戦い終決
ジンタが目を覚ますと、辺りは真っ暗だった。
隣を見れば、豪快に大の字を作り大口を開けて眠っているあーちゃんと、あ―ちゃんほどではないが、十三才にしてはやや気品にかける寝相をして気持ち良さげに眠っているミリアがいた。
ミリアのさらに奥ではベンジャミンと梅が寝ている。
そして反対側に首を回せば、ロンシャンとエルファスとリゼットがぐっすり寝ていた。
みんなを起こさないようにゆっくりと立ち上がり、辺りを見渡せばいたる場所で焚き火が灯っている。
「…………思いっきり眠っちまってたな」
呟いて、まだ寝ぼけている頭をボリボリ掻いた。
「ジンタさん起きましたか」
すぐ近くからイヨリの声が聞こえた。
見れば、寝ているみんなに適度に焚き火の明かりが抑えられる位置、その一番近い場所でこっちですとイヨリが手を振っている。
近くには仲間達が揃っていた。
ジンタが焚き火の前に行き、イヨリの隣に腰を下ろすと「どうぞ」とイヨリが暖かいスープとパンを手渡してくれた。
「ありがとう」と受け取り、まずはスープを二口、それからパンにかぶり付く。
もしゃもしゃとパンを咀嚼していると、ちょうど焚き火を挟んで正面に座っているラインがニヤけた顔で口を開いた。
「寝起きでその食欲とはまったく恐れ入るぜ」
ごくりとパンを喉に通した後、ジンタが言い返す。
「ほっとけっての、こっちは何だかんだで丸一日以上何も食ってないんだ」
「まあいいさ、しっかり食っておけよ、なんせ明日からは、また行軍になるからな」
「ふが?」
思いっきりパンにかじり付いたまま、ジンタはきょとんとした顔になった。
「――――って訳で、俺達やお前んとこの家族達は明朝からゴブリンの討伐のために、ゴブリンの森に進軍することになっているんだ」
あらかたの説明を終え、ラインがズズズッとコーヒーに口をつけ、
「もしそんな進軍がなければ、俺は今頃酒をかっ喰らってるっての」
と付け足しながら。
ジンタも食後のコーヒーを口にしながら答える。
「そうか、まあ確かにな今回の戦いではほとんどがオークだったもんな、倒した長クラスも全部オークだった。下っ端のような普通のゴブリンも相応にはいたが、ゴブリンの繁殖力を考えれば確かに数が少なすぎだったな」
「ああ、ありゃあまだ相当の戦力を残してやがるぜ」
「だから、一気にこっちから攻めると言う訳か」
「そうだ、あまり長引かせるのは正直得策じゃないしな、終わらせるなら気が張っている今のうちに終わらせないとってカイン達の判断だ」
「確かにそうかもな。――分かったよ」
返事を返しながら、ジンタは今までの話に口を挟まず聞いていた焚き火を囲う他の仲間達を見た。
まず目に入ったのは、まだ顔色が相当に悪いがぐっすりと眠っているリカだったが、次に目に入った隣のミトも相当に顔色がよろしくない。
さらにその隣に座る松もかなりヤバそうな顔色をしていた。
「なんというか……、リカさんはともかく、ミトと松は何でそんな調子が悪そうなんだ? 二人もどこかケガしたっけ?」
心配げに声を掛けるも、二人はビクッツと上半身を動かした後、バツが悪そうに横を向いた。
どうしてそんな反応なのか分からないジンタが首を傾げると、
「後遺症だそうですよ」
雪目が教えてくれた。
「なんの?」
「そ、それは初めて第二段階へと成ったらみんな経験するらしいんですが、どうも体をいつも以上に酷使しすぎて、重度の筋肉痛を発症しているとかで……」
「二人共、今は立ち上がることもままならないほど痛いらしくて」
苦笑しながら、竹と水音が教えてくれた。
「ほ~、じゃあ今回の行軍は」
「私達だけですね」
隣のイヨリが、頑張りましょうとガッツポーズをしてみせた。
