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豊作祭とイベント

すいません。章を解除しました。一応マッタリと書き進めていますが、小学校編で一章という形を取りたいためにです。どうか生暖かく見守ってください

 季節は夏を過ぎ去り、残暑が収まり始めた九月の後半。


 普通に出歩くにはちょうど良い天気の中、かーんかーんとけたたましく鳴り響く鍛冶場では、禿げ頭にタオルを巻いた筋骨隆々で良く日に焼けた(火に焼けた?)ヒゲおやじが、体中から汗を飛び散らせ鉄を叩いてた。


 そんな一心不乱に金槌を振り下ろすおやじの後ろに立ち、ジンタは大きく息を吸い込み、


「おやっっっっっさ――――――んっ!」


 おやじの叩く金槌の音にも負けないような大声で叫ぶ。


「ん?」


 金槌を持ち上げた状態で、脂っこい汗だくの顔をおやじが向けてくる。

 そして三度ほど目をぱちくりとさせた後、


「おぉ~お前か」


 思い出したように言い、振り上げた金槌を降ろし、よっこいせと掛け声を上げながら立ち上がった。

 立ち上がるとやはり大きく、身長一七〇あるジンタでさえ見上げるほどだ。


 そしてそんなオヤジをいつも見上げて思うのだが、なぜ、このおっさんはこれだけ体中のほとんどか厳ついのに、目だけはまん丸のかわいいお目々なんだろう、と。


 そんなことを頭で考えながら、ジンタは挨拶と用件を口にする。


「こんちわっす、おやっさん。武器と防具のメンテ頼んでいいです?」


 言いながら、自身が装備している武器と防具をポンポン叩く。


「ん~~、そうかそうか、メンテナンスだな、分かったぞ」


 そう答えながら、おやじはジンタの武器、直剣を掴み鞘から抜き放つ。


「お~、お~~、お~~~」


 高く持ち上げ、太陽にかざすようにして剣を見ながら、おやじはどうとでも取れるような抑揚で声をだす。


「どうです?」


 その「お~」の言葉の意味が良い意味なのか悪い意味なのかが分からず、ジンタは恐る恐る尋ねる。


「そうだなぁ~。初心者の割にはちゃんと手入れされるんじゃないか。まあ、それでもまだ全部を一人でって言えるほどではないがな」


 そこまで言い、おやじは「がっはっはっ」と笑いながら、ジンタの剣を自分の座っていたイスに置き、ジンタを休憩場所へと促し、自分も歩き出す。

 休憩場所は火床を離れた場所にあるせいか、かなり涼しくはなったがそれでもまだ幾分熱が篭もり熱く感じる。


 布を広げただけの屋根の下にある丸テーブルと四つのイス。その一つにジンタが座り、対面になるイスにおやじがヤカンと水の入ったコップを持ってきて座り、まずコップをジンタ側に置き、そして自分はヤカンの口を咥え、一気にゴクゴクと冷えた井戸水を飲み、「ふ~~」っと一息吐いて、背もたれに寄り掛かった。


「だいぶ涼しくなってきたんだがなぁ~。ここにいると年中、熱いわなぁ~~。ほんと、鍛冶屋なんてするもんじゃないな」


 頭に巻いていたタオルを取り、汗をぬぐいつつおやじが言う。

 それに対しジンタは困ったように笑みを浮かべ、


「あははは、確かに見てても熱そうですもんねぇ……」


 見たまんまの率直な感想で答える。


 顔を拭き終わったおやじは、思い出したようにジンタを見て、


「そういえば、お前のところのミリアちゃん、確か今年六年生だったよな?」

「ええ、そうですけど……」


 それがどうしました? とおやじに訊ね返す。


「そうかぁ~、それじゃあ今年の豊作祭でイヨリちゃん達の勇姿も見納めかぁ~」


 懐かしむような、それでいてどこか楽しそうな目で秋の空を見上げるおやじ。


「豊作祭に勇姿?」


 対面に座るジンタを突き抜け、さらに後ろに広がる青い空に遠い目を向けているおやじに、ジンタは理解しきれていない二つの言葉を投げかけた。


「お? おぉそうか。お前さんはこのラペンに来て――、いや違うな、このリリフォリアに来てまだ一年経ってないんだったな」


 遠くに行っていた視線と心をジンタに戻し、おやじがジンタに答える。


「豊作祭はなんとなく分かります。最近よく耳にしますし、イヨリやミリア達からも今年の刈り入れのお礼と来年の豊作を祝ったラペンを上げての大きなお祭りだ、とは聞いてますけど……」


