僕だけだろうから、

これで言い方がきつくなっても、大目に見てくれヨ。伯爵さん」

「ああ」

「コホン、それでは合同で遺跡の探査をするにあたっての取り決めを…」

エレナが司会を

「すまぬが、わしらは遺跡の宝には興味がない。

わしらが心配しておるのはもっと別のことじゃ」

「別のこと?」

エレナは獣王に聞き返す。

「…ここで主らが聞いたことはくれぐれも他言無用で頼む」

その場にいるすべての人間が頷くのを確認し、ローファはおもむろに語り始めた。

「わしらが案じておるはもう一つのことじゃよ。

それを語るにはまず魔軍がどうして動いたのかを説明する必要がある。

事の発端は、数週間前にある機兵の片腕がアデルフィのもとに届けられたことがきっかけじゃ」

「機兵の片腕?」

「これのことだ。複製品だがな」

カリアはそれを懐から取り出した。

成人男性の腕の大きさと同じかもしくはそれよりも小さいぐらいか。

人形の腕のようなもので、中からは鉄のコードが伸びている。

「これから見るに機兵の大きさは人間とほぼ同じ大きさぐらいかネ」

ドーラはそれを見て機兵を推察する。

「俺たち受けた命は二つ。ミイドリイクの徹底的な破壊。

もしくはこれをつけている機兵がいたら即座に破壊せよと命を受けた」

「…徹底的な破壊…」

そのためにカリアは人々の退去を要求していたようだ。

あのまま強引に制圧し、破壊する選択肢もあったはず。

それをしなかったのはカリアの主義か、甘さか。

「それを見るなりアデルフィは態度を一変させ、人間界に呪軍を派遣しようと軍を編成し始めた。

それに驚いたバルハロイとわしが止めようとするも、アデルフィは考えを一向に変える様子をみせない」

「それで人間界に派兵することを認める代わりに、

バルハロイの使う制軍を派遣することを引き出したわけだネ」

「…そうじゃ。わしは先行し、遺跡の調査にやってきたというわけじゃ。

肝心の遺跡の入り口までは知ることができなかったがのう」

「公表すれば命知らずの盗掘者が、なだれ込んでくるからな。あの場には何があるかわからない。

我々も慎重に事を運ぶ必要があった」

エレナはそう語る。

「遺跡の調査にミイドリイクまでやってきたのはいいが、その場所がつかめナイ。

そうこうするうちに制軍が到着。ミイドリイクは厳戒態勢、

遺跡うんぬんの話ではなくなってしまったのサ。

だからローファは二週間もミイドリイクの中をうろうろしていたわけだヨ」

「うむ」

「うむ、じゃないヨ。君がいることによって結界内に力場が生じ、結界は機能しなくなってしまったんだヨ。

その結果、制軍が結界内に容易に侵入し、衝突寸前までいったんダ。

そこにいるフィアちゃんがそれを見破らなかったらどうするつもりだったのサ?」

ヴァロたちがカリアと交渉している間、フィアは結界の綻びの特定を行っていたらしい。

そしてその原因が一人の男であることを突き止めた。

ドーラは、綻びはどうすることもできないけれど、フィアちゃんならどうにかできるといっていた。

それはそういう意味があったようだ。

フィアが原因を特定し、ローファという大男が獣王だと判明した後、

フィアは獣王を説得、ヴァロたちの仲裁に入ったらしい。

ヴァロたちがカリアとの交渉中にそんなことをしていたらしい。

皆の注目を浴びるもフィアは静かに頷くのみ。

「仲裁には入ったし、結果こうして話し合いの場をもうけられたのじゃからよいじゃろ」

居心地が悪そうにローファ。

「…ミーナ、後は君に任せるヨ」

ドーラはめんどくさそうにラフェミナに振った。

卓上の視線がラフェミナに注がれる。

「…ローファ貸し一つですよ」

あらゆる拒絶を拒む笑みでラフェミナ。

「ぬう」

ラフェミナの笑みにローファは低く唸った。

「ローファさん、一ついですか?」

フィアがその場で挙手をする。

「なんじゃ?」

「もしその機兵が地上に出てきた場合の連邦の対応は?

