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伝説?

あらすじを変更しました。

「じゃあおまえさんはあれか? このリリフォリアの住人じゃないってえのか?」


 よく冷えた井戸水の入ったカップを一気に飲み干して、オヤジは元々丸い目を、より丸くしながらジンタを見た。


「まあ、ハッキリ言えばそうなのかな。ははは……」


 ジンタは曖昧に言い、愛想笑いを浮かべる。


「ほ~~、俺も四十年以上生きているが、そんな『召喚されし者』と遭ったのは初めてだな」

「それはそうですわ。こんなことがしょっちゅうあるようでしたら、それこそ困ってしまいますわ」


 リカがカップを持ち、汚れが少し見えることに顔を顰める。


「……まあ、そりゃあそうだわな。でもよぉ、そうなるとおまえはこのままこのリリフォリアにいるのか? それとも元の居たところに帰るのか?」


 何気なくもジンタ達に対する一番深い部分を問うオヤジに、ジンタ以外の四人の刺すような視線がオヤジに向けられる。


「い、いや、でもよ。おれ達はこの世界で生まれ、この世界のルールって言えばいいのか? 『召喚されし者』になれることと、マスターと一緒にいられることの喜びを理解してるが、こいつはあれだろ? 元居た世界ではそんなことのない世界だったんだろ? そうなると召喚の儀って言うのは、こいつからして見れば理不尽なほど無理矢理だったってことだろ?」


 オヤジの言い分には一理も二理もある。そのせいか誰も口を開けない。かくゆう言われているジンタでさえ、はぐらかすわけじゃないが、その辺りの自分の気持ちがよく分かってない。


 左腕を失いそうな危機と合わせて死んでしまいそうな危機にも遭遇しているが、それでも今こうして治ってみんなといる。それに、なんとなくだが元の世界に帰れる方法が分かっていないことに、どこかホッとしている自分が心の中にいるのだ。


 つまり、自分はまだここに居たい。みんなと一緒にここに居てみたいと思ってるのだ。

 だからジンタは、みんなに睨まれて困っているオヤジに、


「んっと、オヤジさんの言うことはもっともなんですけど、今はまだ帰り方も分からないし、自分が……なんというか、まだここでみんなと一緒にいたいと思っているようなんで……」


