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捜索隊 二日目

 ジンタによく厳ついだ臭いだ言われているラインは気を張りながら、慎重に足を前へと動かした。


 真っ暗な洞窟の中、辺りに明かりはない。


 火を灯そうと思えば出来なくはないが、それはより一層の危険を呼び込む行為だと分かっているため自重じちょうする。


 光の一切ない洞窟の前方に色がつく、黒の中に濃紺の色が。

 ラインはより一層気を引き締め、足音を殺し濃紺へと向かい歩を進めた。


 三度、深呼吸しラインは洞窟から外を覗く。

 真っ暗な洞窟と違い、外は月夜の明かりだけでもかなり視界が開けて見えた。

 慎重に見渡し、三度視線を左右に動かしてから顔を引っ込める。


「いなさそうだが、そっちはどうだ?」


 ラインが細心の注意を払いつつ、そう尋ねると、


「こっちにも反応はないわ」


 右腕を蛇の頭へと変化させ、その頭を洞窟の外へと出していた竜女が答える。


「やれやれ、何とか躱せたか?」


 緊張がほぐれたのか、溜息と同時に意識せずに張っていた肩が下りる。


「まだ分からないわね、でも油断は出来ないわ」


「まあな。でも悠長にしている時間も無いぜ?」


「……分かっているわ」


 そう答え竜女は立ち上がり、元来た洞窟の奥へと歩き出す。


「じゃあ俺はここで見張っておくぜ」


「ええ、お願いするわ。私はみんなを連れてくる」


 竜女が真っ暗な洞窟の闇の中に消えたのを見て、ラインはもう一度外に目を向け呟いた。


「はぁ~~、こんなんじゃあゆっくりイチャイチャも出来ねえぜ……」



        ※※※※※※※※



 探索二日目、朝からゴブリンの襲撃が始まった。


 夜行性の強いはずのゴブリンに対し、ジンタ達探索隊は索敵に優れた者を見張りに立てた。結果、二度ほどあった夜襲やしゅうを見事返り討ちで終わらせたのだ。


 そして日が昇り始めた頃から、断続的にゴブリン達はジンタ達捜索隊にちょっかいを出してきていた。


「なんというか、こっちの移動力を削ぎにきてるのか? それとも足止めかな?」


 移動を開始してから、三度目襲撃。


 遠距離からの弓矢攻撃から始まり、そしてちょっかいを出す程度の浅い近接戦闘が終わったところだ。


「どうでしょう? でも統制は取れてますよね」


 ロンシャンの言い方に、ジンタの眉はピクリと動く。


「やっぱ、そう思うか?」


「そりゃあ思いますよ」


「だよなぁ~~」


 ジンタはがっくりと肩を落とした。


「しかしほんとにどういうつもりで、こんなチクチクとした攻撃をしてくるんでしょう?」


「私が思うに、少しずつこちらを疲弊させるためではないかと思っていますが……」


「それか増援が来るまでの時間稼ぎですわね」


 イヨリの問いに、ラーナとリカがそれぞれ答え、そして全員が「う~~ん」と唸る中、


「はいはーい、わたしが思うに、相手が攻撃してくる時ってわたし達が偵察隊のいる方向に向かっているからじゃない?」


 ミリアがあっけらかんと言った。


「「「「えっ?」」」」


 全員が、手を上げて笑みを浮かべているミリアを見た。


「そうか……、そうだよな」


「ええ、よくよく考えれば普通にそうですよね……」


「行って欲しくないから、ちょっかいをだすのは……」


「当たり前の行動……」


「全く常識ですわ」


 ジンタ、ロンシャン、イヨリ、ラーナ、リカが口々に言葉を繰り出し、最後に、


「あーちゃんねえ、さっきと違う方歩いているの知ってるよ?」


 リゼットに肩車されたあーちゃんの一言が、全員を驚かせる。


「あーちゃん、襲われる前に僕達が歩いてた方向は?」


「あっち」


 ロンシャンの問いに、あーちゃんは迷うことなく小さい指で右側を指差す。


「ちょっと俺、先頭に伝えてくる」


「お願いします」


 ジンタが伝令のために走り出す。


 そして、その答えが真実だったことは、ジンタが先頭に元の方向を伝え、歩き始めて数分後に分かった。



 進めば進むほどにゴブリンの妨害が激しく強くなっていく。


 しかしそんな攻撃もお昼過ぎになり、


 どっご――――んッッッ!


