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6話 隠された伝承の書

「野菜工場の少女アグネス」


挿絵(By みてみん)



6話 隠された伝承の書



草原の丘を越えると、大きな森が見えてきました。

その森を越えると王妃様の故郷の西の都があるのです。

森の中を歩いていると

かすかな悲鳴が倒れた大きな木の下から聞こえてきます。

ネオールは大きな声で叫びました。




「だいじょうぶですか!?


今すぐ木をどけますから


それまで我慢して下さい!」



倒れた木はとても大きく

ネオールの力では簡単には動きそうもありません。




「ネオール? 


何かいい方法があるのですか?」




「はい! 


僕にまかせて下さい!!」



そう言うとネオールはロープを倒れた木の先端に結ぶと

そのままロープを伸ばし近くの太く高い木の枝かけ

その隣の木の上にロープを結びました。

そして木を降りると、森中にネオールの叫ぶ声が響きました。




「オリャ~!!」



ロープを結んだ木がネオールの放つ剣にゆっくり倒れ始めると

閉じこめ倒れていた木の先端が上に上にとあがっていきました。




「ネオール凄い!


これって、テンビンとテコの原理よね!」




「そうです!


このテンビンとテコの知識があれば


力の無い子供達でも災害から大切な人を救うことも可能なんですよ」



挿絵(By みてみん)



倒れていた木の下の窪みの中に、

衰弱し横たわる母と泣きながら寄り添う、少女メイリーの姿がありました。

ネオールは急いで2人を窪みから出すと、元気のでる野菜薬を飲ませました。




「メイリーさんもう大丈夫ですよ


お怪我はありませんか?


それにしてもいったいどうされたのです?」




「母と森の館に向かう途中急に嵐になってしまい


木の影で通り過ぎるのを待っていると


突然落雷が木に落ちて倒れたのです


偶然窪みの中に落ち助かりましたが


この森と草原は東と西の都の掟により


電話が通じないので、誰かが助けてくれるのを


じっと待つしかありませんでした」



その昔妖精達は動物や植物そして森や水を守る役目の国と

野菜や穀物そして果物を守る役目の国に別れました。

そしてお互いの平和のために王と国命を受けた者のみが

森と草原を歩いて渡らなければならないと掟めたのです。




「ところでお2人は・・・


何故この森においでになったのですか?」




「私達は伝承の書に書かれた


火鳥と天馬の住む精霊の手がかりを探しに


草原を越えて森を抜け西の都へ行く途中なのです」




「伝承の書ですか!?


私は聞いたことがないのですが


今まだ眠っている母ならお城におりましたので


詳しいことを知っていると思います。


明日になれば話もできるでしょう。


そろそろ日も暮れてまいります


今宵は森の館にお泊り頂けませんか?」



深い森の夜は空がほんのり赤く染まり始めるとすぐに訪れてしまいます。




「ネオール、そうさせてもらいましょう。


お母さんを館までお願いしますね」




「はい、解かりました」



メイリー親子を救い出した2人は森の館に泊まることになりました。




「アグネスさん!


夕食の準備は私がしますから


ネオールさんとゆっくりしていて下さい」




「いいえ メイリーさん


先ほどお母様がお目覚めになったと聞きました。


私の国に伝わる元気の出る玄米スープを


お母様に是非召し上がって欲しいの


だから一緒に楽しく作りましょうよ!」



「よろしいのですか?


それなら私は・・・


この国に伝わるお肉料理作ります。


ネオールさんに喜んで貰えるように


今日は特に腕を振るいますね!」




「えっ! ネオールって自惚れやすい性格なのよ


もしもお肉の話を知ったら


きっと勘違いするに違いないわ!


だからメイリーさん


普段通りでいいですからね!」




「そうなのですか??」



その時、隣の部屋からネオールの大きなクシャミが聞こえ

思わず2人は顔を見合わせ笑ってしまいました。


食卓にはたくさんのお料理が並び

メイリーに連れられ、お母さんも席に着きました。

席に座ったお母さんはアグネスとネオールにお礼を言いました。




「偶然とはいえ、これも何かの縁で御座いましょう。


暫くこの森の館でお過ごし頂けると宜しいのですが?


それにしても・・・


東の国の野菜薬は効きますね、


元気が体の芯から沸いてくるようです。


この野菜スープも私のためにアグネスさんが作って下さったと聞きました。


爽やかなレモンの香りがほんのりして、とても美味しそうね。


お2人には、なんてお礼を言っていいのか言葉が見つかりません・・・」




「お礼なんてとんでもないです。


それよりメイリーお母様!


