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《数式》により構築される魔法に満ちた仮想世界  作者: azakura
3章 哀苦しく愛狂す  DEEP_LOVE_HEART
27/52

3-7

(あくまでも脅しが目的? 下手に武器を渡す格好は極力避けたいから……?)


 宮西は冷静に考えを巡らしていく。


(……やってみるか……)


 一旦状況を確認する。


(三メートル先には雨谷衣巧が僕を視界に収めている。その背後には六つのモニターが、建物内部の様子を映し出している。ざっと確認できる状況はこれだけ……)


 宮西は負担を減らすため左手だけを使い、ポケットからR4ナビを堂々と取り出した。

 雨谷は僅かに顔を強張らせるものの、すぐに小さく笑みを作り、


「こらこら、誰の許可を取ってナビなんか取り出してるんだ? 動きを止めねぇと刺し殺すぞ?」


 雨谷の言葉に反して、左手は動きを止めることはない。


(……言葉に惑わされるな……。こっちには絶大な切り札がある……)


 宮西は雨谷の様子を確認しつつ、正確に左手を動かしてR4ナビを操作していく。そして滑らかな動作で順番に番号を押し、


「もしもし、桐原くん――ですか?」

「口を動かしたら殺す、何度も言わせるな」


 宮西は強制的に口を閉ざされる。

 そして雨谷はデスクの上に置かれた様々な置物を乱暴に手で払いのけた。デスクの下にいる宮西の背面に、次々とそれらが降り注ぐ。


「――ぐっ…………」


 頭や背中、手足に襲いかかる鈍痛に、歯を食いしばって耐える宮西。決して苦痛に大きく顔を歪ませることなく、宮西はナビと雨谷を交互に見据えた。


「無駄なんだよ、俺が言葉を口にするだけでオマエのHPは削れていくだけだ。だから、無駄なことで痛みに苦しむ必要はねぇんだよ」


 パラパラ宮西に降り注いだものの中には、凶器と呼べるようなものは存在しない。雨谷は適当に手で払ったように見せかけて、実は冷静に計算をしていたのかもしれない。

 刺すような視線を向ける宮西に不快感を出す雨谷。小さく顔を歪ませる。


「そんなに俺を見つめても何も起きねェぞ…………あ?」


 けれども、宮西は雨谷を見ていない。――背後のモニターをじっと睨んでいた。


「……マジで何を考えてる?」


 雨谷は一歩を踏み出そうとする動きを見せたが、すぐに踏み留まる。自分から近づけさせることが宮西の目的かもしれない、そう思ったのだろうか。

 前歯で下唇を擦る雨谷、ビクリと肩を一回震わせる。


「口を動かすのは許可する。でも、動くことは許可しない」


 彼は頬に冷や汗を垂らしながら言った。と、その時


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 甲高い叫び声、聞こえたのは勿論雨谷からではない。部屋の外から聞こえたものだった。

 比較的冷静に事を運んできた宮西でさえ、突然の見知らぬ声に何事かと驚いた。

 しかし、それ以上に動揺する人間が宮西の前に――――。


「おいっ……おいっ、どうしたんだよ玲……。テメェら、汚ねぇ手でアイツに何したんだ!」


 玲? アイツ? ひょっとするとこの建物に電波を張り巡らしていた能力者か? 冬森凛檎がその能力者を追い詰めた結果か? 詳細は分からない。しかし、


(この傾きかけた流れを絶対に自分のモノにしないと)


 そう思い、無理にでも展開を動かしていくことを考えた。


「雨谷くんは知らないと思いますけど、桐原くんは僕の知り合いです。最近再会したんですけどね。何と奇妙なことに、何も言わなくても相手の行動が分かってしまうことが結構あるんですよ。あっ、ロジックとか魔法だとかじゃないんですよ? 不思議ですよね」


 宮西はゆっくりと慎重に、相手に完璧に理解してもらうように話した。


「れっ、玲に手を出したのは冬森じゃないのかよ……。つーか桐原って誰……」


 宮西は電話に向かって、


「桐原くんの斜め上に敵がいるから、お得意の魔法で意識を奪ってやってください」


 雨谷はビクリと、再び肩を震わせる。


「ハァ、魔法!? おいおい、テメェの言う桐原くん、どこにもいねぇじゃねえか? 宮西クン、アタマ大丈夫か?」


 顔を引きつらせながらも、雨谷は小さく笑った。

 ――宮西も笑った。


「僕は大丈夫ですよ? 桐原くんの魔法はですね、相手の背中を見ただけで意識を奪っちゃう忍者魔法なんですよ。それが結構厄介な魔法でですね……」

「だーかーらー、どこにも桐原くんは見当たらないんですけど?」


 宮西は笑みを崩さない。その面構えが雨谷の逆鱗に触れたのか、


「考えてることを全部吐けや!!」


 だが、宮西は左手を強く口に当てた。その結果、ゴニョゴニョと不鮮明に呟くだけ。

 雨谷は顔を真っ赤にし、手に持っていたサバイバルナイフを投げ付けた。――しかし、


「よっと」


 今度は口元から離れた左手が、精密にナイフの柄を掴んだ。無傷で済んだ宮西は、


「ここと桐原くんを繋げているものが背後にあるじゃないですか? 振り返ってみたらどうですか? ほら?」


 あっ、と小さく発し、後ろを振り返ろうとする雨谷だったが、すぐに踏み止まった。


「ハハ、何度言われてもその手には乗らないからな?」

「僕さっき、モニターを見つめてましたよね。そしたら桐原くんを見つけちゃったんですよ。これって何かの運命ですよね? 僕と桐原くんは運命の糸で結ばれてたり」

「気持ち悪いこと言ってんじゃねえぞっ。それに、流石に都合良すぎるだろ。お前の言ってることは全部ハッタ……――――ガッ!!」


 宮西は床に置かれたR4ナビを素早く左手に掴ませ、這うという難しい体勢ながらも正確に雨谷の顔面に目掛け、それを投げ付けた。


 マジックで良く使用されるテクニックの一つ、――視線誘導。


 視線は宮西を向いていたものの、意識のほとんどが宮西の言葉とモニターに向けられていた雨谷は、身体がうまく反応できずに顔で彼の固いR4ナビを受け止めた形になった。

 雨谷による視線が外れたにより、拘束の解けた宮西はすぐさま体勢を立て直す。そして左手で握ったナイフを雨谷の喉元に充てる宮西。


「言葉を口にしたら、このナイフをその喉に刺します。死にたくなかったら僕の言うことを聞いてください。嘘を付いたと見なしても刺しますから」


 雨谷はピクリとも身体を動かさない。そして弱弱しく、


「……結局桐原ってのはテメェの架空の人物かよ……。ったくよォ、ハッタリだとは思ってたけど、万が一のことを考えたら……」

「因果応報の結果ですね。あっ、桐原くんは架空の人物ではありませんよ、昨日宿題を教えてあげた僕の友達です。意識を奪う魔法は……まあ、いずれ架空だなんて言えない日が来ることを願ってます」

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