あーちゃんと母親と
『召喚の儀』から三日後。
ジンタは午後一番の日射しの中、我が家のドアを開けた。
室内はぽかぽか気持ちよさげに暖かく、そして静まり返っていた。
いつもならイヨリがソファーに座っていても不思議じゃないが、そのイヨリの姿もない。
軽く探すように視線を左右に向けると、すぐにイヨリは見つかった。
リビングの大窓、日の当たるその場所で床にシーツを敷き、タオルケットを掛け、数人の同居者を交えお昼寝中だった。
イヨリの隣には、新緑色で自分の身長ほどある長くふわりとした髪をした新しい家族、あーちゃんを腕枕して。
三日前、ミリアが喚んだのは『召喚の儀』ではあり得ないはずの三才児の召喚されし者だった。
ミリアの顔面に見事着地したあーちゃんは、初めて見るその光景にその場で大泣き。
イヨリがすぐに抱っこしあやしたが、周りがまだ小さいあーちゃんに歓喜し大騒ぎとなり、あれよあれよと人集りがあーちゃんを抱っこするイヨリの周りを包んだ。
『召喚の儀』を執り行った学校側のエルフ教師は、しばらくボー然としていたが、我に返った後、あまりの予想外な展開に逃げ出すように「では今年の『召喚の儀』は終了とします」とだけ告げ、そそくさと学校内へと帰ってしまう始末だった。
何とか人集りを退散させ、そそくさと逃げるようにジンタ達は我が家へと帰った、辿り着いた時にはもう泣き続けたあーちゃんは力を使い果たしぐっすりと眠り、ジンタ達もぐったりしてしまったほどだ。
その翌日、全員での話し合いの結果、あーちゃんに対する対応は色々とシビアな状況のため、情報を集め出したのだ。
結果分かったことは、まずあーちゃんは種族ドリアードだということ、そして年齢は三才、片時も離さず持っている自分に似た人形は、あーちゃんのお母さんが作ってくれたお手製で、本人もお気に入りの人形であること。最後に、まだ獣人化が出来ないことだった。
もっとも、この情報の提供者はなんてことはない、あーちゃん本人から聞き出したことに他ならない。つまり、この時点でジンタ達が色々調べて回ってることは、何一つとして情報と呼べるモノを集められていないのだ。
あーちゃんが来て三日目の今日も、ジンタはミリア達と朝一緒に学校へと赴き、保健医に聞けるだけの情報を聞いてきたところだった。
一番の問題は、もしあーちゃんがまだ小さいからと、『召喚されし者』としてのミリアとの契約を解除した場合、あーちゃんは十才以降、もう一度『召喚せし者』であるエルフのマスターに召喚されることが出来るのかどうか、と言うことだった。
通常、『召喚されし者』であるジンタ達は、マスターであるミリア達との契約を解除した場合、もう召喚されることはなくなる。それは『召喚されし者』になる前に子供を授かっても同じだと、前にトミさんに聞いたことだ。
しかし、そのどれもが十才以降の、普通の形で召喚される権利のある者のことで、あーちゃんのように元々十才前に召喚されるというあり得ない状況の場合は、果たしてその扱いが無効にされるのかどうか、が問題だった。
もし有効の場合、あーちゃんはミリアとの契約を解除した時点で、一生『召喚されし者』としての権利を失う。
つまり成長し、自分の意思で色々と考えられる年になった時には、もう喚ばれるのを待つという選択が選べないのだ。
そこがハッキリしないことには、迂闊なことが出来ないと全員での結論だった。
実際、その話を役所で聞いたが、前例がないため分からないと言われ、今日保健医に聞いてみたが、やはり同じ回答だった。
気持ち良さそうに寝ているみんなを、起こさないようにそっとキッチンへ行き、冷たい飲み物を調達し、ジンタはリビングのソファーに腰掛けた。
ギシッ、と寝息だけの無音に近いリビングにソファーの軋む音が響く。
ジンタはリビングの天井を見て、一つ息を吐いた。
もう一つは、あーちゃんの集落がどこにあるのかということ。
まだ三才のあーちゃんが『召喚の儀』で喚ばれるなんてきっと母親だって思ってなかったはずだ。相当心配しているはず。
