2話 龍の住む湖
童話 「野菜工場の少女アグネス」
2話・・・龍の住む湖・・・
真っ暗な湖の真中に、
岩石で作られた城があります。
その城は、
オレンジ色の不気味な光を放っていました。
「アグネス姫、
きっとあそこが龍の住みかです。
降りますよ、
シッカリつかまっていて下さい。
テン!
灯りを消してあの岩陰に降りてくれ」
ネオールは龍に見つからないために、
テンに岩陰を指さしました。
龍の城に着いたアグネスとネオールは、
岩の隙間から、
そっと龍のようすをのぞきました。
愛の水を取りに来たことを知らない龍は、
深い寝むりについていました。
「龍が寝ている間に、
手に入れて帰りましょう。
でもこの隙間からは入れそうにありません、
私が探してまいります」
ネオールはアグネス姫を残して、
城の中に入れそうな場所を探しに行きました。
城の上には龍の飛立つ扉がありました。
でも岩壁はけわしく、
とても歩いては登れません。
テンで舞い降りると龍に見つかってしまいます。
「アグネス姫!?
城の中に入れそうな場所が見当たりません・・・」
ネオールは困ってしまいました。
「この岩・・・もしかすれば?・・・」
アグネスは何かいい方法を思いついたようです。
「確か?岩石は・・・
砂岩、泥岩、れき岩という成分から
出来ているはずなんです。
テン!
急いでお願いしますね」
テンはアグネスから頼まれると、
湖に向かい飛び立ちました。
そして大きな花びらを持って帰ってきました。
アグネスは岩をさわりながらテンに言いました。
「テン!
ここにかけるのよ」
花びらの中に入った、
たくさんの水を、
アグネスの指差す岩にかけました。
なんということでしょう?、
岩がとけていくではありませんか。
岩は色々な成分から出来ていて、
水によわい岩石があることを、
アグネスは知っていたのでした。
「凄い!凄い!
さすがぁアグネス姫!」
ネオールは大喜び、
テンと抱合い踊りました。
「ヤッタネ!」
褒められたアグネスも思わず、
ガッツポーズをしました。
でも城の中からは
寝ている龍の口から吐きでる炎の音が、
不気味に響いていたのでした。
「さぁ 行きましょう」
「はい! ネオール」
部屋の中にそっと入った2人は、
音をたてないように探し始めました。
「ないなぁ・・・
どこだろう?」
いくらさがしても見つかりません、
もしかすると龍は愛の水を遠くに隠して、
ここには置いてないとネオールは思いました。
「ネオール?
この鏡はなんでしょう?」
アグネスがネオールのそばに近づこうとしたその時です。
「キャ~!
ガシャ~ン!!」
アグネスは持っていた鏡を床に落としてしまいました。
「誰じゃ!?
よくも我が城に!!
たとえ小僧とて、
生きては2度と帰さんぞ!」
目をさました龍が口から炎をはきながらにらんでいます。
ネオールは剣を抜き、
恐ろしい龍と戦う決意をました。
「ここで死ぬ訳にはいかないんだ!
お前になんかに、
負けないぞー!」
「あははは・・バカな小僧よ!
我に勝てるものか!!」
大声で笑いとばした龍は、
ネオールめがけて襲ってきます。
ネオールは岩から岩に飛び跳ねて
龍の背中に飛び乗りました。
「覚悟しろ!」
そう言いながら高く剣をふりあげ、
龍の急所をめがけて振りかざしました。
「えっ!・・・」
ネオールは叫びました。
龍の甲羅の硬さに、
剣が折れてしったのです。
「小僧! そんな物でこの俺は殺せんぞ!」
龍は誇らしげに言いました。
そして背中のネオールを振り落とそうと暴れ廻りました。
「アグネス姫!
龍の弱点は・・・!?」
必死に龍の背中にしがみつきながらネオールが叫びました。
「私にもわからないわ!」
優しいアグネスには
龍の退治のしかたなど、
わかるはずがありませんでした。
「ネット情報で検索すれば、
わかるかもしれません!」
「あっ・・・そうね!」
アグネスは携帯を取り出して、
急いで龍の弱点を検索しました。
「あったわ!
ネオール! 目よ!」
そう言いながらアグネスは、
ハンカチをネオールに投げました。
ハンカチを受け取ったネオールは、
不思議に思いながらもひたいの汗をふきました。
「ネオール! 何してるの?」
「汗を・・・?」
「ネオール違うでしょ!
ハンカチで龍の目を隠すのよ!」
「あ! そっか!」
ネオールは恥ずかしくて、
顔がまっ赤になりながらも、
急いで龍の目をハンカチでふさぎました。
龍は目が見えないと力も消えてしまいます。
「何も見えん!
小僧! ゆるさんぞ~」
目が見えない龍は岩石の壁にぶつかりながら、
ネオールを振り落とそうと暴れました。
その激しさに天井の岩がくずれて、
龍の頭に落ちました。
龍は気絶して地面に倒れました。
龍の足も傷ついて血が流ています。
ネオールはロープを取り、
龍の体を急いでしばろうとしました。
「やめて~ ネオール!!
私たちの勝手な理由で、
やっぱり龍をイジメてはイケないわ!」
アグネスは龍の血の流れる足にハンカチを巻いて、
自分の髪にしていた、バンドでとめてあげました。
そしてまだ気絶している龍の体をさすりながら、
美味しい野菜が魔女に奪われ、
この世から消えてしまうことや、
何故この龍の湖にきたのか、
理由を話して誤りました。
「帰りましょう・・ネオール」
「えっ!・・いいのですか?」
「えぇ・・・
いかなる理由でも力で奪うことは許されない、
そんな当然なことさえ忘れて・・
そのうえケガもおわせてしまったわ・・・
ごめんなさい」
確かにアグネスの言う通りだとネオールも思いました。
でも困ってしまいました、
愛の水がないと魔女には勝つことができないのです。
その時です、
突然、龍の顔が光りだしました。
気絶から目覚めた龍は、
そのまま目を閉じて話を聞いていたのです。
そして流れでた涙が黄金に光輝いていたのでした。
「もって 行くがよい!
我の涙をアグネスにさずけよう
これこそが・・・
皆が求める愛の水じゃ!」
龍はネオールに黄金に輝く愛の水を渡しました。
愛の水それは・・・
正しき愛に龍の心が満ちあふれ、
流れ出た涙のことだったのです。
龍はハンカチのお礼に、
友の証である水色に輝く指輪をアグネスに与えました。
アグネスとネオールは龍にお礼を言うと急いでテンに乗り、
大蛇の住む谷に向かいました。
「アグネス姫! 良かったですね」
「そうね ネオール」
2人の顔から笑みが何度もこぼれました。
「テン急げ!
大蛇の住む谷にゴーだ!」
ネオールはアグネスに、
カッコ良く見られるようにテンに言いました。
「大蛇の住む!?・・・
何処か知りませんけど?・・・」
「ありゃ・・・」
頭をかきながら東の山をテンに指差しました。
ネオールは恥ずかしくて後ろを振り向けずにいます。
でもその姿が何故かアグネスには、
たのもしくも見えたでした。
「ネオール、
陽が明ける前に工場に戻らねばなりません、
急いで下さいね」
「はい! おまかせ下さい」
こうして愛の水を龍の住む湖から手にいれた2人は、
愛の土を求めて
大蛇の住む谷に向かったのでした。
3話 「大蛇の住む谷」
お楽しみに。
agnes