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お菓子屋は戦いだ! ミト対リゼット、ミリア、エルファス、ロンシャンの戦い 1

 場所は変わり、目を輝かせる五人と、夏の刺すような日射しに滅多刺しにされ死にそうな保護者一名が、ラペンのお菓子屋の前で佇んでいた。


「ふっふっふっ。イヨリは今いないよ。私は誰にとがめられることもなく遠慮無くお菓子を買い放題だよ!」

「ミリアちゃん。目が怖いよ……」

「うん、僕もリカが居ないから遠慮無く買えるよ」

「リゼットもだよ」

「待て。リゼットは止める側じゃないのか?」

 突っ込みを入れているが、ミト自身も飛び出す寸前のように目が輝いている。


「ここまで来たリゼットはもう止まらないよ。止まる気ないよ」


 猛る五人に対し、保護者の死にかけの女性は、


「えっと、お菓子より先に私の買い物を……」

「雪目の買い物って?」


 エルファスが尋ねると、全員の目が雪目へと注がれる。

 みんなに見つめられ雪目は頬を赤らめ、

「いえ、私とジンタさんが出会って三ヶ月とちょっとですし、最近では私も思慮深くジンタさんの前では静かに接してますから、そろそろジンタさんが私に振り向いて――――」


「それは絶対無いよ」


 モジモジと語る雪目に、エルファスは断言する。


「うん、ジンさんは雪目さんを絶対に見てないと私も思うな」

「そうだね、僕も同意。むしろ視界どころか最近は居るかどうかの認識からも消えてるぐらいだと思います」

「まあ、狩りとか行ってもジンタの口から雪目の名前聞いたことないしな~」

「リゼットも聞いたことないぞ」


「…………………………ゴフッ!」


 五人全員の完全否定を喰らい雪目は吐血した。

 そして当然のごとく雪目の買い物は却下となった。


「さて、雪目の買い物はなくなったわ。私達のお菓子を邪魔する者は何も無くなった。全員突撃~~っ!」


 エルファスの号令と共に、全員がお菓子屋へと雪崩れ込んでいく。


 ミリアとリゼットは、店に入った場所にある手近に置かれたお菓子を手当たり次第といった感じでカゴに入れていく。

 その二人の脇をエルファスとロンシャンが通り過ぎ、奥のおばちゃんの元へ。

 そして二人揃ってカウンターの後ろの袋、デラックスパックなるお菓子の詰め合わせセットを指差す。


「「あれを下さい」」


 ミリアとリゼットが、手を止め顔に「しまった!」とありあり浮かべる中、ミトはさらに後から余裕で歩いて行き、ロンシャンとエルファスを手で優雅に払い除ける。


「おばちゃん。あれはあるかい?」

「おや? ミトちゃんあれかい?」

「ああ、あれだ」


 全員が注目する中、おばちゃんはよいしょっと重い腰を持ち上げ、一度店の奥へと入り、デラックスパックよりさらに大きく豪華な袋を持ってくる。


「スーパーデラックスデリシャスパック。これでいいかい?」

「ああ、それで頼むよおばちゃん」


 ミトは勝ち誇ったように答える。


「ちょ、ちょっとミトそれって……」


 エルファスがミトを問いただすと、フッとムカつくほど余裕ある顔を向けてくる。


 そこにお菓子屋のおばちゃんが、


「これはデラックスセットの三倍の価格で、中身は普通には売ってないお菓子なども含めて、デラックスセットの四倍ぐらいのモノが入っているのよ」


 と、教えてくれた。


 雷に打たれたように、その場に居る全員が動きを止める。


「み、店に売ってないお菓子……」


 ミリアが呟き、


「三倍の値段で四倍の価値……」


 エルファスがツバを飲む。


「ぼ、僕にも――」


 それを下さい。と言い掛けるロンシャンに、おばちゃんは首を振る。


「ごめんねぇ。これは特殊なお菓子が入ってるから、在庫は常に一つしかないの」


 さらにショックを受ける全員を前で、ミトが憎たらしいほどの余裕顔をし、


「まあ、悪いなガキ共。こいつの情報を知らなかった自分達の無知さを悔やむんだな」


 吐き捨て、おばちゃんの手から袋を受け取ろうとした。

 そこに真打ち登場、リゼットがミトの腕を掴む。


「ミト、隠し事は良くない!」


 純粋に何も考えないリゼットの真実の言葉。

 それがみんなの心を我へと返した。


「そ、そうだよっ! 一人だけ知ってたのなんてずるいよ」

「うん、ミトはそうやっていっつも自分だけで情報を隠すんだよっ!」

「今回ばかりはリゼットのお手柄です。ミトさんにこのままその袋を渡すわけにはいかないです」

「リゼットもこれほしいっ!」


 四人の視線と言葉がミトに突き刺さる。


「ぐっ――。じゃあどうするんだよ? ジャンケンでもするか?」

「それもダメ、ミトは目がいいからズルするし」

「じゃあどうしよう? ロンシャンくん」


 この中で、一番頭の良いロンシャンに全員が目を向ける。


「うん、じゃあ鬼ごっこでどうだろ?」


「「「「鬼ごっこ?」」」」


 全員が一斉に声に出す。


「うん、でも少し内容を変えてだけどさ」

「どう変えるってんだ?」


 ミトがより余裕を持った対応で尋ねる。


 当然だ、鬼になるにしろ逃げる側になるにしろ、ミトはアルミラージの獣人。スピード勝負なら、いくら身軽に動けるエルフにだって十分追いつける自信はある。しかも相手が十一才程度のエルファス達なら尚更だ。


「うん。まずは鬼はミト。ミトが全員を捕まえるか。逆に僕ら全員の内一人がミトを捕まえるか。それで始めよう」

「捕まえるって?」


 ミリアが分からないというように、小首を傾げる。


「えっと、ミトは僕らに普通に捕まえるだけでいいんだけど。僕達はミトを動けなく捕縛すると勝ち、でどうだろ?」


 ロンシャンの説明に、全員が「え?」と驚いた顔をする。


 それってミトが圧倒的に有利なんじゃ? と誰しも、ミトでさえもそう思ったからだった。


「まっ――――」

「よっし! おれはそれでいいぜ!」


 ロンシャンの発言を止めようとしたエルファスより早く、ミトが大きな声で同意し、それを受けた形になってしまった。


「チッ! ほんとミトは……」


 エルファスがグチっぽく呟くが、もう遅い。

 全員は一度、店の外に出た。


「さって、じゃあ早く終わらそうぜ」


 痛くなるほど暑く照らす太陽の下、ミトがパシッと右手の手の平に左手の拳を打ち合わせ勝ち誇ったようにニヤリと笑んだ。

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