ラペンでは~ ベットは?
「私も、ここで一緒にお泊まりしますですわ」
ミリア達の前でスクッと立ち上がり、縦巻きロールを見事に上下に伸び縮みさせながら、鼻息荒くベンジャミンがはっきりと宣言した。
「な、何だって――――っ!」
ミリアが勢いに任せ立ち上がる中、
「でもベンジャミンちゃん。そんなこと言ったってもうこの家に空いてる部屋はないんだよ?」
ロンシャンが落ち着いた声で家の現状を告げる。
確かに、もうこの家には空いている部屋はない。
この家の主であるミリアとイヨリの部屋。そして今はいないジンタの部屋はロンシャンが使い、空いていた二つの部屋を一つは雪目とエルファスが使い、もう一つはリカとリゼットが使っていた。
「そうだよベンジャミン、空いてる部屋がないのにどうやってここで一緒に住むというの?」
エルファスが呆れ顔で尋ねれば、ベンジャミンは「ふふん」と鼻を鳴らし遊び場としていたミリアとイヨリの部屋を走り出て行った。
廊下を走る音が遠ざかった後、
「松、竹、私達も今日からここでお泊まりしますですから、ベットの用意をしてここに持って来てちょうだい!」
「はぁ~~~~?」
「えぇ~~~~!」
間の抜けた呆れ声と、驚く声が聞こえ、
「いやいやベンジャミン、ここにベットって持ってくるのも一苦労じゃ――」
「普通のではなく、旅行の時に使ったベットならすぐ用意出来ますでしょ?」
「ああ、あれのことですか?」
「うん、あれですわ竹。あれを私達の分少し大きめに作って持って来てちょうだいですわ」
「え、えぇ~~。今から作ってくるのか?」
「うん! 松、頼んだですわね!」
「げっ、竹の名前が消えておれっちの名指しに変わった……」
松のイヤそうな声が響く中、再度廊下をドタドタと走ってベンジャミンが戻って来る。
「これでいいですわ」
ムッフ――っ! と鼻息全開でベンジャミン。
「で、でも部屋は空いてないんだよ? ベットなんてどこに……」
ミリアの言葉にロンシャンもエルファスも頷く、リゼットだけは、ひたすらにクッキーをポリポリと食べ続けている。
「大丈夫ですわ。私達はあのリビングで寝かせてもらいますからですわ」
「リ、リビングで――――っ!」
ミリアの絶叫が家の中に響いた。
それから数時間後。
生気の抜けたようにボー然としたイヨリが買い物から帰り、黙々と晩ご飯の用意を始める中、リカは竹といまだお茶会をし、ミリア達五人は遊び続けていた。
そこに玄関が開く音が聞こえ、
「ベンジャミン作ってきぞ――っ」
松の大きな声が響く。
「ふっふっふっ。私のベットが届きましたですわ」
自信満々に立ち上がったベンジャミンが部屋から飛び出していく。
トタトタと廊下を走るベンジャミンの足音を聞きながら、当然ミリア達四人もどんなベットか興味をそそられる。
全員が互いに目を合わせ頷き、ベンジャミンが開けっ放しで出ていった部屋の外へと我先にと走り出していく。
複数の廊下を走る音が響き、ミリア達がリビングに到着するとリビングの大窓の前に大きな膨らみを見せる白いシーツが三つ置かれていた。
「こ、これは……」
ミリアがリビングの入り口で目を見開く。
「な、なんてふっかふかそうな……」
後ろのエルファスが興味を示すように呟く。
「気持ち良さそうだね……」
ロンシャンまでも、驚きの中に理解を示す。
「リゼット我慢出来ないよっ!」
思考より先に行動を優先させたリゼットがシーツに向かい走り出し、ジャンプ一番でシーツへとダイブした。
ぼふっ。
空気が抜けるような音をさせ、リゼットの細い体がシーツへと沈み込む。
「あぁ――ずるいっ!」
ミリアの声が合図のように、ミリアとエルファスとロンシャンがリゼット同様にシーツへとダイブした。
「うわ~~~~ふっかふか」
「すっごいいいねぇ、これ」
「よく乾いた藁をいっぱい白いシーツに詰めてるのか……、簡単だけどいいねぇ」
ロンシャンが感心したように言い、シーツに顔をスリスリさせる。
「あぁ――――っ! 私達のベットに勝手に寝ないでもらえますかですわっ!」
掛け布団代わりの毛布を持って、外からリビングへと戻ってきたベンジャミンが叫ぶが、ロンシャンがベットに横になり気持ち良さげに頬をスリスリしているのを見て、
「ロ、ロロロ、ロンシャン様はそのままそこでスリスリしてて下さい――、私が今日からそのベットで、そのシーツで寝ますから……」
両頬を手で覆い、いやんいやんと首を振る。
「これは一体……? どういうことなんです?」
キッチンから生気なく、疲れた溜息を漏らしイヨリが顔を見せた。
「なんてことないですわ、さらに三人ここでの生活者が増えるだけですわ」
紅茶を飲みつつ、リカが答える。
「そうですか、じゃあ少し多めに晩ご飯作らないとダメですね」
感情が希薄なまま、イヨリが答えると、
「イヨリはいいの? ベンジャミン達がここに住んでも?」
ミリアが壊れ物を触るようにそっと聞く。
キッチンへ戻る足を止め、ゆっくりと首だけを回しイヨリが笑顔じゃない笑みを向け、
「いいんじゃないです? どうせジンタさんもいないですし、一人や二人や三人増えたところで――――、そう……ジンタさんがいないんですし……」
虚ろな瞳をさらに虚ろにして、イヨリはブツブツ呟きながらキッチンへと歩いていった。
「なんかイヨリさん危なくない?」
エルファスが、怖いと言うようにミリアの背の服を掴む。
「うん、ちょっと最近のイヨリ、おかしいかも……」
さすがのミリアも、ここ三日ほどのイヨリの行動に少しばかりの畏怖を感じていた。
「ちょっとヤバいよね、あの感じは……」
ロンシャンまでもが頷く。
そんなマスター達の言葉を聞いていたリカは、
「さて、こっちの方も、そろそろ何とかしませんといけませんわね」
溜息し呟いた。




