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挑戦者

カードゲーム「大富豪」をもとに、

トランプのカードたちが擬人化し

戦う世界を描いた物語です。

少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです!


※本文は完全に創作になります。

実際の地名や人物、団体とは一切関係ありません。


「さっさと歩けグズ!!!」


背中を蹴られながら、

必死に体に見合わない大きさの荷物を運ぶ。

まるでボロ雑巾のような服に身を包まれているのも、奴隷となって休みなく働かされているのも、

全てはこの数字のせい。

首元に浮かぶ、

まるでタトゥーのようなマークに爪を立てた。


この世界では2種類の人間がいるらしい。

プレイヤーとスーター、全てはこのたった2つの役職で決まってしまう。

スーターとは、トランプのように1~13までの数字と

スペード、ダイヤ、ハート、クラブが

個々に振り分けられている人間。

そしてプレイヤーとは、そのスーター達を

持ち手にしてゲームする側の人間だ。

スーターに振り分けられている数字には強さがあり、その強さで人権が決まる。


…私のこの首に刻まれた数字は、3。

1番弱い数字だ。

おかげでこんな目にあっても

文句すら言ってはいけない。

スーターは弱ければ弱いほど物のように扱われる。

贅沢は言わないから、せめてもう少し強い

カードが良かったなぁ。


「おい!手を止めるんじゃねぇ!破られてぇのか!!」


体を強く鞭で打たれて地面に倒れ込んでしまう。

スーターはゲーム以外で死ぬことはできない。

どれだけ体が悲鳴をあげようと、

死なないのだからと無理やり働かされている。

だが、例外もある。

マスターであるプレイヤーから、”破られる”

つまり殺されれば、死ぬことができる。


足が震えて動かない。


もう……嫌だ、この苦痛が続くならいっそ………


地面に横たわりながら落ちてくる鞭の痛みに目を閉じる。



「感心しないな。スーターとはいえ、

大の大人がこんな子供に鞭を振るうなんて。」


声を張り上げている訳でもないのに、

妙によく響く声が聞こえるとマスターの手が止まった。

恐る恐る目を開けると、

そこには10代ほどに見える青年が立っていた。


「あんた、俺とゲームしてくれよ。

俺が勝ったらその子は俺の持ち手に加える。」


そういうと、青年は1枚のカードを取り出した。


「こい!ルイス!俺に忠誠を誓え!」


青年がその場にカードを投げ捨てると、

一瞬のうちにカードは光を放ち人の形に変わった。


「かしこまりました、マスター。

貴方様の騎士として全力を尽くします。」


人の形に変わったカードは、まるで騎士のような装束に身を包み佇んでいた。


「フンッ、いいだろう受けてたってやる。

生意気なガキのスーターがズタボロになるのを

拝んでやるよ。」


手に持っていた鞭を投げ捨て、

マスターも1枚のカードを懐から取り出す。


「俺の奴隷としてしっかり働け!」


マスターが床にカードを叩きつけると、

そのカードもまた光を放ち人の形に変わった。


「こいつを殺せばいいのですね?」


出てきたスーターは、手にナイフを持ち不敵に笑みを浮かべている。


「こいつは暗殺者だぜ?正面戦闘しかできないナイト様が勝てるかな?」


マスターは勝利を確信しているのかニヤニヤと笑っている。


勝負は一瞬にして決着が着いた。

暗殺者が騎士の後ろに回ったかと思うと、その首にナイフを突き立てようとする。


瞬間、暗殺者の腕が跳ね飛ばされていた。

何が起こったのか理解できずに暗殺者がナイフとともに飛んだ自分の腕を見つめていると、次に首が飛ぶ。


そのまま暗殺者のスーターは1枚のカードに戻ってしまった。


「……は?」


マスターも理解できずに立ち尽くしたまま、

自分のカードを拾おうともしない。


「よし、俺の勝ちだな。この子は引き取るぜ。」


青年が私の方にゆっくりと歩いてくる途中に、

マスターが突然叫んだ。


「おかしいだろ!!!!どうやった!!!

なぜ俺のスーターが負けるんだ!!!

このスーターはダイヤのジャックだぞ!!!」


青年の背中にわけがわからないとでも言うように

マスターは怒鳴り散らしている。


「何を言う。ダイヤのジャックならば、

尚更お前の負けは確定している。なぜなら、

俺の騎士はスペードのデュースだ。」


その言葉に耳を疑った。


デュースはスーターの中でも最も強いカードだ。

スーターは強いカードほど数が少なく

希少価値が高い。

デュースともなれば、この世にたった4枚しかない

とても珍しいスーターのはずだ。

マスターも驚いたのか、声をさらに荒らげた。


「嘘をつくな!!!

この世に4枚しか存在しないデュースが

こんなクソガキの手にあるわけないだろ!!!」


すると青年は、笑い飛ばしてこう告げた。


「自分が負けたのがまだ信じられないのか?

ジャックなんて普遍的だろ。

俺の言うことが嘘だとしても、お前は負けたんだ。

いい加減認めろよ。」


青年がバカにしたようにマスターを笑うと、

マスターが激昂して青年に殴り掛かる。

すると、先程の騎士のスーターが割って入り

マスターを気絶させた。


「マスター、あまり煽らないでください。」


騎士は呆れたように青年に言い聞かせていた。

「まぁまぁ」と騎士のスーターを宥めるように

手をヒラヒラと返し、彼は私に向き直った。


「そんなことより、お前、大丈夫か?」


青年はマスターに目もくれることなく、

私に手を差し出してくる。


「あ、ありがとうございます…。

でも、私はトレイです。

…最弱……なんです……、

きっとあなた方のお役にたてません…。」


ガッカリされたよな。

わざわざ挑戦状叩きつけてまで

助けた相手が、トレイなんて。

幻滅…されたかな。


目の前にデュースのスーターが居る。

それだけで私の価値は今この場にないに等しい。



「トレイだろうとなんだろうと、

やり方によっては強くなれる。

弱いと嘆くやつには技量がないだけだ。

俺についてこい。

俺なら、お前を最強にしてやれる。」



強く言い切った青年は、今の私にとって

まるで希望の星のようにキラキラと輝いて見えた。


「…私、あなたのお役に……たちます!

たってみせます!」


彼の期待に応えられるように、もっともっと

強くなろう。そう誓って彼の手を強く握った。


「これからよろしくな!…えー、

名前はなんて言うんだ?」


「名前は、ないんです。奴隷だったので……。」


そう答えると、少し考えるように

後ろに立っていた騎士のスーターを見つめる。


「そうだなぁ、じゃあ俺がつけてやろう。

スフィだ!今日からそう名乗るといい。」


スフィ……、初めて名付けられた自分の心臓が

大きく脈打つのを感じる。



「…はいっ!!これから宜しくお願いします!

マスター!!!」







この世界では、ゲームが全て。

そのゲームこそ───



『大富豪』



と呼ばれている。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

第1話いかがだったでしょうか。


この作品では、カードの強さや能力を

活かしたバトルや、

スーターたちの関係性の変化を

描いていけたらと思っています。

これから少しずつ更新していく予定なので、

よければ続きも読んでいただけると嬉しいです!


感想などもいただけるととても励みになります!

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