温かい内に野菜スープをお召上がり下さい。


私の国では誰にでも手に入る食材で、人々の健康を守ることが求められているのです。


その中でもスープは胃腸を促すものと言われています。


しょうが・大根・キュウリ・レタス・ネギから取るダシには


発汗性があって食欲増進や消化吸収にいいのです。


さらに血行を促進してむくみを奪う力もあると言われているのです。


そして具と風味に使った、すりおろしたアスパラやレンコンと


潰した玄米とレモン汁や野菜シロップには滋養強壮や疲労回復に強い効果があるのです。


元気が無くなると母は必ず野菜スープを作ってくれるのですよ。


ちなみに野菜シロップの作り方は、野菜工場のホームページを参考にして下さいね」




「アグネスさん とても美味しいわ!


まるで温かいレモネードを飲んでいるようです。


これなら食欲が無くても進みますね」



ネオールは2人の話も聞かずに肉料理を、夢中でバクバク食べていました。



「わ~ この肉料理なんて美味しいんだ!


メイリーさんが作ったのですか?」




「はい ネオールさん


今日は特別に腕を振るって作りました。


お口にあいますか?」



「合うなんてもんじゃないです。


もうメイリーさんこの味は最高ですよ!


・・・??イタタタッ 」



ネオールの足を誰かが踏みつけました。

横を見るとアグネスがムッとしてネオールを見ています。

ネオールはとっさにスープも美味しいと言いましたが、

今更手遅れだということは、見ていたメイリーの目にも明らかでした。



挿絵(By みてみん)



そして3人の笑いとともに、森の館の楽しい夜がふけていきました。



翌朝、元気を取戻したメイリーお母さんがアグネスとネオールを部屋に呼びました。




「メイリーから伝承の書に書かれた


光鳥と天馬精霊の手がかりを求めこの地に来たことを聞きました。


アグネスさん


実はもう・・・お城には伝承の書はないのです!


何者かがお城に忍び込み伝承の書を奪ってしまったの・・・


今でも国中の家を調べてはいますが、


何処か別の場所に隠したらしく


今だ手がかりさえも発見されていないのです。


伝承の書がもしも悪い人の手に渡れば、この国は大変なことになるわ。


王様は心配から体調を崩されてしまったのですよ」




「ほんとうなのですか!?


・・・私達はお母様から


伝承の書の中に、精霊達の手がかりがあると聞いてきたのです。


その伝承の書がもうないなんて・・・」




「あっ!そうだわアグネスさん!


一つだけ精霊達の手がかりを知る方法があるかもしれないわ!


西の都にマーザと呼ばれる私の義母が住んでいます。


マーザは昔お城の図書館長を勤め


彼女の頭の中には、国中の書物が刻まれていると言われています。


マーザお婆さんなら、きっとあなた方のお役に立てると思うわ。


・・・


でもこの国の知識の泉でもあるマーザお婆さんに会うには


王様の許可した者か、血族でなければなりせん。


王様は今まだ床に伏したまま、お会いすることは暫くは無理でしょう。


ですからマーザお婆さんの血を受け継いだ


娘のメイリーを一緒に連れて行って下さい。


娘のメイリーの亡き父は、マーザお婆さんの息子なのです。


きっとアグネスさんのお力になれるでしょう。


メイリー そうしてくれますか?」




「はい お母様!


母と私の命の恩人ですもの、急いで支度をして参ります」



支度を整えた3人はメイリーお母さんに見送られ

鳥たちの歌う森の中、メイリーを先頭に仲良く歩いて行きました。




「ネオール? とても楽しそうですね?」




「わかりますか?


実は昨夜の肉料理があまりに美味しいかったので


お母さんに聞いたところ


僕のためにメイリーさんが作ってくれたらしいのです!


いや~ さすがメイリーさんですね


男を見る目があると言うか!


僕がカッコ良過ぎるからなのか!


もしかすると両方かも!? あははは・・・


アグネス姫も、そうは思いませんか?」




「もぅ! ネオールったら!!


いい加減にしないと許さないわよ」




「あっ イタッ!


足が・・・イタタタタ!!」



ネオールの悲鳴にメイリーが振り向きました。




「アグネスさん?


ネオールさんの足?どうかなされましたの」




「いつもの病気がでたみたい


教えてあげるから私と先に行きましょうよ」



ネオールの話題にメイリーの笑い声が静かな森の中に響きました。



挿絵(By みてみん)



こうして新しい友達のメイリーに出会う事が出来たアグネスとネオールは

森を越えマーザお婆さんの住む西の都に向うのでした。



次回

7話 ・・・虹に消えた光鳥・・・

お楽しみに


agnesu







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