※※※※※※※※
カナンの街を出発して七日目。
ジンタ達はゴブリン達の領土である森の中、その中でおそらく一番大きな集落を攻撃していた。
道中、二つの小さい集落を蹂躙し逃げるゴブリン達を追ってここまで来た。
カインの号令の元、幾多の攻撃魔法がゴブリンの作った物にしては破格とも言える豪華な作りの集落に降り注ぐ。
普通、ゴブリンが住むのは、穴蔵か簡易な掘っ立て小屋を幾つか連ね朽ち果てそうな木材でそれらを囲う程度の作りしかない。
しかし、今ジンタ達が相手にしているゴブリンの集落は、集落の周りに土を盛り上げ、簡素とはいえ見張り台が存在し、壁越しに見える集落内(恐らくほぼ中央)には、一際大きな建物の存在まで確認出来た。
これで五度目になるだろうか、カインの攻撃の合図を耳にしながら、ジンタは隣で号令に合わせて大石をぶん投げるイヨリに言う。
「しっかし、こんなもんまで作れるなんて、ゴブリンってやっぱ頭いいんだなぁ」
「そうです、ッね!」
ブォンと音を響かせ、イヨリのゴーレムの腕から放たれた大石が放物線というにはあまりに角度のない直線を描いて、ゴブリンの集落の盛り上がった土を破裂させる。
「そろそろかな」
イヨリのように、とんでもない遠投が出来る訳でもなくマスターや『召喚されし者』達のスキルのような強力な魔法が扱えないジンタは、突撃の指示待ち中だ。
ミリアは、強化範囲魔法(今はアタック)を使用中で、あーちゃんはイヨリに対して負けず嫌いスキルを見事に発揮し、フラフラしながら蔦にした髪で自分の体よりも大きい石を投げていた。さすがに届いてはいなかったが。
カインから六度目の遠距離攻撃指示があった後、ゴブリン達は動き出した。
ボコボコになった土の城壁から、一斉にゴブリンが飛び出してきたのだ。
「出て来たぞ! 総員かかれ――――ッ!」
待ってましたとばかりのカインの号令に、ジンタも剣と盾を構え走り出す。
スピードタイプの『召喚されし者』達が、まずはぶつかる。
その後、数十秒遅れてジンタは、最初のゴブリンと対峙した。
「シールドアックスッ!」
剣を構えて待ち受けるゴブリンに対し、ジンタは左手に持つ五角形の盾を大きく振り上げ、目一杯のチカラで振り下ろす。
ゴブリンの持つ錆びた剣ごと、ジンタの盾はゴブリンを深々と切り裂く。
今回の行軍に際し、ジンタは盾を変えていた。
前回のカナン戦において、持っていた普通の五角形の盾は持てなくはないがへしゃげてしまっていたので、カナンの我が家に危ないからとしまっていた、第一階層の武器屋のオヤジが作ってくれた五角のすべてが刃と化した、超攻撃的な盾を持ってきていたのだ。
まるで斧で叩き切られたかのようにぐしゃりと切られたゴブリンは、大量の血を噴きだし絶命した。そのゴブリンから盾を引き抜き、次のゴブリンに向けジンタは剣を振るう。
二体目は慌てていたのか、剣を振るうジンタに気付くのが遅れ、なんの抵抗もなく剣で切られてくれた。
「さて次は――」
神経を張り巡らせたまま辺りに目を配ると、少し前方にカイン達がいた。
そして後方からは、イヨリの声とあーちゃんの声も聞こえる。
ジンタはまず、家族であるイヨリ達と合流することにした。
左右に来たイヨリとあ―ちゃんを確認し、チラリと最後に後ろを見る。
ミリアがコクンと頷くのを確認し、まずはミリアに『プロテクト』の強化魔法を上書きする。
そして次にイヨリには『スピード』を、あーちゃんには『プロテクト』、そして最後に自分へ『スピード』を掛ける。
全員に目配せをしてから、ジンタはカイン達の元へと進み始めた。