届くかどうか怪しい手紙を出すにせよ、直接会いに行くにせよ、あーちゃんが召喚されてしまったことを親にも報告した方が良いだろうとなったのだ。
しかし問題はその集落にもあった。
種族ドリアードであるあーちゃんは、当然ドリアードの集落にいたはずなんだが、そのドリアードの集落が、この第二階層には五つほどあるんだそうだ。『召喚の儀』の時、ロンシャンが精霊系が多いと語っていたが、まさか集落自体幾つもあるとは思わなかった。
なぜそこまで多いんだ? とジンタも思ったが、そもそも集落というのは大家族みたいなもので、大人子供合わせて多くても四十人ほどの集まりなのだそうだ。
そこでジンタが思い出したのは、ミト生まれ故郷である集落、確かにあそこもミトの母親であるトミとミコを入れても二十数人しかいなかった。
そんな訳で、集落の人数が多くなると、枝分かれするように集落が分離する暗黙の決りがあり、逆に小さくなるとくっつくらしい。
つまり、5つのドリアードの集落があるということは、最大で二百人、元ドリアードである大人を含めて種族ドリアードはいると言うことになる。
五つある集落を全部周り、あーちゃんの親を訪ね歩くのも話に出たが、それを聞いたミリアが「絶対にわたしも一緒に行く! だってわたしはあーちゃんのマスターなんだからね」と、昨日の夕食後の話合いの中、口の周りにあーちゃん同様の食べ方で食べたデザートの生クリームを口周りにつけ豪語した。
言い出すと聞かないのはみんなも分かっているのか、それではミリアを危険にさらすことになるため、全部を見て回るというのは却下となった。
そうなると、なんとかあーちゃんのいた集落を見つけ出さないといけないのだが、少なくともあのあーちゃんが喚ばれた際の『召喚の儀』の会場で、あーちゃんを見知ってる人はいなかった、――――と思う。
場が混乱していたのもあるが、詰め寄ってきてた中に、あーちゃんへ直接声を掛けている人はいなかったからだ。
一応ミリア達に、学校の他学年、その『召喚されし者』で種族ドリアードはいないか聞いてくれとお願いをしても、ミリア達マスター三人も学校では他の学年の人とは一回も会ってないと困ったように互いに顔を見合わせ、眉を顰めていた。
あーちゃんの件以外にも色々とありそうなこの第二階層だが、それでも今ジンタ達が一番に解決しないといけないのはあーちゃんのことなのだ。
色々と予想外な形で召喚された為、『召喚されし者』としての登録をするのか、それとも契約の解除をするのか、を役所で先延ばししてもらっているが、それもあまり長くは待ってもらえない。
やろうとしても何も出来ないこと、そして他にも考えなきゃいけないことが山積みなことに、ジンタはもう一度「はぁ~」と疲れたように肩を落とした。
ぼーっと天井を見つめていると、寝ていたイヨリが小さい声を漏らし目を覚ました。
まだ寝起きのまどろみの中にいるのか、イヨリはあーちゃんの方を向いたままぼーっとしている。
そのイヨリの呆けた横顔をジンタがジィーっと見ていると、視線に気付いたのかイヨリがまだ眠そうな顔のままジンタを見た。
「………………」
「……おはよう」
無言のままのイヨリに対し、ジンタが先に口を開いた。
ハッとなったイヨリが、キョロキョロと辺りを見渡し、状況を確認してゆっくりとあーちゃんの頭から腕を退かし起き上がる。
「か、帰ってきたのなら、一声掛けて下さい」
「いや、あまりに気持ち良さそうだったもんで、つい……」
「そ、それは、そうですが……」
恥ずかしそうに、寝ていて乱れた黒髪を指で直しながら、イヨリが抗議の声で小さくぼやく。
ジンタは苦笑しながら「ごめん」と謝った。
お昼がまだだったジンタに、キッチンで軽い昼食の準備をし始めたイヨリ。
そして、その料理の音と匂いに誘われるようにぱちりと目を覚ます、あーちゃん。
むくりと上半身を起こし、まだ上体をふらふらさせたまま目を擦る。
