4話 アグネスの誓い(前編)
「 野菜工場の少女アグネス 」
4話・・・アグネスの誓い (前編)・・・
愛の水と土を手にしたアグネスとネオールは、
北に向かいながら王様に報告の電話をしました。
「良くぞやってくれた!
礼を申すぞ!!
生物はすべて古代から大地より生まれ、
神さえも大地が母であったと言われておる、
それに大蛇が神に姿を変えたと言う説もあるのじゃ、
しかし言い伝えでは人間の手により
処刑されてしまったのじゃが・・・。
人間の力を誇示する為に、
嘘を伝えたのかもしれぬなぁ?
ところでアグネスよ
お前に言わねばならぬことがあるのじゃ・・・」
「お父様どうか、なされましたか?」
「実はな、妖精の森で
・・・
いや!やはりやめておこう」
王様は言いかけた話をやめました。
アグネスのお母さんは昔、
人間達が生きていくために大切な、
動物や植物そして森や水を育てる役目の、
妖精の国に暮らしていました。
王様の国は、
人間達が狩り以外でも生きていけるように
美味しい野菜や穀物そして果物を育てることが仕事でした。
そんなある日、
アグネスのお母さんと王様は湖のほとりで出逢いました。
やがて2人は愛し合い結婚しました。
そして王様と結婚したお母さんは王妃様になったのでした。
その頃の人間達は農地を耕し狩りをして、
自然を大切にして暮らしていました。
しかし知恵のある人間達はやがて工場を作り、
色々な物を開発しました。
そして緑を伐採し動物たちを山奥に追いやりながら、
どんどん工場を増やして、
水や空気を汚し、
地球を温暖化へと変えてしまいました。
王妃と妖精の国の人達は、
動物や植物そして森や水を守るために、
一所懸命頑張りましたが、
人間の作り出した機械に傷つき、
倒れてしまいました。
王様は急いで森に行き、
倒れていた王妃様を見つけ、
お城に連れてきましたが、
王妃様の傷は深く、
どうすることも出来ませんでした。
王様はアグネスに知らせようとしましたが、
王妃様はアグネスに心配させぬよう、
野菜を取り戻すまでは黙っていて下さいと、
王様にお願いしたのでした。
王様は迷いましたが、
やはり王妃様の気持ちを思うと、
胸にとどめることにしたのでした。
「お父様? ・・・??」
「アグネスよ 聞くがよい!
今一番大切なことは野菜を取り戻すことじゃ・・・、
そして一刻も早く戻ってくるのじゃぞ!
よいか アグネス?」
「はい! お父様
必ず取り返して戻ります」
「ネオールや アグネスをたのんだぞ
さぁ 急ぐのじゃ!」
王様はそう言うと電話を切りました。
「ネオール?・・・
森に何かあったのかしら?」
「私にも解かりません
でも急いで野菜を取り戻し帰りましょう」
アグネスとネオールは王妃様の命が危険だとは知らずに
野菜を取り戻しに魔女の家に向かいました。
魔女の家の中では2人のけらいが、
野菜を束ねては運んでいました。
「お前達!
朝の市場に間に合うように、
早く野菜を束ねるんだよ!!」
魔女は人間達の市場にマズイ野菜や米や果物をしのばせ、
食物を嫌いにするつもりです。
そして王様の仕事を奪い、魔女の国にしようとしているのでした。
「魔女さま、
トマトはいかがいたしましょう?
青いままだと、バレてしまいますぜ!?」
「この赤とうがらしのスプレーをぬるんだよ
キュウリには、青とうがらしのスプレー
間違えるんじゃないよ!
わかったら サッさとおやり!!」
「ヘイ! 魔女さま」
「これで、この国は私の思うがままよ!」
そう言いながら魔女は、大声で笑いだしました。
「そうはさせないぞー!!」
「野菜を返しなさい!!」
「誰だい!! そこに隠れているのは・・・」
魔女が怒鳴りました、
ネオールとアグネスは勇気をだして魔女の前に姿をあらわしました。
「誰だと思えば、
坊やと小娘が野菜を返せと言うのかい?
オッホホホ・・・
生意気な!」
「魔女よ、
こちらにいるのは王女のアグネス様だ!
おとなしく野菜を返さないと、
痛い目にあわすぞ!」
「オッホホホ!
王女だか?
お嬢さんだか知らないけどねぇ、
痛い目を見るのは
お前達だよ!」
そう言うと魔女は杖を振り上げ何やら呪文を呟きました。
そして杖を振り下ろすと大きなネズミが現れネオールに襲いかかりました。
ネオールは赤い大蛇の力を使いネズミを退治しました。
魔女は慌てて毒矢を放ちました。
毒矢はネオールの胸に刺さりネオールは倒れてしまいました。
そして魔女は杖を振り下ろし、
今度はたくさんの狼コウモリをアグネスに襲いさせました。
アグネスは龍の力を使い、
水のカーテンを作り防ぎました。
そのまま苦しむネオールのもとに走り寄りました。
「ネオール! シッカリして・・・」
「アグネス姫・・・
このままだと2人ともやられてしまいます、
私にかまわず早くお逃げ下さい」
「あなたを置き去りにしてなど行けないわ!」
「何を言うのです・・・
姫は将来この国の、
王妃様にならなければならないのです!
さぁ 急いで立ち去るのです!!」
「嫌よ ネオール!
もし私が王妃になるのなら、
あなたは、王子様になって下さい!!
あなたを愛しているの、
だから私のために生きて下さい!!!」
アグネスとネオールは幼馴染でした。
2人はとても仲が良く、
アグネスは大きくなったら
ネオールのお嫁さんになるんだって、
いつもネオールに言っていました。
ネオールも優しいアグネスが好きでした。
けれど時が過ぎ、
身分の違いは2人を遠ざけてしまったのです。
ネオールの命の危険は、2人に真実の声を伝えました。
アグネスは白いペンダントに秘められた生命の力を使い、
ネオールの毒と傷を治しました。
こうしてネオールは王様との約束を果たし、
2人は愛の力を手にしたのでした。
ネオールは水のカーテンで魔女を囲むようにアグネスに言うと
その中に飛び込みました。
愛する者を救おうとする強さは、
どんなに大変な苦労も惜しまない愛の力に変わるのです。
そして水のカーテンを愛でいっぱいにすると、
魔女をつつみ込みました。
愛に満ち足りた魔女の恐ろしい顔は、
優しい顔に変わり、魔女は気絶しています。
ネオールは急いで、愛の水を魔女にかけました。
魔女に取りついていた悪魔が龍の涙と伴に消え去りました。
呪いがとけた魔女や手下達は、
何故ここに居るのか解からずキョトンとしています。
「ネオール!ついにヤッタわね!!」
「はい! 愛の力のおかげです」
「?・・・ え!もしかして・・
3つ目の愛って 愛する心の力だったのね。
何故お父様は私に言わずに、ネオールに言ったのね?」
「王様はアグネス姫に
愛を言うのが、恥ずかしかったようです。
それに・・・
先に嫌いと言われたら、魔女に勝てなくて困まります。
もっと困るのは、
僕が死ぬほど落ち込むでしょうからね!
あはは・・・」
「もぅネオールったら!」
2人は照れ笑いしながらも、野菜を取り戻すことが出来て良かったと
ホッと胸を撫で下ろしたのでした。
<続く>
5話 「アグネスの誓い」(後編)
お楽しみに。
agnes