毛むくじゃら男の悩み
俺は世界で一番体に毛が生えている人間だろう。下手すると、そこらにいる猫や犬ぐらい体に毛が生えているかもしれない。俺の親父も毛深い人間だ。だが、俺のお袋はそういった毛深い人間が好きなんだそうだ。その遺伝子のお蔭で俺はすくすくと毛深い人間に成長していった。そんな俺の悩みを今日は聞いて欲しい。
まずは、俺の体の毛の説明を聞いて欲しい。
始めは足だ。
足と言っても、脛のことではないぞ。足の指と足の甲のことだ。ここにも毛がたくさん生えていて知り合いからは「靴下いらずの足」と言われたこともある。しかも、靴下を履くと逆に毛と靴下の繊維が絡まり大変なことになってしまうのだ。よって俺はいつでも靴下は履いていない。
次はお待ちかねの脛、ではなく、くるぶしだ。普通の人間ではくるぶしに毛が生えていることはないが俺には濃いやつが生えている。
次はお待ちかねの脛とふくらはぎだ。ここは、ヤバイぞ。まるでジャングルだ。しかも、一本一本が濃くなおかつ長い。下手すると、1本10㎝ぐらいする毛が生えている。だが、この脛とふくらはぎの毛には良いこともある。足を刺そうとする蚊がこの毛によって絡まり皮膚まで到達することができないのだ。しかも、そこに入ったら最後抜け出すことは不可能なのである。
また、膝毛。ここは、ツンツンとした毛がたくさん生えていて、膝を触るとチクチクして気持ちが良いぞ。
そして、終わりというか始まりのもも毛。実は、この部分からもうすでに例の縮れ毛ゾーンが始まっている。そう、こここそが「終わりの始まり縮れ毛ゾーン」だ。ここからは、例の縮れ毛がところ狭しと生えもも全体を覆っている。遠くから見るとまるでハーフパンツを穿いているんではないか?と思う程の量、濃さだ。
お次は、例の象さん周りの毛。スゴいぞ。
俺の象さんは、本気になるとマンモスぐらいになるんだ。だがなんと、そのマンモスが埋まるほど毛が生えているのだ。その姿はまるで黒い森には生える1本の松のようだ。神秘的な美しさすら感じるぞ。これをまだ誰にも見せたことがないのが残念で仕方ない。早く誰か見てくれ。
そして、そこから続いている俺のヒップを隠すように生えている毛。正直この毛が一番邪魔だ。夏蒸れるし、冬でも蒸れる。また、本体から穴にかけてもひたすらびっしりと生えていて邪魔だ。むしりとりたい。
次は、マンモスから上にいき腹、胸と続いていく毛だ。まあ腹毛と胸毛だな。
これはマンモスと腹と胸を繋ぐ黒光りした1本の太い線。多分これをプロの書道家が見たら驚きを隠せないだろう。こんなに綺麗で力強く太い線を書くことが出来る書道家この世界にいるはずがない。そして胸のところでもパイとパイ同士が結び付き「T」とい文字を完成させている。これはアルファベットを使っている国の人々は衝撃を覚えるだろう。そして「T」を囲むように生えている腹毛。これも、ファンタスティック。
次は腕。
これは常時長袖状態だ。普通に見ると肌の色は全く見えない。そして風が吹くと毛が揺らぐ。それは、腕に黒いオーラを纏っているように見えるのだ。このオーラはスゴい。手の甲まで続きなおかつ指までも黒く染め上げる。これで両手は真っ黒。マンガのキャラクターが必殺技を放つ前のようになっている。
これは俺の最強にして最高のチャームポイントだ。
最後の顔と言いたいところだか、俺の場合背中にも黒々とした立派な毛が生えている。だがこれは、自分ではよく見えないし、見せる相手もいなくてあまり意味がない。
そして、最後に顔だ。髭だ。
髭は、目の下から全てを覆うようにガッシリと生えている。流石にここは身だしなみの面で毎日剃っているが、普通のヒゲソリでは歯が立たなくすぐに壊れてしまう。よって毎日2、3本のカミソリを使ってジョリジョリと剃っている。だが夕方になるともう真っ黒になっていて困る。夜の黒さと顔の黒さの見分けがつかなくなってしまう。
また眉は、黒々としたものが2本、ドン、ドン、と生えている。まるで犬の糞のようだ。
顔の毛から足の毛まで全て繋がっている人間なんて俺ぐらいなもんだ。
だがここで一つの大きな悩みが俺にはある。
それは……
髪の毛がなくなってしまったことだ。
こんだけ体中に余計な毛が生えていて、真っ黒なのに、頭だけ真っ白なのである。
俺の髪の毛を返してくれ。
誰か俺に髪の毛をくれ。
俺の体中の毛全てやるから誰か俺と交換してくれ。髪の毛を俺に恵んで下さい。
お願いします。
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