 曖昧ながらもみんなを見て答える。


「……ほう。まあ、召喚の儀はただ闇雲やみくもに喚び出すわけじゃないからな。きっとおまえはミリアちゃんと運命の出会いを果たしたんだろうな……」


 オヤジはもう一杯、ヤカンからコップに水をいれ、それを一気に飲み干してジンタに「ついてこい」と言い立ち上がった。

 ジンタは、座っている四人に目を向けるが、


「私たちは少し買い物をして来ますわ。ですからジンタさんはゆっくりと自分に合う装備をお選び下さいな」


 リカが笑みで言うと、イヨリ達も頷いた。

 ジンタは一度頷き、オヤジの背中を小走りに追った。


 オヤジの向かう先には大きな倉庫があり、オヤジはその倉庫に入って行く。

 当然、ジンタもオヤジの後に続き倉庫に入る。そこでジンタは、驚きのあまりあ然としてしまった。


 倉庫の中、その右側の棚には色々な武器類が置かれ、そして左側の棚には盾や防具類がところ狭しと置かれていたのだ。


「こ、これって全部オヤジさんが?」

「ああ、元の原型があったものもあるが、全部一度は俺がちゃんと叩いているぜ?」

「す、すごいな……」


 驚きながらもジンタは一番近くの武器――片手用の直剣を掴む。

 適度にズッシリとくる重さと握り心地に、ジンタはある意味で懐かしさを感じる。その隣の同じような直剣も左手で持つ。

 そんなとき、ジンタはふと思い出した。


「なあ、オヤジさん」

「なんだ?」


 ジンタが剣を見比べながら、後ろに立つオヤジに声を掛け、


「ここにさ、オヤジさんが手を付けてない武器とか防具ってある?」

「ん? さっきも言ったが俺の手が加わってない武器や防具はここにはないぞ?」


「一つも?」

「ああ、一つもだ。だがなぜそんなことを聞く? まさかおまえが自分で直すってえのか?」

「いや、なんて言うかさ。俺の世界でこういう武器屋で武器や防具を選ぶ状況のときっていうのかな?」


「選ぶとき、なんだ?」

「なんか倉庫の奥に眠っているぼろい剣が実は伝説の剣だった――とかがあってね。なははは……」


 頭を掻きながらジンタが言うと、オヤジは目を点にさせた後、数秒してから、


「くっ、くはははははっ、それは何とも都合のいい話だな」


 大笑いした。


「まあ、そうかも知れないけどさ。それでも一応そんなならラッキーかなぁって思うじゃないか」

「まあな、ほんとにあったらラッキーかも知れんが、そこら辺に落ちている剣や防具が伝説の――なんてあり得んな!」

「確かに……」


 腕を組み、豪語するオヤジにジンタも納得するが、オヤジは無精ヒゲの口元をニヤッとさせ、


「だが、だ。おまえが俺の武器を使い、伝説を作ればそれは伝説の武器や防具となるわけだ。そうすれば俺も伝説の鍛冶屋になるってもんだ。どうだ?」


 気持ち悪いぐらいにニッとしながらジンタに指を突き付けるオヤジに、ジンタは真面目に考え、


「ん~~~~、確かに俺が伝説を作れば、今から選ぶ武器が伝説の武器にはなる。――けど、それじゃあオヤジは、随分他力本願な伝説の鍛冶屋じゃないかっ!」

「ぬかせ。おまえのボロボロの拾ったような武器が伝説の武器、って話よりは俺の方が仕事してるだろうが」

「た、確かに……」


 あまりに正論なオヤジの言葉に、ジンタは納得しきれないながらも頷くしか出来なかった。


 それからジンタは、オヤジの伝説の鍛冶屋計画を手助けする為、真剣に武器と防具を選び始めた。

 何度も握り直したり、構えたり、軽く振ったりと、何本も試していった。気付けばオヤジの姿はなく、外からカンカンと鉄を叩く音が聞こえてる。


 それ以降も試したり着てみたりしながら、なんとか全部の装備を決めた。

 武器を片手直剣、防具に革の鎧と革の腰当て、そして革のグローブを選び、盾は鉄板を五角形に切り取ったようなのを選び、それらを装備した格好で表へとでた。


 外ではオヤジがカンカンと鍋の修理をしている最中で、出てきたジンタに気付き作業を止め近づいてくる。


「決まったか?」

「うん、一応これでいこうかと思ったんだけど」


 ジンタは選んだ一通りの装備を見せた。


「鉄製の防具を選ぼうかとも思ったんだけど、それだとどうしても重さが気になってさ……」

「ふむ、防具が重さを気にするほど支障をきたすと感じるなら、それは正しい判断だと俺も思うぞ。まあ、おまえがあれだけ真剣に選んだ武器と防具だ。俺からは忠告することはないな。何せ武器や防具なんてもんは、一番は装備するヤツの感覚だからな」

「そう言ってもらえると、なんかホッとするよ」

「さて、じゃあこれをお買い上げでいいか?」


 言われて気付く、


「あっ、いいけど俺って……、金持ってない……」

「な~に、それは後でイヨリちゃんが持ってくることになってるから大丈夫だ」

「そ、そうなんだ……。なんか俺ってここに来てからずっとみんなに世話になりっぱなしだな……」


 後ろめたさを全開にして、ジンタが頬を掻いて言うと、


「まあ、始めはしょうがないだろ? なんせおまえはここじゃないところから来たんだ。そもそもここの通貨だって知らないだろ?」

「……うん」


 まさしくその通りだった。


「俺もイヨリさんやミリアに恩返ししないと……」

「おまえ、役所で『召喚されし者』としての登録は終わったのか?」

「これですか?」


 ジンタはヒモで首からぶら下げている、さっき役所でもらった証明書を見せた。


「ああ、それだ。それを持って役所の一階に行けば、掲示板に貼られている色々な依頼を受けることが出来るんだ。それでおまえ等、召喚されし者は金を稼ぐことが出来るぞ」

「へ~~、あの人が一杯居たところか……」


「まあ、装備も整ったことだし、明日にでも少し見てくればいいんじゃないか?」

「そうします。なんか色々とありがとうございます」


 頭を下げるジンタに、オヤジは照れたように頭のタオルを外し顔を拭いた。


 それからしばらく待つと、買い物を終えたイヨリ達がやって来て支払いを済ませ、帰路へとついた。


 家に帰り、遅い昼食を食べ、くつろいでいるところにミリア達が帰ってくる。

 全員が揃うと、また騒がしい時間へとなり、ミトやリカ達が帰るまで続く、それがこの家に来てからのジンタの三日間の生活だった。


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