表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《数式》により構築される魔法に満ちた仮想世界  作者: azakura
4章 愛しの魔女 LOVELY_WITCH
37/52

行間3

「イヤ! 離してよ! 離してってば!」


 白々しい光を灯した街頭の下で、一人の少女が甲高い声で喚く。

 付近にある中学校のセーラー服を着用していた、中学生とは思えないような発達の良いその少女。背中にまで掛かる茶髪を振りまいて、掴まれる胸ぐらを必死に振り解こうとしていた。


「うっさい、抵抗するな」


 バチンと少女の頬が叩かれ、甲高い声が一瞬止む。

 女子中学生の胸ぐらを掴んでいるのは、これまた少女と歳が近そうな金髪の少女だった。

 その金髪の少女には見覚えがあった――――憎たらしいほどに。絶対に忘れもしない顔が揺れる瞳に映り込む。


「そんなか弱い女子中学生を演じてないでさぁ、ロジックを使うなり抵抗しなよ。それとも、十五年間のぬるま湯生活で闘い方忘れちゃった?」


 金髪の少女は女子中学生の胸元から手を離したと思ったら、鋭角に曲げた右膝を彼女の鳩尾に鋭く差し入れた。げほっと大きくせき込み、茶髪の少女は膝から崩れ落ちた。


「…………ちゃん、……助けて……」


 蚊の鳴くような声で、目の焦点を合わせることなく上の空で呟く女子中学生。

 その一言に強く反応した金髪の少女、悔しそうに奥歯を強く噛み潰した。


「ナニしおらしく助けを求めてるんだよ! 魔女だろ! 非力で何もできない弟に助けを求めるなんて……」


 その後も『弟』に助けを求める言葉を、鉄分の含んだ口から弱弱しく漏らす茶髪の少女。


「うっさい! うっさい! うっさい! 素直にあたしのものになればいいものを!」


 横たわる女子中学生の腹部を何度も蹴り倒す金髪の少女。女子中学生はやがて涙を流し、


「……うえぇえん……京ちゃん……、愛海ちゃん……、離れたくないよぉ……」


 金髪の少女――――道化の奇術師(マジックピエロ)は絶句した。やがて、呆れたように乾いた笑いが漏れた。


「ははっ、あたしの知ってる魔女ってこんなに弱かったっけ? 『私だけの図書館(マイライブラリ―)』で整理した知識は? 『達人の腕鳴らしクイックリームービング』であたしを殴らないの? ちょっとぬるま湯に浸かりすぎでしょ……。それに、そんなに弟を連呼して!」


 這いつくばる女子中学生を、恐怖を与えるように睨みつける道化の奇術師(マジックピエロ)。それでも、その名を呼ぶことを止めない茶髪の少女の腹を思いきり踏み潰し、彼女の意識を完全に飛ばした。

 そして数度渇いた笑いを街頭の下で繰り返し――――口元が避けるようにニタリと笑った。


「あっ、そうだ、いいこと思いついちゃった……、そんなに弟が好きなら――――」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=954037592&size=200
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