ジュ――ッと炒める音を小さい耳を動かし聞き、漂う香ばしい匂いに鼻をヒクつかせてから、ゆっくりと立ち上がる。
そして、目を二度、三度としばたかせると、その瞳がさっきまでの呆けてぼやけたものから、しっかりとした深緑色へと変わる。
そこから一目散に匂いの元へと走り出す。
「あーちゃんも! あーちゃんも食べるよ~~っ!」
キッチンへ向かったあ―ちゃんにイヨリは、
「ちょっ、ちょっとあーちゃん、今は料理中だからこっち来ちゃダメですよ」
「あーちゃんの分も! あーちゃんもほしい!」
きっと今頃、必死にイヨリの太ももにしがみついているのだろうあーちゃんに、イヨリが困った声でジンタを呼ぶ。
「ジンタさん、あーちゃんをそっちに!」
「はいはい」
「あーちゃんもだからね!」
キッチンでイヨリの足からあーちゃんを引っ剥がし、まだごねるあーちゃんを抱っこしジンタはソファーへと戻った。
それから十分ほど経って、料理の置かれたテーブルにジンタ、あーちゃん、イヨリと並んで座り、お昼を食べた。
もっとも、あーちゃんはお昼もちゃんと食べていたのでこれはおやつとも言えなくないのだが、しっかりとあ―ちゃん分としてだされた料理を全部平らげた。
しかし、結構騒いだはずなのに、リゼットはともかく、一緒に寝ていたエルファス達の新しい家族である水音まで、気持ち良さそうにお昼寝を続行していた。
ここ三日で分かったのは、水音も結構ぼーっとしているところがあり、朝が弱いのか、起きてくるのが遅い。そしていつも眠そうなところがあり、こうして暇があるとリゼットとお昼寝をしていた。
それだけよく寝ているから、あの特大な膨らみが実ったんじゃないかと、よくエルファスやミリア、そしてミトやたまたま先に起きた時のリゼットが話をしているぐらいだった。
そんな水音だが、一度獣人化してもらい、その獣人化能力であるウインディーネのチカラを見せてもらったが、かなりのものだった。
胸の獣人石が輝くと、深く青い腰まである髪が、途中から流れる透明に近い水へと変わり、体を纏うように流れ出す。
その水流を使い、攻撃や防御をしていた。
本人曰く、水場ならもっと力を出せますと言っていた。
さらにその練習の際の、雪目との連携はまさに圧巻の一言だった。
水と氷、二つの止まることのない飛礫攻撃に、ミトが頭を押さえて走って逃げ出すほどだった。
そんなことを思いだし寝ている水音を見ていると、コホンと何か言いたげなイヨリの空咳と、いつまで寝顔を見ているんだと刺さるような視線を感じた。ジンタは水音から目を逸らし飲み物を口に含んだ。
隣を見れば、お腹をぽんぽん叩いて満足そうにしているあーちゃんがジンタを見上げていた。
「ジンさ、美味しかった? あーちゃん美味しかったよ?」
深緑の瞳を満足そうに輝かせてる。
あーちゃんはなぜかジンタのことを「ジンさ」と呼ぶ。ミリアのジンさんを真似してるのだろうが、最後の「ん」が抜けるのだ。
「ああ、ほんと美味しかったなあーちゃん」
ジンタもあーちゃんの真似をするように、お腹をぽんぽんと満足そうに叩いた。
「それでジンタさん、保健の先生の方はどうでしたか?」
あーちゃんのさらに隣にいるイヨリの問いに、ジンタは首を横に振る。
「そうですか……」
「なんか、あまりにもありえないことで気軽に答えれることじゃないって話だな」
「ですよねぇ……」
イヨリは頷きつつ、あーちゃんの頭をそっと撫でる。
「出来れば集落の場所だけでも分かればなぁ……」
「ですよねぇ……」
二人が溜息を吐くと、あーちゃんも二人をマネをして「はぁ~」と溜息を吐いた。
そんな、どこかまったりと困り果てる二人と、マネをする一人の子供のいるリビングに、風が吹いた。
家の入り口であるドアが開いたのだ。
開けたのは、ロンシャンの『召喚されし者』であるリカとラーナの二人だった。
二人は顔に笑みを称え、ジンタ達にただいまを言い、そして一人お客様を連れてきたと、入り口を空けるように左右に退いた。
開いた入り口の前に、恐る恐ると一人の女性が顔を出す。