「勇姿の方か?」

「ええ、イヨリが強いのは知ってますけど、勇姿っていうのは?」

「ふむ」


 おやじは頷き、ヤカンに口をつけ、再度ゴクゴクと豪快に飲んだ後、


「豊作祭の行事の大一番に、召喚されし者三人一組で戦うトーナメントがあるんだ」

「ほ~、三人一組」

「そうだ。去年はイヨリちゃんリカちゃんミトちゃんの三人が優勝してな。今年は二連覇を狙っているはずなんだが……。お前は何も聞いてないのか?」


 投げかけられた言葉を、ジンタは数秒、思い出すように記憶を噛み砕き粉々に磨り潰してから、


「ええ、全く聞いてないです……」


 と、みんなから何も聞かされていないことに、みんなの自分に対する関心がないんだろうと、少し悲しい自分に向けてそう答えた。


「そ、そうか。でもあれだな。今年はお前がミリアちゃんのところ、つまりはイヨリちゃんと一緒なんだ、その三人で組むことはないということじゃないのか?」

「え? そんな、俺なんかよりその三人で戦った方がどう見ても戦力的に上じゃないです?」

「ぶっちゃけちまうとそうかも知れんがなぁ~。三人や周りのやつもその辺りを気にして口に出来ないんじゃないのか?」

「ですかねぇ……、なら今日それとなくイヨリに聞いて、俺の方から三人で出てくれって頼んで見るかな。三人の勇姿、俺も見たいし」

「おぉ~そうか? そうしてくれると俺達も楽しみが増えるな」


 大きく上体を揺らし、がっはっは、と大笑いするおやじ。



「あの~~、すいませ~~ん」


 そこに、申し訳なさそうな感じの小さめな声が響く。


 おやじとジンタ、二人が同時に声の方へと振り向く。

 そこにはいかにも気弱そうな細身で小さく、女性というにはまだ幼い感じが強く、どちらかと言えば可愛らしい少女が立っていた。


 少女は、同時に目を向けたジンタとおやじにビクッと肩を跳ね上げ、自分の身長より長い槍をきつく握りしめた。


「お? たけちゃんか。槍の手入れかい?」


 普段、ジンタと話をしている時のおやじからは考えられないような優しい声音に対し、竹と呼ばれた少女は「は、はいっ!」と大きく頭を下げて、両手に持っていた鉄製の槍を前に差し出した。


 その際、長い、ほんとに長い膝下まである白のメッシュが入った茶色の髪が背中で揺れた。


「ジンタ、お前の手入れは後回しにしてもいいよな?」


 立ち上がりながらのおやじに言われ、ジンタは「はい、急いでないからいいですよ」と答えた。


 少女、竹の手から槍を受け取り、おやじは槍をゆっくり見つめ、火床の前に置かれたイスに座り、火床の温度を上げていく。


 カーンカーンと、おやじの金槌の音が響き出した頃、ジンタはもう一度竹の方へと目を向けた。

 竹は声を掛けてきた場所から、おやじの修理している方へと体の向きを変えただけで、その場にジッと立っていた。


 そんな立ち位置の関係もあり、ジンタはちょうど竹を横から見る形になった。

 肘ほどまでの長さのシャツと、膝ほどのキュロットを履き、どちらも薄茶色を基調にしている感じだ。

 線の細さと臆病さを露わにしている竹は、今もまだ小さい両手を胸の前でギュッと組んでいる。

 しかし、そんなに奥ゆかしい感じの少女なのに、なぜか髪の色は茶色に白のメッシュという何とも目立つ髪。しかもそれが膝下まで伸びている。


 性格と容姿、それに対し異様すぎるほどアンバランスな髪色の竹を、ジンタはついついボーッと見つめてしまった。


「おい竹、そこでボーッとしてるな! 変態そうな男がお前をジィーッと見てるぞ!」


 そこに的を射たような女性の声が聞こえ、ビクッとした竹同様、ジンタまでビクッと肩を跳ね上げた。

 ジンタと竹、互いの目がそれぞれを見つめ合い、固まる……。


 スパ――ン!