 見つめる先、進む先の遙か前方から高々と一本の火柱が立ち上ったことで変わった。

 それを見て、捜索隊のテンションは一気に跳ね上がる。


「あそこだ!」


「きっとあれが偵察隊達だ!」


 より一層、チカラ強く前進速度を上げていく。


 そして守られる形の中心にいるジンタも、


「ミリア、あっちだ、あっちに強化魔法の範囲は届くか?」


「うん、いけるよ」


「頼む!」


「分かったよ!」


 ミリアを中心にしてふわりと流れていた風が、よりチカラ強く流れていく、前方に向かい。


 彷徨うように歩いていた時とは違い、確たる方向性が見つかると、より一層のやる気が湧くものだ。

 捜索隊の進む勢いは、ゴブリン達の妨害をものともせず、勢いを増していった。




 遂に、二つの戦場が一つになった。


「カインさん無事ですか!」


「これは……、僕達を助けに?」


 剣戟や叫び声が響く中、ジンタの耳にもそのやり取りが聞こえていた。


「どうやら無事に合流出来たようですね」


 隣のイヨリの言葉に大きく頷いてから、ジンタは一直線に向かってくるリザードマンに向かい飛び出し斬り掛かった。


 ガッキ――――ン!


 響き渡る剣同士のぶつかり合う激しい音。


「クッ……、このリザードマンやりやがる……」


「おいおい……、お前本気で言ってるのか?」


 直剣とバスタードソード、二つの刃がぶつかり合う中、必死につばぜり合いで相手を押し倒そうとするジンタに向かい、相手が口を開いた。


「はぁ~~?」


「だ~か~ら~、お前本気で俺が誰か分かってねえのか?」


「いや、悪いけど俺、厳ついトカゲに知り合いはいないんだ?」


「は~~? お前俺をなんだと思ってるんだ?」


「トカゲだろ? ただの臭いリザードマンだ」


「うむ、確かに俺の獣人化は皮膚を鱗化させるからな、見た目的には間違いじゃねえ、しかし臭くはねぇ!」


「いや臭いだろ ――だから死ねよ」


「いや! だ~か~ら~、俺だよ俺!」


「いやいや、さっきも言ったが俺には厳つくて臭いリザードマンの知り合いなんていねえから!」


「いやいやいや! いるだろ! 本当に色々感謝してもしたりないほどの頼れる大先輩が!」


「いやいやいやいや、そんなヤツいねえから!」


 三撃四撃と剣同士をぶつけ合いながら言葉を交わし合うジンタとリザードマン。


 そこへ、


「二人共、大分手を焼いているようね。私もどっちかに加勢しましょうか? それとも、バカ二人は一緒に焼き殺せば良いかしら?」


 普段の真っ赤なセミロングの髪ではなく、獣人化しサラマンダーのチカラを開放し、その髪を逆立てた真っ赤な炎へと変えた麗火が、両のてのひらから炎をだし、二人の間に立った。


「す、すいませんっ! 調子に乗り過ぎました!」

「麗火! やるならジンタだけにしとけよ!」


 ぶつけ合ってた互いの剣を降ろし、二人が叫んだ。


「ちっ! 言うより先に二人共燃やしておけば良かったわ」


「「おいおい……」」


 そっぽを向いた麗火の後ろから隻腕のエルフ、カインが顔を出す。


「ジンタさん達までここに?」


「ええ、当然助けに来ました」


「そうですか、本当にありがとうございます」


「いや、それよりそっちは大丈夫だったのか?」


「はい、とは言え、やはり無傷と言うわけには……、二人のエルフと、その家族が犠牲に……」


「…………そうか」


 どこかやり切れない重苦しい雰囲気になるが、最後に現れた竜女の言葉がそれを吹き飛ばす。


「ところで、この魔法はなんなのかしら? どうも強化魔法が同時に発動しているような感じだけど?」


「ああ、俺もそれは感じてたぜ。そもそも俺に掛かっていたカインの強化魔法は『アタック』のはずだったけどな、それがなぜか途中から色が赤じゃなくて、赤紫になってやがるしよ、どうなってやがんだ?」


 戸惑う四人の視線がジンタへと向く。


「あ~~~、え~~っと、詳しい話は後で説明するけど、とりあえずラインの言うとおりで、俺達は普通に掛けた魔法に上乗せで、今は『プロテクト』が掛かっている状態なんだ」


