いろいろな理由、そして人生。
一人。
一人は偶然目撃する。
本当に?と疑いたくなるほどに、偶然だなんて、信じられないほど、数多くの事件をみる。
彼女は、それはもう、目を疑いたくなるほどの美少女で。
多くの男を魅了し、同性にも慕われ。
その、多くの男に愛されている、ということにも気づかないほどの鈍感さは。
ときに、彼女の生来の天然さと相まって、仇となる。
それまで、わずか_______
「なあ。もう、やめないか?」
彼はいう。
だが、それはもう、止められない。
「やだやだっ!こんな楽しいことってないよー!!」
「いやよー!ここまで来て戻るなんてっ」
「そうよそうよー!」
「拓ちゃんだって、ちょっとはおもしろいって、思うでしょうー??」
「拓ちゃんだってー、拓ちゃん!拓也、ラブラブだねーw」
一人、ただ一人。
彼以外、男はいないのだ。
男。男子、というべきだろうか。
所詮彼も、その周りに群がっている彼女らも、まだ14なのだから。
中学二年生、それは。
それは、人生の中で最も調子に乗り、反抗する年齢ともいえるだろう。
そして、青春、だ。
「やめろよ、加奈。拓ちゃんってよぶなって、いってるだろ?」
はにかみながら、彼はいう。
恥ずかしいのだろう。
だが、まんざらでもないらしい、彼の表情を見ている限りでは。
「えー、やだよー。拓ちゃんは拓ちゃんなんだよー」
眉を顰めながら、彼女は言う。
拓也と加奈は、幼馴染だった。
成り行きで、どちらが告白したということもないのに、いつの間にか、当人たちもわからない間に、もう、「仲良しカップル」というふうになっていた。
「お前だって、加奈りん♪とかいわれたら、うわっ、きもっ!って、思うだろ?」
「えー!そう呼んでくれるのー?!くれるの!くれちゃ・・・」
「いや!なんでもない!今のはなかったことにしてくれっ」
彼女は彼の要求を簡単には受け付けず、その後もよんでくれ、と何度も祈願していたが。
拓斗と加奈、そしてその両方の友人四人は今、二人を尾行していた。
尾行、といっても知り合いなので問題ない・・・はず。
二人は同じ学校の、一人は拓斗、加奈とも同じクラスの恵利奈。
もう一人は、友人四人の中のひとり、恵美と同じクラスの裕也。
二人はいま、友達以上恋人未満という言葉そのものだ。
両思いなのだが、二人はその事実を知らない。
そして、この野次馬(笑)が双方にそれぞれ相手はお前のことが好きだ、という事実を与え、とうとう裕也が告白することになったので、それをストーキングしながら順調にいくか、様子をみているのである。
「こういうのって、やっぱりだめなんじゃ・・・・、人として・・・。」
「いいじゃんいいじゃん♪おもしろそーじゃんー!」
恵美は、こういう色恋沙汰が大っ好きだ。
もう、大好物。
だが、自身は恋をしていないそうで、現在彼氏はいない。
_こういうのって、ある人たちからみたら結構嫌われるんじゃ・・・_
そう、思った時期だってあったのだ。だが。
そこは何とか、恵美の明るさ、人の好さで乗り切っているらしい。
なんとも調子のいいことこの上ない。
異性にももてるようで、二か月に一度ぐらいの割合で告白されるそうだが。。。
「私、本当に好きな相手としか、付き合うとか、できないんだよねーw」
と、彼女はいっていた。
こういうさっぱりした、男前|(本人の前や加奈の前で言ったら殺されそうだが)なところが好きな男子も少なくはない。
振られる、そうわかってはいても、思いを伝えずにはいられないらしい。
もしかしたら、そんなことを思っているのかもわからない。
とにかく、恵美という人物は、そういう人であった。
「おっ!告った!!!」
誰かが叫んだ。
・・・叫んでしまった。
『!』
二人が振り向く。
「加奈ああああああああああ!ひどいよっ、ひどいよ~」
恵利奈、かわいそうに・・・。
いや、十分に彼もかかわっているのだが、拓斗はそう思った。
「おおおおおおいっ!たああああああくとおおおおおおおおおおおお」
ああ・・・・。
まあ、そりゃそうだわな・・・。
「ごめんごめんwちょっと・・・・」
横目でチラッと加奈をみながら、拓斗は言った。
「あぁ・・・。でも、本当、仲いいよな。俺らも、そういうふうになろうぜっ」
・・・。
これは、少し、不味いことを言ったのでは・・・。この場では。
『えっ!』
「ねえねえ!ちょっと!聞こえなかったんだけどっっ」
「えっ、どんなOKの仕方?!」
「迷い、なかった?ま、そりゃそうかww」
「よかったね~♪」
「応援する!ああ、応援する!」
ああ、やはり。
少し同情しながら、二人を見る。
二人とも、頬を赤く染めて、俯き、
「え、あ・・・その・・・・。付き合うことに・・・なりまし・・・・た。」
恵利奈が恥ずかしそうに言う。
「その・・・。応援、応援、よろしくお願いします!」
続いて裕也も、恥ずかしそうに言う。
「応援、するって!するっていってんじゃーんっ」
恵美が、当然とばかりに__
だがこの恵美も、もう少し、もう少しで、あの惨状に、巻き込まれることとなる。
巻き込まれる、といっても、別の形で。
だがそれは、彼女の人生を大きく狂わせることとなる。
今が。
今が、最後かもしれない。
こんなにも明るい、明るい彼女に、会えるのは________