1話 愛の奇跡と青いトマト
「野菜工場の少女アグネス」
・・1話 愛の奇跡と青いトマト・・
人々が寝静まったころ、
野菜畑の中に野菜工場が、
姿を現します。
「みなさ~ん!
朝までに美味しい野菜を仕上げて下さ~い」
アグネスが大きな声で言いました。
少女アグネスは野菜工場のお姫様。
美味しい野菜作りが、
王様から与えられたアグネスの仕事です。
「今日は天気が悪かったので、
トマトには赤いシロップ、
キュウリには緑のシロップを、
たくさんお願いしますね」
アグネスは、カールおじいさんに言いました。
カールおじいさんは、
野菜を甘く色を付けるのが仕事です。
「ヘィ!アグネス姫様」
ニッコリとうなずきながら、
カールおじいさんが言いました。
その時、
遠くから、
アグネスを呼ぶ声がしました。
「アグネス姫様!大変です!」
カールおじさんの孫の、
ペーターが大声で走ってきました。
「ペーター?・・どうしましたか?」
アグネスが、聞きました。
「大変なんです!
真っ赤にする筈の青いトマトが見当たりません、
それに野菜置き場が、
メチャクチャになっています」
おじいさんにしっかり管理するように言われていたのに・・・」
そう言うとペーターは泣き出してしまいました。
「そりゃあ~大変だ!
もしも美味しい味を知らない子どもたちが、
青いトマトを食べたら、
えらいことになるじゃろうなぁ!?・・・」
カールおじいさんが心配そうに言いました。
アグネスは暫く考え、
ネオールならきっと探し出してくれるに、
違いないと思いました。
泣いているペーターの頭を撫でながら、
心配いらないわと、
アグネスは優しく言いました。
そしてカールおじさんに、
ネオールを呼んで来るように頼みました。
カールおじさんは、
急いでネオールのもとへ向かったのでした。
「アグネス姫、
カールおじさんから話は聞きました。
早速、探しに行きましょう」
ネオールとアグネスは夜の道案内が得意な、
ホタルのテンに乗り探しに行きました。
ホタルのテンは2人を乗せ、
大地を明るく照らしながら、
空に舞い上がりました。
「テン!
この青いトマトの匂いを追ってくれ」
ネオールはそう言うと
青いトマトの匂いをテンに嗅がせました。
テンは空を一周すると、
北に向かって飛び始めました。
北に飛ぶテンに、
ネオールは思い出しました。
「アグネス姫、
北には恐ろしい魔女が住んでいます」
ネオールは魔女の事を、
母に聞いたことがあったのでした。
「それに北の魔女は、
野菜が大嫌いと聞いたこともあります、
もしかすると魔女は青いトマトを野菜好きな人々に食べさせ、
地球から野菜を無くす気かもしれません」
それを聞いたアグネスは、
急いで王様に電話をしました。
「おお・・アグネスよ、
なんたることじゃ・・・、
北の魔女に勝つには3つの愛が必要なのじゃが・・・」
そう言うと王様は黙ってしまいました。
「お父様! 教えて下さい」
王様は深く考え込みました。
今まで勇敢な騎士たちも、
3つの愛を手にした者は無く、
魔物に殺されてしまったからです。
そしてアグネスに言いました。
「3つの愛を手にするには、
知恵と勇気と愛が必要なのじゃ、
アグネスよ!
ネオールとともに、
この3つの困難を乗越えられるかのぅ?」
と王様が聞きました。
アグネスは知恵と優しさが自慢の王様の娘でした。
ネオールは王様が将来、
後を継がせたいと思うほど、
目にかけている勇敢な少年です。
それでも王様は心配でなりませんでした。
「お父様・・・
私はどんなに怖くても行きます!
教えてください!」
アグネスは野菜嫌いを救うために、
恐ろしい困難を、乗越える決意をしたのでした。
「アグネスよ・・ならば聞くがよい」
そう言うと王様は、
1つ目に必要な龍の住む湖の愛の水のこと、
2つ目に必要な大蛇の住む谷の愛の土のこと
そして・・・
3つ目に必要なのはと言おうとした王様は、
電話をネオールに代わるようにアグネスに言いました。
今はまだ3つ目に必要なことを、
アグネスには言えなかったのです。
「えっ!・・・」
王様の話しを聞いたネオールは驚き、
3つ目に必要な愛・・・に、
空を見上げました。
「王様・・・約束します」
そう言うとネオールは電話を切りました。
アグネスは不思議そうな顔でネオールを見つめました。
でもネオールは王様と約束したので、
アグネスには何も話せませんでした。
「アグネス姫! 急がねばなりません!」
そう言うとネオールは、
テンの向きを変え、
北の魔女から青いトマトを取り返すために、
アグネスと危険な龍の住む湖に向かうのでした。
次回「龍の住む湖」 2話
お楽のしみに!
agnes