リーダーであるカイン達と合流したジンタ達は、必然的にそこに集まってくる仲間達と共に、抵抗し襲ってくるゴブリン達を倒しつつ、ゴブリンの集落その一番大きな建物の中へと突入した。
建物の中は、まるで体育館のように広かった。違いと言えば、そこはジンタの知る体育館のような長方形ではなく正方形に近いことと、建物自体が脆弱なのだろう、いたるところに支柱となる細い柱が等間隔とはいえないまでも乱立していることだろうか。
そんな建物の中に飛び込むと同時、襲い来るゴブリンの質が大きく変わった。外で対峙していた通常のゴブリンより一回り以上大きく筋肉質なゴブリン達が殺到してきた。
敵の強さが上がり、邪魔に感じられるほど乱立している支柱せいもあり、いくらか進む勢い削がれるも、それでもジンタ達は進んだ。
ちょうど、ジンタ達がカイン達と建物の中央に辿り着いた辺りで、先頭の者からの声が響いた。
「階段があるぞ」
と。
襲い来るホブゴブリン達と対峙しつつ声の方へと目を向ければ、そこに誰かが灯してくれたのだろう発光するような淡い光に照らされ階段が見えた。
「ジンタさん行きましょう!」
ジンタが階段を視認したのとほぼ同時に、隣に来ていたカインが促してきた。
ジンタは頷き、家族達を見る。
全員が分かったと頷くのを見て、階段に向け先頭に立つラインと並ぶ。
「へへ、大丈夫かよジンタ?」
ラインは見える限りの範囲、つまり上半身すべてを緑色の硬い鱗の体に変化させ、右手にバスタードソードと左手に大きなラージシールドを構えて笑んでいた。
「ああ、まだなんとかな」
内心で、あんな硬そうな鱗の鎧を自前で持っててちょっと羨ましいな、と思いつつジンタは返す。
ラインと並び階段を上がっていく。
上りきった先は真っ暗な空間が広がっていた。
集落の城壁の外から見えていたこの建物の形を思い浮かべてみると、ここが最上階であるだろうなと確信できた。
隣のラインもそう思ったのだろう、目が合うとこくっと軽く頷いた。
背後からカインが数本の枝を魔法で発光させ、それをラインに手渡す。
ラインは、受け取った枝を無造作に一本ずつ暗闇の部屋に投げ込んでいく。
辺りが薄暗くも、視認出来るぐらいには照らされていく。
灯りを確認してからまずはラインが上り、そして次いでジンタが上がった。
階段から床に足を置くと、ギシリと大きく軋む。
まさかこの床抜けないよな、などと考えてしまいジンタは顔を顰めた。
灯りに照らされた範囲には誰もいないことを確認する。
照らされている分、その奥の闇はより深く不気味に見える。
しかし、一階と外から見た大きさから鑑みれば、そこまで奥行きがあるわけではない。それにここで悠長にしている余裕も無い。
ジンタは、とりあえず後続に上って来て大丈夫だと、手で合図を送る。
竜女、カイン、麗火、ミリア、あ―ちゃん、そして最後尾にいたイヨリが二階に上がった。
全員が揃うも、みんなジンタと同じような心配をしたのか、それぞれに顔を顰めている。
階下からの戦闘の音を聞きながら、ジンタはもう一度ゆっくり部屋を見渡した後、奥の闇に向け歩き始めようとした。
その瞬間、ポウッと正面の闇に火が灯った。
灯りに照られた、さっきまで闇だった場所に六匹のゴブリンがいた。
ゴブリン達はジンタほどの身長、さらには綺麗に手入れされた鎧と、それに似合うほどの反り返った剣シミターと小さいバックラーを持っていた。
「全部で六体か……」
隣のラインの呟きに、ジンタは軽く頷く。
「気を抜くなよ」
「分かってる」
短いやり取りを経て、ジンタとラインが同時に動く。
真っ先に切り込んだのはラインだった。
直進した先の一体に向け、バスタードソードを目一杯に振り下ろす。
ガンッッ!