 そこに響く小気味よい音と、何とも言えない衝撃がジンタの後頭部から頭頂部をすり抜けていく。

 さっきまでの新しい出会いを彷彿させるような硬直が断ち切れ、ジンタが慌てて後ろを振り向くと、大きなハリセンを持ったボーイッシュな栗色の髪に黒のメッシュが掛かっているガッシリとした長身の女性がハリセンをパシパシと手で叩きながら立っていた。


「えっと……あなたは?」


 一応それほど痛くはなかったが、それでも叩かれた頭を摩りつつジンタは女性に尋ねた。

 女性は、待ってましたとばかりに胸を張る。が、なぜか張られた胸は長身でガッシリしている体型なのに,女性としてはどこか寂しい……、いやまったくに近いほどぺったんこだし、柔らかいと言うよりは筋肉っぽい。


 そんなジンタの思考を無視して、女性は語り出す。


「おれっちはまつだ、そこの竹と同じく、マスターベンジャミンから喚ばれた『召喚されし者だ』! どうだ! 参ったか!」


 そこまで言って、おやじの笑いも真っ青なほど、大仰に大笑いしだす。


「『召喚されし者』かぁ……。じゃあ俺と一緒ですね」


 なんとも、どういう態度で接していいか分からないジンタは、とりあえず頬を引き攣らせながらも「ははは……」と乾いた笑いで返した。


「何? お前も召喚されし者なのか?」


 ジンタの言葉に松は笑うのを止め、今度はこれでもかと思えるほどジンタの顔の近くまで顔を寄せてきた。


「近い近い」


 鼻息が掛かるほどの距離にある松の勝ち気な顔をとりあえず押し退け、ジンタは「そうだ」と答える。


「ん~~、おれっちの記憶には、あんたみたいな人はいないが、ひょっとしてつい最近喚ばれた低学年のマスターの『召喚されし者』か?」


 それなら納得というように松が頷く。


「いや、喚ばれたのは確かに今年の春だけど、マスターは今小学六年生だ」

「何っ! マスターは小学六年生? 一体誰――ブッ!」


 またまた顔を近づけてくる松に対し、ジンタはその顔面をアイアンクローのように掴み押し返しながら、


「一応言っておくと、俺のマスターはミリア、――ミリアリタだ」

「ミリアだって―――――――ッ!」


 押し退けている松と「あわわ」とオドオドしている竹。その二人とはまた別の場所から叫び声が上がった。


 ――ま、まだ誰かいるのか……。


 内心でトホホと肩を落としながらジンタが目を向けると、空色のような髪に右に二つ、左に二つの見事な縦巻きロールをしたエルフの少女(年齢的にミリアと同じほど)が、まるでリカのようなヒラヒラの付いたピンクのシャツとユッタリとした同じくピンクのロングキュロットを履いて、ジンタを指差し立っていた。


