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【相愛・二人の物語】  作者: motomaru
第二章

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18/19

佐理と綾

 佐理は充と別れたその足で小椋綾の家を訪ねた。

玄関脇のチャイムを鳴らして暫く待っていると

「はぁ〜い」

綾の可愛い声が聞こえてドアが開いた。

「こんにちは」

 佐理がにこやかに挨拶をする。

「え……?篠宮君?えっと、何か……用……?」

 玄関先に立っている意外な訪問者に綾は少し戸惑っているようだ。

「恭の事で話が有って来たんだ、ちょっと良いかな?」

「恭の事で?じゃ、上がって」

「じゃあお言葉に甘えて」

 佐理は靴を脱ぐと、きちんと揃えてから綾の後に付いて二階へ上がって行った。

「ちょっと待ってて」

 綾は自分の部屋に佐理を案内しておいて、また下へ降りて行った。

 佐理は入口近くに立ったままぐるりと部屋を見回した。

 そこはいかにも女の子の部屋らしくピンク系の色で統一されていて、ぬいぐるみや可愛い小物等が所狭しと肩を並べている。

 その中にフレームに入った希恭の写真が有った。

 それをじっと見詰めていると、缶ジュースを二本手にして戻って来た綾が遠慮がちに立っている佐理にテーブルを指して

「向こうに座ったら?」

と勧めた。

 佐理は少し躊躇って

「恭は此処によく来るの?」

と尋ねた。

「恭はまだ来たことないの……」

綾が少し淋し気に笑って答えた。

「じゃあ、ここで」

「え?」

綾がキョトンとして佐理を見る。

「恭より先に君の部屋へ入るのは悪いから……」

 さっきから何故入口に突っ立っているのかと思っていたら、そういう事かと綾は合点がいって少し笑った。

「そんな事気にしなくて良いのに、話が有るなら座って」

 佐理は勧められるままおずおずとテーブル脇に座った。

「はい」

 綾はジュースを手渡してから自分も向かいに座って缶の口を開けた。

 佐理は受け取った缶をそのままテーブルに置くと、徐ろに

「あれから……恭とどうなった……?」

と尋ねた。

「あれからって……篠宮君、あの事知ってるの?」

 そう言った綾の顔が曇る。

「男子部の生徒は皆知ってるよ」

「じゃあ……やっぱり恭は……」

 佐理が静かに答えたので、綾の目はじわじわと潤んでいく。

「そうじゃなくて……あれ、僕がやらせたんだ……」

「えぇッ!!」

 綾は驚いて佐理を見直った。

それが本当ならどの面下げて……と言いたいところだが、綾はそれを打ち消した。

「そんな事言われても直ぐには信じられない。恭に頼まれて来たのかもしれないし……」

「恭にそのが有るならどうしてそんな事する必要が有る?それならこのまま放っといても良い訳だし、充にしても態々人前であんな事して他人に知られることも無い筈だろ?あれは僕がちょっとした賭けをして充に無理にやらせたんだ、だから証拠写真まで撮らせた。二人で宜しくやる分には証拠なんて要らないだろ……?」

「じゃあ……」

「そう、あの写真君に送ったの僕なんだ」

「でも……それなら何故恭は何も言わないの?」

「君は恭の言う事をちゃんと聞いた?恭は賭けの事なんて知らなかったけど……知ってたとしても言い訳なんかしないだろ、君がきっと自分を信じてくれると思ってるんだ、恭はそういう奴だよ……このまま終わってしまうかどうかは君次第なんだ、よく考えて……恭は信じるに値しない男なのか……」

「ううん、違う……恭は何時も優しくて、嘘なんか吐いたことなんて無かった……それなのに私……私は……」

 綾は涙ぐんだ。

「だったら信じろよ、恭にとって何時も一番でいたいなら……あいつを……信じてやって……」

「何時も一番で……」

 そう呟いて佐理を見直った綾はハッとした。

(篠宮君……恭と同じ目をしてる……恭のこと……考えてる……の?)

 今、佐理が自分を見ているにも関わらず、綾を通り越して何か別のものを見ていることに気付いた。

それが希恭であることを女の感が鋭く感じ取ったのだ。

 希恭もまた、綾と一緒に居ながら何か遠くのものを見ているような事がよくある。

何時も気になっていた綾はそれが何なのか、今、分かったような気がした。

 以心伝心とでも言うのだろうか、希恭を思う佐理の心に呼応するように、希恭もまた佐理に引き寄せられて無意識のうちにお互いを思いやっているのだ。

「篠宮君……どうしてそんな事言いに来たの……?」

 綾は視線を落として言った。

「友達だから」

佐理は当然のように答えた。

「それだけ?」

綾の声は沈んでいる。

「恭が……君を好きだから……それだけじゃ理由にならない?」

 佐理の顔はまるで綾を慈しむように微笑んでいた。

「ううん、そんな事無い……」

 綾は自分の中でムクムクと頭をもたげ始めた疑問をぶつけてみたかったが、思い留まった。

「電話してみる……何時も一番でいたいから……」

その代わりに、心を探るように佐理の瞳をじっと見詰めながら言った。

「それが良いよ。じゃ……僕はこれで失礼するから」

「今日は有難う……」

 玄関まで佐理を送りに出た綾が無理に笑って言った。

「どういたしまして、ちゃんと仲直りして?じゃあ」

 佐理はニッコリ笑いながら軽く手を上げた。

 帰っていく佐理の後ろ姿を綾は複雑な思いで見送った。

そして姿が見えなくなるとドアを閉め、暫く何かを考え込んでいたが、やがて部屋へ引き上げて行った。











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