その顔にジンタ見覚えがない。隣のイヨリを見ても、どちら様でしょう? とジンタ同様に見覚えがなさそうだった。
しかし、そんな二人の間に座っていたあーちゃんが、堰を切ったようにソファーから飛び降り、トタトタと女性に向かい走りだした。
「「あーちゃん?」」
ジンタとイヨリが声を掛けるが、あーちゃんは止まらない。
そしてあーちゃんは、迎え入れるように屈み両手を広げる女性に飛び込み、
「ママ~~~~」
と叫んだ。
「「え?」」
ジンタとイヨリ、二人があまりの出来事に固まる中、母親と娘の二人は見事に再会を果たした。
女性は栗色の髪をさらりと流し、明るい茶色の瞳で、膝の上に乗り果汁を飲むあーちゃんを優しげに見つめていた。
「あ、あの本当にあーちゃんのお母さんなんでしょうか?」
イヨリが、遠慮気味に尋ねると、優しく「はい」と頷き、
「この子の名前はアリディア。三才で種族ドリアードの私の娘です」
そう語った。
「あーちゃんの言っていたことと同じだな……」
ジンタが呟けば、
「私達が役所に行った時、この方がちょうどあーちゃんのことを尋ねていらしたのですわ」
リカがあーちゃんのお母さんとの出会いを教えてくれた。
「そうですか……、あーちゃんはアリディアと言うのですね」
イヨリは、美味しそうに果汁を飲むあーちゃんを見る。
「うん、あーちゃんだよ」
それに応えるようにあーちゃんは、飲むのをいったん止め、イヨリに笑顔を向けた。
そこからしばしの間沈黙が続いた。
ジンタとイヨリ、そしてリカとラーナ、四人はあーちゃんの母親に色々と聞かなければならないことがある。それをどう口にするか、それを誰が口にするかで、全員がアイコンタクトばりの視線を飛び交わしていたのだ。
結果、ジンタ以外の全員の視線がジンタに向いた。
その目は、あんたが聞きなさいと如実に語っていた。
場の沈黙と、全員の視線に耐えきれずジンタが動く。
まず、わざとらしい空咳を一つし、
あ―ちゃんを膝の上に乗せている母親へと声を掛ける。
「あ、あの……」
「はい?」
優しい笑みのまま、母親はジンタを見つめる。
「え、えっと。じ、実は……」
「はい?」
「あ、あーちゃんのことなんですが……」
「はい?」
「えっと、あ、あーちゃんを…………」
絞り出すようにそこまで言ったジンタの頭はもうパニック寸前、と言うよりパニくっていた。
そして出た言葉は、
「あ―ちゃんを俺に下さいッ!」
血迷ったようなジンタの一言が、無音の部屋に更なる沈黙を呼び込んだ。
しかしそれも二秒ほど。
「ふんっ!」と鼻息を交えたイヨリの裏拳がジンタの顔面へと叩き込まれ、ジンタはソファーの後ろへと転げ落とされた。
「す、すいません、なんかうちの者が色々と訳分からないことを言ってしまって……」
引き攣った笑顔を貼り付けたままのイヨリが、あーちゃんの母親に頭を下げる。
「い、いえ、なかなか面白い方なんですね、あは、あははは……」
あーちゃんの母親も先程より固めの笑顔で笑い返す。
「ですが、あーちゃんを私達に、というのは、本当の事なんです」
イヨリは笑みを消し、真顔で説明を始める。
あーちゃんが、自分達のマスターであるミリアに喚ばれたことを、そしてそれは何人もの人が見ていた前でのことなのを……。
最後まで黙って聞いていた母親は、五秒ほど沈黙し、そこから一度大きく頷いて、
「やっぱり、この子――アリディアは『召喚の儀』で喚ばれたんですね」
確信したのか、まだ半信半疑なのか、母親はもう一度自分の言葉でイヨリに尋ねた。イヨリははっきり「はい」と頷き返した。
「やっぱりですか……。ちょうど洗濯物を取り込んでる時でした、後ろでいつものようにお人形と遊んでいたあーちゃんのことが急に気になって振り向いた時、この子が地面に落ちていくように消えたもので、もしや……と思い、こうしてすぐに集落を出てこの街に……、まさか本当に喚ばれてたなんて……」
喜んで良いのか、悲しんでよいのか分からずに首を振る母親。