相手のバックラーの重ねた木を固定するための外枠の鉄ごと叩き割るような強い一撃。
相手のゴブリンは、ラインの渾身のチカラに負け、膝をつく。
そこへジンタが駆けていく。
六体のゴブリンが手入れされた鎧を纏っているとはいっても、それは胸前までの装備、あばらの下から下半身までは鎧はない。
そこをジンタが横から切り払う。
胴体を真っ二つにするのではなく、致命傷で動けなくするための攻撃。
一体目を切り払ったジンタの視界に、左右二体のゴブリンがシミターを振り上げているのが見えた。
払ったブロードソードで一体、右側のゴブリンの攻撃を受け止める。
左側に向かい盾を突き出そうと動かしかけるが、そこにラインの盾が現れ、攻撃を防いだ。
ジンタとラインが、ゴブリンと一対一の構図になる。
――残り三体。
視線を走らせるジンタ。
三体のうち一体は、竜女が相手の両腕を、自身の獣人化した左手側の蛇の尻尾で拘束
し、蛇の頭へと変化した右腕で首筋に噛みついていた。
どう見ても致命傷だと分かるし、出来れば自分では喰らいたくない攻撃だとも思った。
さらに一体は、あーちゃんが蔦で相手の動きを止め、麗火が焼き尽くすという見事な連携を見せて葬っていた。
もっとも、最後はどうやらあーちゃんの蔦まで焼いていたせいか、あーちゃんが「あちあちあちっ」と煙を上げている自身の髪である蔦を、必死に床へと擦りつけていたが……。
そして最後の一体は、イヨリが「ふんっ」と渾身のチカラで殴り、吹き飛んだ先の壁を壊して落ちていった。
イヨリの一撃を見て、ぴゅ~っと口笛を吹く隣のラインと目配せをし、ジンタは動く。
つばぜり合いのように剣同士を交差させていたのを、上体を低くし一気に自身の剣を肩へと担ぐように相手のシミターを受け流す。
相手の剣の刃先が、自分の剣の刃先を鈴のような音を響かせ滑っていく。
ジンタのブロードソードからゴブリンの圧力が消えると同時に、ジンタは左腕、そこにあるシールドを横にし振るう。
斧のように鋭い切れ込みを持つシールドが体勢を崩したゴブリンのわき腹をかっ切る。
次いで、担いだ形の剣を縦に振るう。剣はゴブリンの鎧に当たるが、その鎧ごと相手を後ろに押し返した。
よたよたとバランスを崩し後退るゴブリンに、とどめの一撃である突きを叩き込む。
相手の喉を貫いた剣を即座に引き抜きジンタが隣のラインを見れば、ちょうどラインが相手を一刀両断に切り捨てたところだった。
一息吐きつつ振り返ったジンタの目に、ミリアへと襲いかかろうとしているゴブリンの姿が映った。
「ミリアッ!」
ジンタが叫び、ミリアがハッとなり後ろを振り返る。
ゴブリンの剣が振り下ろされようとした瞬間、
「はぁぁっ!」
イヨリの拳がゴブリンの顔にめり込んだ。
ズダン! と凄まじい音を響かせ、ゴブリンは吹き飛ぶのではなく、床に叩きつけられ大きくバウンドした後、体をピクピクと痙攣させた。
倒れたゴブリンをそのままに、ジンタはもう一度周囲を見渡す。
今度こそ誰もいないことを確認し、イヨリにのされ床に倒れているゴブリンの前にみんなと集まった。
「やっぱこれが王様ですかね?」
カインが誰にともなく尋ねる。
倒れているゴブリンは、黒塗りだがゴブリン達が着るにしてはかなり豪華な模様などが彫られた鎧を纏っていた。
鎧の下の衣服も、ジンタの着ている鎧当ての木綿の布より上等そうな物だ。
「ん~~~~、多分そうじゃないかな?」
全員が返答に悩み言葉を発しないため、竜女が代表して一応の相づちをする。
「しっかし、本当にこいつがそうなのか?」
ラインが無造作にのびているゴブリンの頭を、足で小突いた。
「ギャ」と、何とも耳障りな声を出し、ゴブリンの目が開く。
恐らくあまりの衝撃に記憶が飛んでいるのだろう、ゴブリンは目を二度、三度、としばたかせている。
その間に、カインとミリアのマスター二人とあーちゃんをゴブリンから離し、ジンタ達が壁を作る。
思い出したようにハッとし目を見開いたゴブリンが、勢いよくその場で立ち上がる。
この階にいた六匹のゴブリンに比べるとやや小さいが、それでも普通のゴブリンと比較したらかなり大きいそのゴブリンは、ジンタ達に囲まれているにも関わらず、一気に腰の短剣に手を伸ばした。
「うらっ!」
ゴブリンの挙動を見た瞬間、ゴブリンの正面に立つラインが、即座にゴブリンを切りつけた。
ジンタから見ても十分致命傷なラインの攻撃を受け、ゴブリンは大量の血を流し、仰向けに倒れた。
「あの状況でそんなん抜けば切って下さいと言ってるようなもんだろうが!」
切り捨てたラインが後味悪そうに、そっぽを向く。