「それって、強化魔法の『重ね掛け』ですか?」


「ああ、そう言うことになるのかな、あ、あはは……」


 引き攣ったわざとらしい笑いを見せるジンタに、砦の隊長家族四人の疑いの目が突き刺さる。


「……まあいいでしょう、その話が本当なら確かにこれはとんでもない戦力アップですから。ちなみにこれは「今は『プロテクト』が掛かっている」と仰いましたが、他のも掛けられるんですか?」


 さすがに砦でリーダーを任されるだけの人物。『重ね掛け』をあり得ないと戸惑うのではなく、瞬時に場の状況を有利にするための行動に動いた。


「ああ、それは出来る。変えてほしいのか?」


「いえ、今はまだ。しかし時が来たら変えて欲しいので」


「分かった」


 そこまで話をした後、カイン達は動き出した、円を描くように囲んでるゴブリン達の最前線へと向かって。


 ジンタはカインを見送り、自分もまた囲まれた円の中心近くにいる自分の家族の元へと下がった。


「ジンタさん大丈夫でしたか?」


 飛んでくる矢を岩の両手で防ぎつつイヨリが出迎える。


「ああ、みんな元気そうだったよ。それでこっちは?」


 盾で頭を庇いつつ辺りを見渡し、弓矢での攻撃に対し、あまり被害が出ていないことを確認する。


「ええ、あーちゃんがすごい活躍をしてて」


 まだ四才のあーちゃんを、ミリア共々守ろうとしていたイヨリが出番を取られ苦笑する。


「確かにこれはすごいな……」


 上空を見上げながらジンタも感心したように呟いた。


「むおおおぉぉぉぉぉぉ――――――っ!」


 ミリアが興奮している時に出すような叫び声を上げ、あーちゃんはイヨリに肩車をされ、その上で獣人化した自身の髪の蔦を目一杯に長く伸ばし(最大で三メートルほどまで伸びる)、それを上空で扇風機のように振り回していた。数十本の蔦を上空で高速円回転させることで盾のような効果を発揮し、矢を叩き落としていたのだ。


 つまり上空から降り注ぐような矢は、ほぼ全部がそのあーちゃんの作ったぶん回しの盾に阻まれ、側面からの矢は当然、囲うように立つイヨリやリカ、それに直接的戦闘を得意としない防御系の『召喚されし者』達によって落とされていた。


「さて偵察隊との合流も済ませたし、後はこのゴブリン達を撃退して戻るだけだな」


「そうですね」


 ジンタの言葉にロンシャンが答える。


 そのロンシャンも、右手の中指にはめている魔法のリングを前へと突き出し『ファイア』の魔法を唱え、木々の上にいる弓矢を持つゴブリン達を攻撃していた。


「そろそろ流れが変わり始めますね。これからは防戦ではなく、こっちが攻める番だと思います」


「つまり、範囲強化を?」


「はい、『アタック』より『スピード』がいいと思います」


 ロンシャンの提案にジンタが頷いた時、前方にいるカインの叫びが響いた。


「守るだけの戦いはもう終わりだ! そろそろこっちから攻めるぞ!」


「「「「「おぉっ!」」」」」


 雄叫びのような同意の声が上がるを聞き、ジンタはミリアを見る。


「ミリア!」


「うん、じゃあ『スピード』に変えるね」


 包み纏うように流れていた風が一秒ほど止まり、ミリアの新しく唱えた『スピード』の風が体を包む。


 それを確認してから、ジンタは周りに強化魔法の上書きをしていく。


 後方にいるため、元々掛けていた『プロテクト』の上書きになるが、中には『スピード』を上書きし、飛び出す者も増えた。


 その中の一人がラーナだった。


 ロンシャンからの指示でもあったが、それまでは守るように大型の盾と同じく大型のランスを構えていたが、それらを手放し、ラミアの獣人化である蛇の下半身をうねらせ高速で動き出した。


 人混みを器用に縫うように動き、木の上のゴブリンを見つけると、下半身を木に纏わり付かせグルグルと上っていき、両手の長く鋭利な爪で切り裂いていく。


 攻勢に出て数十分、ゴブリン達は逃げ出して行った。

 勝ちどきの声を上げた後、けが人の処置もほどほどに、ジンタ達はカイン達を先頭に砦に向かい歩き出した。


 全員にスピードの重ね掛けを掛けたまま。


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