行間2
――――もっと世界の真理をお勉強したかっただけなのに。
道化の奇術師に無理矢理唇を重ねられた挙句、自分そのものの精神を道化の奇術師に封印されてしまった愛しの魔女。絶対に許さない――そんな想いを胸に秘めていた愛しの魔女は封印されてから十年の時を経て、ついに動き出す。
ロジックによって造り出された精神世界で、愛しの魔女は反撃を開始した。
結果的に――――愛しの魔女に軍配が挙がった。
だが、道化の奇術師から脱出することはできたものの、本来の肉体をすでに失っていた愛しの魔女。良心は痛んだが、ロジック『愛しの魔女』を用いて当時赤ん坊だった少女の肉体に乗り移った。
とりあえずは一件落着、愛しの魔女は安堵した。
魔女が乗り移った赤ん坊は順調に育っていった。千年近く生きている魔女の精神のまま幼少を過ごすことは大変だったが、同時に新鮮な気持ちも生み出してくれた。
両親は科学者をしていた。何でもコンピュータでシミュレーテッドリアリティを実現させる研究をしていて、ほとんど完成間近であることを中学生になった魔女に話してくれた。そして、二人の弟妹とも仲良く過ごすことができた。弟と妹は可愛かった。このように人と触れ合うことにも久しぶりだった彼女は、毎日楽しく過ごすせた。次第に道化の奇術師のことも忘れてしまうほどに。
だが――いつまでもそんな毎日は続かなかった。
道化の奇術師の脳を破壊しつくしたと思っていた愛しの魔女。
けれども。
――――道化の奇術師の反撃が始まる。