「それで、今後のことなんですが……」
イヨリが適度に間をあけ、続きを話始める。
「あーちゃんが今三才、そして獣人化もまだ出来ない状態です」
「……そうですね、『召喚されし者』であるにも関わらず、これではただの重荷にしかなりませんよね……」
「そんなことは……」
「いえ、これから先のあなた方の苦難に今のこの子では足手まとい以外、きっと何も出来ることはありません」
悔しそうと言うよりは、申し訳なさそうに母親は口をつぐむ。
「ですが、もしあーちゃんを今、召喚解除してしまった場合、あーちゃんはもう二度と喚ばれる権利が無くなることも――――」
「そ、それは……、確かにそうかも知れませんが。それでも今のこの子があなた方の役に立てるとは、私だって……」
頭を下げっぱなしで申し訳なそうにしている母親に、あーちゃんも心配そうに見上げている。
「はぁ~、何を話合ってるつもりですの、イヨリさん」
黙って聞いていたリカが二人の間に入るように口を開く。
「あーちゃんさんがまだ三才で獣人化も出来ずまだ戦闘の役に立たないなど、イヨリさん達もそれ位は分かっていたはずでしょう?」
「そ、それはもちろん……」
「では、話はそこではないでしょう? イヨリさん達はあーちゃんさんを四人目の家族として受け入れたいのですの? それとも突っ返したいんですの?」
突き付けるようなリカの言葉に、
「そんなの決まってるだろ。俺達はもうあーちゃんを四人目の家族として受け入れる。そう話を決めているんだ」
イヨリの裏拳でひっくり返り、どのタイミングで席に戻ろうかと考えていたジンタがそう言い切り、席へと戻る。
「そ、そうです、私達はもうあーちゃんを自分達の家族として――」
「だったら、話の進め方が違うでしょう?」
「あ……」
「分かったのなら、そっから話をして頂戴な。聞いてるこっちがイライラしてきますわ」
そこまで言ってリカは紅茶を啜り黙った。
「えっと、私達はあーちゃんを四人目の家族として、私達の元に受け入れたく思っています。そのことをお母さんはどうお思いでしょうか?」
先程までのリカとイヨリ、そしてジンタのやり取りを聞いていた母親は、目に涙を浮かべゆっくりと頭を下げ、
「どうかこの子――――アリディアをあなた方の家族として、ずっと側にいさせてやって下さい」
まだ不安は残るものの、嬉しそうに声を詰まらせながら、頼んできだ。
「はい」
「任せておいて下さい」
ジンタとイヨリがしっかり頷き、返事をした。
こうしてあーちゃんは正式にミリアの、そしてジンタ達の家族の一員となった。
が、ここまで話を進めたが、この話はジンタやイヨリ、そしてあーちゃんの母親の三人で決めたこと、もっともミリアはあーちゃんをこのまま家族して受け入れることには賛成していたが。
当の本人であるあーちゃんは、まだ自分がミリアの『召喚されし者』だという自覚がない。
それにジンタ達の家族となったからといって、いきなり母親と離れ離れにさせるもの如何なものかとなり、当面はこのラペンの街で生活をすることとなった母親の元と、ミリアの家族としての生活、その両方をあーちゃんにしてもらうこととなった。
「でも、本当によいのですか、集落の方は?」
「ええ、あっちに戻ってもあ―ちゃんがいないのなら暇なだけですし、それにあーちゃんが将来『召喚されし者』として私の元を離れるのなら、私も次の子育てをしてもいいかなぁと――――」
チラリとジンタを見る母親に対し、ジンタが「え?」とはにかむような笑みを浮かべる。
それを見たイヨリは冷ややかな目でジンタを睨んでる。
「では、あーちゃんはこちらで寝泊まりさせ、都合の良い時にはそちらに連れて行くということでよろしいでしょうか?」
「はい。そうして頂けると助かります。私もまだ一人というのは寂しいので――――」
再度ジンタをチラリと見る母親。
「ん、んんっ!」
目をジンタに向けたままの母親に、水を差すように喉を鳴らし、
「ではそのような形で!」
イヨリが話をしめた。