その場にいた全員も、あと少しで事切れるだろうゴブリンから目を逸らした。
誰もが、この戦いはもう終わったと思っていた。ジンタだってそう思っていた。
そんな誰しもが声をださずに静まり返る二階で、ジンタは聞いたことのないしゃがれた小さい声を耳にした。
「――こ、これで、これで、いい……ざまあ、み……ろ……」
ジンタは驚きに目を見開き倒れるゴブリンを見た。
そしてジンタの取った行動と同じことを、全員が行っていた。
「い、今こいつしゃべったか?」
ラインが聞いてくる。
ジンタと全員が見つめる先のゴブリンは、もう完全に事切れていた。
「わ、私も聞きましたが……」
「言ったのこいつだよね?」
イヨリと麗火、二人の声にも戸惑いがありありと浮かぶ。
「でも、ちょっと待ってよ、ゴブリンが私達の言葉を話せるの?」
「分からない、分からないけど僕は確かに聞いたよ、こいつの口からの声を……」
竜女が首を振り、カインも考え込むようにやや俯く。
「あーちゃんもしゃべってるの見たお」
「うん、わたしもだよ」
あーちゃんとミリアは確信に似た言い方をした。
全員が事切れたゴブリンを数十秒見つめたまま動けなかった。
そこへ数人の階段を駆け上がってくる音を聞き、ラインが思い出したように動き出した。
「そうだ、僕達は今は呆けている場合じゃないんだ」
みんなが目を覚ましたように我に返り、動き出す。
上がってきた仲間に、竜女がここはもう終わったことと、恐らくここの長であるゴブリンを倒したことを伝えている。
ジンタもミリアとあーちゃん、そしてイヨリを見てから、家族達と共に頷き合い、戦いを終息させるべく、最後の戦いへと階段を降りていった。
※※※※※※※※
ゴブリンとの最後の戦いから十日後。
ジンタは、第二階層最初の街であるラペンの元我が家にいた。
リビングの総勢十六人は座れる大きな木のテーブル、その自分の場所であるソファーに腰掛け、開かれた大窓から入り込む夏の日射しになりつつある外の景色と、洗濯物を干すイヨリの姿をぼーっと眺めていた。
ここに戻ってきたのは五日前。
ドタバタした二週間の後片付け、主に戦死してしまった仲間達の確認とその弔い、そして大きな被害を受けたカナンの街の修復の手伝いなどをしていたが、急遽学校からの呼び出しにジンタ達だけでなく、中学二年生と三年生のマスターとその家族達は全員ここ、ラペンへと戻されたのである。
理由はいたって簡単。
本当であれば課外授業である砦での研修が、これでは進まないと判断され、それならばと学校に戻り授業をした方が良いだろうとなったためだ。
それを聞いたミリアは、それこそ今まで見たことないほど、怒ってるのかイヤなのか分からない形相をさせ、
「それならわたしはここでみんなの手伝いをするよ。それが一番ためになるんだから」
と、力説していたが、そこはそこ、それまでの五日間をあーちゃんとほぼ毎日遊び続けたツケがあり、コメカミをピクピクさせたイヨリに、諭され(ほとんど強要)半べそで渋々ラペンへと戻ってきた。
戻ってきた次の日から学校はあり、今はロンシャン、エルファスと共にミリアは死んだような顔をして朝から学校に行っている。
あーちゃんは、最近かなり調子の良くなったリカ(しかしロンシャンから後数日は寝ていてとお咎めを受けている)と、なぜか昼間はリビングに簡易のベットを作り(ジンタ作。なぜかリカに強制で作らされた)、二人揃ってお昼寝している。
そこには寝心地がいいのだろう、当然のようにリゼットもいてすーすー寝ている。
ミトは、修行と称し依頼(主に討伐系)を受けに街へ行き、雪目と水音は夏が一番の稼ぎ時である氷の生成、販売の依頼をこなし、今やここの大黒柱として身を粉にして働いていた。
イヨリはここの家事全般を取り仕切り、毎日せっせと動いている。
そして俺はといえば、
「イヨリ、ちょっと俺行ってくる」
「はーい気を付けて」
イヨリの返事を耳にし、ここに戻ってからの日課となっている保健医の元へと向かう。
理由は、今回のゴブリン、オークの件。
そして我がマスターであるミリアが『エターナル』の件について、いくらか話し聞き出すために。
こうして、俺はまた安穏とした生活に戻るのかと思っていた。
心の中で、あの時最後に倒したゴブリンの長、その最後の言葉を忘れかけて…………。
中途半端ですが、一度ここで止めておきます。
以降の展開などは、いくつか考えていますが、ちょっと別の話を書きたく、時間をそっちに使おうかと思っていますので、まだ書くつもりですが、少し長い目で生暖かく見守ってください。