「えっと……、君は?」


 ハッと我に返った少女は、肩から下げられた小さめのバッグをごそごそと探り、やっと見つけたのか扇子を取り出し、ややもたつきながら扇子を広げて言う。


わたくしはこの二人のマスターで、ベンジャミンと言いますですわ。おーっほっほっほ」


 まるで要領の悪いリカを見ているようだ、と思いながらジンタは自己紹介をしようとした。


「えっと俺は――」

「いいですわ、分かっています。あなたはあのミリアの家族なのですね? そうなのでしょう? 私には何でも分かっていますわ」


 再度、扇子を口元に当てての大笑いに、ジンタは疲れたように溜め息を吐いた。


 そこに松の更なる追撃がジンタを襲う。


「おい、お前! ミリア様の家族と言うことはイヨリ――さん……、とも家族ってことか?」


 呼び捨てにしてから、何種類かの顔色変化をし、最後に小声で「さん」を付け、松が吠える。


「ああ、まあ、そうだな。イヨリとは、マスターがミリアで一緒の家族だけど、それが?」

「グヌヌヌヌヌ…………」


 ジンタが言い終わるかいなかのうちに、松の顔が憤怒とも悔しさとも分からないほどにしかめられ、コメカミに青筋を走らせ、顔全体を真っ赤にさせた。


「そ、そうだが、それがどうした?」


 もう何が何だか分からないが、とりあえずジンタは後退りながらもう一度そう言い、心では隙あらばここから出ていこうと考え始めた。


「あ、あの、それじゃあイヨリさんは今回も、リ、リカさんとミトさんの三人で豊作祭のイベントに出られるんですか?」


 オドオドと震えながら手を上げ発言する竹に、


「それはどうだろ? さっきおやじさんとも話をしてたけど、一応後で聞いてみて出られるようなら三人で出ることを勧めるつもりだけど」

「そ、そうですか……」


 しゅんっとうな垂れる竹。


「えっと、あの三人が出るとまずいのかな?」


 竹の態度にジンタがそう尋ねると、


「そりゃあそうだろ。あの三人は前年度のチャンピオン、しかも圧倒的なまでの強さで優勝しちまってるからなぁ」


 竹の鉄槍を砥石で擦っていたおやじが答える。


「そんなすごかったの? あの三人?」

「ああ、ほぼ無傷と言っていいほど圧勝だったな」

「ほへ~~」


 何とも間の抜けた声で返すジンタに、松が再度詰め寄ってくる。


「あんた、イヨリ――いや、イヨリさんに弱点とか、弱みとか、苦手なモノとかないか教えてくれないかっ!」


 どれも一緒だろ……。と思いつつ、ジンタは松を押し返し、


「それは悪いけど教えられない。ってか、教えようにも俺から見てもイヨリに弱点らしい弱点なんて見当たらないけどな」


 誇らしげにジンタが答える。


「では他の方は?」


 再度手を上げ、竹が質問する。


「で、出来れば、ろ、ロンシャン様のす、す、好きな食べ物や、リカ様のお好きな紅茶やクッキーなどもお教え下さいですわ!」


 エルフ特有の透明感のある顔を真っ赤にし、ベンジャミンもドモリながら手を上げジンタに近づいてくる、鼻息まで荒くさせて。


「え? い、いやロンシャンの好きな食べ物とかって聞いたことないな。――あっ! でもリカさんはサフラン亭のクッキーと紅茶が好きそうだってイヨリが言ってたような?」


 思い出したようにジンタが答えると、ベンジャミンにチッと舌打ちされ、


「何ですの? それ位の情報ならとっくに知ってましてよ。もっと詳細的なことを聞いてるんですのっ!ですわ」


 盛大に、これでもかとジンタは怒られた。


「そ、それ以上は……すまん……」


 情けなく謝るジンタに、


「ほんっと使えねえなぁ~」


 松が、やれやれと呆れたように吐き捨てる。


「ご、ごめん…………」


 再度謝りながら、なぜ俺謝ってるんだろう……、とジンタは自問自答。


「まあなんだな、こうして知り合ったのも何かの縁だ。三人の弱点が分かったらおれっち達に教えてくれよな」


 色々とうな垂れているジンタの肩に、ぽんっと一度手を置いてから、松は竹の方へと歩いて行く。


「さってベンジャミンに竹、とりあえず買い物を済ませようぜ」


 松は言いながら小さい竹の肩に腕を回し強引に出口へと歩いて行く。


「え! ちょ、ちょっとマツさん。まだ私、槍の手入れが――」

「そんなん後で取り来ればいいよなぁ?」

「ああ、別にそれでいいぞ。俺も仕事だ、夕方まではここにいるからな」


 松のぶっきらぼうな言葉に、おやじは槍を研ぎつつ答える。


「ほら、じゃあ行くぜ。ベンジャミンも行こうぜ」


 竹を引き摺りながらスタスタ歩いて行く松にベンジャミンも一度二人を追い掛けるように体を向ける。が、すぐにジンタに向き直り、


「分かったら聞いてくるのではなく、絶対聞いてきてくださいな! と・く・に・ロン――、ロンシャン様のお好きな食べ物を……」


 最初は超威圧的に、そして「ロン」の辺りからはいやんいやんと首を振り、左右四本の縦巻きロールを揺らしながらベンジャミンは告げ、いやんいやんの首と同じぐらい勢いよく反転し、松達の方へと駆けだした。


「は、はぁ……」


 溜め息半分、返事半分でジンタは答え、三人を見送った。


 鍛冶屋の狭き門から、三人が出て行った後、ジンタは座っていたイスにドスンと腰を下ろし、おやじの飲みかけだったヤカンの水をゴクゴクと飲み干した後、ゴンッと丸テーブルに倒れるようにおでこをつけた。


 そして、ずっと思っていたことを呟く。


「松に竹かぁ~。次の『召喚されし者』はきっとうめだろうな~~」


 と。

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