同じ三王のローファさんなら大体の予測がついているんじゃないですか」

フィアの問いに周囲の視線がローファに集中する。

ローファはしばらく間を置き、観念したようにそれを語る。

「邪王アデルフィはミイドリイク一帯、ササニーム地方を消滅させる用意がある」

獣王のその一言のあまりの衝撃に、会議の場はしんと静まり返る。

「国土の消滅?そんなことが可能なのか?にわかには信じられんな」

エレナはその言葉を吐き捨てるように言う。

「ローファ、あなたでも阻止するのは難しい?」

ラフェミナは困ったようにローファに尋ねる。

「そうさのう。現在王権を握っておるのは奴じゃしの。断言してもよい、奴はやると言ったらやるぞ。

それにもしわしらの国にその機兵が侵入してきた場合、わしらの国もただではすまん。

アデルフィの奴が約定を無視してもそれをするのは、それが民のためだとわかっておるからじゃ。

民のために行う決定にどうして口をだせようか」

「人間界と戦争になっても?」

「アデルフィはそちらの方が被害が少ないと奴は考えるであろうよ。

もっともその機兵が地上にあふれかえった時点で、この地域のお主ら人間はいなくなるじゃろうがのう」

聞くところではマジでしゃれにならない。

そんなものがミイドリイクの地下に眠っているのだという。

「そんなに大変なものなんですか?その機兵っていうのは?」

フィアがローファに再び質問を投げかける。

「詳細はわしも知らん。じゃが伝承ならば残っておる」

「伝承?」

「かつてわしらが異邦を統治するまでさまざまな国家が乱立する戦国時代があった。

その際に一つの小国家が覇権を握ろうと手を出したのが、その機兵なのじゃ」

先ほどから黙り込み、考え込んでいたドーラが反応する。

「ああ、何かと思えば、パオベイアの機兵カ。昔文献で読んだことがあるヨ」

「ドーラ、なんだそのパオなんちゃらって」

ヴァロの問いかけにドーラは応じる。

「戦国時代に異邦のとある小国家、パオベイアが覇権をにぎろうと失われし技術に手を出したのサ。

パオベイアはあらゆる方法を使い数十年の年月の果てにそれは復元。

しかし、その結果生み出された機兵により、そのパオベイアは消滅。

周囲の国家はそれを災害と認め、手を取り合いその国の国土を消滅させたとサ。

ちなみにその国家のあった場所は今でも湖のはずだヨ」

ドーラは重い現実を突きつける。

異邦の国家は地形すら変える力があるらしい。それはもう戦争とかいう以前の問題だ。

誰かが生唾を飲み込む音がその部屋に響いた。

魔王級の化け物を何体も有する、異邦ならばそれは可能だろう。

「その文献にはこうも書かれていたヨ。

もし国家同士が手を組み、対処していなければ、今頃この大陸はその機兵がはびこる死の大陸になっていたとネ」

ドーラは淡々と重い事実を語る。

「うむ、その通りじゃ。ゆえにわしらはそれを禁忌として手を出すことを固く禁じた」

「ふーん、アデンドーマの三忌ネ。まだその戒めは生きているんだネ」

半眼で何か考え込むようにドーラ。

「ああ、その通りじゃ。アデルフィの奴はそれを間近で見てきておる。

万が一にも同じ轍は踏むまいと考えておるはずじゃ」

「アデルフィ、アレの関係者だったのカ。それはずいぶんと…」

「ならその遺跡自体を封じてしまえばいいのではないか?」

「それではアデルフィが納得せんよ。次は奴の率いる呪軍がやってくることじゃろう」

現在異邦は三王が治めている。

そして王のもとに大まかに三つの軍に分かれているのだという。

目の前にいる獣王ローファが率いる破軍、悪魔王バルハロイが率いる制軍。

そして邪王アデルフィの率いる呪軍があるという。

ちなみにカリアたちは制軍に属している。

「呪軍が来たら本当に戦争ダ。あいつらは主の命には愚直なまでに従う連中だからネ。

残り一兵になるまで奴らは戦うだろうサ」

物騒なことを淡々とドーラは語る。

冗談じゃない。魔軍が玉砕覚悟で戦争を仕掛けて来るなら、まず人間界の国家がそうぐるみでも

勝利は難しいし、被害も甚大なものになるだろう。

ミイドリイクは文字通り見捨てるほかなくなる。

ドーラの一言は共同業以外の選択肢を消し去った。

「わしらで探索し、その有無を調べ上げ、もし発見したのならば速やかに破壊しなくてはならぬのじゃ」

「結局、遺跡を探査しかないということか」

エレナは険しい表情でその言葉を紡ぐ。

「わしらの心配が杞憂であってくれればそれに越したことはない。

のう、この大陸に住まうモノたちのためにも力をかしてもらえぬか?」

ローファはその場に両手をつき頭を深々と下げた。

これは話し合いであって会議ではないかな。

そんな重いもの書きたくはないけれど、

取りあえず顔合わせってことで。

つうか妙にこの回、疲れた。

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